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十勝川

(新清橋〜清水大橋)

スタート準備カヌークラブの8月例会二日目は、十勝川の屈足から清水町付近までを下る。
宿泊地のサホロ湖キャンプ場を出発する頃は良い天気だったのに、車の回送を済ませて川にカヌーを浮かべる頃には、空はすっかり雲に覆われていた。

私がここを下るのは3回目。
一番最近で下ったのは11年前のクラブの例会の時である。
その前に下ったのは17年前、我が家単独で真ん中に息子を乗せての川下りだった。
まるで、10年に一度下るのが十勝川といった感じだ。
私の地元の川でもあり、もっと下りたいのだけれど、なかなかその機会が無いのである。

10年も経つと川の様子はすっかり変わってしまう。
しかし、新清橋から下り始めて熊牛発電所からの放流水が流れ込むまでの間、水が少ないことに変わりはない。
ザラ瀬を下る今回はまだ比較的水が多い方で、何度も現れるザラ瀬も、座礁することなく下ることができた。
そのザラ瀬が終わるところに皆が集まり、カヌーを上流に向けて漕ぎ始める。
そんなに良いサーフィンポイントでもなさそうなので、私はやや下流からその様子を眺めているだけ。
今日はソロで漕いでいるので、そこまで漕ぎ上がるような余計な力は使いたくないと言うのが本当のところだった。

緩やかな流れの中をのんびりと下っていると、何故か何時もよりカヌーの操作が上手くできない。
勝手に横を向いてしまったカヌーを元に戻そうとしても、なかなか思い通りにならない。
「あれれ、急にパドリングが下手になった?」
と思っていたら、僅かに吹いていた向かい風がその原因だった。
僅かな風でそうなるのだから、パドリングが下手なことに変わりはなさそうだが、ソロで漕いでいる時の向かい風ほど嫌なものは無い。
川下り風景今日は結構苦労することになりそうだ。

熊牛発電所からの放水路と合流する。
本流よりも放水路の水の方が多いのが、何か不自然だ。
この上流には三つのダムが連続しているので、川と言えるような存在ではなくなっているのが実情である。
ただ、これらのダムの中には洪水調整機能を持つものもあり、昔と比べると川が大増水することは殆ど無くなったことも事実である。
昔は広い河原がもっと沢山あったはずだけれど、大増水しなくなったことで川原の中に柳などが侵入してきて、広い河原が少なくなると言う変化も現れている。



十勝川本流   熊石発電所からの放水路
合流部の十勝川本流   合流部の発電所からの放水路

それでも、川岸には巨大な流木が流れ着いていたりして、自然河川の荒々しさは完全には失われていない。
クラブの例会案内では「初心者でも大丈夫な川です」と紹介していたけれど、私は以前から十勝川のこの区間は結構危ない川だと感じていた。
流木ストレーナー流れも早く、所々に流木のストレーナーもあり、本当の初心者では本流から抜け出せないままストレーナーに引っ掛かってしまうことも考えられるのだ。

今回の例会はベテランばかりの参加なので、何も心配することなく下っていられる。
ただ、心配なのは自分の身だった。
次第に向かい風が強くなってきて、何度もカヌーが後ろ向きに回されてしまう。
タンデムの時ならば、倒木があってもそのすぐ近くを余裕を持って漕ぐことができるけれど、こんな状況である。
倒木の近くまでいってから、向かい風でカヌーのコントロールを失っては大変である。
倒木や障害物を確認したら、その遥か手前から進路を変更して、なるべく離れるようにする。
流れが早く、向かい風も強く、そんな事にも苦労する有様だ。

途中の共栄橋放水路からの水が入った後は、十勝川は本来の力強さを取り戻す。
何せ、広大な十勝平野を造りだした大河である。
何時も下っている様な川と比べると、全く違った印象を受ける。

初めてここを下った時、川を塞ぐようにテトラが一列に並んでいる場所があって、寸前で岸に上がって事なきを得たことがある。
次に下った時はそんなテトラは消えてなくなり、その代わりに護岸からテトラの列が櫛状に伸び出た水制ができていた。
今回は、そのテトラの列も全て消えて無くなっていた。
幾つものダムでその本来の姿を失ったように見えても、十勝川はやっぱり、人間の力で簡単に制御できるような川ではないのである。

とうとうと流れる十勝川には途中で遊べるようなスポットもほとんど無く、皆は黙々と下るだけである。
私は後に付いていくのだけで精一杯。
途中で音を上げ、半ば悲鳴のように「そろそろ昼にしませんか〜」と呼びかけた。

川原で休憩休憩中、誰かが「この辺りはクマは出ないのかな?」と話していた。
確かに、周りの鬱蒼とした河畔林を見ているとクマが出てきても不思議ではない雰囲気である。
しかし、その河畔林の周りには広大な畑作地帯が広がり、とてもクマが現れる様な地域ではないのである。
川の上からは人工物も殆ど見えず、全くの自然河川を下っている様に感じるのも、この川の良いところかもしれない。

遠くから雷の音が聞こえてくる。
雨雲レーダーを確認すると、発達した雨雲がもうすぐ近くまでやってきていた。
上空には時々青空ものぞくけれど、時々雨粒もポツポツと落ちてくる
その雨粒に追い立てられるように、再び下り始める。


川原で休憩中
十勝川の川原で休憩中

先頭はN島さん。
今回はゲスト参加のご夫婦の奥さんを前に乗せてのタンデム。
奥さんは何度かカナディアンに乗ったことがあるようで、なかなか力強いパドリングである。
そんなタンデムなので、どんどんと先に下って行ってしまう。
十勝らしい風景になってきた相変わらず向かい風に翻弄されながら、もう付いていくだけでも精一杯だった。
私が一人で例会に参加する時は、大体がこんな向かい風に苦しめられている気がする。
例会に参加できなかったかみさんの恨み風が吹いているのかもしれない。

前方に青空が広がってきた。
何処にでもあるようなその風景が、とても十勝らしく思えてしまう。

12時40分にゴールの清水大橋に到着。
昼の休憩以外は殆どノンストップで下ってきたので、11キロを2時間10分で下ってしまった。
スタート地点に置いた車を取に戻った人達を待っている間、またパラパラと雨が降り始めた。
雨雲レーダーを確認すると、十勝北部はもう雨雲の下に隠れてしまっていた。
そして清水町を含めた十勝北部には大雨警報が発表されていた。
ノンストップで一生懸命下ってきたのは正解だったようである。

2013年8月25日 曇り時々晴れ


集合写真   上陸地点で
最後に記念撮影   上陸した後に雨が降り始めた

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