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トナシベツ川

(羽沢橋〜五月橋)

増水した鵡川を下った翌日のトナシベツ川例会。
鵡川があれほどだったのだから、トナシベツ川が増水していたら一体どんなことになるのだろう。
皆がそう思って心配していたはずなのに、集合場所に集まった後で「それじゃあカヌーを積み替えてからスタート地点に向かいましょう!」とのI山さんの言葉。
思っていた程に水は多くない?「えっ?!川の状況を見てから、どうするか判断するはずじゃなかったの?」
皆、I山さんの何時ものペースに引きずられるまま、ゴール地点に車を置いてからスタート地点へと向かう。

途中に架かる橋の上から見たところ、トナシベツ川は思っていたほど増水していなかった。
「去年下った時よりも少ないくらいじゃないか?」と言う人もいるくらいだ。
ただ、去年のコバルトブルーに染まり、ため息が出るくらいに美しかった川の水は、昨日の鵡川と同じく灰色に濁っていた。
茶色く濁った水ならば下る気も無くなるが、この色ならば全く問題ない。
去年は青い水に対比する様にピンクの花を咲かせていた桜も今年はまだ蕾のままだが、今年もまた最高に気持ちの良い川下りが楽しめそうだ。
スタート地点にはまだ雪がそんな期待を抱きながら、スタート地点の羽沢橋に到着。
そこから先の林道はまだ雪に埋もれたままで、これでは桜の開花が遅れるのも無理はない。

急な崖から皆で協力しながらカヌーを川原まで降ろす。
今日から参加したT山さんは、早速その付近でアイヌネギの収穫を始めた。
他のメンバーは昨日、鵡川を下りながらネギをたっぷりと収穫して、その後のどんころで腹一杯食べていたので、少々のネギには見向きもしない。

昨日鵡川の瀬で死ぬ思いをしたK岡さんは、皆からの執拗な誘いにも動ぜず、どんころからこちらに来る途中に姿をくらませていた。
今日はカヤックが4艇にカナディアンが5艇。普段の例会ではカヤックの方が多いのが普通なので、ちょっと変わった組み合わせである。

参加者は10名集合写真を撮ってから川に漕ぎ出す。
最初の瀬を越えたところで一旦集まろうとするが、流れが速くて留まっていることができず、そのまま次の瀬に向かう。

結構大きな波が立っている。
その波を左にかわすと、隠れ岩でもあったのかその瞬間に舟が大きく傾いた。
なんとか ギリギリリカバリーする。
その先ではI山さんがバランスを崩して沈するのが見えた。
左岸に一旦上陸。
後ろを振り返ると、そこではOCの228君も沈していた。
直ぐにレスキューロープを準備するが、228君はその場で立ち上がってカヌー引っ張りながら岸へ向かって歩き始めた。
I山さんも既に上陸していて、ひとまず事態は収束。

それにしてもスタート直後にいきなり二人も沈。
去年はこんなところで苦労した覚えはなく、おまけに川の流れも速く、何となく去年とは違っていることに皆気が付き始めていた。

今回ここを初めて下る228君は、トナシベツ川は最高に楽しくて気持ちの良い川だと、皆から散々聞かされていたので、「気持ち良いどころか、そこらじゅう気持ち悪い場所ばかりじゃないですか!」と文句を言っている。
私達も警戒して、なるべく後ろの方を下るようにした。


一瞬ヒヤリ   I山さん沈
危うく沈   岩の向こうでI山さんが沈

そうしてしばらく下っていくと、右岸の倒木にIW田さんが一人でしがみついているのが見えた。しかし、カヤックが見えない。
どうやら舟を流してしまったようだ。
川下り中に一番困るのがこれである。
「沈しても、舟とパドルだけは離さないこと」
そうとは分かっていても、セオリー通りにできないのが川下りである。

もしもの時にIW田さんを乗せられるように、その近くでカヌーを止める。
228君岩に張り付き幸い、IW田さんがいるのと同じ右岸側で流されたカヤックが確保されたので、IW田さんは岸沿いに歩いて再び自分のカヤックに乗ることができた。

その後も厳しい瀬が続き、またIW田さんが沈しているのが見えた。
「あらあら」と思って見ていると、今度は目の前で228君が横向きになって岩に張り付いてしまった。
それをかわして何処かのエディに入ろうと思ったが、そんな場所はどこにも無く、我が家が先頭に出てしまった。
こうなると人の事より自分の安全の方が第一である。
瀬をもう一つ越えてから、石がゴロゴロと水中から顔を出している様な岸に、半ば座礁する様にカヌーを突っ込んで、ようやく上陸することができた。

その先には、また嫌らしそうな瀬が見えていた。
去年そこで、我が家の舟と岩の間にIW田さんを挟んでしまいそうになったことを思い出した。
去年下った時は、そこと倒木の絡んだ場所の2か所だけが唯一の難所だったはずである。
それが今日はここまで下ってくる間に沈が続出。
レスキューを終えた他のメンバーも、ようやく我が家のいるところまで追い付いて来た。
「今日は大変な川下りになりそうだ」
ここに来て、それが全員の共通認識となっていた。

一つ目の難所が遠くに見える昨日は鵡川の強烈な瀬を下り終えて「生きてて良かった〜」と実感したものだが、今日は川下りの途中で「生きて帰れるだろうか」との不安が心の中に湧いてくるのであった。

まずはレスキュー要員としてI山さんが先に下っていく。
ここでは瀬の最後で本流が岩壁にまともにぶつかり右へ流れを変えるのだ。
そこまで行く前に隠れ岩にでもぶつかったのか、大きくバランスを崩す。
思わず皆から「おーっ」と悲鳴にも似た喚声が上がったが、何とか無事に瀬を越えれたようである。
去年は無かったはずだが、中州を挟んで右岸側にも分流ができていた。
そちらの方がチキンルートだけれど、今回だけはチキンルートを選ぶしか無さそうだ。

次に下ったN島さんもそちらに入ろうとしたが、本流の流れが強すぎてそのままI山さんと同じルートを下っていき、瀬をクリア。
それを見ていて、チキンルートの選択は事実上不可能であることを皆が知ることとなった。

O橋会長この後沈脱何人目かに下ったO橋会長。I山さんと同じ隠れ岩につかまって沈脱するのが見えた。
そして中州の陰に入って一旦見えなくなり、再び姿を現した時、有ろう事かカヤックを放してしまっていたのだ。
これも幸い、カヤックは直ぐ下流で確保できたようだ。

次に下ったMオさんは瀬をクリアした先で沈。しかもロールで起きることができずに沈脱。
私達のいる場所からは遠すぎて状況が今一分からないが、瀬を過ぎた後も油断できないようだ。
などと思いながら見守っていると、何とMオさんもカヤックを放してしまった。
そしてMオさんはレスキューされたけれど、カヤックはどんどん流されていって、とうとう見えなくなってしまった。

これは一大事である。
IW田さんも先に下って行って、上流に残っているのは私達とI田さんのカナディアン2艇だけ。
瀬の下がどうなっているのか想像もつかない。
多分、私達のレスキュー要員として何人かはまだそこに残ってくれていると思われるが、他のメンバーはmarioさんの流されたカヤックを追いかけて行ったはずだ。
岩壁が目の前に迫るそうなると、その手薄なレスキュー体勢の中で絶対に沈はできない。
タンデムで沈をすると、一度に二人が流されることになるのである。

荒い瀬の中を隠れ岩にだけ注意しながら下っていく。
最後の本流が岩壁にぶつかっているところは、見かけは恐ろしいけれど、波が跳ね返ってくるので岩に張り付いてしまうことは無い。
それが分かっていたので、岩にぶつかりそうになっても慌てないでそこをクリアした。
問題はその後、直ぐに本流から抜け出さないと次の落ち込みに入ってしまう。
必死のパドリングでようやく岸までたどり着けた。

想像していた通り、そこに残っていたのはN島さんと228君のOC-1組だけ。
I田さんが下ってくるのを待って、先を急ぐことにする。

やがて、右岸に皆が集まっているのが見えた。素直にポーテージ
しかし、Mオさんのカヤックはまだ見つかっていないらしい。
そこは二つ目の難所のすぐ手前だった。
去年は全員がここをポーテージしたけれど、今回は水が増えているので下れそうなルートもできている。
でも、さすがにここで無理をする人は誰もいなくて、素直に右岸をポーテージした。

I山さんは一人でカヤックを追いかけてきたけれど、この瀬があったために追いかけるのを諦めたそうである。
さぞ大変だったことだろうと思ったら、いつの間にかI山さんの手にはしっかりとアイヌネギの束が握られていた。
どんな時にでもやるべき事は忘れないI山さんなのである。

ここからは全員でMオさんの流されたカヤックを探すことになる。
T山さんの乗っているOC-1は、昔は奥さんとタンデムで乗っていた舟なので、それを元の二人乗り仕様に戻してMオさんを乗せることにする。
T山さんがいなければ、我が家のカナディアンの真ん中にMオさんを乗せることになっていたはずだ。
何年か前のシーソラプチ川で、途中で怪我をした体重100キロの228君を乗せて下ったこともあるので、体重の軽いMオさんなら全く問題ない。
最近のクラブの例会ではOC-2での参加は私達だけということが多くなっているが、こんな事態に遭遇するとツアーにおけるカナディアンの価値が見直されそうである。
そんな意味では、私達のクラブでは色々なタイプの舟が混ざり合っていて、良いバランスを保っているのかもしれない。


増水したトナシベツ川
ポーテージした先の川の様子

ただ、今回の例会ではカヤックの少なさがやっぱり致命的だった。
小回りの利くカヤックでボートレスキューができれば、色々な事態に対応できるのである。
今回のツアーリーダーの予定だったI上さんが、風邪を引いて参加できなくなったため、どうしてもベテランのI山さん一人に負担がかかってしまう。

T山さん艇が沈途中の橋を過ぎた先で、川が大きく分流しているところがあり、カヤックを探すためには二手に分かれる必要がでてきた。
そこで、I山さんが一人で狭い分流の方を探して、残りのメンバーは本流を下ることにした。

その途中、私達の前を下っていたT山さん艇が沈。
またしても一大事発生である。
私達ができるのは、皆に知らせるためのホイッスルを吹くだけ。
T山さんとそれに乗っていたMオさんは、何とか自分達だけで岸に上がることができたので、これは難題にならずに済んだ。

再びI山さんと合流するが、お互いに収穫は無し。
今回の川下りのゴールは小さなダム湖になっているので、もしかしたらそこまで流されているかもしれない。

ついに発見!次にまた小さな分流が現れたので、I山さんが念のためにそちらに一人で入っていく。
私達が本流を下っていくと、遠くの岸から張り出した倒木に何か赤い物体が引っ掛かっているのが見えた。
「あった〜!」ついにMオさんのカヤック発見である。
IW田さんが分流の方に入っていったI山さんに知らせに行く。
その分流は途中で水が無くなっていて、I山さんはカヤックを担いで歩いてきた。


後で計測してみると、Mオさんのカヤックが流された距離は約2キロだった。
普段は邪魔者の倒木も、こんな時だけはありがたく思えたものだ。

ようやくメンバー全員と舟が揃ったところで昼食にする。
去年下った時のイメージでは、下流の方にはそれ程厳しい瀬は無かったはずである。
でも、今日の水量ではあくまでも油断はできない。
これから先はチキンルートだけを下ることを確認し合って再び下り始めた。

それでも時々波の大きな瀬があったりして、I田さんが沈。
沈しても舟さえ流さなければ大した問題ではない。

しかし、それでも問題は発生した。
下っている途中で強烈なバックウォッシュのホールがあったが、私達は当然、そんな場は避けて下る。
228君沈しかし、あれほど無理はしないと確認していたのに、228君は敢えてそのホールに入ったらしい。見ていた人の話によると、大きなカナディアンが後ろからホールに引きずり込まれたとのこと。
当然のように沈した228君は、その下流のエディに捕まってそこから出られなくなってしまったのだ。
反対側の岸からロープを投げるが遠すぎて届かない。 228君が巻かれているエディ側は切り立った岩壁。結局、舟だけを先に流すことにしたようだ。
私は既にその下流まで下ってきていたので、詳しい状況は良くわからない。
私のいる場所からは、無人のカナディアンが上流に向かって流れていくのが見える。そしてそれが本流に乗り下流に向かって流れ出したと思ったら、再びエディの中に巻き込まれてしまう。
そんなことを数回繰り返してから、ようやく舟が流れ出てきた。


228君の事件現場
228君は無謀にもこのホールに突っ込んだらしい

「えーっ!」
下流にいるのは私一人である。
慌てて舟を拾えそうな場所まで川原を走る。
ここで先日買ったばかりのKEENのパドリングシューズが役立った。
228君のカヌーを確保それまで履いていたMonbelのシューズと比べると、靴底が固いので、足場の悪い河原でも走りやすいのである。
素早く下流に回って後ろを振り向くと、I山さんがカヤックで押しながら、流れる舟を岸の方に近づけてくれていた。
それで何とか、舟に手が届いたのである。
レスキューの際はお互いの助け合いが欠かせないのだ。

その後は人間も同じように流す予定だったが、何とか背後の岩によじ登ってそこを脱出することができたようである。
今日は一度もロープを投げていなくて、最後に一発決めてやろうと張り切っていたので、これはちょっと残念だった。

そんな事もあって、さすがの228君もその後は無理をせずチキンルートを下るようになる。
これでようやく、無事にゴールまでたどり着ける見込みがたった。
ただ、国道に架かる橋の下がちょっと気になっていた。車でそこを通る時にチラッと見た限りでは結構な波が立っている様に見えたのだ。
その国道の橋が見えてくる頃には流れも穏やかになり、皆はもう完全に安心したかのようにのんびりと下っている。
そしてお互いの舟の間隔が狭すぎる。
「こ、これはちょっとまずいんじゃないの」
慌ててリバースストロークを入れて、他の舟とのの間隔を広げる。

行く手を塞ぐI田さん国道の橋の橋脚が流れのど真ん中に立ちはだかっている。
橋脚の左側は激しい流れになっていたので、前を下っていた舟は慌てて右に進路を変える。
その中でI田さんだけが反応が遅れ、橋脚にぶつかりそうになって沈するのが見えた。
最後に私達が下っていくと、沈した石田さんのカナディアンが真横を向いて行く手を塞ぎ、慌ててそれを避けようとしているMオさんの姿があった。
川幅が狭まっている場所なので避けることもできず、I田さんには悪いけれど、そのままぶつかって跳ね除けるしかない。
それでもギリギリで避けることができて、I田さんの横を通過。
最後の最後まで気を抜くことができない。

その後は本当にもう危険な場所も無くなり、川に向かって崩れ落ちた崖の圧倒されるような風景を楽しみながら下ることができる。
そうして金山ダムの放水口を過ぎて国道の緑橋の下を通過すれば、下流の堰堤でせき止められた穏やかな流れの中へと入ってくる。
ここに来てようやく、皆の顔には安どの表情が浮かんできた。
一つも欠けることなく、舟も人間も全員が無事にゴールできたことが、今回の川下りの大きな収穫だったかもしれない。

2013年5月19日 晴れのち曇り


ゴールは近い   最後はのんびり
旧道が見えてくるとゴールは近い   ゴールの橋も見えてホッと一息

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