カワセミ撮影ポイントを過ぎた少し先の右岸に、湧き水の湧く場所がある。
結構な水量の湧き水である。
一度飲んでみたい気もするけど、ちょっとためらってしまう。
昔は、湧き水は安心して飲めるものだと信じていたけれど、今の世の中はそれほど甘くはない。
山の中に産廃処理場が作られていることだってあるので、それを確かめた後でなければ、湧き水だからと言って安心は出来ないのだ。
紅葉に見とれながら下ってくると、その楽しい気分を一気に吹き飛ばされるのが魚道の工事現場である。
魚道の工事はかなり進んでいた。
流れ全体が、そのまま左に切り替わるようである。
その工事が終わった後は、コンクリートに塗り固められた中を下らなければならないのだろう。
重機の音があちらこちらから響いてくるので、そんなところはサッサと漕ぎ下るしかない。
市街地へ近づいたところで三つに分かれる分流、今日は素直に左のルートへと入る。
ここを右へ入ってしまうと、途中の倒木に意地悪されることになるのだ。
遭難者の救助で、消防のレスキュー隊を上回るほどの活躍をしたO橋さん達。
完全なヒーローとなってここまで下ってきたのが、右の分流へ入ってしまい、その倒木に引っ掛かって二人仲良く素沈すると言った、話の落ちまで付いている。
それを聞いた時は、可笑しくて笑い転げてしまった。
その後も紅葉を楽しみながら、蛇籠の落ち込みまで下ってきた。
そこでは男性が二人蛇籠の上に立っていて、ちょうどそこへカヌーが下ってきたものだから、期待を込めた表情でこちらを見ていた。
こちらとしては、もしもの事態も考えられるので、誰も見てないところでこっそりと下りたいのに、困ったものである。
それよりも困ったのが、その手前で釣り人が川を横断するように竿を出していることだった。
こちらに気付いてもらおうと、何度かホイッスルを鳴らしたが全然気付く素振りもない。そのまま直前まで来てしまったので、焦って「すいませ〜ん、通してもらえますか!」と大声を出したら、ようやく竿を上げてくれた。
そのために、落ち込みへの進入ルートを見極める余裕がなくなってしまう。
寸前で左岸寄りに進路を変えて、斜めから落ち込みに入り、無事にクリア。
沈しなくてホッとしたけれど、果たしてこれで見物客に満足してもらえたかどうかは不明である。
住宅街が見えてきて、後はこのままゴール地点まで下るだけと思っていると、突然かみさんが「あっ!パドルよ!」と声を上げた。
見ると、右岸の倒木の中に木製パドルが、引っ掛かっている。
でも、その時は既に横を通り過ぎてしまっていて、流れも速いので諦めようと思ったけれど、かみさんはそうではなかった。
Uターンして、そこまで漕ぎ上がることにしたけれど、この時のかみさんのパドリングは、私が初めて見る様な力強さであった。
そうして引き上げたパドルは、長い間、水の中に使っていたようで、水垢が付いてヌルヌルしていたけれど、新品そのままのパドルだった。
もしかしたら、O橋さん達が救出劇を演じた時に、流されたものかもしれない。
気の毒だけれど、川のゴミは気付いた人間が回収しなければならないのである。
そうして、お土産付きで、今日の川下りが終了。
自転車を取りに戻ると、これから下るところだったN山さん夫婦と、久しぶりに顔を合わせた。
そこでまた、昨日の鵡川のことで話が盛り上がる。
大波大好きのN山さんは、参加できなかったことがとっても口惜しそうだった。
今日の千歳川も楽しかったけれど、恐怖に顔を引き攣らせながら下った昨日の鵡川も、それ以上に楽しかったと感じることができて、良い口直しダウンリバーとなったのである。
2009年10月12日 晴れ |