そして1週間後、クラブのK島さんが新入会員のTさんと千歳川でミニミニ練習会をするというので、週末に何の予定も無かった我が家はそれに参加させてもらうことにした。
同じような人達が集まって、結局総勢10名と、ミニミニの取れた練習会となる。
当日は航空自衛隊千歳基地での航空ショーとぶつかり、周辺の道路は大渋滞。高速道路の千歳インター出口でも5キロ以上の渋滞となっていたので、一つ手前の恵庭インターで下り、裏道を抜けて、何とか余裕を持って集合場所まで辿り着けた。
札幌が晴れていても、太平洋からの霧が流れ込む千歳付近は曇って気温が低いことが多い。
この日も千歳に近づくにしたがって雲が広がり、途中で霧雨まで降ってくる始末だった。
それでも下り始める頃には雲も薄くなって、気温も上がってくる。
S水君の到着が遅れていた。
クラブの他のメンバーは老獪な人間ばかりなので、要領良く渋滞を抜け出すことができるのだけれど、まだ純朴なS水君は、何もしないで素直に渋滞の列に並んでいるのだろう。
K島さんがS水君の到着をもう少し待ってみることにして、他のメンバーは先に下り始める。
雲の切れ間から陽が射してきた。
そうすると、澄んだ水を透して川底の様子がくっきりと見えてくる。
色とりどりの川底の小石、流れに揺れる緑のバイカモ、本当に美しい千歳川の風景である。陽が射すだけで、先週とはまるで違う川のように感じてしまう。
そんな流れの中で、エディイン・アウトやフェリーグライドをしながらゆっくりと下っていると、K島さんが追いついてきた。
S水君は来たけれど、急な仕事が入って川を下れなくなり、下流のマナブに顔だけは出すとのことである。
S水君は先週も、時間が無いからと、マナブで練習しただけで帰ってしまっていたし、何だかとっても気の毒だった。
両岸から大きく張り出し木の枝に注意しながら下っていくと、マナブの入り口へと出てくる。今日はそこにゲートが張られていたので、何度かそれをくぐる練習をするけれど、なかなか上手くできない。
何時もここで一人でグルグルと回っているカヤッカーのおじさんから「もうアリーには乗らないの?、あっちの方が格好良かったのに」と声をかけられた。
確かに、以前はアリーで川を下るのが我が家のステータスだったのに、今のこの舟では、他のカナディアンに乗っている人と何の違いも無いのである。
と言っても、1時間以上かけて再びアリーを組み立てる気にはなかなかなれないのだ。
岸辺に人影が見えたので、S水君だと思って近づいていったが、何だか様子がおかしかった。
「あれ?S水君ってドライスーツを着ていない時はこんなに男前だったっけ?」
今回は別のクラブからしげさんが参加していたけれど、そのしげさんと親しそうに話しをしていた。
「あれ?この二人て知り合いだったっけ?」
どうやらその人物は、S水君でないことだけは確かだけど、何処かで見たことのある顔だった。そしてようやく、その彼がしげさんと同じクラブのネイティブさんであることに気が付いた。
でも、しげさんと彼の会話を聞いていると「急な仕事が入って川を下れなくなって・・・」と、何処かで聞いたような内容だった。
「???」と頭の中が混乱している時、そのS水君がカヌーに乗って颯爽と現れたのである。
「いや〜、何だか道路が混んでいて遅れちゃいました〜」
K島さんはこの時になって初めて、自分が話していた相手がS水君ではなかったことを知ったのである。
それにしても、集合場所に着いた途端、見ず知らずの女性から親しげに話しかけられたネイティブさんも、さぞ驚いたことだろう。
まあ、この辺でカヌーに乗っている人間は、大体が何処かで繋がっているようなものなので、そんなことも気にならないのかもしれない。
暑くなるだろうと思って、わざわざ前の日にTシャツタイプの水着を買ってきて、今日はそれを着て下っていた。
でも、川の上は涼しくて、積極的に水の中に入りたくなるような暑さではない。
恐る恐る水の中に入ってみたところ、全く冷たさは感じなかった。逆に気持ちが良いくらいだ。
かみさんも、泳ぎ始める。
水の中に入るのが楽しいので、足の付かない場所で、ひっくり返ったカヌーを元に戻しての再乗艇の練習をする。
こんな練習は、夏の今時期でなければする気にはなれないのだ。
しげさんの新艇OC−1にも試乗させてもらう。
慣れないうちはグラグラと揺れて安定が悪いけれど、エディラインでクルリと回る操作性の良さがなかなか魅力的である。
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