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歴舟川

(坂下仙境〜カムイコタンキャンプ場)

スタート地点 昨日からの雨で茶色く濁ってしまった歴舟川。
 水もかなり増えているけれど、ダウンリバーができなくなる程の増水ではなかった。
 朝目覚めて直ぐに見た時よりは濁りも若干薄くなってきていたので、例会二日目は歴舟川上流部の坂下からキャンプ場までを下ることにする。
 スタート地点の状況を見る限りではそれ程苦労しないで下れそうである。
 何年か前の例会で大増水している時にここを下っているが、その時は我が家は自分の判断で下るのを止めていた。
 後で他の人の話を色々と聞いて、下らなくて本当に良かったと胸をなで下ろしたものである。
 今日の参加者はカナディアンのタンデム3艇とソロ1艇、カヤック3艇の計10名。
 このチーム構成で、もしもカナディアンが流されたとしたらレスキューに苦労しそうだけれど、今日の水量ならばそれほど心配することもなさそうだ。

ゴルジュ帯へと入っていく 何時もよりも瀬の波は高いけれど、まだ恐るるに足らず。
 ただ、岩壁に挟まれたゴルジュ地帯の中がどうなっているかが心配だった。
 目の前にそそり立つ巨大な岩壁に向かって下っていく。
 瀬を抜けてエディに入ろうとすると、付近の川面全体に不気味な波紋が広がっていた。
 川底から水が湧き上がってきているのである。
 その中では、何時もと同じ感覚でカヌーを操作していると突然バランスを崩すこともあるので、水の動きに注意しながらパドリングしなければならない。
 鳴門海峡の渦潮の様に渦を巻いているところもある。
渦巻くエディ 何時もならば、瀬と瀬の間の瀞場はエメラルドグリーンに染まり、ため息が漏れる様な美しい光景が広がっているのだが、今日はそれが茶色く濁ってボイルしたり渦を巻いたりと、全く違う世界に変わっていた。
 ゴルジュの中では本流が岩壁にぶつかって流れを変えている場所が何カ所かある。
 そんなところでは本流の流れる方向とは逆向きにも反転流が生じ、間違ってそこに入ってしまったら中に捉えられてしまい、グルグルと回り続ける羽目になる。
 そんな事にはなりたくないので、なるべく流れの内側で波の小さいチキンルートを選んで下るようにする。


ゴルジュの中を下る   ゴルジュの中
茶色く濁った川   ようやく一息付けた

ゴルジュ出口の瀬へと入っていく 全体に流れが速いので、気がつくと既にゴルジュ地帯の出口近くまで下ってきていた。
 水の少ない時は、この先のゴルジュの出口の瀬が唯一の緊張させられる場所になっている。
 今日のこの水量でそこがどんな状況になっているのかは誰にも分からない。
 途中で止まれる場所が無いかもしれないので、かなり手前から間隔を開けて1艇ずつ下っていくことにする。
 岩壁の間をS字状に川が流れているので、その先の様子が全く分からない。
 先にカヤック組3艇が下り、その後でカナディアン組4艇が下る。
 我が家が一番最後。
 他のカヌーの姿が全て見えなくなったところで、おもむろに下り始める。
 やがてゴルジュ出口の瀬が見えてきたが、邪魔な岩が水面下に沈み、何時もより下りやすそうに見える。
核心部に近付いていく 途中のエディでI山さんがカメラを構えていた。
 慎重にルートを見極めながら下っていくと、下流の左岸にS吉さん夫婦が上陸しているのが見えた。
 目の前に現れた落ち込みの下は全体が真っ白になっていた。
 そのホールに捉まらないようにパドルに力を込めて漕ぎ抜ける。
 そんな場所を2、3ヶ所過ぎた先で、ゾッとするような巨大な波が待ち構えていた。
 こうなったら覚悟を決めてそのど真ん中に突っ込むしかない。
 カヌーが何度も跳ね上げられる。
 「楽し〜ぃ!」
 暴れ馬を乗りこなしているような快感に、思わず歓声を上げてしまった。
 そうしてゴルジュ地帯を抜けて流れは穏やかになる。
破損したガンネル 出口の岩の上に立っていたF本さんから、Y谷さんのカヤックが流されたと聞く。
 その先ではkenjiさん夫婦が水没したカナディアンを引きずって川の中を歩いていた。
 そうして私達も岸に上陸。
 I田さんのカナディアンにY谷さんが乗り込み、流されたカヤックを探しに行くところだったので、予備のシングルパドルをY谷さんに貸す。
 S吉さんが下ってきて「ガンネルが折れちゃった」とのこと。
 ガンネルとはカナディアンカヌーの縁の部分を補強している部材で、落ち込みの下の岩にぶつかった時にカヌーが捻れて、その力で木製のガンネルが折れたようだ。
 結局ゴルジュ出口の瀬では、Y谷さんとF本さんのカヤックがホールに引きずり込まれて沈脱、そしてカヤック1艇流出、kenjiさんのカナディアンは水沈、S吉さんのカナディアンがガンネル破損と散々な結果となったのである。

ご主人を待っていた忠実なカヤック カヌーの水を抜いて、Y谷さん達の後を追いかける。
 ゴルジュの中ならばエディが沢山あるので、途中でカヤックが引っかかる確率は高いけれど、ゴルジュを抜けた先はエディがそんなに有るわけでもない。
 一体何処まで追いかけることになるのだろうと心配しながら下っていくと、そこから直ぐ先でカヤックメンバーが上陸していた。
 意外と簡単に発見できたらしい。
 聞くところによると、ひっくり返っていたカヤックは自分でロールで起き上がり、小さな岩の後ろのエディに回り込んで上流を向いた状態でご主人がやって来るのを待っていたそうである。
 随分と躾のいきとどいたカヤックだと皆から褒められていた。

歴舟川を下るS吉さん夫婦 そこで小休止して体制を整え、再び下り始める。
 波の大きな瀬が次から次へと現れるが、ゴルジュの出口の瀬と比べたらどれも可愛いものである。
 F本さんは手頃なウェーブを見つける度にそこで遊び始める。
 皆も良く分かっているので、少しは待っているけれど、それが長くなると見捨てて先に下り始める。
もうすっかり何時もののんびりとした川下りに戻っていた。
 途中の河原で休憩していると地元の人らしいカヤックが2艇下ってきた。
 そこにちょうど良いウェーブが有るので、カヤックメンバーは皆で遊んでいる。
 休憩中にロープ投げの練習をやろうということになり、皆で投げ合ったが、驚くくらいに下手くそな人ばかりでがっかりしてしまう。
 最近のクラブの例会では参加者も固定されてきて、レスキュー体制をとりながら下るというシチュエーションは殆ど無くなってしまった気がする。
 沈しても他のカヌーにつかまらせるなどして岸へ上げることが殆どで、ロープを投げるような機会は無いに等しい。
 そんな事もあって、来週にはクラブとして本格的なレスキュー講習会をすることになっているが、休憩中のロープ投げ練習も恒例にした方が良いかもしれない。


エディイン   サーフィン
そこのエディに入ろう!   何も言わなければ暗くなるまで遊んでいそうなF本さん

記念撮影
参加者全員で記念撮影

相川橋を通過 地元のカヤッカーと遊んでいるF本さんをおいて先に下り始めた。
 しばらく下っても追い付いてこないので、途中で待つことにする。
 それでもなかなかやって来なくて、途中にそんな危険な場所は無かったはずだけれど、さすがに心配になってくる。
 そこへやっとF本さんが姿を現した。
 地元のカヤッカーの一人が私達が休憩していた場所で沈脱して流され、それを追いかけていたらしい。
 私達が通り過ぎてきた相川橋近くまで流されたというので、多分流された距離は500mにもなっていたようだ。
 やっぱり川では何が起こるか分からないのである。

大きく煽られこの後沈するI田さん 中の川とヌビナイ川の合流地点まで下ってきた。
 中の川の濁り具合は歴舟川本流とそれ程違いは無いけれど、ヌビナイ川の水は既に透明度を取り戻しているようだ。
 上流部の環境がかなり違っているのだろう。
 後はキャンプ場まで下るだけ、と思っていたところに思わぬ難所が待ち構えていた。
 何時もちょっとした波の立つ場所なのだけれど、今日はその波の大きさが半端ではなかった。
 ゴルジュ出口部と同じくらいの波の大きさである。
 ゴルジュでも沈をしなかったI田さんが私達の前を下っていたが、そのI田さんが波に煽られ、もんどり打ってひっくり返った。
 その横のエディに入って少し遊ぼうと思っていたけれど、しょうがないのでそのまま流されているI田さんを追いかけることにする。
 私達のカヌーも大きく煽られるけれど、今日は絶好調なので全然沈する気がしないのだ。


我が家は無事にクリア   流されるI田さん
ここも無事にクリア   アンビリーバブルI田さん

 それにしてもI田さんがこうやって轟沈する姿を初めて見たような気がする。
 それはI田さんが滅多に沈しないと言うことではなく、I田さんの沈は飽きる程に見せられているのだ。
 何せ美々川でも沈するくらいで、「えっ?どうしてここで沈するの?」って皆が頭を傾げるような沈を何度もしているのである。
先月の美瑛川例会での沈も特筆ものの沈だった。
 川の上に流出したエロDVDを慌てて拾おうとして沈したとのこと。
颯爽と下るカナディアンの隣を泳ぐI山さん 未だかって日本の中で、いや、世界中を見渡しても、そんな理由で沈したパドラーなど一人も存在しないだろう。
 そもそも川を下るのに何故エロDVDを持っていたのか?
 これ以来、クラブの中ではアンビリーバブルI田、それが縮まってアンビI田と呼ばれるようになっている。
 本人はその名が気に入ったようで、掲示板などに書き込む時は勝手に改名してバンビI田と名乗っているのだから懲りない人である。
 ここの瀬では、同じくゴルジュの瀬を無傷で切り抜けたI山さんもついに沈脱し、無傷で下り終えたのは我が家だけとなった。
 何だかとっても良い気分で、増水した歴舟川を下り終えたのである。

2011年7月17日 曇り
当日12:00 歴舟川水位(尾田観測所) 102.71m


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