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白老川

(御料地橋〜仮設橋)

物好きメンバー8名カヌークラブの8月尻別川例会の前日に有志で白老川を下ることになった。
3週間前に下見でここを下ったメンバーは水が無くて大変な思いをした様である。
そこで、下る区間を下見の時から短縮して、御料地橋から下流を下ることになる。

その後、何日か雨は降ったのだけれど、川下り当日には下見の時の水量まで減ってしまっていた。
集合場所に向かう前、御料地橋の上から見下ろした白老川は、がっかりするような水の少なさである。
赤岩青厳峡に続いてまたしても岩だらけの川を下ることになりそうだ。

集まった物好きパドラーは8名。
車を下流に回して、スタート地点の御料地橋の川原にカヌーを降ろす。

御料地橋の下の川原に湧く冷泉ここの川原には何と冷泉が湧いているのである。
周りの玉石を除ければ浴槽が作れそうだが、ニセコの大湯沼のような灰色の泥が混じっているので、あまり気持ちの良い湯あみにはならないだろう。

ここの川原ではもう一つ大発見があった。
今回は参加していないけれど、下見の時にここを下ったT津さんが途中で無くしたと言うドライバッグが落ちていたのである。
無くしたのはもっと上流らしいけれど、川が増水した時にここまで流れてきたのだろう。
大したものは入っていなかったようだが、それにしても凄い偶然である。

黄色い岩盤御料地橋の直ぐ下流では、黄色っぽい岩盤の上を水が流れている。
水が少なくてカヌーの底を少し擦るけれど、座礁することもなく快適に下ることができる。

この岩盤も、温泉成分の石灰華由来のものだろうか。
もしかしたら、大昔、ここでは結構な量の温泉が湧いていたのかもしれない。

そこを過ぎるといよいよ減水区間へと入っていく。
赤岩青厳峡の小岩地獄を思い出したが、こちらの方はまだルートさえ慎重に選べば下れる余地があるので助かった。
赤岩青厳峡のひどいところでは、そもそも下れるルートさえ無かったのである。
でも、こちらでもちょっと行き先を間違えると直ぐにカヌーは座礁してしまう。
「右、右!」、「次は左!、いや右か!」
先の流れを見ながら次々とかみさんに声をかけるが、かみさんもそのうちに混乱してきて、頭の上に?マークを浮かべたまま動きが止まってしまうことがある。
水中に隠れたカヤックを引っ張り出すまだ流れが緩いから良いけれど、この症状が急流の中で出てしまうと大変である。
疲れが溜まってくると、その症状が出やすくなるので、何とか最後までかみさんの気力が持ってくれることを望むだけである。

そんな瀬の中で、カヤックのガンちゃんが岩に張り付き脱艇。
カヤックは岩に張り付いたままで完全に水没し、それを皆で協力して引っ張り出す。
水深が浅いからと言って、水の力はなかなか侮れないものである。

果てしなく続くかと思われたその迷路のような浅瀬も、ようやく一区切りついてホッとする。
その次に現れた瀬は、岩避けも少なく、水しぶきを浴びながら気持ち良く下ることができた。
それまでは雲の多かった上空にも次第に青空が広がってきて、快適な川下り日和になってきた。


青空が広がる
最高の川下り日和だ

下見の瀬を下るガンちゃん川幅が狭まって流れが速くなっているところを、水面下に隠れている岩に気を付けながら下っていくと、前を下っていたメンバーが岸に上がり始めていた。
その先に、ブラインドになった落ち込みがあるようなので、下見するみたいだ。

下見の結果、岩が多いものの何とか下れそうな落ち込みである。
普段ならば少しためらうような場所だったが、今日はもう、少々の岩ならば気にならないくらいに感覚が麻痺しているのである。
落ち込みの手前で万歳しながら下る余裕まであった。

その先に、巨大な岩が鏡餅の様に重なっている不思議な光景が広がっていた。
川下りの楽しみの一つに、川の上からでなければ見られない、こんな光景との出会いがある。
両岸からその岩が迫り、まるで川を二つに分ける門の様だ。
そして川の流れも、その門を境界として次第に変わってくるのである。
門を通り過ぎた先の川原で昼の休憩。


岩の鏡餅   岩の門
まるで岩が積み重なっているように見える   両側から岩が迫った岩の門

休憩を終えて下りだした後、また少し浅瀬に苦労させられる。
そうしていよいよ、本格的な岩避けが始まることとなる。それまでは、川幅が広がって水深が浅く、流れも緩やかで、川の中の石も小さなものが多かった。
それが、川の傾斜が次第にきつくなり、流れも一か所に集まって急流に変わってきた。

岩避けが忙しいその流れの中に巨大な岩や石が、流れを塞いでいたり、水面下に隠れていたりと、障害物となって待ち構えているのである。
それが短い区間ならば、先に下った人のルートを参考にすることができる。

ところが、そんな流れがずーっと続いているので、下りながら自分でルートを決めていかなければならない。
それに、他のメンバーはカヤックやOC-1なので、皆が下れたからと言って我が家のカナディアンが同じ場所を下れるとは限らないのである。

そんな不安はあるものの、何とか岩の間を上手くすり抜けながら下れていた。
途中で、かみさんが必死のドローを入れて目の前の大岩を避けようとしたが、かわし切れずに衝突。
カヌーのバウとスターンを岩に挟まれてしまったが、何とか脱出することができた。
水が少ないので、流れにパワーが無い分、助かっていた。
これがもう少し増水すると、水のパワーが全く違ってくる。
でも、そうなれば邪魔だった岩も隠れて、もっと違うルートを下れるようにもなるので、どちらが下りやすいかは簡単には決められない。


岩を避けながら下る   岩だらけの中を下る
一つ一つ岩を避けて下る   一瞬の間にルートを探さなければならない

エディに入って、先に下る人たちを見ていたが、最後の部分が岩の陰になってその様子が良くわからない。
でも、他にルートが無いので、そこを下るしかなかった。ストップの合図は出ていないので、危険は無いのだろう。
一か八かで下っていくが、最後の部分の様子がなかなか見えてこない。
ギリギリで岩の間を通過どうやら、岩の先で流れが急に向きを変えているようだ。

果たしてそこで、カヌーをコントロールできるだろうか?
ブラインドを作っている岩の手前で一気にカヌーの向きを変える。
そこでようやく、見えなかった場所の様子が分かった。
二つの岩に挟まれた狭い落ち込み。

「えっ!この幅で我が家のカヌーが通れるの?!」
ビックリしたけれど、岩に挟まることもなく無事にそこを通り抜けることができた。
事前に下見をしたとしたら、ここは絶対にポーテージしていたはずだ。

えぐられた川原を一気に下るその後も、通過できる場所を探して右へ左へとルートを変えながら岩の間を下り、ようやく流れの緩やかな場所までたどり着くことができた。
そこから少し下ると、川の様子がまたがらりと変わった。

右岸から左岸に向かって、玉石の川原をえぐり取るように、川が一気に流れ落ちているのである。
右岸側と左岸側では高低差もかなりある。
そこを横断する急流を一気に下っていくと、一番最後に、川の中に倒れ込んだ倒木が待ち構えていた。
先に下った人達はそのまま倒木をすり抜けた様だけれど、OC-1のY賀さんが倒木の手前で既に上陸していたので、私達も岸にカヌーを乗り上げるようにして急停止。

未知の川を下る時は、少しでも危険を感じたら、無理矢理にでも止まるのが良い。
もしくは、躊躇わずに突っ込むか。
中途半端に迷って、余計に窮地に陥ってしまうのはよくある話で、我が家も幾度も経験しているのだ。

最後に待ち構える倒木そこでは無理せずにポーテージして、後続メンバーが倒木の枝に絡まって右往左往している様子を楽しませてもらう。
もっとも、これは水のパワーが無いので許される話で、通常はポーテージしなければならない場所である。

私達がいる場所よりも遥かに上の方の川原に巨大な流木が横たわっている。
私達のすぐ横の川岸は、数メートルの高さで垂直に削り取られ、玉石の積み重なった地層が露出している。
白老付近は北海道でも雨量の一番多い地域である。
大雨の時は私たちがいる場所は濁流の底になるのだと考えるとゾッとしてしまう。

その先に、かなりの高低差で真っ直ぐに続く瀬が見えていた。
下見をした人が「一か所だけ楽しめる瀬がある」と言っていたが、これがその場所らしい。
一番最後からその瀬を下っていく。邪魔な岩もなく、まるで滑り台である。
キャッホーと歓声を上げながらその滑り台を一気に下る。楽しみはあっという間に終わってしまった。


えぐられた川原の底   お楽しみの瀬
大増水したらこの辺りは川底に   ストレートのお楽しみの瀬

でも、その先の風景もまた私達を楽しませてくれるものだった。
えぐり取られた川岸の上に、今にも転がり落ちてきそうな様子で乗っかっている巨大な石。
岩盤状の川岸にも、そんな巨大な石がゴロゴロと転がっている。
巨大な石がゴロゴロ大増水時にはその石が川底を転がりながら流されてきて、今の場所に落ち着いたのだろう。
川岸をえぐり取ったり、そんな巨石を転がしたり、自然の川の力をまざまざと見せつけられるようで、感動的でもある。

楽しい瀬は一か所だけと聞いていたけれど、その先にも落差の大きな瀬がいくつも現れて、とても楽しい。
「楽しい場所が沢山あるじゃないですか!」
下見の時は、御料地橋まで下ってきたところで全員がへとへとに疲れきっていて、そこから下流のことはあまり覚えていなかった、というのが真相らしい。

御料地橋からスタートして、初めての人工物が前方に見えてきた。
道路が川に接しているところで、その道路側が護岸ブロックで固められているのだ。
そのブロックが川底にまで入っているので、瀬を下っていくと流れの中にそれが頭を出していて、ヒヤッとさせられる。


転がり落ちそうな巨大石   楽しい瀬が続く
この石の下を通過する時はさすがに怖い   楽しい瀬が次々に現れる

そこを過ぎると再び自然のままの川に戻って、瀬を幾つか過ぎたところで川原に停めてあった車が見えてきた。
思わず万歳してしまう。
とても楽しい川下りだったけれど、どう考えても白老川は大型のカナディアンで下る様な川ではない。
無事にゴールまでたどり着けたことが本当に嬉しかったのである。

2012年8月25日 晴れ時々曇り 
当日12:00白老川水位(御料地観測所) 95.08m 



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