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トナシベツ川

(羽沢橋〜五月橋)

2週間前に突然話が出てきたトナシベツ川の川下り。
O橋さんから、「現在のトナシベツは2年前に下った時と同じ天国のような川になっているはず」との全く根拠のない情報。
コバルトブルーに染まったトナシベツ川を、ウヒョウヒョと歓声を上げながら下りましょうとの話である。

澄んだ水の流れるトナシベツ川それから2週間、6月としては記録的な長雨が続き、川の水が増えすぎないかとの心配も出てくる。
2年前の再現を期待して出かけた去年のトナシベツ川では、増水のため手痛い目に遭っていたのだ。

ところが、スタート地点へ向かう途中、橋の上から見下ろすトナシベツ川は、そんな心配もよそに澄んだ水が穏やかに流れていた。
普通ならば、嬉しくなる様な風景なのに、トナシベツブルーとスリリングな瀬を期待して集まってきたメンバーは皆、不満げな表情を浮かべるのであった。

スタート地点の羽沢橋に到着し、急な崖をロープを使って河原までカヌーを下す。
でかいカナディアンを下まで降ろすのは、毎度のことながら一苦労である。


川原まで舟を降ろす   羽沢橋
川原までカヌーを降ろすのが一仕事   この高さをカヌーを降ろさなければならないのだ

今回集まったメンバーは13名。
今年はなぜか、参加者の多い川下りが続いている。
ガンネルズからI垣さんとleo君がゲスト参加。
カヌーに乗せられたハチそのI垣さんが連れてきた愛犬の秋田犬ハチを我が家のカヌーに乗せて下ることになった。
我が家の愛犬フウマが死んで以来、カヌーに犬を乗せて下るのは久しぶりである。

それは良いのだけれど、ハチはある問題を抱えていた。
去年、尻別川で沈をして溺れかけたことがトラウマとなり、カヌーに乗るのが嫌いになってしまったらしいのだ。
秋田犬らしくくるりと巻いた尻尾が、ライフジャケットを着せられただけで、だらりと下がってしまうほどである。
そんなハチなので、ここでもう一回沈でもしたら、2度とカヌーに乗れなくなってしまうかもしれない。

カヌーに乗せられたハチは気の毒なくらいに緊張していた。
尻尾は力なく垂れたまま。四足は、それとは逆に、力が入り過ぎるくらいに踏ん張っている。
体重30キロを超える大型犬。
怯えるハチそんな犬にカヌーの中で騒がれたら、川下りどころではなくなる。
leo君がハチを乗せてダッキーで瀬を下った時、怯えたハチがleo君に抱きついてきたこともあったらしい。

そんな心配をしていたけれど、瀬の中に入ってもハチは大人しくしていてくれた。
大人しくと言うよりも、緊張で固まっていると言った方が正確かもしれない。

そんなハチを乗せた私達も、緊張しながらのパドリングとなる。
まるで、3歳になった我が子を初めてカヌーに乗せて川を下っている気分だった。
絶対に沈はできない。
しかも、下っているのが一般向けのカヌーフィールドとは決して言うことができないトナシベツ川である。


トナシベツ川の瀬を下る   トナシベツ川の瀬を下る
瀬に背を向けるハチ   この写真は余裕が出てきた頃かな?

去年は増水したトナシベツ川で、波から逃げながら、ひたすらチキンルートを下っていた。
今回は必死になって岩を避けながら下らなければならない。
エメラルドグリーンに染まる瀞場水が増えると瀬が延々と続くトナシベツ川だが、今日の水量だと瀬の先は必ず瀞場になっていた。
その瀞場がエメラルドグリーンに染まり、とても美しい。

トナシベツブルーを期待してきたけれど、このトナシベツグリーンもまた素晴らしい。
周りの山は新緑を過ぎて、夏の濃い緑へと変わりつつある。
上空には2週間ぶりの青空が広がってきている。
今日は最高の川下りを楽しめそうだ。
しかし、楽しんでいるのは人間だけで、ハチの緊張は解けそうにない
瀬を見るのも嫌なのか、途中からはカヌーの中で後ろ向きになってしまう。

以前は倒木が絡んでいた岩大岩が流れの中に点在している所があった。去年下った時は、これらの岩は全て水中に隠れていたはずである。

岩壁に流れがぶつかり沈脱者が続発した場所では、その岩壁を避けるような流れになっていた。

その下流の、岩の間に倒木の絡んだ難所も、倒木が無くなって岩の間を通り抜けることができた。

だからと言って、どれも簡単に下れるような瀬ではない。
必死のパドリングが続く。

水の少ないトナシベツ川は、ヌビナイ川と雰囲気がとても良く似ている気がする。
川の傾斜はヌビナイ川が0.75%、トナシベツ川が0.9%で、トナシベツ川の方がややきつい。
それとトナシベツ川は尖った岩が多いようだ。
カヌーの底をギーッと擦る嫌な音を何度も耳にした。
ヌビナイ川はアリーでも下れたけれど、トナシベツ川をアリーで下ったら、びりびりに引き裂かれてしまうのは間違いない。


トナシベツグリーン
この色をトナシベツグリーンと呼ぶことにした

昼の休憩途中の川原で休憩をとる。
やっと陸に上がれたハチはホッとした様子だ。
かみさんからザンギを少しだけ食べさせてもらうと、それをきっかけにおねだり犬となって、何か食べている人に近づいていくようになる。
ようやく犬らしい表情を取り戻したハチである。

忠犬ハチ公の映画を見て感動したと言う外国人に最初に飼われ、その飼い主が帰国することとなってI垣さんが引き取ったらしい。
そんなこともあったからなのか、かみさんに言わせると犬らしい感情が表にあらわれないハチなのである。
そんな事情を抱えた犬がいきなり川に連れてこられて、おまけに沈して溺れかけたら、カヌー嫌いになるのも無理はないかもしれない。

川原から動こうとしないハチ休憩が終わり再び川下りの準備をしていても、川原に伏せたままで立ち上がろうとしないハチが、皆の笑いを誘う。
しかし、後半戦の川下りが始まって、少しだけハチの様子に変化がみられてきた。
相変わらず尻尾は下がったままだけれど、今までは川から目をそむけるようにしていたのが、自分から川の様子を見るようになってきたのである。
そして時々、鼻を上に向けて空気の匂いを嗅ぐ仕草をみせる。
自分の乗っている舟が安全であると思い始めたのかもしれない。
私達の操船を信頼してもらえたような気がして、こちらも嬉しくなる。


流れを見るハチ   流れを見るハチ
自分から流れの様子を見るようになってきた   落ち着きも感じるようになったハチ

倒木を避ける倒木が川を完全に塞いでいる所があった。
カヤックはそのまま通過できたけれど、カナディアンではギリギリの高さである。
川が増水して流れが速くなっている時、目の前に突然こんな倒木が現れたらパニックに陥りそうだ。
幸いなことに流れも緩やかだったので、私だけがカヌーから降りて、後ろからカヌーを保持しながら倒木の下を潜り抜ける。

ハチが怖がるかと思ったが落ち着いた様子だ。
ちょっとした冒険を楽しんでいるようにも見える。

渓谷を抜けると急に空が広くなった気がする
青い空に白い雲が浮かぶ様子は、2週間ぶりに見る光景で、やけに新鮮だった。

夏の空が広がる渓谷を抜けても相変わらず瀬は続く。
ここまで来て、ハチは完全に恐怖感を拭い去ることができたようだ。
かみさんの肩越しに自分から川の様子を確かめている。

瀬に突入すると、しっかりと足を踏ん張ってバランスをとる。
瀬を過ぎれば足の力を抜き、リラックスした様子で周りの風景や自然の匂いを確かめる。
もう完全なカヌー犬と言っても良いくらいだ。



緑が眩しいトナシベツ川
山の緑が目に眩しい

トナシベツ川の美しい流れ
息を呑む程に美しいトナシベツ川の流れ

トナシベツ川第一号橋   木製欄干の橋
美しい橋だ   こちらは欄干が木製の橋

100mを越える絶壁岩根橋の下の瀬を過ぎると、金山ダムに水を取られてしまい、情けない姿の空知川本流に合流する。
高さ100mを超えるような切り立った崖の風景に圧倒されながら下っていくと、その先に金山ダムの放水口がある。
そこからは大量の水が放水されていて、一気に川のパワーが増す。

パドルを握る手にも思わず力が入るが、そのすぐ先で堰堤による静水域となる。
それまで常に聞こえ続けていた瀬の音が急に聞こえなくなり、静寂の世界となる。
トナシベツ川を下る時、この変化が何時も印象的である。

ゴールは近いハチもゴールが近いことが分かっているのか、カヌーの中でしきりに足踏みするような仕草を見せていた。
そして五月橋の下で上陸。
崩れやすい急な法面を、皆で協力しながら1艇ずつカヌーを引き上げる。
トナシベツ川を下る時は、スタートもゴールもカヌーの上げ下ろしに苦労するのが難点でもある。

カヌーから降りたハチは、長い時間をかけてシッコをしていた。
そういえば、昼の休憩をした河原でもシッコをしていなかった筈である。
緊張のあまり、それも忘れていたかもしれない。
カヌーの中で足踏みをしていたのは、必死になってシッコを我慢する仕草だったようである。

その後、車を回収しにいっている間、ハチは死んだように眠っていたとのことである。
川を下っている間、一度も座ることなくずーっと立ちっぱなしでいたので、相当に疲れたのだろう。
そんなハチが、夢の中で楽しく川を下ってくれていたならば、私達夫婦も嬉しい限りだ。

2014年6月21日 晴れ時々曇り

ハチの川下り記録動画へ  


鉄道遺構   五月橋の下で上陸
昔はここを鉄道が通っていたらしい   五月橋の下は上陸するのに一苦労だ

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