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鵡川

(ラフトゴール地点〜福山大橋)

 もう今シーズンはカヌーを片付けようと思っていたら、クラブのメンバーから「鵡川を下りましょう!」との誘いがきた。下る区間はニニウ〜福山間の上級者コース。
福山大橋から望む当日の鵡川の様子 鵡川のこの区間、3年前の例会で一度下ったことはあるけれど、その時は私一人で漕いで、向かい風と岩避けでヘロヘロになったところである。
 その時の川下り日記を読み返してみると、「この区間はカナディアンで下るような川ではなく、タンデムでは無理である」とはっきりと書いてあった。
 でも、最近は記憶力の衰えが著しく、その時の様子も全然思い出せない。私の川下り日記の場合、話半分に読んでちょうど良いくらいなので、それ程心配はしていなかった。
 ただ、水量がその時よりも20センチ近く増えているので、瀬のパワーが増しているのは確実で、シーズン最後の川下りでカヌーを壊してしまうことだけは避けたかった。

スタート地点の川原 前日に道東道の夕張・占冠間が開通したばかりで、この日は早速新しくできた穂別ICまで高速道路を利用した。
 そのおかげで我が家を出てから1時間半程で、集合場所の福山パーキングに着いてしまう。
 福山からニニウへの道道610号が通行止めのため、スタート地点までは赤岩青厳峡経由で遠回りしなければならない。
 回送用の車を残して、全員でスタート地点へ移動する。
 今回は、3年前の時よりももっと上流の川原からスタートすることになった。
 車を直接川原まで乗り入れられるので、赤岩青厳峡での商業ラフトはここを上陸地点にしているのかもしれない。
 車を走らせながら、その赤岩青厳峡を見下ろすと、さすがに凄い流れである。何時かはここを下ってみたいと考えていたけれど、大型のカナディアンで下るには舟を壊す覚悟が必要だろう。
ここも赤岩青巌峡? 今回の参加者は総勢9名の懲りない面々。
 集合写真を写してから川下りのスタート。
 いきなり岩だらけの流れで分流もしているので、ルート選択に苦労する。
 そこにいた釣り人にニッコリ笑って挨拶をしたが、多分その笑顔は引きつっていたかもしれない。
 そこを全員無事に下り抜けてホッと一息。
 誰かが「赤岩青厳峡もちょろいもんだ」と胸を張っていたけれど、まあ確かにこの辺りまでが赤岩青厳峡だと言えないこともないので、これからは私も「赤岩青厳峡を下ったことがあるぞ」と他人に言いふらすことにしようと思う。


今回のメンバー   最初の岩場をクリア
懲りない面々   赤岩青巌峡?を下り終えてホッと一息

右岸側の快適な瀬 ここから3年前のスタート地点までは誰も下った経験がないので慎重になったが、特に危険な場所は無し。
 二つに大きく分かれた分流は右岸側を選択。
 快適な瀬を下って、前回のスタート地点までやってきた。
 そこは我が家で何度か川原キャンプを楽しんだ場所でもある。
 大きく崩れた土壁は以前と同じだったけれど、テントを張った川原は大きく削られて、その面積が半分になってしまっていた。
 そこから先、川は山間を抜けて景色は開けてくる。
ゆったりと下っていくと、崖の下にちょっとした瀬があって、そこで水舟になってしまった。
 その下流の岸に漕ぎ着け、カヌーをひっくり返して中に入った水を抜く。
 今からこれでは、この後何度もカヌーの水抜きをすることになりそうだ。


鵡川の風景   崖下の瀬
山間を抜けてゆったりとした流れに   ここの瀬で一回目の水抜き

鵡川の風景
山と森の風景が美しい

高速道路の橋 しばらく下っていくと、開通したばかりの道東自動車道が川の上を横切っていた。
 前回下った時はまだ橋脚だけが建っていた高速道路も、今はその上をビュンビュンと車が通過している。
 川の上まで走行音が聞こえてくると言うことは、その隣にあるニニウキャンプ場でも聞こえるということだ。
 多分、来年あたりには再オープンするニニウキャンプ場も、これまでとは全く違ったキャンプ場に変わっているかもしれない。
 高速道路の工事に伴い、鵡川を渡ってキャンプ場へ入るための重量制限のある危なっかしい橋も、現在は立派な橋に架け替えられている。
 それに伴って、崖の途中に作られていた道路も切り替わり、旧道の方はそのほとんどが上から崩れてきた土砂に埋もれかかっている様子だ。
 そこを走りながら鵡川の様子を眺めていた頃のことが懐かしく思い出された。


崖の中腹に旧道が見える   旧道の下を下る
崖の中腹に旧道が見える   旧道の下を下る

 キャンプ場周囲をぐるりと回り、再び高速道路の下を通過する。
 その圧倒的な大きさに、どれだけお金をかければこれだけの施設ができるのだろうと、半ば呆れてしまう。
 でも、これからは何度もこの高速道路を走ることになるのだと考えると、何とも複雑な気持ちだ。


高速道路の下を通過   3年前の工事中高速道路
巨大な構造物だ   3年前にはまだ工事中だった

 その後は緊張を強いられる様な流れもなく、周りの風景を眺めながらのんびりと下っていく。
 さすがにもう河岸の木々は全て葉を落として丸裸になっている。
鵡川の巨大岩 やがて川の真ん中に鎮座する巨大な岩が見えてきた。
 前回下った時は、向かい風に翻弄され、ここまでたどり着いた段階で既にヘロヘロになっていた。
 それに比べて今日は、疲れなどは全く感じず、ここまで何の苦労もすることなく、快適に下ってこれたのである。
 風が吹いていないせいなのか、水が増えて川の流れが速いからなのか、それともタンデムで下っているためなのか。
 まあ、それらの要因すべてが重なって快適な川下りができているのだろう。
 前回はその大岩から飛び込んだ人もいたけれど、さすがに今日の水の冷たさではそんなことをしようとする人は誰もいなかった。

 今日は下る距離が長いので、途中の瀬でも遊ぶ人は少ない。F本会長でさえも、ちょっと遊んだだけで直ぐに下り始めるほどである。
高低差の大きな瀬 高低差の大きな瀬が現れた。
 岩も絡んでいないので、気持ち良く下ることができるが、下った後は思いっきり水舟になってしまうので、水抜きが必要となる。
 12時を過ぎたので、途中の川原で休憩する。
 「最初に赤岩青厳峡を下ったら、その後はちょろいよね」なんて軽口をたたく。
 でも、鵡川の核心部はまだこれからなのである。
 「川が消えてしまった」と思えるくらいに岩だらけの瀬が、今日の水量でどうなっているのかと考えると、さすがに不安になってくる。
 休憩を終えて下り始めても、先の様子が見えない瀬が現れる度に緊張を強いられる。
 皆の後から恐る恐る下っていって、その先に何もないことを確認してから安心して下るのである。

鵡川核心部への入り口 川が大きく左へカーブしているところで、その内側の川原の向こうに巨大な岩が積み重なっている様子が目に入った。
 その瞬間に3年前の記憶が一気に蘇ってくる。
 いよいよこれから先が核心部となるのだ。
 大岩の横をすり抜ける瀬は、その下流が大きな瀞場になっているので、無難にクリア。
 しかし、そこから先には地肌が剥き出しになった山の斜面が川に向かって崩れ落ちている風景が続いていた。
 前回、下っている途中に川が消えてしまったと感じたのは、多分その辺りなのだろう。
 今回はそこを下って行っても川が消えることは無かった。
 福山観測所での水位は前回よりも15センチ多いだけだけれど、川の様子は全く違っているような気がした。
 後になって3年前の写真と見比べると、この付近では30センチ以上は水位が上がっていそうである。


鵡川の核心部   3年前の核心部
鵡川の核心部付近   3年前のほぼ同じ場所、岩の多さが違う

  川が消えていないのは良かったけれど、瀬の中は隠れ岩だらけである。
 おまけに流れも速く、岩避けも忙しい。
息を合わせて瀬を下る 最近はようやくタンデムで漕ぐ時のかみさんとの息も合ってきたようで、そんな瀬の中でも、かみさんのパドル裁きを見ながら私もそれをフォローするように漕いで、次々と岩をかわしていく。
 それでもたまに息が合わずに声を荒げてしまうのは、タンデムで漕ぐ限りは宿命のようなものだろう。
 かみさんは、最初に鵡川のこの区間を下ると聞いた時はかなりビビっていたようだ。
 それなのに、この核心部では私もかなり緊張しながら漕いでいるというのに、かみさんは意外と平気なようだ。
 他のメンバーから「これくらいじゃ物足りないんじゃないですか?」と冗談を言われていたが、本当に物足りなさそうに見えてしまう。
 確かに、今シーズンに下った川では、もっと顔が引き攣るような瀬が沢山あったし、それと比べれば今日は瀬の波もそれほど高くは無く、恐怖感は少ないのだろう。


鵡川の核心部を漕ぎ進む
鵡川の核心部を下っていく

二人で瀬を下る  ただ、後ろでカヌーを操作している私は結構大変だった。
 核心部は思っていた以上に長く、ようやく終わったと思ってもすぐに次の瀬が現れる。
 次第に腕に力が入らなくなってきた。
 何度かヒヤッとすることもあったけれど、ようやく核心部を抜け出せたようだ。
 そこで一旦、岸に上陸する。
 皆の顔には充実した笑みが浮かんでいた。
 懲りない面々も、鵡川の瀬を思う存分楽しめたようである。
 次第に雲が厚くなり、気温も下がってきたようだ。
 休んでいたら体が冷えてしまうので、直ぐにまた漕ぎ始める。
 向かい風が強くなってきたけれど、今日はタンデムなのでそれも大して気にならない。
 前回は、ゴール近くに岩が積み重なったような落ち込みが有り、カナディアンでは下ることができず岩に乗り上げてしまった。
 「そろそろその場所が現れる頃かな」と思って緊張しながら下っていくと、そこでは前回カヌーで乗り上げた場所をかわせるような流れができていて、問題なく下ることができた。
 鵡川のこの区間では、水量次第で川の様子はがらりと変わり、以前に下った時の情報など大して役に立たないのである。
 その良い例が最後に待ち構えていた。

福山大橋から見える最後の瀬 ゴールの手前には福山大橋からも見える瀬があったはずである。
 カヤックのメンバーはそこで最後のサーフィンでも楽しむのだろう。
 国道を走る車が見えてくると、その瀬も間近である。
 先頭を下っていたカヤックが突然その姿を消して、しばらくしてからその姿が下流に現れた。
 結構な落差があるようだ。
 近付いていくと、その瀬にかなりの白波が立っているのが見えてきた。
 そこでK岡さんのカヤックが沈。直ぐにロールで起き上るだろうと思って見ていたら、何度か上がりかけたもののその度に白波に飲み込まれてしまう。
 そしてついに沈脱。
 「かみそりロールがへたれロールに!」
 これは川下り日記のネタになりそうだなと思いながら下っていくと、O橋さんのOC-1までがひっくり返ってしまった
 2艇も沈するなんて普通の瀬ではないことだけは確かである。慌てて進路を変更した。
 その瀬は2段になって落ちていて、右岸寄りがヒーローコース。左岸に寄れば1段目の落ち込みを避けることができる。二人の沈さえ無ければ、当然の様にヒーローコースを下るつもりだったけれど、まずは1段目を左にかわす。2段目の落ち込みももっと左に寄ろうとしたけれど、流れに引き寄せられ落差の大きい場所に入ってしまう。
 そこを落ちた瞬間、カヌーの底が何かにぶつかり「バキッ」と音が聞こえた。カヌーはあっという間に水舟になり、そのままズルズルと後ろに引き込まれる。
 「漕いでっ!」
泳ぐO橋さん 慌ててかみさんに声をかけて、そこから抜け出す。
 その先では、舟を失ったO橋さんが一人寂しく、蛇籠の護岸の上に座り込んでいた。
 こちらも水舟状態で、岸にたどり着くのが精一杯なので、そんなO橋さんを見捨てて対岸へとカヌーを漕ぎ進める。
 残されたO橋さんはどうなるのだろうと心配になって後ろを振り返ると、既にO橋さんは対岸に向かって一人で黙々と泳いでいるところだった。

 そこまで全員何事もなく下ってきたのに、最後の最後で思わぬ落とし穴が待っていたのだ。
 それにしても皆の喜びようと言ったらなかった。
 他人の沈をこれ程までに喜んで良いのだろうかと思えるほどに、皆、満面の笑顔である。
 でも、沈した二人もとっても嬉しそうに見える。
ゴールは目前 聞くところによると、チキンルートに逃げた人も多かったようで、果敢にヒーローコースを下って豪快な沈を披露したお二人はパドラーの鏡と言えるだろう。
 我が家のカナディアンは、岩にぶつけた拍子でまたしてもシートが壊れてしまっていた。
 これだって、真っ直ぐにヒーローコースを下っていれば、そんな隠れ岩にぶつかることも無かったはずである。

 こうして楽しくてスリリングな鵡川の川下りは終了。
 これで今年は心置きなくカヌーを片付けることが出来そうだ。
 でも、その前に壊れたシートを補修しなくては・・・。

2011年10月30日 曇り時々晴れ
当日12:00 鵡川水位(福山観測所) 168.75m



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