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当別川

(西野沢川下流〜開運橋)

N島先輩がカヌークラブの掲示板に、「週末に厚田川でも下りませんか?」との書き込みをしていた。
週間予報をみると、週末の天気も良さそうなので、我が家も参加しますと名乗り出る。
他に手を挙げたのはM上筋肉君とタケさん。 
しかし、週間予報は次第に悪い方へと変わってきて、しかも気温もかなり低くなりそうだ。
それに合わせて私のテンションも下がってきて、どうせなら中止になってくれないかな〜と思い始める。
そんな状況になってもM上筋肉君は、まるで遠足を翌日に控えた小学生の様に一人で張り切っていた。
今更「止めます」とも言えずに、川下り当日を迎える。

スタート地点下る川は当別川に変更になっていた。
集合場所の道民の森案内所に着いて車から降りた瞬間、寒さで体が震えあがる。
それでも、この日は曇りのち雨の予報だったのに上空には青空も広がり、それがまだ救いだった。

今回の川下りの言い出しっぺでもあるN島さんも、本音は川下りを中止にしたかったようである。
でも、筋肉君の張り切り様を見ていると、止めるとは言い出せなかったのだろう。

その、一番張り切っていた筋肉君が集合場所を間違えて到着が大きく遅れ、川を下り始める時には既に11時半近くになっていた。
上空に広がっていた青空も、その頃には次第に雲に隠されつつあった。

遠くに見える山は既に冠雪川から見える神居尻山は薄く冠雪している。
水も強烈に冷たい。
気温は5度くらいだろうか。
北海道のカヌーシーズンはもうとっくに終わりを迎えていた。
こんな時に川を下っている私達は、ただの物好きの集まりとしか言えない。

それでも今回、私には密かな楽しみがあった。
今年の5月の例会でここを下った時、クジラの化石らしきものが川岸の露頭に埋まっているの見つけていた。
先週末にその化石を掘り出しにやってきたのだが、川の水が多くてそこまで近づくことができずに化石採取は断念していたのである。
それが今回、N島さんが当別川を下ることにしてくれたおかげで、再びチャンスが巡ってきたのだ。

化石に詳しい方から、当別川のこの付近でも化石が結構採れると聞いていたので、それらしい露頭が出てくる度にそこに目がいってしまう。


露頭に目がいく   露頭に目がいく
そこら中に化石が埋まっているように見えてしまう   露頭のあちらこちらにノジュールらしきものが

水もたっぷりの当別川当別川は春の雪解け時期以外は水が少なくて下ることができないと聞いていたけれど、今回は水も十分にあって快適に下ることができる。
今年の秋は雨が多かったので、その影響もあるのかもしれない。

水は若干濁り気味だ。
ここの上流にあるのは道民の森と青山ダムくらいなので、水の濁りは青山ダムのせいだと考えて間違いは無いだろう。

その濁りのおかげで水中の隠れ岩も見づらく、その餌食になったN島さんが冷たい水の中で泳ぐことになる。
ドライスーツの下にはダウンも着込んでいたけれど、N島さんの泳ぐ姿を見てこちらまでブルッと震えてしまった。


M上筋肉君   タケさん
M上筋肉君   タケさん
N島先輩   N島先輩素沈
N島先輩   N島先輩岩沈?

川を塞ぐ流木ほとんど下る人のいない川なので、先に何が待ち受けているかは全く分からない。
倒れ掛かった樹木が川を覆っていたり、流木が川を完全に塞いでいる様な場所もある。
それでも、流れがそれ程早くないので、注意しながら隙間を通り抜けたり、ポーテージが必要な場所でも余裕を持って対応できる。

川岸の樹木にカラスが数匹とまっていた。
何かありそうだなと思いながら近づいていくと、葦原の陰からカラスの群れが一斉に飛び立った。
その横を通り過ぎる時、葦原の中に横たわった大型動物らしき姿がチラッと見えた。
自然の厳しさを感じさせられる。

横向きに瀬に入った筋肉君川の流れは穏やかで、緊張するような瀬は全くない。
たまにサーフィンができそうな場所もあって、筋肉君がチャレンジする。
しかし、横向きに波の中に入ってしまって、あえなく沈。

他のメンバーがドライスーツを着ている中で、筋肉君は一人だけウェットスーツである。
以前は、そのウェットスーツで冬の海でサーフィンを楽しんでいたとのことで、それを思えば今日程度の寒さは問題外なのだろう。
本人は「結構暖かいんですよ!」と言っているけれど、見ている周りの方が寒くなってしまう。

沈してから舟を起こす筋肉君それにしても、筋肉君の沈してから素早くカヌーを起こし、そこにパドルを入れ、カヌーを引っ張りながら岸に向かって力強く泳いでいく、その一連の無駄のない動きは、何年もカヌーに乗っている人間でも簡単には真似のできないものである。
この一年、数回程度の数少ない川下り経験の中で数え切れない程の沈を繰り返したM上筋肉君が、身体を張って会得した究極の技と言っても良いかもしれない。

今年の5月に皆でアイヌネギを収穫した斜面が見えてきた。
そこは今でも草木が生えず、土が剥き出しの斜面のままだった。
今考えても、良くそこまで登ったものだと思えてしまう。
人間とは、目の前に欲しいものが現れると、それを手に入れるために信じられない程の力を発揮できる生き物なのである。
人間は、そうしたことの繰り返しにより進化してきたのだろう。

貝の化石発見そこを少し過ぎたところで、かみさんが「あっ、何か有ったわよ!」と声を上げた。
直ぐにカヌーの向きを変えて、流れに逆らって漕ぎ上がる。
そこの露頭は、他の場所とは様子が違って、ゴロゴロとした石が斜め層状に堆積していた。
かみさんがパドルで指す先を見ると、石に交じって巻貝らしきものが半分くらい露出していた。
カヌーに乗せておいたピックハンマーを振るうと、それを簡単に掘り出すことができた。

これまで、石狩の浜で2枚貝の化石を採取したことはあるけれど、こんな巻貝を見つけたのは初めてである。
エゾボラの一種で、それ程珍しいものではないらしいが、とても嬉しかった。


露頭に埋まった化石   巻き貝の化石
丸印の場所に化石が埋まっている   巻き貝化石をゲット!

すっかり気分を良くして、クジラ化石を発見したど露頭まで下ってきた。
最初にそれを見つけた時の印象がとても強かったので、直ぐにまた見つけられるだろうと思っていたが、何処にもそれらしい姿が見当たらない。

ロールの練習私がクジラ化石を探している間、N島さんと筋肉君は二人でロールの練習を始めた。
今年の十勝川の例会では、直ぐにロールができそうになってO橋会長を慌てさせた筋肉君だが、今日は全く起き上がれそうな気配もない。

見かねたN島さんがロールの見本を見せる。
N島さんは、いやいや付き合わされている感があるけれど、この水温と気温の中でロールをしている二人には呆れてしまう。

私は足が水に浸かっているだけで、その冷たさに耐えられなくなってくる。
何となく見覚えのある石を見つけたが、春の印象とは全然違っている。

これがクジラ化石?春に発見した時は、如何にも骨らしい外観だったのだが、今見ている石は苔に覆われていて、とても同じものとは思えない。
ピックハンマーの先を岩盤との境目に打ち込んでみると、まるでロールケーキの様にその端の部分が割れて落ちた来たので、それを持ち帰ることにした。

時間も午後2時近くになっていたので、途中の川原で休憩する。
休憩と言っても、気温が低いので川原でのんびりと座り込んでいてはあっという間に体が冷えきってしまう。
立ったままでおにぎりなどを食べて、直ぐにまた下り始める。

道道に架かる青山奥橋の下流にある堰堤が一番の難所である。
春はここをポーテージしていたが、今回は堰堤の開口部から通過できそうである。
まずは堰堤の上から下見をする。
堰堤の下見かみさんは何時もの様に、そこを見た瞬間に「絶対無理、こんなところ下れるわけがない!」と言いはじめる。
どうせ最後には下るのだから、こちらは「そんな事言ってる間に、もっと流れを観察しろ!」と言いたくなる。

最初にN島さんが下って、それを見て、かみさんもようやく素直に下る気になったようだ。
開口部に引っ掛かっている流木がちょっと気になるけれど、それさえかわせば後はほとんど問題なく下ることができる。
最後のちょっとした落ち込みでカヌーの底を擦り、バランスを崩す程度だ。

次にタケさんが下ったタケさんは堰堤を通過した後にカヌーが後ろ向きになり、そのまま落ち込みをクリア。

筋肉君は堰堤を終えた後に、頭上でパドルを回すパフォーマンスを披露して皆の笑いを誘う。
そして最後の落ち込みでは、明らかに故意と思われる沈まで披露してくれた。
こんなところでわざと沈する人間なんて、私はこれまで見たことが無い。
カヌーで川を下るのも、沈をするのも、兎に角なんでも楽しくてしょうがない筋肉君なのである。


後ろ向きに下るタケさん   パドルを回す筋肉君
後ろ向きになっても余裕のタケさん   パドルを回す余裕の筋肉君

そこを過ぎれば、ゴールの開運橋までは残りわずか。
そんなイメージがあったけれど、なかなか開運橋が見えてこない。
この青山奥橋から開運橋までの間は、それまでの区間と比べると瀬も多くなる。
遊べそうなところもあったけれど、今は少しでも早くゴールに着いて暖かい車の中に入りたい気分だった。

おまけに、下っている途中で痛くなり始めた腰の状態が更に悪化してきていた。
2週間前に腰を痛めて、ようやくそれが完治しそうになっていたのに、再び痛めてしまったようだ。
日は既に西に傾いている後で分かったのだが、去年の11月に厚田川を下った時も途中から腰が痛くなっていたのである。
どうも寒い季節にカヌーに乗るのは腰にはあまり良くないようである。

日もかなり傾き、余計に寒さを感じてくる。
今の季節は本当に日が短く、晴れている時でも暖かく過ごせるのはせいぜい午後2時頃までである。

ようやくゴールにたどり着いた時は既に午後3時を過ぎていた。
真冬の1月に釧路川を下った時よりも、今回の方が寒さが身に染みた気がする。

それでもやっぱり川下りは楽しい。
初めての巻貝化石もゲットするおまけまで付いて、心置きなく今シーズンのカヌーを締めることができたのである。

ちなみに、5月に発見したクジラ化石は、今回持ち帰ったロールケーキ状の石と同じものであることが、その時の写真と見比べて判明した。(詳細はこちら
そしてそれは、クジラの化石ではなく、ただの石ころの可能性が高そうだった。
でも、割口の複雑な構造は、何らかの由来がありそうな石にも見える。
我が家の石コレクションの一つに仲間入りすることとなった。

家に戻ってきて、カヌーを車から降ろしカヌー置き場まで運んでいく作業が痛めた腰にとどめを刺したようで、この後数日間、立ち上がるのにも不自由する生活を強いられることとなったのである。

2013年11月9日 晴れのち曇り
当日12:00 当別川水位 当別川樺戸観測所 8.15m


当別川の風景
当別川にはこんな露頭が多い

当別川の風景
瀬で遊ぶ人、化石を探す人

当別川の風景
初冬の当別川の風景

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