そして次がいよいよトラウマの瀬である。
先に下ったメンバーが瀬の手前で止まっていたけれど、我が家はそのまま下ってしまうことにした。かみさんが「え〜、先に下るの?」と文句を言うが、先に下っても後から下っても沈する時は沈するのである。
去年は見事にやられたトラウマの瀬だけれど、今年は無事に下ることができた。下手な真似はしないで、ただバランスを崩さないようにカヌーに乗っているだけなのが良いみたいだ。
岸に上がってカメラを構えていると228君が豪快な沈を披露してくれた。
再びダッキー軍団が追い付いてきたので、今度はレスキュー体勢をとったまま下ってくるのを待つことにする。
川を下っている時は助け合いが欠かせないのだ。
と言いつつも、当然のように心の中では沈シーンを期待しているのである。
簡単にはひっくり返らないダッキーだけれど、ここでは2艇が沈してその期待に応えてくれた。
万全のレスキュー体制が無駄に終わってしまうのは少しだけ悲しいものである。
お礼を言われたけれど、実はお礼したかったのは楽しませてもらったこちらの方なのである。
228君が沈した拍子にパドルのブレードを折ってしまっていた。
我が家は最近、予備のパドルをカヌーに乗せておくようにしていたけれど、これが初めて役に立つ。
「大丈夫だよ予備のパドルがあるから」と言ったところ、大丈夫でないのは228君の体の方だった。
沈した時に太ももを何処かにぶつけたようで、痛くて足が曲げられないと言うのだ。かなり痛がっていて、それ以上下り続けるのはどう見ても無理である。
そこからエスケープすることもできるけれど、急な崖を登らなければならないので、228君の状態では無理そうである。
色々と検討した結果、228君を我が家のカヌーに乗せて、I山さんが228君のOC-1に乗って自分のカヤックはロープで引いていくことになる。
そうして体重100キロ超の228君を真ん中に積み込んで、何時もお世話になっている落庵まで運んでいく。
その途中に大きな瀬は無いけれど、大きく沈んだカヌーで底を擦らないように下るのは結構気を遣った。
無事に落庵の裏手の川岸に上陸。
折れたパドルを杖代わりにして歩けるので、心配した程の重傷では無さそうだった。
それで228君を落庵に預けたまま、私たちは川下りを続行することにする。
落ち庵から直ぐ下流の橋の手前で危うく沈しかけた。今まで何も無かった場所に落ち込みができていて、気が付いた時には既に遅く、横向きにそこに入ってしまったのである。
大きく傾きながらも何とか持ちこたえて、国体コースまで下ってきた。
それまでは積極的に先頭で下っていたのに、ここに来て急に弱気になって、皆に先に行ってもらうことにする。
途中で脱落者が出たことも影響したのかもしれない。
それでも三段の瀬は一番最後にクリア。
下で待っていたメンバーは最後の沈を期待していたらしく、ちょっとがっかりした表情を浮かべていた。
ここでもやっぱりパドルを手のひらに立てながら下れば良かったのかもしれない。
I田さんが突然「俺ここで止めるわ」と言って、カヌーを岸に引き上げてしまった。
「???」
意味が分からずにいるメンバーに「ちょっとお腹の調子が・・・」と言い残して階段を登って行ってしまった。
「後少しでゴールなのに?」
「余程切羽詰まっていたのかな?」
「それなら三段の瀬を下った衝撃で・・・」
「えっ、それじゃドライスーツの中で・・・」
最近になってアンビリーバブルI田の名前が付いたI田さんだが、今回もアンビリーバブル振りを発揮してくれたのである。
それにしても8名中2名が途中リタイア。
それ以上脱落者が出ないように気を引き締めて下り続ける。
I上さん、続いてO橋さんと、パチンコ岩の左を回って渡月橋の落ち込みへ。
後続メンバーも同じルートで下っていく。
最後に我が家の順番。橋の上にはギャラリーもいるので絶対に沈はしたくない。
ギリギリでパチンコ岩を左にかわして、渡月橋の落ち込みは右岸寄りから進入。
そして無事に、がっかりした表情を浮かべる皆の待つ場所まで下り着いた。
228君を落庵まで迎えに行くと、そこで蕎麦とエゾシカカレーを食べた228君は自分の車を運転できるまでに回復していた。
先に帰ったI田さんを除いた全員で、南富良野のなんぷ亭で遅い昼食を食べる。
そこで再び「そう言えばI田さんのドライって背中のファスナーだよね」
「間に合ったのかな〜」
「脱いだスウェットが丸めて置いてあったよ」
「えっ?ドライスーツ着ているのにどうしてスウェットだけ脱いだわけ?」
「一緒に車に乗った時には臭わなかったけどな〜」
何時も話題を提供してくれるアンビI田さんに感謝し、大笑いしながら川下りの余韻を楽しむメンバー達であった。
2011年6月25日 晴れ時々曇り
当日12:00 シーソラプチ川水位(幾寅観測所) 353.94m |