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ヌビナイ川

(砂防ダム〜カムイコタン公園キャンプ場)

 カヌークラブ9月例会の初日はヌビナイ川を下る。
 歴舟川へ向かう途中に清水町の実家に立ち寄ってフウマを預ける。
 年老いた母親に年老いたフウマの世話を任せて自分達ばかり遊んでいる訳にもいかないので、川を下った後はキャンプには参加せずに実家まで戻ってくることにしていた。
 集合時間である11時半の1時間前には現地に到着したのに、既に駐車場にはカヌーを積んだ沢山の車が停まっていて驚かされる。
 今回はWCCの他にガンネルズ、旭川CCのメンバーも参加していて、毎年9月の三連休には全道のカヌーイストが歴舟川に集まってくる感がある。
 ほぼ予定時刻どおりに、スタート地点へ向かって移動開始。キャンプ場の直ぐ上流に架かる尾田橋が工事で通行止めのため大きく迂回しなければならず、8km程の遠回りとなった。

スタート地点 美しいヌビナイ川が何時もどおりの表情で出迎えてくれた。
 ここを下るのは4回目になるので、以前のような高揚感は既に無くなり、一年ぶりの再会に軽い懐かしさを覚える。
 ただ、これまでと少し様子が違っていたのは、川岸の岩がコケでヌルヌルしていることだった。
 透明な水を透して見える川底の真っ白な花崗岩の玉石も、コケが生えて緑色がかって見えている。
 清流で磨き上げらたような清冽なイメージしかなかったヌビナイ川に、他の川と変わらない現実を見てしまい、ちょっとがっかりした。
 一度大雨でも降れば、こんな汚れは直ぐに流れ去ってしまうのだろうか。

 アリー潰しの落ち込み27艇30人の大所帯で川下りスタート。
 その中で大型カナディアンは、我が家の他にしげさんファミリーと、久しぶりの川例会参加となるベテランメンバーのHさんだけである。
 スタートして直ぐに現れるのは、私が名づけたところの「アリー潰しの落ち込み」。
 ここを問題なく下りられるかどうかで、その日の川の水量の見当がつく。
 今日は落ち込みの手前で早々にカヌーから降りる事になってしまった。
 2年前にヌビナイを下った時の歴舟川尾田観測所の水位は102.12mで、その時も水が少なくて苦労したけれど、今日の尾田観測所の水位は102.25m。
 これならば楽に下れるだろうと思っていたのに、歴舟川とヌビナイ川の水位はあまり一致していないようだ。

 ヌビナイ川では落差の大きな瀬が瀞場を挟んで何箇所も現れる。
 そのうちに自分のホームページにヌビナイ川の詳細な川地図を載せようと考えていて、下る度にそれぞれの瀬の様子を記憶しておこうと努力するのだけれど、二つ三つと瀬を越えているうちに下るのだけが精一杯な状況に陥ってしまい、記憶するどころの話でなくなってしまうのは何時もと同じだった。
 でも記憶にはっきりと残っている瀬もある。
 カナディアンのHさんは、昔ここで岩に張付いてカヌーがくの字に折れたことがあるとのこと。
 自慢じゃないけど我が家もここでは過去3回中2回、岩に乗り上げている。
 特に2006年の時は岩に乗り上げた後、カヌーの中に一気に水が流れ込み、他のメンバーに助けられてやっとの思いで岩からカヌーを引き剥がしたのだ。

2005年の状況   2006年の状況
2005年左岸の岩に乗り上げ   2006年右岸の岩に乗り上げ

 流れが右岸に集まって急流となり、その流れの中で嫌らしい岩が待ち構えている。
  「一人で下って〜」と、またかみさんの弱気の虫が顔を出し始めた。
 何時もと同じくそんな泣き言は無視して、Hさんが先に下り終えたのを確認してから有無を言わせずそのまま瀬に突入。
 今回は危なげなくここをクリアすることができた。

必死のドロー
かみさん必死のドロー、何故か私は笑顔

今年は大丈夫
水に突っ込むかみさん、何故か私は笑顔

 水量が少ない時は、岩を避けるのに忙しくなる。
 人数が多いと連なって下らなければならず、そんな時に前の舟が岩に乗り上げ進路を塞がれてしまうと大慌てである。
混雑する川の上 下っているうちにそれぞれの舟の力量も見当が付いてきたので、危ない舟の直ぐ後ろにはなるべく近づかないように自主防衛をする。
 そんなことを考えていたら、自分達が岩に挟まって流れを塞ぐ立場になってしまった。
 流れが狭くなっているところだったので、後続の邪魔にならないように直ぐにカヌーから降りて岩から外したけれど、若干間に合わずに後ろからカヤックが突っ込んできてしまった。
 2艇絡まりながら何とかそこを脱したけれど、流れに押されている時に石の間に挟まっていた足首からグキッと嫌な感触が伝わってきた。
 その後はそれほど気にもならず下ったものの、実家に戻って風呂に入った後から急に痛みがひどくなり、一時は病院行きも覚悟した。
 幸い、一晩の湿布で痛みも引いて大事には至らなかったけれど、川を下っている時は常に注意は怠れないものである。

瀬の中を楽しく下る 一ヶ月前にシーソラプチ川を下った時、バウのシートが壊れてしまい、今回はそれを修理してからの初めての川下り。
 完璧に直したつもりだったのに、最初の瀬を下ったところであっさりとまた壊れてしまった。
 折角の苦労が何の役にも立たず、修理方法よりもかみさんのお尻の重さに問題があるんじゃないのかと疑いたくなってしまう。
 しょうがないので、着替えなどを入れてあるドライバックを壊れたシートの下に入れて何とか座れるようして下り続けた。
 そのせいかどうかは分からないけれど、瀬の中で幾つかの岩を何とか避けた後、最後の岩を前にして私の「ドローッ!」の大声も空しく、放心したかのように何もしないかみさん。
 90度の角度を保ったまま、その岩に正面衝突してしまった。
 さすがに、バウの部分を補強してあるフリーダムだけあって、相当な衝撃だったのにも係わらずカヌーが凹むことだけは避けられた。
 しげさんファミリーも岩を相手に悪戦苦闘しているようである。
 こんな川を以前はアリーで下っていたのだから、我ながら凄いことをしていたものだと感心してしまう。
 でもそれよりも、一艘のカナディアンに親子3人乗り込んで下っているしげさんファミリーの方がもっと凄いことをしていると感心してしまった。

しげさんファミリー

 

しげさんファミリー

岩の間で悪戦苦闘   動き出したカヌーに必死にしがみつく

 途中の川原で休憩。
 ここまでで相当に体力を消耗していた。
 水の少ないヌビナイ川を下るのは本当に疲れる。
 それは他のメンバーも同じようで、「ゴールまで後どれくらいあるの?」との声があちこちから聞こえてくる。
休憩 下る距離は11km程なのだけれど、ヌビナイ川は本当に長く感じるのだ。それだけ手間のかかる瀬が多いからなのだろうか。
 今日は仕事で参加していないS吉会長からは、「ヌビナイ川は下るのに時間がかかるので暗くならないうちにキャンプ場へ着ける様に行動してください」と、例会前に何度も言われていた。
 その効果もあって、車での移動はほぼ時間通りだったし、途中の瀬で延々と遊び続ける人も居なかった。
 それでもやっぱり時間は遅くなっている。
 会長から「絶対に遅くならないように」との厳命を受けているツアーリーダーのI田さんの「そろそろ出発しましょう」との遠慮がちな声を合図に、皆がノロノロと起き上がり始めた。

 次の難所は去年の例会でけが人が出てしまったいわく付きの瀬である。
 N野さんトラウマの瀬、いや、同じような名前がシーソラプチ川にもあるのでN野さん流血の瀬とでも名付けようか。
 当人のN野さんは、さすがに嫌なイメージがあるのか、そのテクニックから考えれば全く問題ない場所なのにポーテージを決め込んだようだ。
流血の瀬 それにしても、去年とは全く違った瀬の様相だ。
 手前で誘導していたY田さんが「下見した方が良いかも」と声をかけてきた。
 こんなところではそのまま突っ込んだ方が良いのだけれど、折角Y田さんが言ってくれるのでそれに従うことにする。
 一旦上陸したところ、心配していた事が起こってしまった。
 かみさんが「それじゃあ一人で下ってね」と言って逃げ出したのである。
 下見と言うよりも、みすみす逃亡のチャンスを与えてしまったようなものだ。
 軽くなった舟で流血の瀬をクリア。
 初めて出会うような落ち込みに、流れの真ん中に顔を出している岩。去年はそれらが全て水の中に隠れてしまっていたのである。
 嫌らしい流れに変わっていたけれど、水のパワーが無いので他のメンバーも無事に下っていた。

カヤック巻き込みホール その先のカヤック巻き込みホールも、水が少なくて本来のパワーは無くなっていたようだ。
 それでも何人かはこのホールの餌食になっていたようである。
 先の人が無事に下ったのを確認してから我が家もカヌーを進める。
 すると、落ち込みの手前まで来て、そのホールの中でもがいているカヤックを見つけて焦ってしまった。
 ホールの様子を確かめようと中に入ったI藤さんが、そこから出られなくなっていたのだ。
 何とかぎりぎりでかわして、I藤さんを轢いてしまうのだけは避けられた。

倒木 その後は特に難所は無いものの、相変わらず瀬は次々と現れる。
 去年は無かった新しい倒木が、完全に川を塞いでいる場所もあった。
 流れが緩くなっている場所なので余裕を持って避けられるけれど、急な流れに乗っているときに突然目の前にこんな倒木が現れたらパニックに陥ってしまうだろう。
 去年我が家にヌビナイ初沈をプレゼントしてくれた憎たらしい倒木は、少し場所がずれて下るのには支障なくなっていた。
 自然のままの川を下る時は、一年前の経験などあまり役には立たないのである。
 しげさんファミリーは奥さんと娘さんで時々バウを交代していた。
 こんな時だけは3人乗りカナディアンが羨ましく見えてしまう。
 それにしても小学生の娘さんの、見事なクロスドローから体を大きく入れ替えてのドローで瀬の中を漕ぎ抜けるその姿。
 周りで見ていたメンバーの間から「おーっ!」との感嘆の声が自然に沸き上がった。

しげさんファミリー
クロスドローからドローへ、素晴らしい!

 そうしてようやくキャンプ場前の川原に到着。
 疲れきった体には、駐車場までの上り坂がとてもきつく感じられる。
 それから上流に残してある車を回収。
 ビッグタープの下では既にF谷生ビール店が開業していたけれど、その魅力を振り切って清水への帰路に付いた。
 既に薄暗くなっている中、中札内村手前でキャンプ場へと急ぐS吉会長の車とすれ違った。
 きっと「ヒデさんが今帰るところなら、やっぱりヌビナイ川を下るのに時間がかかりすぎたんだ!あんなに言っておいたのに!」と車の中で気を揉んでるだろうねと、かみさんと話しながらそのまま車を走らせる。
 夕焼けに赤く染まった雲が十勝の空一面に広がっていた。
 明日の歴舟川が楽しみである。

2008年9月13日曇り時々晴れ
当日12:00歴舟川水位(尾田観測所)102.26m

写真提供 I山さん



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