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十勝川

(屈足ラフトコース)

カヌークラブの8月例会初日は十勝川のラフトコースを下る。
ここは夏の渇水期でも岩松発電所からの放水があるので、一定の水量が確保されている。
去年の例会でここを下った時も、スタート地点から放水口までは水の干上がった川の中を一列縦隊になって下っていったが、放水口から先は一気に水が増えて、スリリングな川下りを楽しんだのである。

増水したスタート地点しかし今回は、最近の雨で道内の何処の川も増水気味。
ここ十勝川も、既にスタート地点から、河畔林が水に浸かるくらいに水が増えていた。
これに、途中から放水口からの水が加わることを考えると、ちょっと恐ろしくなってしまう。
ただ、8年前の例会では同じような状況の中をアリーで下っていたので、それ程の不安もなかった。

参加者は15名。
クラブに入会したばかりのカヤックに乗るパムさんは、今回が例会初参加である。
初参加と言っても、他のカヌークラブにも入っていて実績十分のベテランなので、頼りになるメンバーが増えたことになる。
先日の増水した鵡川では、レスキュー要員も少なく、絶対に沈はできないとの覚悟で下っていたけれど、今日はカヤックのベテランメンバーが揃っているので、安心して沈できそうだ。

水面が川霧で霞むその他に、釧路から駆け付けたよしひろさんご夫婦がゲストとして初参加である。
カナディアンに乗り始めて2年目とのことだが、今年は毎週のように川に出かけているらしいので、増水した十勝川のラフトコースでも何とか下れるだろう。

川霧が立ち込める中、十勝川に漕ぎ出した。
放水口手前にちょっとした波の高い瀬がある。
アリーで下った時には、そこで手痛い目に遭ったことがあったが、何事もなくあっさりと通過してしまう。

そしていよいよ放水口からの水が入って、川のパワーが一気に増してくる。
流れが緩いのはこの付近だけで、そこから先はゴール手前まで息付く余裕もなく瀬が連続するのだ。
川霧が濃くなり、先の様子が良く見えないのが嫌らしい。
去年の、途中で中止になった支湧別川例会の時の恐怖を思い出してしまう。

ここを下るのは4回目だった。
下る区間も2.5キロと短い。
それなのに、川の様子を全く思い出せない。
スタート前のミーティングでは、毎回決まって「古い堰のところは右岸側を下った方が良い」とツアーリーダーからの話が出るのだが、その度に「そんな堰なんて有ったかな〜?」と頭を悩ますのである。


橋を下ってスタート   川霧で前が見えない
スタートから水はたっぷり   川霧で前の様子が見えない

二股の瀬川霧が薄くなって前方の視界が開けると、中州を挟んで川が分流しているのが見えてきた。
「ここが二股ね」とかみさん。
かみさんの方が良く覚えているみたいだ。

先を下っているメンバーは右と左に分かれる。
これまでは左側の分流を下っていた気がしたので、私がそちらに進もうとすると、かみさんが「いや、右よ」と言い始める。
どちらに入っても変わりは無さそうなので、かみさんの意見に従うことにしたが、判断が遅れた分、コース取りが乱れて、カヌーの底を擦ってしまう。

右側を下っていくと、二つの分流が再び合流する手前で、巨大な岩が流れを分けていて、その岩の左にルートをとる。
できればそのまま大岩の後ろに回り込みたかったが、かみさんに指示を出すタイミングを失してしまい、そのまま先へと下っていく。
どうも今日はかみさんとの息が微妙に合ってない気がした。

陽も射してきたこの川は、水量が増えると、大きなエディが殆ど無くなってしまうので、大勢で下る時は苦労させられる。
皆が瀬を下っている写真を撮ろうとしても、留まっていられる場所が無いし、誰かが沈して流されたとしても、レスキューできるポイントも少ないのである。

まあ、レスキューできないまま流されたとしても、最後にはダム湖に流れ着くので、それ程心配することも無い。
ただ、4年前にカヤックで沈脱して、レスキューできないままかなりの距離を流された人がいたが、できればそんな目には遭いたくない。

流れの中に岩が点在するスラロームの瀬へと入っていく。
水が多いので、岩はほとんど隠れ岩となり、その先には大きなホールができている。
大型のカナディアンならばホールに捕まることはないけれど、できれば避けて下りたい。
今日はここでもかみさんとの息が合わなかった。

十勝川ラフトコースを下る私は、流れの先にある隠れ岩を避けるため流れの中を横切るように進路を取るのだが、そうすると大きな波の中に斜めに入ってしまうことになる。
かみさんは沈を避けるため、波に対して直角に下りたがる。
しかし、そうしていると隠れ岩にまともに乗り上げることになる。
私の意図が分からないかみさんは、イラッとした表情で後ろを振り返る。

後ろの方から「そこは右だ!、ドローッ!、次は左!」と大きな声が聞こえてくる。
タンデムで下っていよしひろさん夫婦である。

何だか、昔の自分達を見ているみたいな気がした。
これだけ大声で指示を出せば、バウが迷うことはない。
積極的に瀬を攻めるまさひろさん夫婦たまに間違った指示を出して、それが原因で沈をしたとしても、後で「あれは貴方のせいよ!」と責められるだけの話である。
やっぱり、声を出してお互いの意思疎通を図るのがタンデムで川を下る時の基本なのだろう。
あうんの呼吸でパドリングができるほど夫婦タンデムカヌーは簡単ではないと、若い夫婦パドラーに教えられた気がした。

スラロームの瀬でかなり水を汲んでしまったので、着岸できそうな場所を探して上陸する。
こんな時もエディの少なさに苦労させられる。
岩の後ろにできた小さなエディに入ることはできても、そこではベイラーで水をくみ出す程度しかできない。
水が沢山入ってしまった時は、岸に寄せてカヌーをひっくり返すしかないのである。

岸で水抜きをして再び漕ぎ始める。
前方に、大きな白波が見えてきた。
流れが一ヶ所に集まり、その真ん中に巨大な三角波が立っている。
最近は、増水した鵡川、増水した歴舟川を連続して下り、絶対に沈したくないとの意識の元で徹底してチキンルートばかり下っていた。
微妙に波の頂点を避けるそれが今日は、レスキュー要員には事欠かず、ドライスーツに身を固めているので、殊更に沈から逃げる必要もない。
しかし、鵡川と歴舟川でチキン魂が染み付いてしまったようで、微妙に波を避けながらルートを取っている自分がいた。
それに比べて、まさひろさん夫婦は何のためらいもなく波の頂点を潰しながら下っていた。
そんな姿を見せられ、自分達が恥ずかしく思えてくる。

川の流れも速く、途中で遊べるような場所も少なく、事件も起こらなかったので、あっという間にゴール地点の河原まで下ってきてしまった。
あっさりと終わり過ぎて、もう一度下ろうとの話が直ぐにまとまった。
その前に、まずは腹ごしらえである。
いつの間にか青空が広がり、陽射しを浴びながら河原で食べるおにぎりはとても美味しい。


十勝川屈足   十勝川屈足
川霧で幻想的な雰囲気に   晴れてきたけど川霧は消えない

1本目終了
1本目を下り終える頃には青空も広がった

2本目は、川霧も消え、川の様子も覚えたので、1本目よりは気楽に下れる。
それでも、下っている途中に水を汲んでしまうことに変わりはなく、カヌーの水抜きに苦労させられるのには変わりない。
波の頂点を潰す1本目には逃げていた大波も、今度はそのど真ん中を下っていく。
私はあまり気が付かなかったけれど、1本目よりは水量が減っていて三角波も小さくなっていたらしい。
ここから上流にはダムや発電所が連なっているので、降雨量よりもそこからの放水量によって川の水位が左右されるみたいだ。
波が小さくなったとはいえ、かみさんは頭の上から水を被って髪の毛までびしょ濡れになっていた。

2本目を下り終える頃にはポツポツと雨粒も落ちてきていた。
今日は朝から不安定な天気が続いていたけれど、川を下っている間だけは比較的良い天気でいてくれて、快適な川下りを楽しめたのである。
できれば、もう少し水が少ない方が、この十勝川のラフトコースをもっと楽しめた気がする。

2014年8月23日 曇り時々晴れ


十勝川屈足   十勝川屈足
青空が出ると川の雰囲気も変わって見える   ようやく川霧も消えた

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