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白老川

(御料地橋〜仮設の橋)

カヌークラブのI山さんから白老川ミニ例会の企画が出されていたが、この週末は10月に出場を予定している別海パイロットマラソンに備えて走り込みをするつもりでいた。
ところが、週間天気予報では週末は曇りがちの天気になるはずだったのに、前日の天気予報では晴れマークに変わり、おまけに気温も高くなりそう。
暑い時に走るのが嫌いなかみさんは、「走るよりも川の方が良いんじゃない」と言い始める。
白老川は2年前に一度だけ下って、「これはカナディアンで下るような川じゃない」と痛感した川である。
スタート準備かみさんはもうその時のことを忘れてしまったのだろうか?
「のど元過ぎれば熱さ忘れる」
そんな訳で、懲りない夫婦は、もう一度白老川を下ることに決めたのである。

集まったのは私達夫婦を含めて7名。
川の水位は2年前に下った時よりも1センチ少ないだけ。
朝のうちは雲がかかっていた白老川の上空も、下り始める頃には素晴らしい青空に変わっていた。

今回初めてここを下るK島さんは、水の美しさや河原から湧き出ている冷泉に感激していた。
N島先輩が1人だけ、御料地橋の上流からスタート。
落ち込みになっている橋の下の護岸に、ゴツゴツとカヌーの底をぶつけながら降りてきて苦笑いを浮かべる。


河原から湧く冷泉   御料地橋下の瀬
河原からは冷泉が湧いている   一人、上流からスタートしたN島さん

スタートして直ぐの瀬スタートして直ぐの浅瀬で、まずは1回目の座礁。
今日はこんなことを繰り返しながら下っていくことになるのだろうが、それはもう覚悟の上。
その後もしばらくの間、浅瀬が続く。
その中にカナディアンで通過できそうなルートを探しながら下るのも、ゲーム感覚で楽しめる。
天気も良くて、水も綺麗で、たまの座礁も大して気にならない。

今回のミニ例会の提案者であるI山さんは、あろうことか、スプレースカートを忘れてきていた。
川下りで家を出る時、私は最後に車の荷室を見て「パドル、ライジャケ、ヘルメット」と声を出して確認する。
それだけあれば、とりあえずは川を下ることができるのである。
カヤックの場合、それに一つプラスされるのがスプレースカートだろう。
まあ、私の場合もキャンプの時だけれど、ライジャケを忘れたり、パドルを忘れたりしたこともあるので、大きなことは言えない。
忘れてしまうから、忘れ物をするのである。
結局、I山さんはスプレースカート無しでく下ることにしたのだが、後でGoProで撮った動画を見ると、瀬の途中には必ず、カヤックの水抜きをしているI山さんの姿が写っていたのである。


スプレースカートがない   水抜きをするI山さん
スプレースカート無しで下るI山さん   常に何処かで水抜きをしているI山さん

白老川の風景
美しい風景だが、のんびりと下れるのはここまで

この辺りの瀬はまだ軽く下れる次第に流れも速くなり、岩避けも忙しくなってくるが、まだ余裕を持って対応できる範囲内である。

下っている時は「綺麗な水だな〜」程度にしか意識していなかったが、後で写真を見ると、川の水が真っ青に染まっているのに驚かされた。
白金温泉を流れる美瑛川は、その水の青さからブルーリバーとして知られているが、この白老川の青さも美瑛川には少しも引けを取っていない。

美瑛川の青さは温泉成分が溶け込んでいることによると聞いたことがある。
スタート地点では冷泉も湧いているし、白老川の水が青く見えるのも同じ理屈によるのだろう。

ブラインドになっている落ち込みがあり、その手前で上陸して下見をする。
岩だらけだけれど、真っすぐに下っても何とかなりそうに見えた。

落ち込みの下見しかし、かみさんの意見は「左寄りを下った方が良いんじゃない」だった。
確かにそのルートだと岩に引っ掛かることは無さそうだ。その代りに、落ち込みの手前で素早くカヌーの向きを変えなければならない。
それがちょっと難しいかなと思って、私は真っすぐ下るルートを考えたのだが、かみさんがそう言うからには操船に自信があるのだろう。

夫婦の意見はまとまり、トップバッターでそこを下る。
狙った通りのコース取りで、あっけなく落ち込みをクリア。
派手さはないけれど、こうして自分の思ったように下ることができると、快感を覚えるのである。

直ぐにカメラマン役として岩の上に移動する。
その途中で足を滑らせ、岩の上で思いっきり尻餅を付いてしまった。
6月の支湧別川で尻餅を付いた時の痛みが未だに消えずに残っている。
今回は、その痛いところとは別の場所をぶつけたのがまだ救いだった。落ち込みクリアもしも同じ場所をぶつけていたら立ち上がれなくなっていたかもしれない。

後続メンバーは、岩の間を強引に下ったり、私達と同じルートを下ったりと、それぞれのルートで下ってくる。
ここでは特に、ヒーロー、チキンのコースの区別はなさそうである。
ただ、私達が下ったルートは、カヤックだとホールに捕まりやすいようで、K岡さんがそこで沈。
下流が瀞場なのでロールで簡単に起きるだろうと見ていたら、数回チャレンジするも、起き上がれそうな気配の全く無いままに沈脱。
最近の例会では一度は必ず見かけるこの風景。
私の見る限り、ロール成功率がとうとう3割を切ってしまったパドラーK岡である。
でも、この清流の中を流れることができるのだから、K岡さんにとっても本望だろう。


落ち込みを下るN島さん   流されるK岡さん
岩の間を下るN島さん   気持ち良さそうに流されるK岡さん

いよいよ、岩や大石が次々に行く手を塞ぐ、厳しい流れの中へと入ってきた。
先週の十勝川やシーソラプチ川を下った時、よしひろさん夫婦の、ご主人が大声で奥さんに指示を出しながら下っている様子を見ていて、カナディアンの夫婦タンデムは声を出して意思疎通を図るのが基本だなと、改めて感じていた。
必死に岩を避ける私もそれを見習い、瀬の水音に負けないように大きな声で「右っ!、次は左っ」と、矢継ぎ早にかみさんに指示を出す。

早い流れの中で次から次へと現れる岩をどうやって避けるか、瞬時に判断しなければならない。
たまに間違った指示を出してしまうが、迷って何もしないよりはマシである。
かみさんも時々、私の声を無視して方向を決めることもある。
いつの間にか先頭に出てしまったが、一区切り付きそうなところまで一気にそのまま下る。

そうしてエディに入って一息ついた時、えも言われぬ満足感に包まれた。
全力を尽くして難しい流れを下りきったことが、そうさせるのだろう。
少しだけ自分達を褒めたやりたい瞬間だった。


岩だらけの瀬
岩だらけだが美しい川を下るのは楽しい

岩の間を抜けるK岡さんその後もまだ岩だらけの急流が続く。
途中で行く手が塞がれて座礁した時、近くにいたN島先輩が声をかけてきた。
「カヌーの下にパドルがあるから取ってくれ」とのこと。
「何でそんなところに?」と思いながら下を覗くと、確かにそこにはパドルが沈んでいた。
上流を振り返ると、そこではK島さんがカヤックを引きずって岸に上がるところだった。
自分達の直ぐ前しか見ていなかったので、周りで何が起こっているか、全く気付かずにいたのである。

その急流を下り終え、河原で昼の休憩。
白老川の河原は、他の川の河原とは一味違っている。
河原で昼食巨大な転石が、そこらじゅうにゴロゴロと転がっているのだ。
この付近は北海道の中でも一番雨量が多い地域である。
大雨で増水した白老川は、こんな巨石も押し流してしまうくらいに暴れ狂うのだろう。
白老川の近くに住んでいた人の話によると、増水した時には川の中を転がる石の音が聞こえてくるのだとか。

そんな巨石の上に座ったN島先輩が、お菓子を皆に投げ渡してくれる。
まるで、白老川の河原で餅まきが行われているみたいで、笑ってしまった。

昼食を終えて再び下り始める。

難しい瀬は快適な瀬に変わっていたそこから先に、前回も苦労させられた高低差の大きな瀬があった筈だが、そこは気持ち良く下れる普通の瀬に変わっていた。
川底が大きくえぐられて高低差も少なくなり、流れの中にあった大石も下流まで流されていったのだろう。
2年前も感じたけれど、自然の力の凄まじさを感じさせられる場所である。

難しい瀬が無くなってしまった代わりに、その先に会った滑り台を滑り降りるような快適な瀬も、普通の瀬に姿を変えてしまっていた。
その瀬の終わったところの川から直立した岸の上には、今にも転がり落ちそうに見える微妙なバランスを保って、巨大な石が乗っていたはずだが、当然ながらその姿は消え去っていた。


美しい白老川
楽しい滑り台の瀬は無くなったけれど美しい風景が広がる

これで白老川の核心部を抜けたはずだけれど、まだまだ瀬が現れて退屈させられない。
川に削られた地層を見ていると、砂利と砂利の間に黄色い層が入っているが分かる。
多分、樽前山あたりが降らせた火山灰の地層なのだろう。
スクォート状態のI山さんその地層が所々で川の中に出てきていて、それがまた変わった風景を作り出していて楽しめるのだ。

I山さんもスプレースカート無しで、何とか無事に下って来られた。
ただ、岸に上がっての水抜きの回数は数知れず、瀬を下った後にはカヤックが完全に水没し、まるでスクォート(水の中に潜れるタイプのカヤック)の様で皆の笑いを誘う。

前方を下っていたK岡さんがザラ瀬の中で座礁したと思ったら、そのままカヤックがひっくり返って流され始める。
本日2回目の沈脱である。
そのザラ瀬の下は綺麗な瀞場になっていて、カヤックにつかまりながらバタ足をするK岡さんの顔には、まんざらでもなさそうな表情が浮かんでいた。


面白い地層   泳ぐのも気持ち良い
削られた川岸の地層が面白い   泳ぐのも気持ち良さそう?

波の大きな瀬に突入瀞場の先に、大きな波の立つ瀬が見えていた。
波の下に何か隠れているのかと思ったが、様子を見に行ったO川さんがOKサインを出してくれたので、私達が先陣を切ってその瀬を下る。

そして直ぐに後続メンバーが下って来るのを撮影。
太陽を受けてキラキラと輝く白波の中を、皆が豪快に下ってくる。
一番小さなカヤックに乗っているmarioさんは、その大波に弾き飛ばされるようで、一番迫力のある写真が撮れた。

流れも次第に緩やかになり、その流れに乗ってぷかぷかと流れていく。
真っ青なには白い雲が浮かんでいる。
川の向こうには白老三山と入道雲川の上流に見えている山は白老三山だろうか。
山の向こうには入道雲も見えている。
夏の終わり、そんな風景が広がっていた。

素晴らしい天気に美しい川、そして厳しい瀬を全力を尽くして下ったと言う満足感。
今シーズンの川下りの中では、今日が一番楽しかったと言っても良いかもしれない。
30キロ走で汗を流すよりも、こんな日は涼しい川の上で遊ぶのに限るのである。

白老川の動画 

2014年8月31日 晴れ
当日12:00白老川水位(御料地観測所) 95.07m


ホワイトウォーター
白波の中を下るmarioさん、この後、波の中に姿が消えた

巨大なサイコロ   川岸の巨大岩
巨大なコンクリートのサイコロが転がってる   自然石も巨大だ

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