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額平川

(幌見橋〜堰堤下流)

カヌークラブ例会2日目は額平川を下る。
午前9時半、集合場所の二風谷アイヌ文化博物館前の駐車場に集まったのは27名、車は23台である。
川下りのスタート地点、ゴール地点はどちらも駐車スペースが狭いので、なるべくたくさんゴール地点に車を置くことにする。
ゴール地点に車を置く人は他の車に舟やパドルを乗せなければならず、主にカヤックのメンバーを中心に10台を決める。
そして車を置いた後、その運転手を乗せてスタート地点へと向かう車4台を決めてそれらを一つのグループとする。
残りは直接スタート地点へ向かうグループで、二手に分かれて駐車場を出発した。

スタート地点に無事集合これだけ人間や車の数が多くなると、自分の役割をよく理解していない人も出てくるし、それにスタートやゴール地点の場所を知っている人も限られ、集合場所の駐車場からスタート地点までは30キロ以上も離れている。
果たして全員が無事にスタート地点に集合できるのか、とっても不安だった。

しかし、奇跡的に何のトラブルも無く、全員がスタート地点に集まった。
集合写真を撮って川を下り始めた時には既に11時を過ぎていた。
これだけスームーズに進んだのに、スタートがこんな時間になってしまうくらい、額平川を下るのは結構大変なことなのである。
そして下る距離も、クラブの一般的な例会よりは2倍近く長い18キロ。大人数で下ると、それだけ時間もかかってしまうので、果たして今日は何時に川下りを終えて帰ることができるのか、とっても不安だった。

水は少し濁り気味川の水は、私が過去2回下った時と比べると、今回が一番多いかもしれない。
4日前に雨が降って少し増水し、その後は順調に水位も下がってきているはずなのに、水の濁りは取れていなかった。
それでも茶色ではなく白い濁りなので、まだ我慢できる。
同じ日高山脈を源流としている川なのに、昨日下った沙流川と比べると、額平川は本当に濁りやすい川であることが実感できる。

スタートして直ぐに、ちょっとだけ波の高くなっている瀬がある。
ゲストで参加しているI山さんの会社のF川君とその彼女は年に1回くらいしか川を下らず、多分今日が今シーズン初めての川下りのはずだ。
それがいきなりこの瀬では、少しビビったかもしれない。

岩がらみの瀬水量が多いので、その後もそれなりの瀬が続き、退屈しないで下ることができる。
今回下る区間で、唯一の岩の絡んだ瀬がある。
カヌーから降りて近くの岩の上から写真を撮ろうとしていたら、M上君が沈したままそこを流されてきた。
彼はこの後も、サーフィンにチャレンジして3回連続で沈したりとか、結構泳いでいたようである。
何せ、前職が海関係の職場だったので、体力は有り余り、冷たい水の中を泳ぐことも全く苦にしない。
彼にとって、沈する、しないは、些細なことでしかないのだろう。
カヌーで遊んでいられるのが楽しくてしょうがないと言った風情なのである。


沈   岩がらみの瀬
沈も楽しむM上君   I山さんの後に付いて下るF川君の彼女

額平川の工事現場やがて、平取ダム関連の工事現場が見えてきた。
8月にここを下った時は、ダムに水没する区域の伐採でもやっているのかと思ったが、どうやら橋梁を新設する工事らしい。
前回は見かけなかったクレーン車も加わり、工事も本格化している様子だ。
そして川の方にも、仮橋を架けるためためなのか、両岸に鋼矢板が打ち込まれている箇所もあって、これからは川を下るのにも支障が出てきそうである。

そんな人工物ばかりでなく、工事現場の手前には倒木が両岸に引っ掛かっているところがあり、その狭くなった真ん中をかろうじて通り抜けることができた。
でも、こんな自然の障害物ならば、危険ではあるけれど、心を痛めることはない。


自然の障害物   額平川の工事現場
自然の障害物ならばまだ許せる   あまりにも無粋な眺めだ

額平川の美しい風景工事現場の風景にうんざりさせられながら下っていくと、滅入った気分を一気に吹き飛ばしてくれる絶景が目の前に迫ってきた。
天高くそびえる岩峰が、そのまま川に向かって切り落ちてくる。
その荒々しい姿を、錦に彩られた木々の衣が優しく包み込む。
そこを下っている誰もが、ポカンと口を開けてその自然の造形美を仰ぎ見ていた。

12時を過ぎていたので、その岩峰の前の川原で昼の休憩となった。
前回ここを時には、「この岩は信仰対象の岩である云々」と書かれた謎の書き置きを川原で見つける事件があったが、その書き置きが無くても如何にも神が宿っていそうな岩である。

その神の宿る岩に向かって、228君が放尿していた。
何と罰当たりな行為。
でも、ここの美しい風景をダムに沈めてしまおうとしている人間達を間近で見ている神なので、そんな立小便など、笑って見逃してくれるだろう。


額平川の美しい風景
この岩峰は信仰の対象とされているようだ

平取ダムが完成すると、この辺りは全て水没してしまうことになる。
ダムの完成後は、この岩にも勝手に「○○岩」などと名前を付けて、観光地化されるのは目に見えている。
私達には、今のこの景色を目に焼き付けておくことしかできなかった。

無残な伐採現場宿主別川との合流部を過ぎた先が、ダムが作られる場所である。
そこでは、崖を覆っていた木々の一部が無残に切り払われていて、いよいよダム本体の工事も始まるようである。
こうして川下りを楽しめるのも、本当に今年限りかもしれない。
来年も下れたとしても、無残に変わっていく川の姿を見せつけられるのでは、下っていても全然楽しくはないだろう。

この川は、水が増えると分流も多くなる。
各々が勝手に選んで、その分流を下っていく。
選択を間違えても、浅瀬で苦労させられる程度で大した影響はない。

全部で25艇の大集団なので、最初のうちこそまとまって下っていたけれど、次第にばらけてくる。
特に危険な個所も無く、先頭としんがりが決まっているので、周りに舟見えなくなっても大して気にならない。

巨大な岩壁の下を下る神の宿る岩を過ぎた後も、川の間際まで切り立った崖が迫る絶景ポイントが何ヶ所かあり、その他にも印象的な風景が次々と現れる。
額平川の川下りは、次々と変わりゆく風景を楽しむ川下りでもある。

これらの風景の多くは、ダムの下流部になるので、ダム完成後もそのまま残ることになる。
しかし、川にアプローチできる部分が少ないので、下るためにはかなり苦労しそうだ。

そうして、たとえ川まで舟を降ろせたとしても、今でさえ泥川と言っても良いくらいに濁っている川なのに、大量に泥の詰まったダムからの放流水となれば、更に濁った川を下ることになる。
川原の石も泥まみれで、そこにテントを張ろうなんて気もおきないだろう。


額平川の風景   額平川の風景
こんな風景が到る処に   ただひたすら風景を眺めながら下っていく

こんな文書を書いているとますます気分が滅入ってくるが、下っている時は幸せな気分だった。
前後の間隔が開き過ぎたので、途中で後続待ちの休憩。
H川君は疲れきって立ち上げれず、川原で四つ這いになっていた。

川の中で倒れているN島さんOC-1に乗るベテランN島さんも、余程疲れているのか、浅瀬で倒れたまま這い出すように舟から下りてきた。

私は前の方を下っていたので知らないが、途中のサーフィンポイントでは昨日に引き続き、M上君が皆を笑わせてくれていたらしい。
何度となく沈を繰り返しても彼だけはまるで疲れを知らないようだ。

皆が揃ったところで再び下り始めるが、直ぐに前後の間隔が開いてしまう。
先頭を下るY田さんはほとんどノンストップで漕ぎ続けるし、後続メンバーは小さなウェーブを見つけてはそこで遊んでいるので、これでは間隔が開くのも当然である。

栗拾いから手ぶらで戻る前の方を下っていたKenjiさん夫婦と私達は、途中で栗拾いのために上陸した。
去年の同じ時期の例会で、ゴール地点にした場所にたまたま栗の木が生えていて、そこで大量の栗を拾うことができたのである。

今回の川下りでは個人的にその栗拾いも大きな目標にしていたのだが、残念ながら今年は既に拾われた後で、去年よりも実付きも悪かったようで、収穫ゼロ。
ガッカリしながらそこから少し下流のゴール地点まで下っていった。
午後2時40分頃にゴールの川原に到着。
先頭のY田さんが皆を引っ張ってくれたおかげで、結構早く下ることができた。

しかし、そこで後続メンバーの到着を待って、それから上流に停めてある車を取りに戻り、片づけを終えて、札幌に向かって戻る頃には既に辺りは薄暗く、雨粒もポツポツと落ちてきていたのである。


額平川の風景   額平川の風景
美しい川原と紅葉   滝が流れ落ちる風景も沢山見られる

実は最後にちょっとしたトラブルがあった。
ゴール地点の近くに住んでいる農家の方から、川原へと続く家の前の道をスピードを出して走っていた車がいたことに文句を言われたのである。
周りの集落の人達の間でも、私達のことが話題になっていたらしい。
確かに、住む人も少ない田舎でカヌーを積んだ20台以上の車が走り回っていたら、「一体何事だ」と不審に思われるのは間違いない。
車を停める前に一言挨拶をしておけば、相手も快く了解してくれたはずである。
川で楽しく遊ぶためには地元の方との関係も忘れてはならない。基本的なことを思い出させてくれた出来事だった。

2013年10月20日 曇り時々晴れ

額平川工事現場付近の動画 

額平川を下る   額平川を下る
水が多いと瀬も適度に楽しめる   かみさん、良いフォームです

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