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千歳川

(第一鳥柵舞橋〜高速道路下)

スタート地点 鵡川の激流下りから一日明けて、天気も良いので、口直しに千歳川に出かけることにする。
 本当は、岩にぶつけた膝は痛むし、筋肉痛もひどかったけれど、一人で遊んできた負い目から、疲れた体に鞭打ってでもかみさんの機嫌をとることにしたのである。
 夜から明け方にかけて、また雨が降っていたものの、千歳川に着く頃には、気持ちの良い青空が広がっていた。
 高速道路下の上陸地点に車をデポして、スタート地点までは自転車で戻る。
 向かい風が強かったけれど、今年は自転車トレーニングもやっていたので、全然苦にならない。
 秋の陽射しが川底の石を照らし出す。
 昨日下った鵡川とのギャップの大きさに、戸惑いさえ感じてしまう。
傷ついたサケ ボロボロに傷ついたサケが、淀みの中を静かに泳いでいた。
 もう少し季節が進むと、川の所々から死んだサケの生臭い臭いが漂ってくるのだけれど、今回はまだ大丈夫そうだ。
 清冽な水にカヌーを浮かべ、川の流れに舟をゆだねて漕ぎ下る。
 今回は、リバースだとか、リーンだとか、カヌーの技術を磨こうなんて気持ちはさらさら無く、色づき始めた木々の紅葉を愛でながら、ただひたすらのんびりと下るだけである。
 まだそれほど紅葉は進んでいないけれど、緑から赤や黄色へと変わりつつある、今時期の木々の色づき具合もなかなか良いものである。
 秋の陽射しが、それらの色合いを更に引き立ててくれる。


紅葉の下で
色付いた紅葉の下で一休み

紅葉と釣り人 3連休の最終日、天気にも恵まれ、紅葉の名所は何処も人でいっぱいになっていることだろう。
 それに比べて、川の上は混雑知らずだ。
 釣り人の姿がちょっと気になる程度である。
 それでも、私は話しでしか聞いたことが無いけれど、本州方面の鮎釣り師とパドラーの関係から比べたら、千歳川での釣り師とパドラーはとても良好な関係を保っているのだろう。
 ただ、最近はカヌーの上から挨拶しても、無視されることが多くなってきたような気もする。
 若い釣り人はにっこりと笑顔を返してくれるけれど、中年男性釣り師からは、ムッとした表情でそっぽを向かれることが多い気がするのは、私の思い過ごしだろうか。


澄んだ千歳川の水
澄みきった千歳川の水

マナブの風景 「マナブ」まで下ってくると、ゲートがまだ下がっていたので、そこで少しだけ練習モードでゲートをくぐってみた。
 でも、疲れるので直ぐに止めてしまう。今日はあくまでものんびりモードで下るのである。
 何時も見かける人達が、何時ものようにグルグルと水の中で回っていた。
 ここも、北海道の川における数少ない社交場の一つなのだろう。

 マナブを過ぎて、とある事故現場まで下ってきた。
 一ヶ月ほど前、我がクラブのO橋さんとS水君が、カナディアンと倒木の間に挟まれた要救助者を発見して警察や消防に連絡し、駆けつけた消防のレスキューなどと協力して、その遭難者の救助にあたった話を聞いていた、その場所である。
 この時、レスキュー隊が持ってきた、交通事故現場などで活躍するスプレッターやエンジンカッター、チェーンソーなどは、水の中では全く役に立たず、ドライスーツに身を包んだO橋さん達の方が活躍したそうである。
 結局、その遭難者は足を骨折していて、そのまま救急車で運ばれたとのことだけれど、もしもO橋さん達が下ってこなければ、低体温症で命の危険さえあったところだ。
事故現場 付近を見渡しても、そんな事故を引き起こしそうな危険な倒木は見当たらない。それでも、事故が起こってしまうのが川の怖さなのである。
 まさかそんなことは無いだろうけれど、この遭難者が私のサイトを見て「千歳川は簡単に下れる川だ」と誤解したのではないかと気になってしまう。
 最近の川下り日記では、「千歳川をのんびりと下りました」、そんな話ししか書いていない。でも、千歳川は、初心者がのんびりと下れるような川では絶対にないのである。
 ちょっとチャレンジしてみようとの冒険心を止めるつもりはないけれど、買ったばかりのカヌーを失ったり、怪我をしてしまったのでは、その代償は大きすぎる。
 カヌー初心者が千歳川を下るのなら、経験者との同行をお勧めする。

 その事故現場を過ぎて、カワセミ撮影ポイントへと下ってくる。
 迷彩模様の撮影テントが置かれたままになっているけれど、そこに人がいるのを見たことがない。早朝とかの時間帯にでも撮影しているのだろうか。
 ここで川は大きくカーブし、大きな溜まりを作っている。そこには、湧き水の小さな沢も流れ込み、千歳川の中では私の大好きな場所である。
 そこからの風景に見とれていると、突然直ぐ近くでサケが跳ねて驚かされた。

カワセミ撮影ポイントからの風景
川が大きくカーブするこの場所では、川岸がまるで島のように見える

 カワセミ撮影ポイントを過ぎた少し先の右岸に、湧き水の湧く場所がある。
 結構な水量の湧き水である。
 一度飲んでみたい気もするけど、ちょっとためらってしまう。
魚道工事現場 昔は、湧き水は安心して飲めるものだと信じていたけれど、今の世の中はそれほど甘くはない。
 山の中に産廃処理場が作られていることだってあるので、それを確かめた後でなければ、湧き水だからと言って安心は出来ないのだ。

 紅葉に見とれながら下ってくると、その楽しい気分を一気に吹き飛ばされるのが魚道の工事現場である。
 魚道の工事はかなり進んでいた。
 流れ全体が、そのまま左に切り替わるようである。
 その工事が終わった後は、コンクリートに塗り固められた中を下らなければならないのだろう。
 重機の音があちらこちらから響いてくるので、そんなところはサッサと漕ぎ下るしかない。

三つの分流分かれ道 市街地へ近づいたところで三つに分かれる分流、今日は素直に左のルートへと入る。
 ここを右へ入ってしまうと、途中の倒木に意地悪されることになるのだ。
 遭難者の救助で、消防のレスキュー隊を上回るほどの活躍をしたO橋さん達。
 完全なヒーローとなってここまで下ってきたのが、右の分流へ入ってしまい、その倒木に引っ掛かって二人仲良く素沈すると言った、話の落ちまで付いている。
 それを聞いた時は、可笑しくて笑い転げてしまった。

 その後も紅葉を楽しみながら、蛇籠の落ち込みまで下ってきた。
 そこでは男性が二人蛇籠の上に立っていて、ちょうどそこへカヌーが下ってきたものだから、期待を込めた表情でこちらを見ていた。
 こちらとしては、もしもの事態も考えられるので、誰も見てないところでこっそりと下りたいのに、困ったものである。
蛇篭の落ち込み それよりも困ったのが、その手前で釣り人が川を横断するように竿を出していることだった。
 こちらに気付いてもらおうと、何度かホイッスルを鳴らしたが全然気付く素振りもない。そのまま直前まで来てしまったので、焦って「すいませ〜ん、通してもらえますか!」と大声を出したら、ようやく竿を上げてくれた。
 そのために、落ち込みへの進入ルートを見極める余裕がなくなってしまう。
 寸前で左岸寄りに進路を変えて、斜めから落ち込みに入り、無事にクリア。
 沈しなくてホッとしたけれど、果たしてこれで見物客に満足してもらえたかどうかは不明である。

 住宅街が見えてきて、後はこのままゴール地点まで下るだけと思っていると、突然かみさんが「あっ!パドルよ!」と声を上げた。
 見ると、右岸の倒木の中に木製パドルが、引っ掛かっている。
 でも、その時は既に横を通り過ぎてしまっていて、流れも速いので諦めようと思ったけれど、かみさんはそうではなかった。
パドルをゲット Uターンして、そこまで漕ぎ上がることにしたけれど、この時のかみさんのパドリングは、私が初めて見る様な力強さであった。
 そうして引き上げたパドルは、長い間、水の中に使っていたようで、水垢が付いてヌルヌルしていたけれど、新品そのままのパドルだった。
 もしかしたら、O橋さん達が救出劇を演じた時に、流されたものかもしれない。
 気の毒だけれど、川のゴミは気付いた人間が回収しなければならないのである。

 そうして、お土産付きで、今日の川下りが終了。
 自転車を取りに戻ると、これから下るところだったN山さん夫婦と、久しぶりに顔を合わせた。
 そこでまた、昨日の鵡川のことで話が盛り上がる。
 大波大好きのN山さんは、参加できなかったことがとっても口惜しそうだった。
 今日の千歳川も楽しかったけれど、恐怖に顔を引き攣らせながら下った昨日の鵡川も、それ以上に楽しかったと感じることができて、良い口直しダウンリバーとなったのである。

2009年10月12日 晴れ


千歳川の紅葉風景
千歳川の紅葉 千歳川の紅葉 千歳川の紅葉

千歳川の紅葉   千歳川の紅葉



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