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雨竜川

(朱鞠内トンネル上流の橋〜蚊竜橋上流)

 雨竜川は、国道275号の朱鞠内の手前、幌加内町共栄付近で大きく蛇行している。
 国道は朱鞠内トンネルを挟んでその上下流で雨竜川を渡っているのだけれど、その二つの橋の間の距離は1kmほどなのに、その間の雨竜川の流長は5kmにもなるのである。
 車の回収手段のない単独での川下りをするのには、まったくおあつらえ向きの川とも言える。
 これまでにも何度かここを下ろうと考えたことがあるけれど、カヌーを川に下ろすのにも藪漕ぎをしなければならないような場所なので実行できずにいた。
 でも、雪が積もっている今時期ならば簡単にカヌーを下ろせそうである。
3年前の悪夢が甦る 朱鞠内湖キャンプのおまけイベントとして、雨竜川のこの区間を下ってみることにした。
 ただ、普段は水が流れているのかどうかも分からないくらいの穏やかな川なのだけれど、雪解け水で増水する春先だけは様相が一変する。
 3年前にカヌークラブの例会の下見で雨竜川を下った時も同じように増水していて、その時は道の駅付近のポンカムイコタンの瀬で沈をして、そのまま茶色く濁った激流の中を600mも流されてしまったのだ。
 ここへ来る途中、そのポンカムイコタンの瀬を間近に見てきたものだから、ちょっとびびり気味である。

 まずは上流の橋からカヌーを下ろす。
 ソリのようにカヌーを滑らせて移動できるので、積雪があるのはとっても有難い。

カヌーを運ぶ   スタート地点
雪の上をカヌーを運ぶ   スタート地点の様子

 その後は下流に車を移動させる。
 上陸を予定している付近は、以前からネットでお付き合いのある幌加内町のKさんご夫婦が住んでいるところだ。
 自宅は幌加内町の市街地にあるけれど、小学校として使われていた古い校舎を改造し生活の場をこちらに移そうとしているらしい。
 あらかじめ連絡しておいたので、初対面にも関わらず暖かく迎えていただいた。
壊れた吊り橋 Kさんの話によるとそこからやや上流で壊れた吊橋が川を塞いでいるとのこと。
  その場所まで案内してもらうと、確かに吊橋のワイヤーが川を横断していて、そこに倒木などが絡まっていた。
 それほど急な流れでもないので、その手前で余裕を持って上陸できそうだ。それでも、何も知らずにここまで下ってきたとしたら、ちょっと焦っていたかも知れない。
 Kさんの庭先に車を置かせてもらって、そのままスタート地点まで歩いて戻った。

 ドライスーツを着込んでヘルメットを装着。
 かみさんは普通の帽子で下るみたいだけれど、雨竜川とはいえ何が起こるかは分からないのだ。
 その証拠に、最初にカヌーを置きに来た時よりも何となく川の流れが速くなっているような気がする。
 おまけに雪の固まりまで流されてくるので、余計に心配になってしまう。
 雪が積もっている分、水面まで高低差があるのでカヌーに乗り込むのにも一苦労だ。
 僅かに見えている土の部分に足場を確保して乗り込もうとした瞬間、ズルッと滑ってそのまま体が川の中に吸い込まれる。
 頭まで水没する前にカヌーにつかまって難を逃れたけれど、這い上がった時にはドライスーツのお尻が泥まみれになってしまっていた。
 雪の上でお尻をこすってその泥を落とす。何だか犬が地面にお尻を擦り付ける時のスタイルとまったく同じなので、情けなくなってしまう。
気を取り直して、雪の無い橋の真下からカヌーに乗り込み、ようやくダウンリバーの開始。

川下りスタート
いよいよ川下りのスタート

 流れが速いので周りをのんびりと眺める余裕もなく、どんどんと下流に流されていく。
 最初のカーブを曲がると、前方から怪しげな水音が聞こえてきた。次第にその音が大きくなってくるので、適当な場所に上陸して偵察することにした。
 少し下流に歩くと直ぐにその音の発生源を見つけた。
 流れを横切るように激しい白波が立っている。その白波の下には倒木でも隠れているのだろう。
 でも、その横に波の無い場所があるので、通り抜けるのに問題は無さそうだ。
 ところが本当の問題箇所はその先に隠れていた。
 白波の先にも速い流れが続いていたので、もう少し下流まで様子を見に行くと、両岸から倒れこんだ樹木が川を塞いでいる場所を発見した。
 その真ん中なら、細い枝を払い除けながら何とか通過できそうだけれど、単独川下りで無理をすることはできない。
 この区間はまとめてポーテージすることに決めた。

音の正体   倒木
瀬音はここから聞こえていた   倒木で川が塞がれている!

 障害物の直前まで下ってきて、そこから上がれば良いのだけれど、流れも速くエディもほとんど無いような場所で、大きなカナディアンで確実に停まれる自信は無い。
 最初に上陸した場所からそのままカヌーを運ぶ。
 雪の上をソリのように引っ張れば良いとは言っても、200m以上のポーテージは結構ハードである。
 こんな事態もある程度は予想していたけれど、最初からこれでは先が思いやられる。

雪上ポーテージ
230mの雪上ポーテージ

 カーブに差し掛かる度にバックストロークでスピードを緩め、その先の様子を窺う。
 会話もほとんど交わさずに、ひたすら耳を澄ませて水音の変化に神経を集中する。
 雪解け水が川岸から流れ落ちているような音にも、何か障害物があるのかとドキリとしてしまう。
 こんなに緊張するのは、初めて川下りにチャレンジしたとき以来かもしれない。
 単独での川下りなので、何かトラブルがあっても助けてくれる人は誰もいないのである。
 Kさんと分かれる時、「明日の朝まで戻ってこなかったら探しに行くから」と言われていたので、少なくとも何処へ行ったのか行方不明で捜索される事だけは無いはずだ。

先を注意しながら下る
先の様子を窺いながら下り続ける

 普段の雨竜川からは想像できないような大きな波の立っている場所もあり、そんなところでは無理をしないで波を避けながら下る。
 あらかじめ川の様子を地形図で確認していた時、この先に川の流れが山にぶつかって大きく向きを変えているところがあるはずで、何となく嫌な感じがしていた。


気合いを込めてパドリング
かみさんの気合いを込めたパドリング

 ところがその辺りに近づくにしたがって、川の流れが次第に緩やかになってきた。
 でもこれはあまり良い傾向とは言えない。何かの障害物に流れが堰き止められて、淀みになっているだけと考えられるのだ。
 普通の川ならば、この先に必ず瀬が待ち構えている。
 そして、地形図上で川の流れが向きを変える地点、巨大なエディができて流れがゆっくりと渦巻いていた。
 予想していたような危険な場所でもなくてホッとする。

流れが無くなってきた
流れが次第に緩やかになってくる

 でもそこから先、瀬にはなっていないものの、川幅が狭まり急に流れが速くなっている。
  その流れが見通せる範囲内には障害物は見当たらないけれど、一旦そこに入ってしまえばバックストロークで止まることはほとんど不可能だ。
 運を天に任せて流れに入る。幸い危険なものは何もなく、途中のエディに入ってホッと一息。
 その後は流れも緩やかになり、ようやく周囲に目をやる余裕も出てきた。
 そうして壊れた吊り橋の手前で上陸。ここでもまた一問題だった。
 人間だけは何とか岸に上がれたけれど、水面からの高低差があるために、カヌーをなかなか引き上げられない。
 そのうちにちょっとした弾みでカヌーを川に押し出してしまって、慌てて川に飛び込んでカヌーを確保。
 その川の中に足場にできるちょうど良い樹木が沈んでいなければ、またまたここで雨竜川の水に浸かってしまうところだった。

ここで上陸
壊れた吊り橋の手前で上陸

 苦労しながらもやっとカヌーを引き上げて、雨竜川の川下りが無事に終了。
 Kさんの家までカヌーを引きずっていくと、Kさんご夫婦が笑顔で出迎えてくれた。
 それにしても雪解け水で増水した雨竜川をカヌーで下るのはもう懲り懲りである。

2008年4月18日 晴れ
下った区間の地図はこちら

16:00 雨竜川水位(幌加内町字添牛内観測所) 217.81m

Kさんの家までカヌーを引っ張る
Kさんの家の前までカヌーを引っ張る

 後書き
 後で調べて分かったのですが、この時期の雨竜川は一日の中で60〜70cmも水位が変化しているようです。雪解け水が流れ込む影響なのでしょうか。
 12〜13時頃に一番水位が下がり、20時頃に最高水位になります。我が家が下りはじめた15時頃って急激に水かさが増してくる時間帯でした。
 どうりで川の様子が変だなと感じてましたが、この程度のことはあらかじめ調べておかなくては駄目ですね。



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