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尻別川

(喜茂別川合流部〜京留橋)

自転車で回送 週末の秋晴れの空が広がる土曜日、尻別川の喜茂別から京極までの区間を下ることにした。
 京留橋の上流左岸に車を停めて、そこから喜茂別川合流地点上流のスタート場所まで自転車で移動する。
 その間、約10キロ。アップダウンはあるものの、追い風を受けて、美しい羊蹄山の姿や収穫の始まった山麓の田園の様子を眺めながらの楽しいサイクリングだ。
 今朝は8キロを走ったばかりで、そして自転車、このあとはカヌーのダウンリバーと、まるでトライアスロン競技に参加している気分である。
 30分ほどで、かみさんが待っている川原に到着。
 茂った夏草をかき分けて、川面にカヌーを浮かべる。
 川の上のひんやりとした空気が自転車で火照った体をクールダウンしてくれる。
 気温は25度くらいだろうか?陽射しの強さはまだ真夏と変わりはない。
草をかき分けてカヌーを浮かべる 前日まで、かみさんは千歳川を下りたいと言い張っていた。
 一方の私は尻別川のラフトコースを下るつもりで考えていた。
 最高気温が30度を超える時ならば千歳川で泳ぐのも楽しいけれど、今日はそこまで上がる予想でもない。
 それよりも、青空の下で見る羊蹄山の姿のほうが魅力的である。
 急流を下るのが嫌いなかみさんと折り合いを付けて、最後に決めたのが尻別川のこの区間だった。
 カヌークラブの4月例会でも同じ区間を下っているのだが、その時は今にも雪が舞ってきそうな空模様で、羊蹄山の姿は見えずじまい。
 おまけに雪解け水で川も増水していて、なかなかハードな川下りだったのである。
 今日はその時よりも30センチほど水位が下がって、ここを下るのにはちょうど良い水量である。
 やがてその期待していた風景が目の前に現れた。
 穏やかな流れの先に青空を背景にして蝦夷富士とも呼ばれる美しい山容の羊蹄山が浮かんでいる。
 この風景を見るだけで、ここを下る価値があるというものだ。


尻別川と羊蹄山   尻別川と羊蹄山
流れの先に羊蹄山が浮かぶ   吊り橋と羊蹄山の組み合わせも良い

尻別川と羊蹄山
常に羊蹄山が前方に見える

釣り人も多い 今日は釣り人の姿も多いようだ。
 挨拶をすると、向こうも気持ちの良い挨拶を返してくれる。
 千歳川ではたまに不愉快な思いもさせられるけれど、尻別川の釣り人はここの風景と同じく大らかな気持ちで釣りを楽しんでいるのだろう。

 相変わらず流れの先に見え続けている羊蹄山を眺めながら下っていくと、結構な高低差のある瀬が目の前に現れた。
 尻別川のこの区間では、もっと下流のにある尻切れの瀬程度しか頭に残っていないくて「あれ?こんな瀬があったっけ?」と驚いてしまう。
 太陽の光を受けて白波がキラキラと輝く瀬の先に見える羊蹄山。
 「お〜っ、なかなか絵になってるな〜」と、舟のコントロールはかみさんに任せて、私はカメラを構えたまま瀬の中を下った。


瀬の向こうに羊蹄山
羊蹄山に向かって瀬を下る

唯一の河原 昼も近いので途中の川原で昼食にしようと思ったが、気温も上がってきて日差しを遮るものが何も無い場所で昼を食べる気にもなれず、そのまま通り過ぎる。
 でも、この区間で上陸できるような川原はここしか無かったはずである。
 どうしようかな〜と考えながら下っていくと、川の分流で流れの無い場所を見つけたので、そこにカヌーを乗り入れた。
 日陰もあって、カヌーの上で食事をするのにはちょうど良い場所だった。
 川の中では体長2センチほどの小魚が沢山泳いでいる。
 ご飯粒などを落とすと、その小魚達が一斉に群がってくる様子が面白い。


昼食中   小魚
流れのない場所で昼食   餌に群れる小魚

 昼食を終えて再び下り始める。
 留産橋を過ぎると、川を横切るように岩が並べられている場所が次々と現れる。
 どんな目的で作られたものか分からないが、中央部を漕ぎ抜ける分には支障ともならず、川下り中のアクセントとして楽しめる場所だ。
 その一つ一つでエディに入る練習をしながら下っていく。


流れの中の障害物   流れの中の障害物
中央部を通り抜けられる   連続して障害物が現れる

羊蹄山はもう見えない 途中まで川の正面に見えていた羊蹄山は、いつの間にか左に位置を変え、河畔林に遮られてたまにしかその姿が見られなくなる。
 陽射しを避けて、河畔林が川面に陰をつくる左岸側を下っているので余計にその姿が見えないのだ。
 千歳川ならば途中で川の中に飛び込んだりもできるのだが、尻別川ではそんな気にはなれない。
 水深の浅い場所では川底の石がくっきりと見えるくらいに水は澄んでいるのだけれど、淀みに入ると水の濁りが良く分かる。
 それなのに、清流に生えるはずのバイカモが所々で川底を埋めるように茂っていて驚かされることがある。
 畑作地帯の中を流れる尻別川は、どうしても周りから泥などが流れ込むので清流としてのイメージは少ないが、羊蹄山の伏流水があちらこちらで湧き出していて、そんな場所でバイカモが生育しているのかもしれない。


川底が透けて見える   川底のバイカモ
川底の石がくっきりと見える   バイカモの茂る川底

海綿状の岩が川底に並ぶ 川底の様子と言えば、下っている途中で海綿状の複雑な形をした岩が連なっている場所があった。
 こんなところで釣りをすれば、岩の窪みに思わぬ大物が潜んでいて楽しそうだが、瀬の川底がそんな様子のところはちょっと恐ろしい。
 沈して流されている時にそんな岩に足を挟んだりすると、極めて危険な状況にもなりそうである。

 途中の堰堤を右岸からポーテージする。
 対岸の羊蹄山の姿も美しい。
 ここのすぐ横を国道276号が通り、広い駐車帯もあるが、今日は車が1台停まっているだけで、川の様子を気にするようなドラーバーは誰もいない。
 今日も他のパドラーの姿は何処にも見かけず、こんなに素晴らしい天気の日にこんなに楽しい遊びをどうして誰もやらないのか、毎度のことながらちょっとした寂しさを感じてしまう。


堰堤と羊蹄山   堰堤をポーテージ
堰堤は羊蹄山のビューポイントでもある   堰堤を右岸からポーテージ

尻切れの瀬を下る 堰堤を過ぎると次はいよいよ尻切れの瀬である。
 遠くからでも吹き上げるように白波が立っている様子を確認できる。
 またここでも舟の操作をかみさんに任せて、写真撮影にチャレンジする。
 さすがにちょっと怖かったけれど、なかなか迫力のある写真を撮ることができた。

 ゴールの京留橋に近づくと緩やかな流れが続いている。
 漕ぐ手を止めると、川の流れに乗ってカヌーはスーッと流れていく。
 川の真ん中にポコリと頭を出した岩の上に3匹のカワウがとまっていた。
 音も無く流れてくるカヌーにはまった気気付く様子もない。
岩の上で休んでいるカワウ 前方から「キョキョキョキョキョ」と鳴き声をあげながら、大型の鳥が飛んできて私達の横を飛び過ぎていった。
 「ヤマセミだ・・・」
 私達夫婦が初めて見たヤマセミの姿である。
 カワウ達もようやく私達に気が付き、面倒くさそうに飛び去る。
 空には刷毛で掃いたような絹雲がたなびく。
 暑さはまだ夏のままでも空だけは完全に秋の空である。


 美しい羊蹄山の姿を満喫できた、尻別川の楽しい川下りだった。


秋を感じさせる空と羊蹄山
最後に羊蹄山にお別れの声をかけた

2010年9月4日 晴れ
当日12:00 尻別川水位(三崎観測所) 219.50m
(喜茂別下流観測所) 252.85m



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