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釧路川

(屈斜路湖〜美留和橋)

 カヌークラブの例会で釧路川源流部を下るのはこれが2度目。
 前回は4年前の9月に屈斜路湖から弟子屈市内までを下ったけれど、本当に気持ち良く下れる区間にしようということで、今回は美留和橋までのコースとなる。
コタン温泉の隣から出艇 美留和橋から下流が気持ちの良くない区間と言う訳ではないけれど、緊張を強いられる土壁の難所を除けば単調な風景と流れが続き、水の透明度も落ちて、ストイックに川を楽しむような気持ちが無ければ、楽しくは下れないような区間なのである。
 源流部を下る時は、一般的には湖から釧路川が流れ出す部分の眺湖橋のたもとから漕ぎ出すけれど、今回はサダ吉会長の提案で、そこから少し離れたコタン温泉から出艇することになった。
 単純に川を下るのではなく、「湖から川へと入っていく」その感覚を楽しもうとの、なかなか粋な心遣いである。
 出艇地点の直ぐ隣りは、無料の露天風呂となっている。
 風呂好きなF本さんは、スタート前の僅かな時間を利用してその露天風呂へと入っていた。
 観光客が次々とやって来ては、無遠慮にじろじろと眺めていくので、落ち着いては入れないようなお風呂である。
 車の回送中は土砂降りに近い雨が降ってきたけれど、スタート時にはその雨も何とか上がってくれた。
 心配していた湖の波もそれほどでもない。キャンプ場を出てくる時は、サイトの前まで白波が立つような状況だったのである。
湖の沖に漕ぎ出す会長の心遣いを少しでも実践しようと、スタートして直ぐに湖の沖に漕ぎ出した。
 うねりはあるけれど、昨日のオヤコツ地獄ツアーと比べたら可愛いものである。
 それに、この付近は遠浅になっていて、かなり沖まで出ても背が立つくらいの水深なので、恐怖感は全く無い。
 適当なところで向きを変えて、釧路川が流れ出る眺湖橋を目指した。
 橋げたと水面との間隔が狭いので、橋の下を通過する時は、思いっきり体勢を低くしなければならない。
 この眺湖橋が、全く様相の違った二つの世界を繋ぐゲートの役割を果たしている。
 ゲートを通過する時、異次元へと足を踏み入れる瞬間は、何時もドキドキさせられる。
 急に早まる川の流れ、両岸から覆いかぶさる緑の木々、正面で待ち構える倒木。
 初めてこのゲートを通過した時は、その変化の大きさに慌てふためいたものだが、ようやく最近はこの次元の転換にも、余裕を持って対応できるようになってきた。


眺湖橋   眺湖橋をくぐって
異次元に繋がるゲート   異次元の世界に足を踏み入れた


曇り空なのが残念 残念なのは今日の空模様である。
 晴れている時ならば、小石に覆われた川底とカヌーの間には、光の揺らめきが存在しているだけで、宙に浮かんだカヌーが目に 見えない力で動かされているような、そんな不思議な感覚に囚われる。
 ところが曇り空の下では、それが普通の川下りになってしまうのだ。
 贅沢を言わなければ、それでも十分に感動できる釧路川源流部の美しい流れである。
 今年の夏の大雨で大量の倒木が発生したと聞いていたけれど、川を塞ぐような倒木だけは処理されたみたいだ。
 川のど真ん中に沈んだ倒木が、真新しい切り口を晒している。
 難所の土壁にも大量の倒木があって、一月ほど前にそこを下った某クラブのツアーではかなり大変な目に遭った方もいたようである。
両岸から覆い被さる木の枝を避けながら、しばしジャングルクルーズを楽しむ。


真新しい切り口の倒木   ジャングルクルーズ
この倒木は川を完全に塞いでいたのだろう   まるでジャングルクルーズ

 今日のツアーにはオプションとして、鏡の間でのコーヒータイムが含まれている。
 川が左へと蛇行しているところの右岸側にに小さな入り江のような場所がある。ここが通称「鏡の間」と呼ばれているところで、豊富な湧き水によってそこの空間だけは夏でもひんやりと冷やされている。
 水も一際透明で、川底の水草がとても生き生きとして見える。
 ここの湧き水を初めて飲んだけれど、とてもまろやかで美味しい。
 サダ吉会長がその湧き水で、皆の分のコーヒーを入れてくれる。
 インスタントコーヒーだけれど、この湧き水で作ってこの場所で飲むコーヒー、美味しくないわけはない。


釧路川鏡の間
鏡の間でコーヒーブレイク

釧路川鏡の間
鏡の間の奥から

何故か水抜き中 再び蛇行する釧路川を下り続ける。
 ほとんど漕ぐこともせず、川の流れにまかせてのんびりと下っていると、近くを一緒に下っていたF本さんが突然、倒木の1本に引っ掛かって沈脱してしまった。
 水面下ギリギリに沈んでいる倒木の上を乗り越えようとして、失敗したらしい。
 F本さんの沈脱する姿を見たのはこれが初めてである。
 でも、河童のように川の中を泳いでいる姿は何時も見ているので、沈脱して泳いでいるF本さんも、何時ものそれと何の変わりも無かった。
 F本さんが水抜きするのを待って、再び下り始める。
 先を下っていたメンバーとはかなり離れてしまったようで、その姿が全く確認できない。
 みどり橋の手前の川岸に上陸して休憩しているところに、ようやく追いついた。
みどり橋で休憩中 ここまでほとんど漕がずに下ってきているので、休憩するような気分になれず、かみさんだけを下ろして、一人でパドリングの練習をする。

 上流から他のパーティーが下ってきたので、場所を譲るために再び下り始めた。
 サダ吉会長の今回のツアーのテーマには「ゆっくりと下りましょう」と言うのも含まれていた筈なので、私はそれを忠実に守って、倒木を避ける以外のパドル操作はほとんどやらない。
 かみさんにも「漕がなくて良いから」と言っているのに、どうしても直ぐにパドルを動かし始めてしまう。
 まあ確かに、何もしないで乗っているだけなら筏で下っているのと変わりはなく、パドルを動かさなければカヌーに乗っている感じがしないのかもしれない。


倒木の間を漕ぎ下る   釧路川の倒木をくぐる
倒木を縫いながら下る   川の流れに舟をまかせて

手鏡の間 先行メンバーがまた、小さな入り江のような場所で休憩していた。
 サダ吉会長の説明では、そこは「手鏡の間」と呼ばれているとのこと。
 細い水路の奥に「鏡の間」のような場所があって、上から見るとその形が手鏡に似ているらしい。
 なかなか洒落た命名だけれど、瀬の名前も含めて、こんなのは先に付けたもの勝ちって気がする。
 それならば、私が先に「柄付きタワシの間」と名付ければ良かったかも、などとつまらないことを考えていた。

少しだけ青空が覗いてきた。
川の上が級に明るくなったような気がする。
川を下る時はやっぱり青空が気持ち良い。
でも、この青空も直ぐに隠れてしまった。


青空が見えた   川の上が明るくなる
青空が見えてきた   川の水がキラキラと光る

 蛇行を繰り返していた釧路川は、美留和橋手前で河川改修により直線化されていて、ちょっとした瀬になっている。
 釧路川の下流では、昔に直線化された川を再び蛇行させて自然を再生する工事が行われている。
 聞こえは良いけれど、永い年月を経て元に戻りつつある自然を、また壊そうとするのだから、人間の思い上がりもここまで来たのかと私は感じてしまう。
 しかし、ここの直線区間の瀬は川下り中のちょうど良いアクセントである。
 カヌーの中に水が入ってくるくらいの波も立っていて、楽しく下りおりる。


唯一の瀬
最高の川下りだった

ぢぢカヌーで そうしてゴールの美留和橋に到着。
 橋の下の瀬でちょっと遊んでからカヌーを引き上げた。
 その後はスタート地点に戻って近くの温泉に入り、「ぢぢカヌー」でピザを食べる。
 これも今回のツアーの会長方針だった「のんびり、ゆったりと釧路川を楽しむ」と言う一連のメニューの一つである。
 ただ、私は腹が減りすぎていて、ピザが焼き上がるのをゆったりと待つような余裕は無かったのである。
 これで9月例会の前半戦が終わり、ここで一旦解散。
 我が家は十勝の実家に戻って、明日からは歴舟川に場所を変えて、例会後半戦が始まるのである。

写真提供 サダ吉さん

2009年9月20日 曇り
当日12:00 釧路川水位(弟子屈観測所) 100.08m



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