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シーソラプチ川

(ラフトスタート地点〜国体コース入り口)

 カヌークラブの7月例会初日は毎度お馴染みのシーソラプチ川。
 前日夜から道央中心に強い雨が降り、川も増水気味のようである。
 現地に向かう途中も雨が降ったり止んだりで、今回は初心者のメンバーも入っているので、状況によっては下る川が変更になるかなと思っていた。
 しかし、時間に余裕を持って現地に到着したつもりが、既に他のメンバーは着替えを済ませてやる気満々の様子。
 上から見下ろす国体コースは、普段は見えているはずの岩も水没し、思わず腰が引けてしまいそうな流れである。
集合写真 何とか雨も上がって、シーソラプチ川のスタート地点へ移動する。
 今シーズン初めての川下り、そしてシーソラプチも初体験になるC葉さんとhaneさんは緊張気味の表情である。
 二人はきっと、クラブのBBSへのN山妻さんの書き込み「シーソラプチは流されても気持ちが良いですよ〜」の言葉をそのまま信じてここへ来てしまったのだろう。
 しかし、目の前の増水した空知川は泳いで気持ち良さそうには全然見えなかった。
 今回のツアーリーダーであるS吉さんから、まずは簡単な注意事項の説明。「クランクの瀬、トラウマの瀬はポーテージも出来ますから大丈夫です」
 これから先、自分達がどんな目に遭うのかも知らずに、C葉さんとhaneさんは素直にウンウンとうなづいているのであった。

簡単な瀬だけれど・・・ スタート直後は浅瀬が続くけれど、今日は水が多いので快適に下れる。
 まずは最初の注意ポイントである五流の瀬を目指す。
 雨は止んでも湿度は高く、川の水面には霧が立ち込めている。
 その霧の中に突然ホイッスルの音が鳴り響いた。
 「えっ?もう?」
 これが今日のC葉さん1回目のであった。
 私の頭の中にはその先で待ち構えている五流の瀬のイメージしか無かったけれど、良く見ればその手前にも瀬があったのだ。
 特に水の増えている今日などは、初心者にとって恐怖の激流として目に映るかもしれない。
 五流の瀬も増水により何時もと様子が違っていた。
 一瞬、何処から進入して良いのか分からなくなり、「え〜い、何処でも良いや」と闇雲に突っ込んで何とか無事に着水。
 ここではO橋さんも黄色いカヌーの底を見せ、C葉さんも勿論沈。haneさんがどうだったかは記憶になし。
 流れも速く、再び雨も降り始め、周りを注意している余裕も無いのだ。


五流の瀬   C葉さん沈
水の多い五流の瀬   C葉さん早くも2回目

 その先でまたしてもC葉さんが沈。
 さすがにこの短時間で3回も連続して沈をすると体力の消耗も激しい。
土砂降りの川 「大丈夫?」と声をかけるが、C葉さんは能面のように感情を失った表情で、ただこくりとうなずくだけだった。
 増水して波の高い瀬が次々と現れる。
 普段なら快感を覚えながらその波を越えていくのだが、今回ばかりは瀬が現れる度に「こんなところを初心者が下れるのだろうか?」と心配になってくる。
 そして結果は全て心配したとおりなのである。
 haneさんは「次こそはロールで起きるチャレンジだけしてみる!」と言えるくらいにまだ余力が残っているようだ。
 雨は更に強くなり、全員がずぶ濡れ状態である。
 カヌーは水に濡れるスポーツなので、雨で濡れるくらいは全然平気なのだけれど、土砂降りの雨の中に体一つで晒されていると、濡れ鼠になった気分である。

 クランクの瀬の手前まで下ってきた。
 普段は下見もせずに通過するところだけれど、さすがに今回はその手前で一旦上陸する。
 そこがクランクの瀬だと理解するのに少し時間がかかった。
 この瀬は、岩に挟まれて下れるルートがクランク状に折れ曲がっているので、私が勝手にそう名付けた場所である。
何処からでも下れそうなクランクの瀬 ところが今日は川幅一杯に水が流れ、何処でも好きな場所を下れるようになっていた。
 C葉さんのためにポーテージできる場所を探そうと思ったけれど、これではどうしようもない。
 他のメンバーは既に下ってしまっているし、これはC葉さんにも頑張ってここを漕いでもらうしか無さそうだ。
 「行くしかないな」と声をかけると、感情を失った表情のままこくりとうなずいた。
 岸に突っ込んだ状態のまま固まっていたC葉さんを、そのままカヌーごと流れの中に引きずり出す。
 そうして何とか下れそうな流れを探してそこまで引っ張ってきて、「それじゃあいくよ!」と声をかけてそっと手を離す。
 突然私の頭の中に、小川の中に笹舟を浮かべて遊んだ子供の頃の一シーンがよみがえってきた。
 その笹舟を必死になって目で追いかける。
 笹舟が大きな波の中にのみ込まれ消えてしまうと、ちょっとだけ悲しく感じたものである。


笹舟流し   笹舟流し、失敗
笹舟を見送る   失敗だ・・・

クランクの瀬を下る 続いて我が家もクランクの瀬を真っ直ぐに下って皆のところまで行くと、そこではC葉さんの今後の身の降り方について鳩首協議が行われていた。
 「相当疲れているはずで、もうこれ以上は無理じゃないか?」
 「この上に民家があるから上陸はできそうだ」
 「でもその後はどうする?」
 「民家に助けを求めて・・・」
 まるで遭難したような騒ぎである。
 C葉さん本人は、今の自分がどんな状態で、これから先どんなことになるのか、全く考えることもできず、ただ呆然と佇んでいるだけだ。
 C葉さんのカヤックに足を入れてみたT津さんが、そのフィッテングの悪さに気付き、とりあえずそこから先は二人のカヤックを取り替えて下り続けることとなった。

トラウマの瀬で笹舟流し それで何とか沈せずに下れそうかなと安心したところに、トラウマの瀬が待ち構えていた。
 普段なら右岸から何とかポーテージできるのだけれど、今日はそこも激しい流れになっている。
 カヤックのメンバーは全員がそのルートを下りていった。
 ここもやっぱり、もう一度笹舟遊びにチャレンジするしかない。
 流れは岩に沿ってカーブしているが、上手くいけばその流れに乗っていけるはずだ。
 慎重に狙いを定めて笹舟を水に浮かべたが、今回もやっぱり途中で波の中に消えてしまった。

 笹舟遊びの感傷に浸っている暇もなく、今度は自分達の身の上を心配しなければならない。
流されるC葉さん シーソラプチ川の水量は、我が家がこれまでに下った中でも今日が一番多いのは確かである。
 一月ほど前に下った時も沈させられたトラウマの瀬、リベンジするにはなかなか厳しい条件だ。
 かみさんは「右岸側を下った方が良いんじゃない?」と言っているが、ここで逃げる訳にはいかない。
 カヌーをゆっくりと漕ぎ進め、落ち込みの直前まで来た時「あれ?真っ直ぐに下れそうだ!」と感じた。
 トラウマの瀬は斜めに落ち込みを下って、その次の横から襲い掛かってくる波が手強いのである。
 これならばその心配も無さそうだと安心して落ち込みに入った瞬間、カヌーの底からガツンと衝撃が突き上げてきて、同時に私の座っていたシートもバリッと音を立ててアームから外れてしまった。
 どうやら、平常時ならば水が流れていないような岩だらけの場所を下ってしまったようだ
 一応は沈もせずに下って、リベンジは果たした格好だけれど、その代償としてのシートの破損はちょっと辛かった。


トラウマの瀬を下る
岩に張り付くんじゃ!と心配されたようだけれど、結構余裕はあった

更に瀬は続く 瀬の中を漕ぐ時は膝立ちの体勢になるのだけれど、お尻は一応シートにもかかっている。
 でも、このシートが壊れていては、両膝の2点支持だけで下らなければならないので、ちょっと不安である。
 波の高い瀬は更に続き、そうしてようやく落庵の前の川岸に到着した。
 ここで一旦上陸して、落ち庵で蕎麦を食べることにする。
 C葉さんの顔にようやく人間らしい表情が戻ってきた。
 ここまで来るのに何回沈したのだろう。
 5回くらいまでは覚えていたけれど、それ以上は本人も周囲も数え切れなくなっていた。
 haneさんも結局、ロールは一度も成功せず、と言うか一度もチャレンジせずに沈脱を繰り返していて、疲れきった二人はここで川下りを終えることとなる。
 蕎麦を食べ終えて外に出ると、雨が再び強くなっていた。
 再び川まで戻ってきたメンバーは、そこの様子を見て唖然となった。
 川の水は真っ茶色に濁り、上陸する時にカヌーを引き上げた水面から20センチ程の落差は無くなり、その濁流が川岸の草を洗っていたのだ。


雨の落庵   一気に増水
落庵を出るとまた雨が   一気に増水した川に唖然とする

 「雨で増水した川には絶対に近づかないように」
 何時もは鼻で笑い飛ばすようなそんな文句が、説得力のある言葉として頭の中に浮かんできた。
 でも、国体コースの入り口までは何とかたどり着かなければならないのだ。
濁流の中を下る 川にカヌーを浮かべると更に激しく雨が降り始めた。
 もう無茶苦茶な状態で、こんなところでカヌーに乗っている自分達の姿が信じられない。
 そこから直ぐ下流の橋の下は、左岸にできたチキンルートを下る。
 波を超えるたびにカヌーの中に水が入ってきて、堪らずに途中のエディに逃げ込む。
 カヌーをひっくり返してたっぷりと入った中の水を抜きたいところだけれど、そんな場所は何処にも無いので、小さなベイラーで1杯1杯汲み出すしかない。
 そうして身軽になったところで再び下り始め、ようやく国体コース入り口の岸にたどり着いた。
 これほど身の危険を感じた川下りは始めての体験である。
 全員がここで上がるのかと思ったら、G藤さんとF本さんがそのまま下り続ける様子だ。
 カヤックのこの二人なら話は分かるけれど、O橋さん、I田さん、228君のOC-1組まで下ると言うのには驚いてしまった。
228君三段で沈 特に、先月の天塩川例会で死ぬほど退屈していた228君は、今日は最初っからテンションが上がって「楽しい、楽しい」とうわ言のように呟きながら下っていて、濁流となった国体コースを目の前にしても全く怯む様子も見せないのである。
 他のメンバーは国体コースを見下ろす陸の上から、文字通りの高みの見物をさせてもらう。
 「あっ、あんなところでひっくり返った」
 「あ〜あ、何処まで流れていくんだろう」
 のん気に上から眺めているだけでは分からないが、実際の水の力は凄かった様である。
 あれだけ元気一杯だった228君も、戻ってきた時はボロボロの姿に変わり果てていた。

 こうして、誰も大きな怪我をすることも無く、雨で増水したシーソラプチ川と空知川国体コースを無事に下り終えたのである。
 今日の宿泊地であるどんころでは、酒の肴になる話題に事欠かなさそうだ。


三段の瀬   渡月橋の落ち込み
三段の瀬を下るO橋さん   渡月橋の落ち込みを下る228君

渡月橋下流の瀬   渡月橋下流の瀬
渡月橋下流の瀬を下るI田さん   渡月橋下流の瀬で沈するO橋さん

大増水の国体コース
大増水の空知川国体コース、こんなところを下る人がいるとは!

写真提供 サダ吉さん
2010年7月24日 雨
当日12:00 空知川水位(幾寅観測所) 354.10m→354.26m
川下りの様子の動画はこちら



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