それにしても、ヌビナイ川ってこんなに瀬の多い川だったろうかと感じてしまう。それくらい、次から次へと瀬が現れるのだ。
普段は何も感じないで下っている場所も、水が増えているので気持ちの良い瀬に変わっているのだろう。それに、何時もならば岩を避けるのに忙しいのだけれど、そんなことも気にしないでガンガン下れるのが嬉しい。
でも、水が増えてもな尚且つその上に頭を出している大きな丸石が瀬の中にドカンと鎮座しているところに出くわした。
例によって夫婦の呼吸が合わずに、まともに正面からその大石にぶつかりそうになる。「もうダメだ!」と思い衝突の衝撃に備えて体を硬直させたけれど、フリーダムはその大石の上にスルリと乗り上げ、そのままストンと大石を乗り越えてしまった。
今までのアリーならば、大石の上に乗り上げたところで止まってしまい、何とかそこを越えたとしてもキールがぐんにゃりと曲がっていたところだろう。
その大岩以外は特に危ないシーンも無く快調に下り続ける。
ただ、所々で行く手を阻んでいる倒木には手こずらされる。
倒木から流れの中に枝が垂れ下がっているところがあって、その枝は左右どちらからでもかわせるけれど、できればどちらか片方の方が我が家にとっては都合が良かった。
そんなところでは大体が意見が合わないことになっていて、大石を乗り越えた時のように結局真直ぐに進んでぶつかってしまう運命にあるのだ。その枝は柔らかかったから良いけれど、次にぶつかった枝は結構太かったので、ぶつかった拍子にかみさんが仰向けにバタリと倒れてしまった。
倒木の幹の下を潜り抜けなければならないようなところもあった。先行するカヤックは危なげなくその下を通過して行ったけれど、大きなカナディアンではちょっと冷やりとさせられる。
一箇所だけ完全に塞がっているところがあって、そこでもカヤックやOC-1はそのギリギリを通り抜けられるけれど、我が家は無理をせずそこはポーテージ。今回の川下り中、ポーテージしたのは結果的にそこだけだった。
ようやく先行していた三笠・旭川のメンバーに追いついた。皆で集まって記念撮影をしたけれど、凄い人数である。
これだけ人が多いと川の上も大混雑だ。どうも自分の前に舟がいると、瀬の様子が分かりづらいし、前の舟がカヤックだったりすると、OC-2とはスピードも違うので衝突しそうになってしまう。
それを嫌っていると、次第に集団の前の方に出て行ってしまい、気が付くといつの間にか先頭で下っていた。
前方に迫力のある瀬が現れたけれど、初めて下る川でもないので気にしないでそのまま突入する。
すると突然バランスを崩してカヌーが大きく傾き、ガンネルを超えて水が一気に流れ込んできた。かろうじてリカバリーできたけれど、カヌーの深さの半分くらいまで水が入ってしまった。
それだけ水が入ると、まともな操作ができなくなってしまう。瀬はまだ続いていて、バランスを崩さないように流れに任せるしかない。
ようやくその瀬を過ぎて瀞場にたどり着いた時は、殆どガンネルまで水没していて、水に浮いているのが不思議なくらいの状態になっていた。
ちょっとでも舟を傾けるとそのままひっくり返ってしまうので、慎重に慎重に岸に漕ぎ寄せ、何とか沈しないで上陸することができた。
状況的には沈したのと殆ど変わらないのだけれど、記録的にはこれは沈にはカウントされないだろう。
フリーダムに乗り換えてからは、まだ一度も沈をしていないので、ここで持ち堪えたことは個人的には大きな意味があるのである。
我が家の直ぐ後に下ってきたS吉さんも、水を多少汲んだものの無事にそのその瀬をクリア。そして水を出した後、直ぐにまたカヌーに乗って、その下流にある落ち込みへと向かった。
その落ち込みの下にはストッパーができていて、カヤックなどはそこに入ると嵌って出られなくなることもある。S吉さんのところはカナディアンなのでその心配も無く、上流から見ていたら無事に下れたようである。
S吉さんはそこでカメラを構えるようなので、私は今下ってきた瀬で後続メンバーの写真を写すことにした。
三笠CCの会長夫妻のカナディアンが、我が家がバランスを崩した付近で沈。
赤い腹を見せて流されてくるカヌーにカメラのピントを合わせるのに集中していて、沈した瞬間の様子は分からなかったが、かみさんの話によると、会長の奥さんは荒波の中を横向きになってゴロゴロと転がりながらそのままカヌーの下にもぐってしまったのだとか。
カヤックのN山妻さんは、途中で沈したものの、激しい瀬の中をロールで起き上がって無事にクリア。それにしてもこの瀬の中でロールで起き上がれると言うのが信じられない。
後で話を聞いたら、結構川底に頭をぶつけて危なかったらしい。
N野さんのカヤックもN山妻さんと同じような場所で沈。必死にロールで起き上がろうとしていたけれど、結局沈脱してそのまま流されてしまった。
全員がそこを下り終えたところでカヌーに戻ろうとしたら、対岸に人が集まっていた。どうやら、N野さんが先ほど沈した時に額を切ってしまったらしい。それも擦り傷程度でなくて、かなりひどい怪我みたいだ。
何とか血も止まったようで、病院の方も三笠の会長が知り合いに連絡してくれて、大樹町の病院で治療してもらえるように手配が付いた。
でも、とりあえずはキャンプ場までは下っていかなければならないのがカヌー中の事故の辛いところである。
今回は包帯を巻いて何とかカヌーには乗れたけれど、もっと大怪我を負ったりしたら救急車も近づけないような場所なので、ちょっと大変なことになってしまうのだ。
N野さんはベテランのカヤッカーだけれど、最初のロールに失敗した後に体が伸びきってしまい、そのまま川底に顔面をぶつけてしまったとのことである。
カヤック2艇が付き添って、N野さんはそのまま一気にキャンプ場まで先に下ることになった。
結局、病院で7針縫うことになってしまったが、本当にお気の毒で早く良くなってもらいたい。
次は問題の落ち込み。
先行者の合図で順々に下っていくのだけれど、先の様子が全然見えない。時々止まれの合図に変わるのは、その落ち込みの下で事件が起こっている証拠だ。
後でI上さんの話を聞いたところ、ダッキーやカヤックが3艇、その下のストッパーに巻かれている所にI上さんがまともに突っ込んでしまい、その反動で3艇はホールから抜け出せたけれど、I上さんは沈脱の憂き目に会ってしまったのだとか。
我が家の順番になって「さあ行くぞ!」と気合を入れたところ、またまた止まれの合図。「一体、あそこの下では何が起こっているのだろう?」と気になってしょうがない。
ようやくOKの合図が出て恐る恐る落ち込みに近づくと、その先で真っ白な渦が巻いているのが見えた。「ゲッ!ち、ちょっと、大丈夫~?」ってビビッてしまうくらいの迫力である。
エイヤーッと突っ込むと、ストッパーには掴まらずスルリと直ぐ横のエディに入ることができた。別にエディに入るつもりは無かったので、やっぱり少しスターンを食われかけていたのだろう。
ちょうど良い場所だったのでそのままカメラを構えていると、三笠CCの会長が奥さんを降ろして一人でそこへ下ってきた。
それが、直前でバウを岩にぶつけて、何と横を向いたままその落ち込みに入ってきた。案の定、カヌーはそのままスッポリとストッパーにはまってしまった。
一応はサイドサーフィンを楽しんでいるようにも見えて、本人も笑顔がこぼれ、周りからもヒューヒューと声援が飛んでいるけれど、一向にそこから出られそうな様子が無い。結局最後にはレスキューロープが投げられ、カヌーごと引きずり出されることになった。
カヤックだけではなくて大きなカナディアンでも出られなくなるのだから、甘く見るのは禁物である。
|