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千歳川

(第一鳥柵舞橋〜高速道路下)

全員集合 今年のカヌーシーズンも、毎年恒例となっているカヌークラブの千歳川例会で幕を開ける。
 4月もまだ上旬と言えるこの次期では、なかなかカヌーに乗ろうとの気持ちにはならないところだけれど、ここ数年は雪解けも早まっているので、私の中では既にカヌーの虫が騒ぎ始めていた。
 しかし、札幌から千歳に向かうにしたがって、上空にはいかにも冷気を伴っていそうな灰色の雲が広がり始め、風もかなり強まってきている様子だ。高速道路のパーキングに立ち寄って車を降りた瞬間、あまりの寒さに体が縮み上がった。
 その時の気温は6度。それに強風を伴えば、体感気温は0度近くまで下がっているはずである。
 この時点で気分はかなり萎えかけていたけれど、集合場所の第一烏柵舞橋までやってくると、その風もやや治まり、半年振りの再会となるメンバーの顔を見ると、再びやる気が湧き上がってきた。
 こんな天気なので参加者も少ないだろうと思っていたら、カヌーを積んだ車が次々と到着して、あっと言う間に駐車場が一杯になってしまう。
 私ばかりではなくて、皆もやっぱりこのシーズンを心待ちにしていたのだろう。

笑われた! 今回の川下りには新しいアイテムを持ってきていた。
 アクションカムと名付けられた、小型のビデオカメラである。
 防水で、ヘルメットにも取り付けられるので、カヌーで川を下りながら迫力のある動画を撮影できる。
 そう考えて衝動買いしてしまったアクションカムだけれど、先日スキー場でかみさんの滑る姿を撮影してみて、その性能の限界を直ぐに感じてしまった。
 まあ、2万円を切るビデオカメラなので、玩具として考えれば不満は無い。
 ただ、ヘルメットに取り付けた様子はまるでちょんまげみたいで、皆の笑いを誘ってしまう。
 丸いヘルメットにベルトとベルクロテープで止めるだけなので、どうしてもグラグラしてしまって、撮影対象にカメラが向いているのかどうかも心もとない。
 おまけに、モニターも無いので、何が映っているかは帰ってからのお楽しみだ。
 カメラを左右にパンさせる時は、映像が流れないように、首をゆっくりゆっくりと回さなければならない。
 頭の上のカメラに集中しすぎると川下りを楽しむ余裕も無くなるので、途中からは気にせずに下ることにした。


枝の下をくぐり抜ける
枝の下をくぐって

 雪は無くなっても河畔の木々の芽はまだ硬いままで、おまけに日も陰っていては、さすがに殺風景としか表現のしようが無い。
 それでも、所々でひっそりと花を咲かせている福寿草が、かろうじて春の訪れを感じさせてくれる。
 今日の例会には、カヤックで川を下るのが初めてという若者S森君がゲストで参加していた。
 「これは何か事件が起きるかも・・・」と温かな眼差しで見守っていたが、意外としっかりとしたパドリングで、周りの人間を安心(がっかり?)させてくれる。


のんびりと下り続ける
のんびりとした川下り

 何の緊張感も無く、流れに任せてダラダラと下っていく。
 両岸から倒木が張り出しているポイントでは、その中央部にかろうじてカナディアンで抜けられるスペースがある。
 流れが比較的緩やかな場所なので、それほどの難所でもない。
倒木の下をくぐり抜ける メンバー二人がその倒木につかまって遊んでいるのを見て、楽しそうなので私も近づいてみる。
 するとちょうど、カヤックに乗っているK藤さんが倒木の上流側に引っかかってもがいているところだった。
 「あっ、ちょっと待ってて!」
 慌ててカメラを取り出そうとする私。
 T津さんが「枝から手を放して!」と声をかけるが、溺れる者は藁をも掴むで、そう簡単に一度掴んだものを放せるわけが無い。
 結局、川の流れがK藤さんを無理やりにその倒木から引き剥がし、カメラが間に合わずに悔しがる私の前を静かに流れていったのである。
 沈者が出ると、それまでのダラダラしたムードがちょっとだけ引き締まり、例会らしい雰囲気が出てくる。
 ゲスト参加のS森君は、皆の熱い視線と期待を一身に浴びながらも、落ち着いてその倒木の間をすり抜けてしまった。


倒木を無事にくぐり抜けるS森君
倒木の下を無事にくぐり抜けるS森君

 南長沼用水頭首工の工事はかなり進んでいて、既に新しい取水口が完成したようだ。
魚道や堰堤部分はまだ以前の姿のままで、こちらの工事は今年の冬になるのだろうか。
堰堤横の水門が開いているのでそちらに水を取られて、魚道の方はちょろちょろとした迫力の無い流れとなっている。
最近は何時下ってもこんな状態ばかりで、バックウォッシュに突っ込んで頭から水をかぶったのは遠い昔のことのような気がする。
魚道を抜けた先の左岸は工事の影響で荒れているので、魚道を下ったメンバーは自然と右岸の堰堤下の溜まりへと集まってくる。
20艇以上の色とりどりのカヤックやカヌーがひしめき合う様子は、殺風景な千歳川に艶やかな彩りを添えていた。


工事中の魚道
右に完成したばかりの取水口、その他はまだ以前のまま

色取り取りのカヌーが浮かぶ
川の上に咲いたカヌーの花

 最後の難関、蛇籠の落ち込みが迫ってきた。
 最近の千歳川例会では、手前で上陸して下見をすることも無くなり、そのまま次々に下って行ってしまう。
落ち込みの中で 私達も、集合場所へ向かう途中に道路上から様子を見て右側から入れば問題なさそうだと確認していたので、そのまま下ることにする。
 そうは言っても、落ち込み寸前で右側から返し波がかかってきているのを間近に見ると、緊張感が高まってしまう。
 頭の上に乗せてあるカメラの向きに気を配っているうちに、何事も無く落ち込みをクリアしていた。

 そのまま右岸にカヌーを寄せて、何時もとは違う方向から後続のメンバーの写真を撮ることにする。
 すると、ゲスト参加のS森君も下見もせずにいきなり下ってくる様子なので、慌てて蛇籠の上によじ登る。
 私がカメラを向けるのと、S森君が横向きになってバックウォッシュに揉まれるのが、ほぼ同時だった。
 「ふーっ、間に合って良かった」とホッとしていると、その後ろに続いて下ってきたベテランのIW田さんまでが、なぜか沈脱して流されている。
 実は、今回S森君を連れて来たのがそのIW田さんなのである。
 その二人が仲良く川の中を歩いている姿は、傍からはとても微笑ましく見えてしまう。
 しかし、普段はとても穏やかなIW田さんが、後になってから珍しく真剣な表情でこの沈脱を悔しがっていたのは、カヤッカーとしての一分が係わっていたのだろう。


S森君   IW田さん
  続けて沈

流される二人
仲良く流される二人

 カメラをビデオに持ち替えて、後続メンバーの雄姿を撮影する。
 最後に下ってきたのがKーさんである。
 去年の同じ千歳川の例会で、この蛇籠を後ろ向きに下って、沈寸前の体勢から見事なリカバリーを見せたKーさんである。
Kーさん 今年は前向きに下ってきたので一安心、と誰もが思った瞬間、白波の中で去年と全く同じ体勢でもがいているKーさんがいた。
 さすがに2度目ともなると、川の女神も容赦することなく、Kーさんを水の中に引きずり込んでしまったのである。
 まだ水の冷たい4月の千歳川例会で、これだけの沈脱者が出るとは全くの予想外。
 そして、その4度の沈脱シーンを全て目の前で見ることができるなんて、今年はとても付いているのかもしれない。
 と、他人のことを笑っていると、何だか今年は自分も沈に憑かれそうな嫌な予感もする。

 何時もゴール地点にしている高速道路下は工事の影響で車を停めづらくなっていたので、今回はスポーツセンターまで下ることにしていた。
 川沿いに並ぶ住宅を眺めながら漕ぎ下る。
 カーテンを開ければ目の前が千歳川なんて、本当に羨ましすぎる環境である。
 そんな住宅の一つから、こちらに向かって手を振っている人達がいた。
住宅地の中を下る こんな千歳川の目の前に住んでいながら、そこを下るカヌーが珍しいのだろうかと不思議に感じてしまう。
 考えてみれば「まなぶ」には何時もパドラーが集まっているけれど、こうやって川を下る人間は意外と少ないのかもしれない。
 もしもそれが本当ならば、こんなに素晴らしい川が直ぐ近くにあるのに、何とも勿体無い話である。
 そうしてスポーツセンター前に到着。
 久しぶりの川下りを終えて、心地良い疲れに体が包まれた。

2009年4月12日 曇り時々晴れ



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