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千歳川

(第一鳥柵舞橋〜高速道路下)

 11月に入ったばかりの3連休の初日。ちょっと前の週間天気予報では3日間とも雨マークになっていたのに、この日は未明に降っていた雨も朝には上がり、青空が広がってきていた。
 既にキャンプへ行くのは諦めていたけれど、日帰りでカヌーに行くのなら申し分の無い天気である。
 シーズン最後の川下り、今年は千歳川で初漕ぎをしたので、カヌー納めもやっぱり千歳川へ行くことにする。

 スポーツセンター前の千歳川では学生のカヌー選手権大会が行われていた。
 その様子を横目で眺めながら上流へと向かう。
ラリーカー 天気が良い週末なのにも関わらず、何時もカヌーの姿が絶えないマナブにはカヤックがポツンと1艇浮かんでいるだけだった。
 そんな風景に、カヌーシーズンも終わりに近づいていることを感じさせられて、何となく寂しくなってくる。
 ところが、第一烏柵舞橋までやってくると、その付近には沢山の車が停まっていて、一体何事かと驚いてしまった。
 どうやら、開催中のWRC(ラリージャパン)に参加するラリーカーがその前を通過していくようである。
 別にそこがラリーのコースになっているわけではないけれど、ファンにとっては選手や車の姿を見られるだけでも楽しいらしい。
 かろうじて空いていた隙間に車を停めてカヌーを下ろしていると、その場の中で妙に浮いている感じがしてしまった。

自転車回送 車の回送には自転車を使う。
 高速道路下に車をデポして、そこから出艇場所まで自転車で戻るのだけれど、乗り始めて直ぐに太腿の筋肉が重たくなってくる。
 去年までは、JRの駅から職場までアップダウンの多い道を自転車通勤していたので、それなりに足は鍛えられていた。
 ところが今年は中央区の職場に異動になり、自転車の代わりにビルの6階まで階段を上り下りしているけれど、それは筋力維持には何の役にもたっていなかったみたいだ。
 カヌーで体を動かしているとは言っても、ほとんどが上半身の運動。
 フウマが病気になってからは朝の散歩で歩く距離も極端に短くなり、最近は散歩に出ることさえ無くなってきている。
 考えてみれば、他に足腰を鍛えるようなことは何もしていなかったので、この最後の川下りの自転車回送で、その付けが回ってきたことを知る羽目になってしまった。

バイカモも冬枯れ 千歳川にカヌーを浮かべる。
 最初は上流に向かって漕ぎながらその場にしばらく留まっていたけれど、下流に向きを変えて一度川の流れに乗ってしまうと、カヌーはぐんぐんと進んでいく。
 そのペースで下り続けると数十分でゴールに着いてしまうので、直ぐに適当なエディを探してそこにカヌーを乗り入れる。
 今回はみっちりとパドリングの練習をするつもりでいたので、全てのエディに入るような気持ちで下っていく。
 そうすればストリームイン、ストリームアウトの練習にもなるし、普段は見逃してしまうような千歳川の風景に気が付くかもしれない。
 ただ、河畔の木々は既に葉を落としてしまい、初冬の寒々とした風景が広がっているだけである。
 川の中を緑に染めていたバイカモも、霜に当たって変色した野菜のように黒ずんでしまっている。
 それでも、真っ青な空を背景にして力強く枝を伸ばす木々の姿も、良いものである。

裸になった河畔の木々

 川を横切るフェリーグライドの練習もしてみる。
 もっとも、両岸を2、3往復するだけで直ぐに飽きてしまうので、これでは練習とは言えないだろう。
 上手な人は、ほんの数漕ぎで対岸へ渡ってしまうけれど、我が家の場合、二人でワッセワッセと斜め上流向かって漕ぎながら、徐々に徐々に対岸へ近づいていく感じである。
 流れに対する舟の角度、パドリング、そして流れの力をもっと利用すれば良いのだろうけれど、探究心が旺盛でないものだから、対岸へ渡れるだけで良しとなってしまうのだ。

マナブ入口 マナブまでやってくると、車の中で見かけたカヤックが黙々と練習を続けていた。
 近づいていくと、それは同じカヌークラブのK崎さんだった。
 本州への転勤で一度退会していたけれど、また北海道へ戻ってこられたようである。
 カヤックの人は一日中ここで遊んでいる人もいるけれど、カナディアンでは水の中に突き刺さってグルグルと回ったりできるわけも無く、他に遊ぶことも無いので挨拶をしてそのまま下り続ける。

 冬枯れの風景の中ではマツの緑でさえも頼もしく感じる。
 まして、カラマツの黄葉はなおさらありがたい
 川の中に大きく傾いたカラマツも、活き活きとした葉を黄色く染めている。
 このカラマツ、そのうちに倒れて川を塞いでしまうと思っていたのに、もう何年もそのままの角度で持ちこたえているのがしぶとい。

 
カラマツだけが黄色く色付いている   傾いたままのカラマツ

 今年は北海道の何処の川でもサケの遡上数が減っていて、千歳川も同じ状況のようだ。
 例年ならば、今時期の千歳川を下ると死んだサケのために所々で異臭が漂っていたりするのに、今年はホッチャレの姿もほとんど見かけない。
 川が臭くないのは良いけれど、これでは自然の摂理が崩れてしまいそうで心配になってくる。

謎のイス カーブを曲がった先で、懐かしいものに出くわした。
 懐かしいと言っても、今年の初漕ぎの時に見たものである。
 川岸に置かれた赤い椅子と、その上の木の枝に結び付けられた椅子の赤い袋、そしてその横に転がっている釣竿。
 最初にこれを見たときは、果たしてこれらの持ち主は何処へ消えてしまったのかと不思議に思ったものだが、少し色褪せてはしまったものの、全くそのままの形で残っているのである。
 まるでそこだけが時間が止まっているような、またまた不思議な感覚に囚われてしまった。

 こまめに川岸のエディに入っていると、新しい発見もあった。
 湧き水が湧出している場所である。
 これまでは全く気付かずに通り過ぎていたけれど、結構な量が湧いてきている。
 ちょっと飲んでみたい気もするが、この辺りでは周りに何があるかも分からないので、やめておくことにした。
 「湧き水=汚れてない美味しい水」の図式が単純に成り立たないところが、現代社会の悲しいところである。

 
湧き水発見   湧き水を彩る落ち葉

トクサの川岸

 前方に魚道の入り口が見えてきた。
 でも、何だか今までの見慣れた風景とは違っているような気がする。
 近づいていくにしたがって、その理由が分かってきた。周りの樹木が伐採されて見通しが良くなっていたせいで、そう感じたのである。。
 いよいよ、魚道の改修工事が本格的に始まるらしい。
工事の始まった魚道 ここの施設は南長沼用水の頭首工となっており、老朽化のため改修される予定があったのだ。
 当初の計画では、この頭首工を取り壊して現在よりも上流側200mの場所に新たに作り直すことになっていた。
 そうなると、その付近の自然林がが丸ごと無くなってしまうことになる。
 ところが今回の伐採は頭首工周辺だけに留まっている様子だった。
 家に帰ってから調べてみると、上流側への新設から現在地での改修に変更になったらしい。
 千歳川と周辺の自然を全く無視したような当初計画には大反対だったけれど、自然保護と施設の改修がギリギリのところで折り合えた現在の計画ならば納得するしかないだろう。
 対岸の水門が開けられているので、魚道の方はちょろちょろとしか流れていなくて、全然面白くなかった。

散り遅れた紅葉 散り遅れたモミジが、殺風景な森の中で一際鮮やかに映えている。
 岸から大きく張り出したミズナラの葉も黄葉していて、黄色のトンネルを作っている。
 そんな風景を楽しみながら、蛇籠の落ち込み手前に広がる瀞場まで下ってきた。
 瀞場の手前には川の岸辺に簡単に降りてこられる場所があり、そこでは数人のおじさんがたむろし、その中の一人がフライのロングキャストを繰り返している。
 今年は千歳川を2回下っているけれど、その度に同じ風景に出合っていた。
 と言うことは、その中にはきっと例の挨拶強要おじさんがいるはずだ。
 邪魔しないように、対岸ギリギリをそーっと通り過ぎる。
 幸い今回は「こんにちは!通るときは声をかけてくださいね!挨拶しましょう!」と大声で言われることは無かった。


ミズナラの黄葉も美しい

 蛇籠の瀬は、来る途中に道路から見下ろした感じでは、素直に流れているようだった。
 わざわざ下見をする必要も無いだろうと考えて、そのまま下ってしまうことにする。
蛇篭の瀬が迫る 蛇籠の瀬は瀞場から一気に落ち込んでいるので、カヌーの上で立ち上がっても先の様子が全く見えない。
 とりあえず、ど真ん中に見当を付けて進んでいくしかない。
  瀬の寸前で吸い込まれるように流れが速くなる。
 その段階になってようやく瀬の全貌が見えるのだけれど、既にカヌーの操作はできなくなっている。
 「あっ!」
 目の前に、剥きだしになった蛇籠が現れた。
 今更避けることもできずに、「何とかその上を通り過ぎてくれ」と思いながら突入する。
 しかし剥き出しの蛇籠を乗り越えられるわけも無く、見事に座礁してしまった。
 間近に見ると、本当に嫌らしい障害物であることが分かる。
座礁 アリーでこんなところに乗り上げたら、太い針金がブスリと突き刺さるかもしれない。
 それにしても今まで千歳川を下っていて、蛇籠の瀬の中で座礁している舟を見たことは無い。全く情けない状態である。
 片足だけを下の障害物に乗せてカヌーを押し出す。そして、カヌーが動き出すと同時に素早く乗り込んでパドルを構える。
 これまでに何度もやってきている動作なので、もう慣れたものである。
 しかし、これを蛇籠の瀬でやることになるとは思いもしなかった。
 一瞬、カヌーがぐらりと大きく傾いたけれど、上手くバランスをとって白波の中を漕ぎぬけた。

この真ん中で座礁してしまった

 後は高速の下までのんびりと下り続ける。
 風も無く、小春日和の言葉がぴたりと当てはまる天気である。
 真っ青な空を白い雲を引きながら飛行機が飛んでいくのが見える。
 「これならばキャンプへ行けたかも・・・。」
破れたガスケット そんなことを考えながら高速道路下に到着した。
 カヌーを引き上げ、ドライスーツを脱ごうと首のガスケットを広げた途端、バリッとの音とともにガスケットは見事に裂けてしまった。
 今年はシーソラプチ川でカヌーのシートが壊れ、層雲峡ではパドルが割れ、そして最後にドライスーツがこんなことに。
 そう言えば、今年の初漕ぎで千歳川に来るとき、かみさんが車のタイヤをレンガに擦ってバーストさせたこともあった。
 それでも、怪我もすること無く、こうして最後まで楽しく川を下れたのだから、良いカヌー納めだったといえるだろう。

2008年11月1日 晴れ

晩秋の川下り 完

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