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額平川

(幌見橋〜堰堤手前)

カヌークラブの10月例会2日目は額平川を下る。
例会としてこの川を下るのは今回が初めてで、ここを下ったことがあるのは、今回のツアーリーダーのI山さんとK岡さんだけ。
その情報によると、初心者向けの流れで、景色は最高であるらしい。
私も今年の6月に額平川流域にあるスズラン群生地を見に来ていたので、この付近の風景が素晴らしいことは十分に感じていた。
スタート前のミーティングそのI山さんの先導により、何度か道を間違えながら、スタート地点の幌見橋へとやってきた。
集まったのは、今年最後の例会にしては大人数となる23名。
初心者でも安心して下れる川とのことで、6名のゲストが4艇のカナディアンで参加し、クラブの例会としては珍しく大型のカナディアンが全部で7艇となる。

集合写真を撮ってから川の上にカヌーを浮かべる。
私のイメージでは額平川は何時も白く濁っている川だった。
ところが、スタート地点のここでは驚くくらいの透明度である。
天気も良くて気分はいやが上にも盛り上がってくる。

透明な水と青い空途中で流木等があることも予想され、直ぐに止まれないカナディアンはなるべく後ろの方を下るようにとのツアーリーダーからの指示があった。
でも、これだけカナディアンが多いと川の上が混雑するのは目に見えているので、私は先頭のY田さんの直ぐ後を追って下っていくことにする。

水は昨日下った沙流川と同じく、かなり少ない。この川としては、最低レベルの水位まで下がっているかもしれない。
この素晴らしい水の透明度は、その水の少なさの代償として得られるものなのだろう。

同じ透明度でも、ヌビナイ川などは何となく水に色がついている様な感じで、深い淵ではエメラルドグリーンに染まって見える。
水が青く染まって見えるそれに比べてこちらの水は、無機質な透明度とでも言うのか、水の存在を感じない様な透明感なのだ。
そして、こんな川の淵は青く染まって見えるのである。

水は少ないが、小砂利が敷き詰められたような川底なので、少しくらいカヌーの底を擦っても下るのには全く支障がない。

豊糠橋の手前で昼の休憩をとる。
広々とした川原には流木も沢山転がっている。
流れも難しくはなく、キャンプ道具を積んでの1泊ツーリングにも良さそうな川である。
ただ、途中の川原には熊のような足跡もあって、キャンプする時はそれなりの覚悟も必要になりそうだ。


昼の休憩   休憩を終えて
昼の休憩   休憩を終えて再スタート

分流も多く、先頭のY田さんもその度にどちらに進むか頭を悩ませている。
私も忠実にその後に従っていたが、途中でちょっと遊んでみようとY田さんが進んだのとは違う分流に入ってみた。
するとかみさんから「どうして勝手なことをするの、後ろから付いてくる人が迷うじゃない」と叱責される。
「こんな単調な流れの川では、少しは勝手なことをしないと面白くない」心の中でそう思いながらも、直ぐにまた合流するだろうと軽く考えていた。
ところが、合流するどころかY田さんが下って行った方の流れは、川原を挟んでどんどんと離れていってしまう。
そしてカーブを曲がった先で、こちらの流れは倒木によって遮られていた。
慌てて後ろに向かって、こちらに来るなと合図を送っる。
選択に失敗してポーテージしかし、私に付いてきていたkenjiの姫さんとたけさんのカナディアン2艇は、既に引き返すことは不可能な状況だった。
「だから言ったじゃない!どうするつもりなの!」と、更に激しく叱責される。
先月の歴舟中の川例会で、車の回送中に道を間違えた前科があるので、反論することもできない。
でも、怒られたところで、このまま先に進むしか方法は無いのである。
私を信じて付いてきた二人には悪かったけれど、流木で塞がった場所をポーテージする。
そしてその先で無事に本隊と合流。
十勝川や石狩川などの大きな川では、分流の選択を間違えると命に係わる事態に陥ることもあるけれど、この程度の川ではくじの当りか外れ程度の違いでしかないのだ。

合流した先に、今回の区間で唯一の難所と言えそうな場所が現れた。
普通ならば通り抜けられそうな岩の間に倒木が1本挟まっているので、直前で左に向きを変えてそこをかわさなければならない。
C葉さん危機一髪カヌーの向きを変えて、しっかりとしたフォワードストロークで漕いでいれば特に問題ないところだけれど、漕ぐ力が弱いとその倒木の方に流されてしまう。
特にカナディアンのソロ艇には厳しいところだ。

と思っていたら、カヤックのC葉さんも危うくその倒木に引き込まれそうになって、見ていた皆が冷やっとさせられた。

今回が例会でのカナディアンソロデビューとなったkenjiの姫さん。
「後ろからガミガミ言われなくて良いわ〜」と楽しく下っていたけれど、ここでは倒木に気を取られたのか艇を傾け過ぎて沈。

その後に続いてきたたけさんのソロ艇は、姫さんを避けようとして、反対側のエディに入ってしまった。
そこから自分でカヌーを引っ張り、一旦上流まで戻ってから再チャレンジ。
ところが流れに押されて、倒木の方へと吸い寄せられていく。
パドリングにも迷いが見られ、しっかりとしたフォワードストロークになっていない。
見かねて、たけさんのカヌーを引っ張ってしまった自分の力だけでここをクリアすれば得るところも多いのだが、余計なお世話とは思いながら、最後には見かねて、たけさんのカヌーを引っ張ってしまった。
研究熱心なたけさんなので、多分この場所のことを何度も思い出しては、どうやって漕げば良かったのかを考えることになるのだろう。

私は数年前まで、カナディアンは一人で漕いだ方が絶対に楽だと思っていた。
それが最近は、カナディアンは二人で漕ぐものであるとの考えに変わってきている。
確かにタンデムでは、息が合わずにイラッとすることもあるけれど、それ以上に良いところの方が多い気がするのだ。
特に増水した川や岩だらけの瀬など、厳しい条件で下る時は、タンデムで息を合わせた方が素早いカヌーの操作、流れに負けない漕ぎが可能となるのである。

渓谷の風景に変わってくるその辺りから徐々に、周りは渓谷の風景に変わってきた。
紅葉はまだ色付き始めたばかりだけれど、期待していた通りの美しい風景である。
その風景に良く似合った吊り橋が見えてきた。
聞くところによると、色々と物議を醸している平取ダムはこの辺りに建設されるらしい。
今回の額平川例会も、「ダムができる前に下っておこう」との意味も少し含まれていたのである。

この川を下っていると、川の中にも川原にも大きな石が無いこと気が付く。
下り始めた最初の頃こそ、まだ大きめの石があったのに、途中からは本当に小砂利ばかりである。
周りはまだまだ川の上流部の景観を呈しているが、川の石だけはまるで河口が近いように感じる。
これは多分、この付近の地質が関係しているのだろう。
後になって調べてみると、この付近には古第三紀堆積岩が分布しているらしい。
それらの砂岩や泥岩はもろくて崩れやすいとのことなので、川原の石が小さいのもそのせいかもしれない。


紅葉に彩られた渓谷   吊り橋
美しい渓谷の風景が広がってきた   この吊り橋がダムに取って代わられる

小砂利の川原が広がる2003年の台風10号では沙流川流域で大きな被害が発生し、二風谷ダムが大量の流木で埋め尽くされたことも記憶に残っている。
調べてみると、この流木の大部分は額平川流域から流れてきたもので、大規模な斜面崩壊が何か所も発生したらしい。
そこに新たにダムを作っても直ぐに土砂に埋まってしまってダムの機能が失われるとの意見も、ダム反対運動の一つの理由にもなっているようだ。

額平川が何時も濁っている様に感じるのと、その濁り方が白っぽいのは、この付近の地質との関係が大きそうだ。
スタート地点付近では完全に透明だった川の水にも微かな濁りが見られるようになってきたが、それはやっぱり白い濁りで、この川独特のものの様な気がする。

巨大な土壁が現れた前方に巨大な土壁が見えてきた。
近付いていくと、その土壁の途中に崩れずに残っている場所があって、そこでしぶとく育っている樹木が綺麗に紅葉していた。

この樹木が生えている付近の崖も、台風10号で新たに発生した崩壊地なのかもしれない。
これだけの斜面が崩れれば、周りには大きな岩がゴロゴロしていそうだけれど、ここもやっぱり周辺は小砂利の川原になっている。
川の表情を変えるのは周りの地質の影響が大きいのだと改めて感じさせてくれる今回の川下りである。


巨大な土壁
圧倒的な土壁の風景に皆しばし見惚れる

倒木を避けてポーテージ先頭のY田さんから「岸に上がれ」との合図が送られてきた。
そこでは、倒木が川の殆どを塞いでいた。
無理をすればカヌーに乗ったまま下れそうだったけれど、ポーテージに苦労するような場所でもないので、ここは素直にカヌーを下りることにする。

額平渓谷の風景を満喫しながらも、次第に腕が痛くなってきた。
クラブの例会では、大体10キロ程度の区間を下ることが多い。
それが今回は、約17キロの長距離ダウンリバーである。
ちょうど良い上陸ポイントが無いので、どうしてもその距離を下らなければならないのだ。

疲れを知らない姫さんカナディアンのタンデムはまだ良い方で、小さなカヤックでは足が痛くなってきそうだし、カナディアンのソロでは腕の負担が大きそうだ。
ところがソロで漕いでいるkenjiの姫さんは、時々吹いてくる向かい風も全く苦にならない様子で元気いっぱいである。
マラソンランナーは足だけでなく腕の筋肉にも持久力があるのだろうか。

たけさんがこの長距離苦にしていないように見えるのは若さのためだろう。
もしも私がここをソロで下っていたとしたら、今頃は廃人になりかけているはずだ。

途中で一度休憩を入れる。GPSで確認するとゴールまで後1キロちょっとである。
ゴールを目指してもう一踏ん張りだ。


最後の休憩   ゴールを目指して最後の一踏ん張り
最後の休憩をとる   ゴールまでもう少し

車までカヌーを運ぶそして、スタートしてから約4時間で、車を置いてある場所まで到着。
そこは農家の廃屋の敷地を利用させてもらったのだが、舗装された道からかなり中まで入ってきた場所で、よくこんなところを見つけたものだと感心してしまう。

車の回送距離も結構な距離があり、スタート地点まで戻って車をとってきたころには、既に西の空は赤く染まってきていた。
その間に、待っていた人達は栗の木を見つけて栗拾いを楽しんでいたようである。
二日間の心地良い疲れに包まれて、楽しかった川下りのことを思い出しながら、札幌を目指して車を走らせた。

2012年10月14日 晴れ 
当日12:00額平川水位(額平川観測所) 70.01m 


額平川の風景

額平川の風景

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