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鵡川

(ニニウ〜福山大橋)

カヌークラブの5月例会二日目は鵡川を下る。
当初は鵡川の占冠から上流部を下ることになっていたが、水が少ないため前日になってニニウから福山までの区間を下ることに変更になった。
ニニウから福山までは、川沿いにの道が土砂崩れで通行止めになったままなので、この間を移動するためにはかなり遠回りしなければならない。
そのために、ゴール地点に車を置くグループと、今日の集合場所に集まってからスタート地点へと向かうグループの二つに分かれ、宿泊場所の日高青少年自然の家を出発する。
スタート地点に考えていたキャンプ場近くの場所は牧草畑になっていて、そこに沢山の車を停めるわけにはいかない。

スタート地点の川原ゴール地点に車を回しに行ったグループも戻ってきたので、一緒に上流の川原に移動することにした。
川原へ降りる道は状態が悪くて、車高の低い車で侵入するのには覚悟が必要となる。
幸い、会長のアウディと前会長のベンツはゴール地点に回してあるので、問題はなかった。
もしも、その車をこちらに持ってきていたとしたら、ここでは泣いてもらうしかないだろう。
そもそも、そんな車にカヌーを乗せて走っていること自体、間違っているのである。

参加者は22名21艇と、顔ぶれは何人か入れ替わっているけれど昨日の沙流川と同じ人数となった。
昨日の沙流川とは打って変わって、空は晴れ上がり気温も高く、これ以上は望めないような川下り日和である。
水が少なくて上流部の川下りは中止になったけれど、この付近ではそんなに渇水している様子はない。
瀬も穏やかで、のんびりと新緑の風景を眺めながら下るにはちょうど良い水量である。


  鵡川の川下り
川下りがスタート   ザラ瀬で遊ぶ


高速道路の橋を通り過ぎると正面に崩れた崖が迫ってくる。
高速道路の工事が始まる前、ニニウのキャンプ場に来るためには、その崖の中腹を削って作った道路を走ってきたものである。
昔はここに道が有った以前は、その道を維持するために、人間と自然の闘いが長い間繰り広げられてきたのであろう。
現在は、人間側の一方的な試合放棄により、崩れた土砂によってその大部分が埋まってしまい、闘いの歴史も忘れ去られようとしている。

ニニウキャンプ場は6月7日(土)からオープンするらしい。
すぐ隣を通る高速道路は、キャンプ場にどれくらいの影響を与えているのだろう。
その存在さえ忘れてしまえば、周囲は一級品ともいえる自然に囲まれているのだから、今までと変わりなく快適なキャンプを楽しめるかもしれない。
何せ、今回スタート地点に使った川原に降りていく道の真ん中には、数日前のものと思われるクマの糞が転がっていたくらいの場所なのである。

キャンプ場のある場所をぐるりと回って、再び高速道路の下を通過する。
ここまで瀬と言うほどの瀬も現れず、いたって穏やかな川下りが続いている。
ボルダリングを楽しむ若者達鵡川がそれで済ませてくれるわけがないことは分かっているが、一体どの辺りからその本性を現してくるかが、いまいち思い出せない。
この区間を下るのは3回目で、最近は3年前に下ったばかりなのに、最近は物忘れが激しく、川の記憶もその例外ではない。

川岸の所々に巨大な岩が目立つようになってきた。
その岩を通り過ぎると、その陰で若者たちが焚き火をしていたのでビックリした。
そこでボルダリングを楽しんでいたようだが、まさかそんな場所に人がいるなんて思いもよらなかった。
それは彼らも同じで、突然川の上にカヌーが現れたのでかなり驚いていたようだ。

正面に巨大な岩が見えてきたので、いよいよ核心部が始まるのかと身構えたが、その付近は流れも殆どなく、ゆっくりとその大岩を見物することができた。
ウドを見つけて崖によじ登る人もいて、相変わらず穏やかな川下りが続いていた。

鵡川の巨大岩
ど迫力の巨岩、この岩の上から飛び込むこともできる

Y田さんが先頭を行き、私達がその後に続く。
Y田さんは、水鳥との出会いなどもあり、ツアーの先頭で下る方が好きらしい。
私達も、先の様子が分からない時を除けば、先頭で下る方が好きなのである。
ただ、先頭でばかり下っていると、誰からも写真を撮ってもらえないという欠点もあるのだ。

先の方にちょっとした瀬が見えてきて、山田さんが「下見した方が良いですかね〜」と聞いてきた。
バク転の瀬上から見た限りではそれ程難しい瀬にも見えなかったので「行っちゃいましょう」と答えた。
瀬のすぐ横に釣り人もいたので、あまり邪魔をしたくなかったこともあったのだ。

ところが、その瀬がなかなか手ごわく、途中でカヌーをコントロールできずに岩に乗り上げてしまった。
それでも何とか瀬の下まで降りてきて「これは下見をした方が良かったのかな」と後ろを振り返る。
しかし、時すでに遅し。そこでは沈脱祭りが繰り広げられていたのである。
詳細は良く覚えていないが4艇くらい沈したようである。
横にいた釣り人も、次々と目の前の人が流れていくものだから、唖然として見ていたようだ。

誰が名付けたのかは知らないが、そこはバク転の瀬とも呼ばれていたらしい。
もう少し水が多いと、カヤックはバク転するようにひっくり返るとのことである。

流木の山からパドルを回収沈脱者も出たことで、そこから少し下ったところで昼の休憩をとる。
休憩した場所の隣では、岩の上に大量の流木が堆積していた。
Y田さんとmarioさんが、その中に埋もれていたパドルを回収。
ラフトの貸し出し用パドルだと思われ、それぞれラフト業者のイニシャルが記されている。

私が現在使っているパドルはカーボン製のシングルパドルで、marioさんが何処かの川で拾ったのを譲ってもらったものである。
それと比べると、ラフト用の貸し出しパドルなんて、誰も欲しがりはしない。
しかし、そのまま捨てれば再びゴミになってしまうので、しょうがなく私のカナディアンに2本のパドルを積み込んだ。
結局このパドルは、ラフト業者に知り合いのいる人がそこまで届けて、そのお礼にTシャツを貰ったそうである。
ゴミの回収は無駄にはならなかった。


休憩した川原   新緑の鵡川
休憩した川原から再スタート   新緑の美しい鵡川

スカウティングしてくれるY田さん休憩後、いよいよ鵡川の核心部へと入っていく。
先に下っていたY田さんが、岸に上がって、下るルートを指示してくれていた。
それ程難しい流れの場所ではなかったけれど、こうしてスカウティングしてくれる人がいると安心して下ることができる。
でもこれはY田さんがいてくれるおかげであって、Y田さんがいない時は、大体がイケイケで下ってしまうことが殆どである。
勿論、本当の危険個所がある時は先頭を下っている人から何らかの指示が出るが、これくらいの瀬ならば多分、各自がその場でどのルートを下るか判断することになるのだろう。

 


鵡川核心部入口
いよいよこの辺りから鵡川の核心部となる

今回は水が少ない分、流れにもパワーが無いので、倒木のストレーナーを除けば大した危険個所もなさそうだ。
前方には赤茶けた山肌が剥き出しとなった荒々しい風景が広がっていた。
荒々しい風景が行く手に広がるそこから転がり落ちてきたと思われる巨大な岩が、川の中に迷路を作っている。
通り抜けられる場所も限られているので、一列縦隊で下らなければならない。

途中で沈脱したメンバーがカヤックに乗り込むのを待っていたので、いつの間にか最後尾の方になっていた。
先頭は何処まで下って行ったのかも分からない。
岩だらけで見通しもきかず、前後数名の姿しか見えないのである。
下るルートは自分で判断するしかない。

目の前の岩だけではなく、その先の先の岩まで見ながら、どのルートを下るかを頭の中に思い描く。
基本的には私が指示を出すが、突然の隠れ岩など、とっさの判断はかみさんに任せるしかない。
鵡川を下る忙しいパドリングが続くが、これはカナディアンで川を下る時の楽しみの一つでもある。
でかいカナディアンを操って上手く下れた時の快感は、小さなカヤックでは味わえないものだ。

水の少ない時にこの区間を下ると、一か所だけカナディアンでは通過できない場所があった筈である。
私が唯一心配していたのが、その場所だった。
でも、そこでカヌーを引っかけたのは6年前に私一人で下った時で、3年前にかみさんとタンデムで下った時はどうだったのか、記憶は全くあやふやである。

岩だらけの流れはまだまだ続き、相変わらずの一列縦隊で下るしかない。
忙しく岩避けしながら下っていくと、前方でカナディアンが岩に張り付いているのが見えた。kenjiさんの舟である。
それをIW田さんが、川の中を歩いて救出しに行こうとしていた。
このまま下っていくと、その現場にまともに突っ込んで二重衝突事故になるところだったので、慌てて直前で下るルートを変更する。

岩に張り付いたカヌーを二人がかりで外す張り付き方が弱かったので、IW田さんとI山さんの捨て身のボディアタックで、何とか岩から引き剥がすことができた。
それでもカヌーの底には少しだけしわができたみたいだ。

途中で誰かが沈したようだが、後ろにもまだ人がいるので構わずに下り続ける。
ようやく前を下っている人達の姿が見えてきた。
またY田さんが岩の上に立って下るルートを指示してくれていた。
「カナディアンはこっち!」
「えっ?こっちってどっち?」
指示が良く聞き取れないので、直ぐに自分の判断に切り替えて下るルートを決める。
ここも特に問題なくクリア。

ガンちゃん待ちそこで全員が揃うの待つことにしたが、数艇がなかなか下ってこない。
上流まで様子を見に行った人の報告では、ガンちゃんがパドルを無くしてそれを捜索中とのこと。
ちょっと心配だけど、今日の水量ならパドルも直ぐに見つかる筈なので、ここでしばらく待つことにした。
やがて、そのガンちゃんが無事にパドルを見つけて下って来ると、「ガンちゃん頑張れ」の声援が飛んだ。

天気は良いのだけれど、次第に向かい風が強くなってきた。
こうなるとkenjiさん、姫さんのカナディアンソロ艇は大変である。
私がソロで下った時も、その向かい風に散々苦しめられたことがあるので、二人の大変さが良く分かるのである。


鵡川を下る   鵡川を下る
皆から声援を受けて下るガンちゃん   水の流れは最高に美しい

ゴールは近いが延々と岩だらけの瀬が続くが、心配していた場所にはついに遭遇せずに終わった。

流れが次第に緩やかになりゴールの福山大橋が見えてきた。
その手前に最後の難所が待ち構えている。
ちょっとした落ち込みがあるだけなのだが、過去にはここで何度も沈脱祭りが繰り広げられていたのである。

数名が先に下ったけれど沈している様子はない。つづいて我が家も下る。
2段になって落ちていて、その2段目を降りたところで舟が大きく傾く。
一瞬ダメかと思ったが、何とか体制を立て直すことができた。
これは今年もお祭りになりそうだと、直ぐに岸に上がってカメラを構えたが、後続メンバーは何事もなくその落ち込みを下ってきた。
結局、そこで沈したのはカヤック1艇だけという結果で終わり、自分たちが沈しなかったことでほっと胸をなでおろしたのである。


危機一髪   ドッキリの瀬
かなり危なかった   皆は平然と下ってくる

ゴール地点からの車の回送がまた一苦労で、1時間近くかかってしまう。
二日間に渡って川で目一杯遊び、体は疲労の極致に達していたけれど、頭上に広がる真っ青な青空と同じく、心の中は晴れわたっていた。
ハードな川を下り終えた後の充実感はまた格別である。
最後の力を振り絞って札幌まで車を走らせた。

2014年5月25日 晴れ 
当日12:00鵡川水位(福山観測所) 168.52m 


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川下り後
下り終えた余韻にひたる