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琵琶瀬川

(寿磯橋〜寿磯橋)

 3泊4日の道東キャンプ旅行のイベントとして予定していた、琵琶瀬川の川下り。
 この日は朝から素晴らしい青空が広がり、絶好のカヌー日和である。
 下るのはMGロードに架かる寿磯橋から河口までの約5キロの区間。
 寿磯橋の直ぐ隣りには駐車場もあるので出艇の準備もし易い。
琵琶瀬川河口 橋の横から川岸までカヌーを降ろして、河口へ車を回す。
 何時もなら荷物の見張りのためにかみさんを残していくのだが、ここならば盗まれる心配も全く無さそうなので、一緒に河口へ向かった。
 琵琶瀬川の河口付近は漁船がずらりと係留されていて、川岸は港のような垂直護岸になっているので、そこから上陸することは無理である。
 一箇所だけ漁船を引き上げるための斜路があるので、そこから上陸するつもりで考えていた。
 近くに車を停め、霧多布に一軒だけあるタクシー会社「霧多布中央ハイヤー」に電話をかける。
 ところが何度呼び出し音が鳴っても、誰も電話に出てくれない。
 多分、1人か2人しかいないタクシー会社なので、お客さんが付いたら会社には誰もいなくなるのだろう。
 しばらく経ってからかけ直すことにして、ブラブラとその辺を散歩していると、漁を終えた漁船が大きな波を立てながら次々と川の中へ入ってきた。
漁船が行き来する琵琶瀬川河口 昆布漁に出ていた漁船らしく、ちょうど今が戻ってくる時間帯なのかもしれない。
 こんなところにカヌーで下ってくると、漁船の立てる波が怖いし、それよりも邪魔になってしまいそうだ。
 相変わらずタクシー会社には電話が繋がらず、もっと他で上陸できる場所を探すことにする。
 上流へ向かって垂直護岸の無くなるところまで行ってみると、そこにちょうど良い上陸場所を見つけた。
 でも、良く見ると付近は浅瀬になっていて、泥の中をズボズボと埋りながらカヌーを引き上げなければならない。
 こんな場所で泥だらけになるのも気がすすまないので、川下りは止めて出艇場所から川を往復することに決めた。
 流れの全く無い川なので、上流も下流も関係なのである。
 再び寿磯橋まで戻る途中、お客さんを乗せたタクシーとすれ違った。
 この様な小さな町でタクシーに乗るためには、前日に予約でもしておいた方が良いのかも知れない。

寿磯橋の上から見た琵琶瀬川 MGロードを走っていると2羽の丹頂が直ぐ近くを飛び去っていった。
 河口付近でも川の中で餌を探す丹頂の姿を確認できたし、もしかしたら川下り中にその姿を間近で見られるかもしれない。
 琵琶瀬川の水面にカヌーを浮かべる。
 周りをヨシに囲まれ見通しも利かず、まるで美々川を下っている雰囲気だ。
 でも、次第に川幅が広がり視界も開けてくる。
 今日は風が強く、川を下るのに苦労するかもしれないと心配していたが、川の上は以外に穏やかだった。
 周囲の草が風を遮ってくれているらしい。


琵琶瀬川の風景   琵琶瀬川の風景
最初は見通しが利かないが   直ぐに視界が開けてくる

琵琶瀬川の風景 丘の中腹に建つ霧多布湿原センターの建物が遠くに見える。
 空を見上げるとその青さが眩しいくらいだ。
 できれば川の水面も鏡の様にその青さを映してくれていたら良いのだけれど、風のおかげで細波が立っているのが残念である。
 でもその細波が太陽の光でキラキラと輝いて見えるのもまた美しい風景だ。
 水深が浅いので、茶色く色づいた水を透して川底に自分の影が映っている。
 どういう加減なのか、その影の周囲が赤く輝き、そしてまるで後光が射しているかのように放射状に光の筋がそこから広がっていた。


琵琶瀬川の風景
丘の中腹に霧多布湿原センターが見える

琵琶瀬川の風景   後光が射してる?
風に流されながら川を下る   影に後光が射してる?

琵琶瀬川の風景 川幅は更に広がり、そこに草の生えた土手が複雑に絡まり、まるで迷路のようになってくる。
 上流から河口を目指すのは比較的簡単だけれど、河口から漕ぎ上がってきて上流を目指す時は、初めての人なら絶対に道に、いや、川に迷うことだろう。
 河口付近の家並みが水平線から浮かぶように見えている。
 干潟では水鳥たちが餌をついばんでいる。
 川岸に打ち捨てられた漁船。
 そんな風景を眺めながら、風に吹かれるままに下っていく。


琵琶瀬川の水鳥   琵琶瀬川の廃船
餌をついばむ水鳥   打ち捨てられた廃船

 川を往復して下る時は、何処まで行ってから引き返すか、特別な目的が無い時は判断に迷うところだ。
 できれば河口近くにいた丹頂の姿を見たかったけれど、風の向きは帰りに向かい風になりそうなので、帰りの事を考えるとあまり下流までは下っていられない。
 スタート地点まで漕ぎ上がり、それから温泉に入って一汗流し、ちょうど昼頃に何処かで食事ができるようになる時間を頭の中で逆算し、引き返す時間を決定した。
風の弱いところで一休み 予想したとおり、帰りは真正面から風が吹きつけてきたけれど、2馬力で漕げば何とかなるものである。
 二人で黙々と漕ぎ続け、ようやく風の吹き抜ける場所から抜け出すことができた。
 トンビだろうか?
 真っ青な空の中、数羽がまとまって、ゆっくりと旋回しながら遥かな高みを目指すように上昇していくのが見える。
 多分そこに上昇気流が発生しているのだろう。
 午後からの予定さえ無ければ、私達もあのトンビの様に湿原の美しい風景の中でゆっくりと時間を過ごしたいところである。
 後ろ髪を引かれる思いでスタート地点まで戻った後は、サッサとカヌーを積み込み、まずは温泉へ向けて車を走らせた。

2010年9月24日 快晴 


琵琶瀬川の風景
鳶が空を舞っていた

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