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歴舟中の川

(砂防ダム〜キャンプ場)

 カヌークラブの歴舟川例会初日は、歴舟川支流の中の川を下る。
 ここは去年の例会最終日に希望者だけの少人数で下っていた。
 私にとっては初めて下る場所で、水の透明度は同じ支流のヌビナイ川に勝るとも劣らず、そして川の難易度はヌビナイ川より低く、「こんなに素晴らしい川を今まで知らずにいたなんて」とすっかり気に入ってしまった。
 そこで今年は中の川が例会の正式な日程に組み入れられたのである。
 集合時間はカムイコタン公園キャンプ場に11時。
出発準備中 お昼を食べてからスタートするのかと思ってのんびりと現地に着くと、着替えを済ませている人までいて既に臨戦態勢である。
 慌ててテントを張って、川下りの身支度を整える。
今回のツアーリーダーであるS吉さんの説明では、できれば4時半にはキャンプ場まで戻って来たいとのこと。
 去年はあっさりと下り終えた印象があるので「こんな早い時間から下り始めて、何で到着がそんなに遅くなるの?」と首をかしげながらスタート地点の砂防ダムへと向かった。
 連休期間中の天気予報はパッとしなかったけれど、この日はまだ青空が広がり、砂防ダムからカーテンの様に流れ落ちる水流がキラキラと輝いて美しい。
 1頭のエゾシカが川原に現れ、キョトンとした表情で私達を眺めている。


砂防ダム   集合写真
砂防ダムを落ちる水の流れが美しい   この時は皆まだ元気そうだが・・・

浅瀬を下る 集合写真を写して川下りのスタート。
 水は去年よりもかなり少なく、ゴリゴリとカヌーの底を擦りながら最初の瀞場へと入る。
 ややエメラルドグリーンに染まった水を透して見える川底の様子が息を呑む美しさだ。
 そこから先、両岸から迫る岸壁の間をその美しい水が縫うように流れていく。
 そしてその流れに乗って川を下る。
 次々と移り変わる風景に、その度に感動の声を上げる。
 これは、カヌーをやっている人間でしか知ることのできない感動である。


透明な水
この透明度が堪らない

流れは渓谷の中へ   エメラルドグリーンの淵
流れは渓谷の中へと入っていく   エメラルドグリーンに染まる淵

河原で休憩 間もなく途中の川原で昼食の休憩となった。
 川下り中の食事はおにぎりとかパン等の携行食が普通だけれど、私はキャンプ場で食べるつもりでいたコンビニ弁当をそのままドライバッグに入れて持ってきていた。
 幸い、沈もしなかったので、容器の中の各食材が定位置を保った状態の弁当を美味しく食べることができたのである。
 F本さんとN島さんが気持ち良さそうに泳ぎ始めた。
 二人とも九州男児なので、川でこうやって遊ぶのは子供の頃からの習慣なのだろう。

 再び下り始めるが、カヌーを引きずって歩くことが増えてきた。
 去年に下った時も決して水が多いと言える状況では無かったけれど、こんな苦労は殆どしなかったはずだ。
 歴舟川本流の尾田観測所の水位も去年とは10センチしか違わない。
 もっとも、歴舟川の場合は水が流れている場所自体が大きく変わったりするので、年による水位の比較はあまり意味が無いのかもしれない。
 ブツブツと文句を言いながらも、周りの美しい風景と清冽な水がライニングダウンの苦労を忘れさせてくれる。


美しい流れ   ライニングダウン
相変わらず美しい流れが続く   ライニングダウンも苦にならない

 歩いて、瀬を下って、漕いで、歩いて。
 何だか川を下っているのか、川を歩いているのか、訳が分からなくなってくる。
 この区間一番の難所もとてもじゃないが下れるような状態ではない。
 一人で乗ってみたがどうしようもなかった。

瀬を下る   どうしようもない
かろうじて下れる瀬   ここはどうしようもない

  2度目の休憩で上陸した川原では、目の前の瀞場の美しさに私も思わず泳いでしまう。
 次々と他のメンバーも川の中に入ってきて、かみさんまでが先頭を切って岩の上から飛び込んだりしている。
 中の川の美しい水が皆の心を子供の頃に戻してくれたようだ。


皆で泳ぐ   飛び込むかみさん
本人は飛び込む気は無かったようだが・・・   結局、飛び込んだ

苦労して浅瀬を下る  しかし、楽しい川下りもこの辺りまでだった。
 中の川大橋を過ぎると風景も単調になり、次々と現れる瀬はことごとく水が少なくて、何処を下れば良いのか頭を悩ますような瀬ばかりである。
 カナディアンはまだ、舟から下りて歩くだけで済むけれど、カヤックの場合は一々舟を降りていたらスプレースカートの装着などで大変なので、意地でもカヤックに乗ったまま腕だけで下ろうとする。
 いわゆるイグアナ状態で、疲労も大きそうだ。
 途中で休憩しようとすると、ツアーリーダS吉さんから「暗くなる前に着かなくては駄目なので休みは無しです!」と容赦の無い檄が飛ぶ。
 ようやく集合午前11時、到着予定午後4時30分の時間の意味を知ることができた。
美しい中の川の風景 日も短くなって、今時期は5時を過ぎれば暗くなり始めるのだ。集合時間を12時にしていたら、到着する頃には間違いなく辺りは暗くなっていたことだろう。
 牛飼いに追われる牛の群れのように、皆のそのそと再び下り始める。
 しかしその先でとびきり美しい瀞場を見つけると、S吉さんの指示などお構いなしに、その前の河原に上陸してしまった。
 その河原にはオーバーハング気味の絶壁が、圧倒的な迫力で覆い被さってくる。
 この付近も中の川で最も美しいポイントの一つである。
 そこで暫し休息した後、最後の苦難の川下りへと旅立つのであった。


美しい中の川の風景
夢のような世界である

河原歩きが続く いつの間にか空には灰色の雲が広がり、瀬の中をゴリゴリと下る皆の後姿がなおさら疲れきって見える。
 ようやくもう一つの支流であるヌビナイ川と合流した。
 そちらの水量も相当に少なく、こんな時にヌビナイ川を下ったりしたら、中の川以上の悲惨な状況になりそうである。
 そして歴舟川本流に合流した時は、何時も以上の感動に皆は包まれたのである。
 と言っても、そこから先が楽に下れる訳ではなく、三つの流れが合わさって増えた水量は川幅一杯に薄く広がるだけで、底を擦りながら下る状況に全く変化はなかった。

 キャンプ場の前の川原に16時40分到着。
 ベテランG藤さんの弁。「最後に一つでも楽しいウェーブがあれば、それまでの苦労は完全に忘れてしまうのに、今日は最後まで何も無かった」。
 私の場合は「最初に見ることのできた美しい風景が、その後の苦労を少しだけ忘れさせてくれた」であった。



2010年9月18日 晴れのち曇り
当日12:00 歴舟川水位(尾田観測所) 102.23m



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