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留辺志部川(ルベシベ川)

(トイマルク橋〜日東橋)

6月例会二日目はルベシベ川を下る。
この川の名前を聞くと、留辺蘂町が頭に浮かんでくるけれど、そことは全く関係ない。ネットで検索すると、ニセコの方にある川の名前がヒットするが、そこも関係ない。
漢字で書くと留辺志部川、上川町で石狩川に合流する旭川紋別自動車道沿いを流れる川である。
クラブのI山さん達が過去に2度ほど下っている川なのだが、そもそも何でわざわざこの川をカヌーで下ろうとしたのか、その理由をまだ聞いたことが無い。
カヌーフィールドとしては殆どその名を知られていない川なのである。

昨日の支湧別川でのカヤック喪失騒ぎもあって、水が多ければ他の川に変更しようとの話も出ていた。日曜日だけ参加するmarioさんが、来る途中に川の様子を見てくれるとのことになり、その結果は問題なしとの連絡。
何時も波の中でウヒョウヒョと楽しそうにしているmarioさんだが、皆からは意外と慎重派であるとの評価を得ているようだ。そのmarioさんが問題なしと言うのならば大丈夫だろうとのことで、予定通りルベシベ川を下ることとなった。

トイマルク橋でも、私はそうは思っていなかった。
過去に何度も、I山さんの「大丈夫ですよ〜」の言葉に騙されて楽しい経験をさせてもらっていたけれど、marioさんはそのI山さんと同類のような気がするのである。
そもそも、marioさんは慎重派だと言っているのが、そのI山さんなのだから、尚更なのである。

川下りスタート地点のトイマルク林道入口で、丸瀬布のキャンプ組とmarioさんが合流。
そこからゴール地点に車を回す。
昨日のこともあるので、もしもの事態に備えて中間地点に私の車を置くことにした。
国道273を走っていると、所々から川の様子が見える。
どこも同じような白波が立ち、折り重なった流木が川岸に山となり、楽しい川下りができるような川にはどうしても思えない。
ゴール近くの橋の上から、ちょっとした落差の堰堤が見えていた。同乗していたmarioさんに「あの堰堤はポーテージですか?」と聞くと、「去年は確か下ったはずですよ」との答え。
スタート地点普通は堰堤はポーテージのはずなのに、慎重派のmarioさんがそう言うのならば大丈夫なのだろう。

スタート地点の川の様子は、それ程ひどく増水している訳ではなく、水も意外と澄んで穏やかな流れになっていた。
今日の参加人数は9名。
うるさいくらいのエゾハルゼミの鳴き声が谷間に響いている。
川の水はとても冷たい。この時期になってもまだ雪解け水が流れ込んでいるのだろう。
集合写真を撮って、いよいよ川下りのスタート。
周りの緑が眩しく感じる。
カヌーを漕ぎながら、前を行く皆の様子を撮影する。
しかし、そんな余裕を持って写真を撮っていられたのは最初だけだった。
少し下ったところで左から支流の芽刈別川が流れ込み、一気に水量が増える。

水量が増えるとともに、流れが速くなり、波も大きくなる。
昨日の支湧別川と同じような状況である。
ただ、こちらの方が川の規模が大きいので、1本の倒木により川が完全に塞がれることはなさそうだ。
巨大な流木ただ、途中で巨大な倒木が転がっていたので、もしもそれが横向きになって川を塞げば、とんでもなく邪悪なストレーナーを作り上げそうだ。

それに川の規模が大きくなると、波もやっぱり高くなる。
カヤックならば頭から水を被るような瀬が次々に現れる。

先月にトナシベツ川を下った時も同じような状況だったが、そちらの方はもっと川幅が広かったので、波の大きな場所は余裕を持ってかわすことができていた。
ところがこのルベシベ川は、山の中を流れる自然河川である。
それが増水のため、川原と言えるような場所も水没して無くなり、両岸ギリギリまで河畔林が迫っている
波から逃げようとすると、その両側で待ち構えているのは岸から張り出した木の枝や倒木、水中の隠れ岩。
必然的に、瀬のど真ん中を下っていくしかないのである。

流木ストレーナー川がカーブしているところでは、ほぼ確実に流木が引っ掛かっている。そして川の本流は、まともにその流木に向かって流れていくのである。
また、ブラインドになったカーブの先では何が待ち構えているのかも分からず、前を下る人たちの様子をじっと見守りながら下っていく。
緊張で口の中が乾いてきて、何度も水筒に口を付ける。

正直言って、今日は最初から気分が乗っていなかった。
昨日の支湧別川の事や、車の回送中に見た流木の山の事を思い出すと、どうしても不安になってくるのだ。
おまけに、昨日の夜は寝るのが遅くなったのに、午前3時過ぎには目が覚めてしまって寝不足気味。
そのために頭もぼーっとしたままだ。


エディのない流れ   瀬を越える
エディも無く両岸から樹木が張り出す   瀬の中で大きく煽られるカヌー

瀬を越える度に水舟になってしまい、上陸してはカヌーをひっくり返して中の水を出す。
これが結構な重労働で、徐々に体力が奪われていく。
カヌーの水抜きも大変波を避けるための全力でのリバースストローク、本流から逃れてエディに入るための全力でのフォワードストローク。
持てる力の全てを使ったガチ漕ぎが続く。

それでも何とか、厳しい流れに対応できていた。
しかし、次々に現れる、カーブと倒木がセットになったトラップの一つで、倒木の枝に思いっきり側頭部をぶつけてしまった。
それまでは余裕を持ってかわせていたのに、その時は倒木にギリギリまで近づいてしまったのだ。
ヘルメットのおかげで頭は守られたけれど、一瞬「首をやっちゃったかな?」と思えるほどの衝撃だった。

幸い、首や頭へのダメージは無かったが、心へのダメージは大きかった。
ヘルメットが無ければ怪我をしていた様な、沈するよりも大きなミスと言えるのだ。
おまけに、ヘルメットに付けているGO-PROのスイッチを入れ忘れていたので、折角の衝撃的シーンの動画を撮れなかったのが心残りなのである。

昼の休憩高速道路の橋の下で昼の休憩。
天気も良くて、水も比較的澄んでいて、楽しい瀬が連続して、他のメンバーは皆、充実の表情を浮かべている。
一方、私達は心身ともに消耗しきって、早くゴールに着きたいとの思いだけしかなかった。

この先にある堰堤の事がまだ気になっていたので、I上さんに「橋から見えていた堰堤って、そのまま通過できるんですか?」と聞いてみると、「えっ?そんな堰堤あったっけ?」との答え。
ガクッとなりながらI山さんにも同じことを聞いてみると、「大丈夫ですよ、あの堰堤は下がスロープ状で、ストッパーにはなっていないので、そのまま下れます」とのことでちょっと安心できた。
休憩の間にもN島さんはフキの収穫に余念がなく、休憩を終えて再び下り始める時には、N島さんのカヌーはフキ運搬船と化していた。

その後も相変わらず瀬が続き、しかも今までより瀬の波が高くなってきた気がする
そしてこの先には、数年前に、当時会長だったF本さんがカヤックを流してしまった曰く付きの核心部があるらしい。
困ったことに、誰もそのはっきりした場所を覚えていないのだ。

その核心部は突然現れた。
流れが荒れてきたなと思ったら、本流はその先で川の中から突き出した岩にまともにぶつかり、そして右へ流れを変えていた。
核心部その岩は余裕を持ってかわしたが、その先の真正面で巨大な岩が待ち構えていた。
直ぐにその岩が、F本さんの舟を奪い取った「フジモト岩」であることを理解する。
当時はその岩が隠れるくらいの水量だったらしいが、今はその岩は川の流れを左右に振分けていた。
右へ行くか左へ行くか、考えている暇はない。
かみさんの動きに合わせて、左側を選択。
危うく張り付きそうになりながら、ギリギリでフジモト岩をかわす。
するとその先には落ち込み。そしてそこを過ぎるとまた大岩。次には隠れ岩、大波。
次々と乗り越えて、ようやく下流のエディに入ることができた。

I上さんに「今のがF本岩ですよね?」と聞くと、「いや、F本岩はまだ先だよ」と言われ、心が折れそうになった。

ハードな瀬が続くその先もまだ核心部は続いているようで、迫力満点の瀬が次々に現れる。
途中の浅瀬でやっと一息つけた。
太陽の光をうけて、川底の石がキラキラと輝いている。
「結構きれいな川なんだ」
風景など楽しむ余裕も無く、ここまで下ってきたのである。

「まだこの先にF本岩があるんですよね〜」とI上さんに話しかけると、「あっ、F本岩はもう過ぎたよ」
やっぱり、先ほどの大岩がF本岩で間違いなかったようだ。
他人の記憶を頼りに川を下っていてはいけないと、改めて感じたのである。

一休み中再び川下りを再開。
皆の後ろの方から用心深く下っていくと、先頭のI山さんが舟を降りるのが見えた。
また障害物かなと思ったが、そこで上陸する人や、そのまま下っていく人達もいる。
カヌーの水抜きを兼ねて、とりあえず私達は岸に上がった。
その先に見えている道路の橋。
車の回送時にその橋の上から見た光景を思い出した。この先には、例の堰堤が待ち構えているのだ。
I山さんが、下ってくる人達に侵入地点を指さして合図を送っていた。
藪漕ぎしてその堰堤を見に行くのも面倒で、先に下った人達もすんなりとその堰堤を越えているようなので、私達もそのまま下ることにする。

その堰堤をまだ見ていなかったかみさんは「あの先はどうなっているの?」と心配そうに聞いてくるので「ちょっとした落ち込みの堰堤だから大したことない」と答えてカヌーに乗り込む。
堰堤が見えづらい上流側から見ると、堰堤の手前も瀬になっているので、近づくまでそこに堰堤があるのが分かりづらい。
流れに乗って勢いよく堰堤を越える。

落ちる瞬間「スロープじゃないだろ!」と思った。
そして次の瞬間、バキッという音と共に、信じられない光景を目にした。
美しい流線型のカヌーが、潰れたカエルのような姿に変わっていたのである。
そしてその一瞬後には、何事も無かったようにカヌーは元の姿に戻り、かみさんも普通に漕ぎ始める。
そして皆の待つところまでたどり着いた。
しかし、形は元に戻っていたものの、かみさんの座っていたシートは本体から外れ、両側のガンネルは無残に折れていた。
ガンネルが折れ、剛性を失ったカヌーで激しい瀬の中を下る気にはなれない。
橋も近いので、私達はここで下るのを止めることにした。


堰堤落ち 堰堤落ち 堰堤落ち
堰堤を落ちた瞬間にバウの部分が折れてしまった

以前からガンネルの一部が折れかけていて、そのうちに修理しなければならないと考えていたので、カヌーを壊してしまったことにそれ程ショックは感じてなかった。
それにこれは自分たちの操作ミスではなくて、ただの不可抗力である。
しいて言えば、堰堤を降りる前にその下見をしなかったことがミスになるのだろう。
折れたガンネル下見さえすれば、大型のカナディアンでは下れないことが直ぐに分かったハズである。

堰堤の下部は確かに小さなスロープになっていたが、長さのあるカナディアンではバウだけがまともに川底にぶつかってしまう。
大型カナディアンならば、堰堤の下がストッパーになっていた方が、すんなりと下れたかもしれない。
I山さんが「舟が長すぎたんですね〜」と申し訳なさそうに言ってくれるが、大型カナディアンに乗っていない人がその長さを実感できないのは、しょうがないことだ。
カヤックやOC-1のメンバーはこのルベシベ川をとても楽しそうに下っていたが、長さのある大型カナディアンでは、たとえ一度も沈しないで下れても、その楽しさを共有できないのである。

リタイアするのを決めた時には、これ以上下らなくて済むと言う安堵さえ覚えたルベシベ川の川下りだった。

2013年6月16日 晴れ
当日12:00 留辺志部川水位(ルベシベ観測所) 402.14m

留辺志部川川下りの動画


堰堤   途中で上陸
遠くから見れば下れそうだけれど・・・   日東橋で我が家はリタイア

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