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歴舟中の川

(砂防ダム〜中の川大橋上流)

カヌークラブの9月例会初日は歴舟中の川を下る。
水が少ないため、今回のツアーリーダーS吉さんの判断で、途中の中の川大橋の上流をゴールとすることに決定。
スタート地点に移動途中、そのゴール地点の下見をするのに少し手間取っていた。K岡さんが「今日は職場の同僚とダッキーに乗るので、先に行って空気を入れたい」と言うので、その間に私が案内役となって先にスタート地点に向かうことにした。

中の川はこれまで2回下っているので、スタート地点も直ぐに分かるだろうと気軽に案内役を引き受けたのだが、これが大きな間違いだった。ただでさえ物忘れが激しくなってきている私である。覚えているのは、林道を途中から右に入れば砂防ダムの横に出てくると言うことだけ。

ところが、舗装道路から曲がって入ってきた林道は川の左岸側を通っている。これでは、川に出るためには左に曲がらなければならない。 道路地図を確認すると、その先で川を渡るようになっていたので、砂防ダムへの入り口はその橋の先だろうと勝手に解釈する。

その橋を渡って少し行った先で、記憶にない林道の分岐に出くわした。川の方に続く林道にはゲートまで設置されている。このゲートも記憶にはない。
さすがに不安になってきて、K岡さんにそこで待っていてもらい、私だけで先の様子を見に行く。砂防ダムへの入り口は見つからなかったものの、その先の林道は川沿いに続いている様なので、道に間違いは無さそうだ。一旦戻ってきて、片岡さんの車を後ろに従えて再び先に進む。


道を間違えたルート1

入口が見つからないまま、再び中の川を渡る橋の上に出てきてしまった。あれ?と思いながらもう一度地図を見ると、この先でももう一度川を渡ることになっていた。「こんなに何度も川を渡ったかな?」と思いながら、更にその先に進む。
それにしても、橋の上から見下ろす中の川の渓谷美は最高に美しかった。早くここを下りたいと、ワクワクしながら車を走らせる。

しかし、そこから林道は次第に狭くなってくる。そして次の橋までやってきて愕然とする。橋の上にロープが張られて通行止めになっていたのである。
ここにきてようやく道を間違えたらしいことに気が付いた。
それでも、そこから戻りながら「予定していたスタート地点まで行けなければ、今日の例会はどうするんだろう?」なんて考えていた自分に、我ながら呆れてしまう。
山登りで道に迷いやすいタイプは多分私の様な人間なのだろう。


道を間違えたルート2

引き返している途中で、心配して探しに来てくれた他のメンバーの車と出会って、ようやく皆と合流することができた。
地図を良く見てみると、最初から川の右岸側を上流に向かう林道があったのである。
ひたすら皆に頭を下げて、大急ぎで川下りの準備をする。

いきなりの川歩きから始まる皆で集合写真を撮った後、中の川の川下りは、いきなりの川歩きから始まった。
ズルズルとカヌーを引きずって、何とか下れそうな場所まで移動するのである。
ただでさえ皆に迷惑をかけて気持ちが凹んでいるのに、いきなりこれでは更に気持ちが萎えてくる。

ようやくカヌーに乗り込み、カヌーの底を石にゴリゴリと擦りながら、何とか最初の瀞場までやってきた。
ここが中の川の最初の感動ポイントである。
天気も良くて、太陽の光が川底まで明るく照らし出す。
深い淵はエメラルドグリーンに染まり、浅いところは水の存在さえ感じないくらいに川底の石がハッキリと見えている。
美しい風景にも心奪われずそんな風景を見ても何時もの感動が湧いてこなかった。

道を間違えながらも、途中の橋の上から見下ろした息を飲むくらいに美しい中の川の渓谷。
それは、砂防ダムのもっとずーっと上流の部分だったのである。

そもそも、以前に中の川を下った時、スタートから今回のゴールにしている橋の間まで、橋の姿など一度も見ていないことくらい、落ち着いて考えれば直ぐに分かったはずである。
その橋の上から川を見た時の感動を上回ることは、今回の川下り中には一度もなかった。

カヤックのメンバーも次々に現れる浅瀬に苦労させられている。
浅瀬に苦労させられるカナディアンならば直ぐに舟を降りて歩けるけれど、スプレースカートを付けたり外したりしなければならないカヤックはそれが面倒なので、意地になって玉石だらけの川の中を進んでいくのである。

K岡さんは今日はダッキーに乗って、川を下るのが初めてというゲストと一緒にタンデムで下っていた。明日はそのゲストが一人でダッキーに乗るので、今日は二人で乗ってカヤックの操作方法を教え込むのだとか。
8月の尻別川例会では、I山さんがカヤックになど一度も乗ったことが無いと言う会社の女の子を連れてきて、いきなりそのダッキーに彼女を一人で乗せて、ラフトコースを下らせていたのと比べると大変な違いである。
人間の持つ本来の優しさや厳しさは、見かけだけでは判断できないと言うことの良い見本である。

その二人が乗るダッキーだけど、急流には強いけれど、こんな水の少ない川では、その性能を全く発揮できない。
優しい上司それどころか、他のカヤックが何とか下れるところでも、ことごとく石に乗り上げているのである。
1人で乗っているのならまだ何とかなりそうだが、二人乗りでは座礁する率が更に高くなる。
沈もしていないのにK岡さんは汗でずぶ濡れになっていた。

二人の関係は多分、上司と部下にあたるはずだ。
その部下を乗せたまま、必死になってダッキーを引っ張るK岡さん。
これ程までに部下に優しい上司の姿を、私は未だかつて見たことがない。

中の川には2か所くらい、ちょっとした瀬がある。
でも、そこでもカヌーを引きずって、一番最後の小さな落ち込み部分まで来てやっとカヌーに乗り込むことができる。
これでは瀬を下る爽快感も全く無し。


ちょっとした瀬   普通の瀬
落ち込みの手前までカヌーを引きずる   この瀬は座礁しないで下れた

透明な水に浮かぶカナディアン
普通はこんな光景に感動するのだけれど

瀬の楽しみがないのならば、美しい川の風景を楽しむだけである。
そそり立つ岩壁、カヌーの横を勢いよく上っていく巨大な魚影、陽を受けてキラキラと輝く水面、透明な水の上で宙に浮かんでいるように見えるカヌー、エメラルドグリーンに染まった深い淵の川底まで見透せる。
ところが、そんな風景に素直に感動できない。
何度も座礁するストレスと、皆に迷惑をかけた負い目が、心に重くのしかかっているせいなのだろう。
そうは言いながらも、何だかんだと中の川を楽しんで、予定していたゴール地点に到着した。
いつもの半分以下の短縮コースだったけれど、他のメンバーにとっても今回はこれが限界だったと思われる。

2012年9月22日 晴れ時々曇り 
当日12:00歴舟川水位(尾田観測所) 102.14m 


エメラルドグリーンに染まる淵
中の川は本当に美しい

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