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尻別川

(喜茂別川合流部 〜 京留橋)

 釧路川遠征キャンプから帰ってきて、直ぐに風邪をひいてしまった。
 どっちみち、次の3連休は休養日にしようと考えていたので、ゆっくりと直せばいいやとそれほど気にもしていなかった。
 しかし、天気予報を見ると金曜日に雨が上がって、土日は全道的に快晴の天気になるとのことだ。そうなると黙っていられない質なので、風邪が治れば尻別川にでも行こうかなという考えが頭をもたげてきた。
 時を同じくして、かみさんも「週末は尻別川とかも良いんじゃない。」と言い出した。まさしく阿吽の呼吸である。
 ところが直ぐに直るだろうと思っていた風邪が、喉の痛みから鼻水へと症状が変わり金曜日は鼻水垂れ流し状態になってしまった。
 土曜日になると薬で鼻水は抑えられたが、喉の方は痰が絡んで仕方がない。それでもこれなら日曜日には何とか川下りができるまで回復しそうだ。

 そうして迎えた日曜日の朝、期待通りの素晴らしい青空が広がっている。パドルを積んでいるかどうかを最後に確認し、勇んで札幌を出発した。
 今回下るのは喜茂別から京極まで。この区間は2年前の5月、カヌークラブの例会で初めて下っている。
 その頃はまだ、人の後ろにくっついて下るのが精一杯の状況だったので、どんな川だったかもほとんど覚えていない。ただ、スタート地点から見た残雪の残る羊蹄山がとても美しかったことだけが記憶に残っているた。
 そして当時の写真を見てみると、フウマも一緒にカヌーに乗っていたくらいなので、それほど急な流れでも無かったはずである。
 最近は千歳川を下る時でも留守番させられるフウマだったが、今回は一緒に連れて行くことにした。
 まずは京極町のゴール地点の確認。京留橋の上流左岸に適当な場所が直ぐに見つかった。
 次はスタート地点、クラブの例会の時にスタートした場所が思い出せない。付近をウロウロして、あいかわ橋の近くで河原へ出られそうな砂利道を見つけてそこに入ってみる。
 堤防を越えて河川敷に降りると、広いスペースがあってちょうど良いスタート場所だ。そこで荷物を降ろして、ゴール地点へ車を回す。
 その後は、自転車でスタート地点へ。単独川下りの時のいつものパターンだが、トライアスロンの選手になった気分だ。これで、途中で沈して1000mくらい泳ぐことになれば、完璧なトライアスロンレースが成立しそうである。
 自転車に乗る距離は10km、羊蹄山の姿を眺めながらちょうど良いサイクリング、と言いたいところだが、病み上がりの身にはこれが結構きつく感じられる。
 35分ほどでスタート地点まで戻ってきた時には、完全に息が上がってしまっていた。
 待っている間に既に一泳ぎしたらしいフウマは、濡れた体のまま興奮してあたりを走り回る。私たちが準備をしている間にもまた勝手に川に入って泳いでいる。呆れてその姿見ていると、陸に上がろうとした時には護岸ブロックで足が滑り、その隙間にはまりそうになって必死にもがいていた。
 本当に手間のかかる子供みたいなものだ。

自転車で戻ってきました   ピース!
自転車でスタート地点へ   スタート地点で記念撮影

 そして川下りのスタート。
 そこから直ぐ先で喜茂別川が合流し、水量も問題無さそうだ。
 直ぐに小さな瀬が現れ、その先にも小さな落ち込みがある。今年下った川と比べれば、ママゴトみたいな瀬と落ち込みだが、単独川下りでおまけにフウマも乗せているので、ちょっとだけ緊張した。
 水も透明で、川底の石がはっきりと見える。
 気持ちの良い流れを下っていくと、やがて川の真正面に羊蹄山の姿が見えてきた。真っ青な青空に、頂上付近が紅葉してきている羊蹄山の姿、期待していたとおりの素晴らしい眺めだ。
 右岸の河原で、若者達がバーベキューを楽しんでいた。何となく見覚えのある風景、ここがクラブの例会の時にスタート地点にした場所みたいだ。
 下流に見える吊り橋と、その向こうの羊蹄山、ようやく2年前のことを思い出した。
 ここからのスタートでも良かったかもしれないが、そこまでの流れも結構楽しかったので、自転車の回送さえ頑張れば上流からのスタートの方が良さそうだ。

羊蹄山に向かって   羊蹄山の姿
透明な水と真っ青な空   正面に羊蹄山

 前方に橋が見えてきた。頭の中に川の地図を思い浮かべるが、結構早いペースで下っているような気がする。
 幾つかの小さな瀬を越えた後、前方に比較的大きな波が立っているのが見えてきた。2年前のおぼろげな記憶では、それほど危険な場所も無かったはずなので、下見もしないでそのまま進む。
 寸前まで来ると、結構な落差のある瀬になっていた。障害物もないのでそのまま瀬の中に突っ込む。
 太陽の光でキラキラと輝く白波がカヌーの周りを包み込む。爽快な気分を味わえる一瞬だ。

瀬が迫ってくる   素直な瀬だ
やや落差のある瀬

 しばらく進むと、川を横断するように一列に並んだ岩が行く手を遮っていた。何かの跡なんだろうか。
 中央付近に岩の隙間が広めの場所があったので、そこを通り抜ける。ここも落ち込みになっているが、落差も小さいので問題はない。
 その後は水深の浅いザラ瀬が増えてきた。アリーにとってはもっとも苦手な場所である。
浅いザラ瀬が続く 確か、かわうそくらぶの「北海道ののんびり下れる川の本」に、尻切れの瀬という名前の付いた瀬が載っていたはずだ。アリー乗りにとっては、とても嫌なネーミングである。
 「この付近が尻切れの瀬なのかな〜」
 そんな会話をかみさんと交わしながら瀬の中を下っていると、周りと川底の色が違っているような場所があると、思わずお尻を浮かせてしまう。
 このような浅いザラ瀬の中を下る時は、最近は膝立ちのまま背を伸ばして、かみさんの頭越しに前方を確認しながらパドリングするようにしている。
 視点が高い分、波の下の隠れ石も見つけやすいし、ずーっと先まで見通せる。そうして腹を擦らずに通り抜けられそうなコースを見つけ出して進むのだが、寸前で「やっぱりダメだ!」ってこともあり、そんな時は一気にコースを変更する。
 流れが急なところでは、これが一番危ない瞬間である。判断が遅れると横向きのまま岩に張り付くことになってしまうし、かみさんと息が合わない時は真正面から岩に乗り上げてしまう。
 今回の尻別川ではそんなこともなく、一度だけルートが無くなって大きな石に乗り上げただけで快調に下ることができる。
 快調すぎて、もう半分以上下ってしまった感じだ。
 適当な河原で上陸して昼にしようと思っても、ほとんど河原の無い川なので、なかなか良い場所が見つからない。
 無理矢理護岸された岸にカヌーを横付けして上陸してみたら、ちょうど良い草地があったのでそこで弁当を食べることにした。
 ようやく上陸できた嬉しさから、フウマがまたそこら辺を猛ダッシュで走り回る。
 フウマにとっての川下りの楽しみは、途中の河原で上陸して好き勝手にそこら辺の臭いを嗅ぎ回ることである。良さげな河原を見つけると、直ぐにカヌーから飛び出そうとして私たちを困らせるのだけれど、今回はそんな河原が無いので、つまらなそうに川岸の木々を眺めるだけだったのだ。
 かみさんが防水バッグを開けてガサガサと音を立てると、一気に戻ってきて袋の中に鼻先を突っ込む。
 やっぱり、フウマにとっての川下りの一番の楽しみは、このおやつの時間なのかも知れない。
 ポットに入れたコーヒーも用意してきたけれど、陽射しも強くて熱いコーヒーを飲むような雰囲気ではない。半袖での川下りがちょうど気持ちの良い日和だ。

袋をのぞき込むフウマ   草深い河川敷
餌を探すフウマ   草の中で昼食中

休憩を終えて川下りの再開。
しばらくザラ瀬が続いた後、更西橋を通過する。この辺では川底にバイカモも生えている。天気がよいと川底の石までくっきりと見えるのが嬉しい。
やがて川幅一杯に広がる堰が見えてきた。ここは右岸からポーテージである。ちょうどそこは、直ぐ隣が国道沿いの羊蹄山ビューポイントとして駐車場になっている。川とは全然関係ない人間が沢山いるので、どうも気恥ずかしい。

堰   ポーテージ中
高さ1mの堰   右岸をポーテージ

 堰堤の下にカヌーを降ろして再スタート。そこから直ぐ先に、大きな波の立つ瀬が見えてきた。
 今日下った中で一番大きな波である。
 その手前に、いくつかの隠れ岩が潜んでいるので、それらを避けながら瀬に近づく。隠れ岩に引っかかってバランスを崩したまま瀬に入るのだけは絶対に避けたい。
 瀬の中に入った瞬間、予想以上の波の高さに「これはちょっとまずいかな」と言う気もした。フウマもカヌーの真ん中で足を踏ん張っている。
 軽く水しぶきを浴びただけで、すんなりとクリア。
 後で調べてみたら、この瀬が「尻切れの瀬」と呼ばれていたみたいだ。多分、手前で沈して瀬の中に入ってしまうと、下の岩でお尻が切れてしまうのだろう。
 沈さえしなければ、尻が切れる心配も無さそうだ。
ゴール直前 そこを過ぎると川幅も広がってくる。
 川幅全体が浅瀬になっていて歩かなければダメかなと思わせる場所も出てきたが、岸ギリギリのルートをとると、何とか底も擦らずに通り過ぎることができた。
 自分の選んだルートが正解だったりすると、何となく嬉しくなってしまう。
 やがて静かな水面の向こうにゴール地点の橋が見えてきた。
 のんびりムードで、ちょっぴりスリリングで、そして最高の天気に恵まれて、こんな川下りを楽しむとますますカヌーに病みつきになってしまいそうだ。

2005/9/25

川下り当日の尻別川の水位
尻別川喜茂別観測所  252.87m



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