トップページ > カヌー > 川下り日記

 

ヌビナイ川

(砂防ダム〜カムイコタンキャンプ場)

カヌークラブの例会としては2年ぶりに下るヌビナイ川。
手ごわい瀬が連続し、そして風景も素晴らしい。下る度に充実感を感じる私のお気に入りの川である。
しかし、問題は水量である。大きな玉石がゴロゴロしている中を水が流れているので、水量が少なければ下るのに苦労させられる。
前日の歴舟川の水位は、過去の例会で一番少なかった去年の102.14を更に下回る102.12m。
去年の例会では、歴舟川上流部を下るのに区間を短縮しても大変だったのに、このままではヌビナイ川を下るのは絶望的である。

週末3連休の天気は、全道的に3日間とも雨が降る最悪の予報である。札幌から歴舟川へと来る間もずーっと雨。
ところが、この雨が恵みの雨となり、スタート地点へ向かう途中のヌビナイ橋から見た川の様子は、問題なく下れそうな水量まで回復していた。
皆はそれで張り切り過ぎたのか、スタート地点への降り口までやってきても、気づかずにそこを通り過ぎ、林道を更に奥へと進んでいった。
霧に霞む砂防ダム後ろから付いていった私は、一瞬自分の記憶が間違っているのかと疑ったが、間違い様のない場所なので、慌てて皆の後を追いかけた。
去年は中の川で、私がスタート地点の場所を間違え皆に迷惑をかけていたけれど、まあこんなトラブルは毎度のことである。

そうしてスタート地点の川原にカヌーを降ろす。
昨日は、「水が濁らない程度に川が増水するくらいの雨が降れば良い」なんて、勝手なことを考えていたけれど、その希望通りになってくれたようだ。
何時ものエメラルドグリーンに染まった川が私達を待ってくれていた。
ポツポツと降ってくる雨も、これが今日のコンディションを整えてくれたのだと思えば、恨む気にはならない。
濃い霧が立ち込め、巨大な砂防ダムも白く霞んでいる。

集合写真参加者は18名17艇。
kenjiさん・姫さんご夫婦は、それぞれソロでのヌビナイ川チャレンジ。
クラブ入会を決めたばかりのカヌーナビのたけさんも、カナディアンのソロ。
他にガンちゃんのお友達のきむ姉がゲスト参加。
川下りは3回目だと言うけれど、何時もはスポットでグルグルと回っているらしいので、スキルはクラブのメンバーよりも優れていそうだ。
川で会うのは久しぶりの、CCに乗るK原さん。
それに何時ものOC-1組と、バラエティーに富んだ舟とメンバーの賑やかな例会となる。

集合写真を撮った後は、特に順番を決めることもなく、各々が下り始める。
人数が多い時は川の上が混みあうので、私はなるべく集団の前の方で下るようにしている。
霧が濃くて、後ろの方の様子は直ぐに見えなくなる。
山から下りてくる霧なのか、川面から立ち上る川霧なのか、多分その両方の霧が混ざり合っているのだろう。
アリー潰しの落ち込みを下る周りの木々や川の流れ、全てが乳白色のベールに包まれ、夢の世界の中を下っている気分である。

ヌビナイは何度も下っているので、どこに何があるかは大方見当がつく。
まずは「アリー潰しの落ち込み」まで下って、他のメンバーを待つことにする。
この落ち込みは、この先、快適に川を下れるかどうかの目安ともなる。
今日はそこを座礁することなく下れたので、これでもう楽しい川下りを保証されたようなものだ。

「手始めの瀬」正面衝突の瀬」「岩盤の左カーブ」と下り「集いのプール」へ。
激突の瀬は流れが微妙に変わって、以前ほど岩に激突する恐れは少なくなり、集いのプールは一部に土砂が堆積して、以前の様な大きな淵は無くなっていた。
集いのプールを後にする自然の川は常にその姿を変え、私のホームページで勝手に付けていた瀬の名前などは、既に古くなりつつあるようだ。

それまで絶え間なく聞こえていた瀬の音が、集いのプールまで下ってきたところでパタリと止んだ。
霧はさらに濃くなり、辺りは静寂に包まれる。
近くにいるカヌーの姿だけが、霧の中にぼんやりと浮かんで見えている。
この先で待ち構える沢山のハードな瀬を前にして、束の間の安らぎのひと時である。


手始めの瀬   岩盤の左カーブ
手始めの瀬   岩盤の左カーブ

霧で先が良く見えない中を、次の瀬に向かって下っていく。
今年の6月例会の支湧別川でも、同じような状況の中で川を下っていた。
ただ、支湧別川ではその霧の先に何が待ち構えているのか全く分からなかったのに比べて、ヌビナイ川では大体見当が付く分だけ、余裕があった。
やけくその瀬の下流でそれでも「やけくその瀬」「岩乗りの瀬」「やけくその瀬その2」と次々に現れる瀬に、緊張を強いられる。
それぞれの瀬に色々な思い出があり、瀬を下っている最中に、それらが次々にフラッシュバックしてくる。

久しぶりに心から楽しいと思える川下りだ。
「ヌビナイ川最高!」と叫びたくなる。
ここを初めて下るたけさんも、次々と現れる瀬と瀞場の連続に本当に楽しそうだ。
たけさんは私のホームページも良く見てくれているので「ヒデさんが、途中で吸い寄せられたって書いていた瀬は何処ですか?」などと聞いてくる。
私はこの文書を書くのでさえ、自分のホームページと現地で撮った写真とカシミールのGPSログを一生懸命に見比べ、何とか思い出している有様なので、川を下っている最中にそんなことを聞かれても分かるはずがない。
まあとにかく、同じような瀬が次から次へと現れるのである。


やけくその瀬   やけくその瀬2
やけくその瀬   やけくその瀬2

そんな瀬を全てクリアし、霧に包まれた渓石橋の渓谷へと入っていく。
ここでようやくホッと一息つけるけれど、まだ全行程の約3分の1を下ったに過ぎない。


渓石橋の渓谷
ヌビナイ川一番のビューポイント渓石橋

玉石の川原で休憩次に現れるのが「ローラー滑り台の瀬」
川の変化は激しく、ここでも滑り台の滑走面が途中で無くなり、そこに大きな落ち込みができていてヒヤッとさせられる。

ここで昼の休憩を取ることにした。
巨大な玉石がゴロゴロと転がる川原にカヌーを引き上げる。
上空を覆っていた霧が晴れると、そこには青空が広がっていた。
おまけに太陽の陽射しまで降り注いできた。
今日は雨が降っている割には気温が高く、既にドライスーツの下は汗でびしょ濡れである。そこに更に太陽の陽射しが加わると「もう勘弁してくれ〜」と嬉しい悲鳴を上げてしまう。

惨劇の瀬を下るそこから先は予想外の青空の下の川下りとなった。
幾つかの瀬を越えて、いよいよヌビナイ川の一番の難所である「惨劇の瀬」「蟻地獄ホール」へとやってきた。
でも、ここも川の形状が変わったのか、以前のようなえげつなさは無くなり、素直な瀬になっていた。

それよりも、その先にあった小さな落ち込みの方がちょっと嫌らしい形状になっていて驚かされた。
何となく事件が起きそうな予感がし、カヌーから下りてカメラを構える。
しかし、後続の皆さんは、慌てながらもその落ち込みをクリアしてしまった。

自然の川を下っていると、下る度にこの様に様子が変わり、それがまた楽しいのである。
人工物が多い川では、変わるのはせいぜい水量くらいなので、数回下れば直ぐに飽きてしまう。


蟻地獄ホール   名もない落ち込み
蟻地獄ホールも蟻地獄ではなくなった   ドキッとさせられる名もない落ち込み

キャンプ場前の川原に到着中の川、歴舟川との合流部まで下ってきた。
水量はヌビナイ川が一番多いようにも見える。

そうして、下り始めてから4時間45分でキャンプ場前の川原に到着。
何時もの例会よりは、休憩も短めにして急いで下ってきたつもりだけれど、ヌビナイ川を下る時は何時もこれくらいの時間がかかってしまう。
お腹が一杯になるくらいに瀬を楽しんで、おまけに想定外の青空も見られて、とても充実したヌビナイ川の川下りとなったのである。

2013年9月14日 雨のち晴れ
当日12:00 歴舟川水位(尾田観測所) 102.17m


合流部
合流部の青空

戻 る