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シーソラプチ川

(ラフトスタート地点上流 〜 国体コース)

 然別湖でのキャンプ中に急にシーソラプチ川を下ろうという話しになった。
 メンバーは一緒にキャンプをしていた、Kevipaさん・ミエさんご夫婦とサダ吉さん、そして当日の朝早くにわざわざ空知川のキャンプ地から然別湖でカヌーに乗るために駆けつけてきたおばPさんである。
 早朝にはべた凪だった然別湖も次第に風が強くなって、とてもカヌーに乗れるような状況ではなく、おばPさんの提案により水量が増えて良い感じになっているというシーソラプチ川を下ることになったのである。
 実はおばPさんは然別湖のカヌーが目的ではなく、最初から川に誘う目的で遠い道程をやってきたのでは?との疑問が残るものの、どっちみち私も今回の然別湖キャンプでは川下りもメニューの一つに考えていたので、直ぐにその誘いに乗っかることにした。
 Kevipaさん・ミエさんは、夫婦別々にでかいカナディアンをソロで乗りこなし、たまには3匹のワンちゃん達とも一緒に川下りを楽しんでいる我が家の憧れのカヌーイストでもある。
 一方おばPさんは、本州の方でカヌーガイドをやっていたこともあるという実力派のカナディアン乗りで、一緒に川下りを楽しむのには本当に頼もしいメンバーである。
 カヌークラブで下る時は、周りはほとんどカヤックや一人乗りカナディアン(OC-1)ばかりで、こうして純粋にカナディアンカヌーだけの川下りというのは、何だかとても嬉しく感じてしまう。
 Kevipaさんのホームページを見ていても、本州の方では皆普通にカナディアンで川下りを楽しんでいる様子なのに、何故か北海道ではカヤックが主で、カナディアンで川下りを楽しんでいる人間が少ないような感じがするのは私の気のせいだろうか。

皆で記念撮影 ゴール地点を国体コースの終わりに設定して、そこまで下って余力が残っていればそのまま空知川を下ることにした。スタート地点は3週間前にクラブの例会で下ったのと同じ、ラフトスタート地点よりも少し上流の場所である。
 そこの川の様子を見るかぎり、少し水量は増えているものの濁りもなくて楽しい川下りができそうだ。
 然別湖へくる途中で見た鵡川や十勝川は増水して泥水が流れていたが、多分上流の何処かで工事をやっている影響かも知れない。
 それに比べて、シーソラプチ川のこの水の美しさはこの川の自然度の高さを現しているのだろう。
 2艇のカナディアンが私たちより先にスタートしていった。
 この2艇とはその後、追い越したり追い越されたりしながら川を下ったが、すれ違うたびにとても楽しくてしょうがないと言った感じの笑顔を浮かべていたのが印象に残っている。
 こちらはスタートして間もなく、笑顔どころかやや顔が引きつり気味である。3週間前とは川のパワーが全然違っている感じだった。
 そして、ラフトスタート地点手前の落ち込み。
 通過できる場所が限られていると話してあったので、先行していたおばPさんが岸に寄せて様子を見ている。
 我が家も岸に寄せようとしたが、流れが速いので下手すると意図しない場所から落ちる羽目になりそうだ。
 「えーい、行っちゃえ!」
 前回の記憶を頼りにとりあえず川幅一杯に広がった落ち込みの真ん中付近を目指す。でも、前回通過した岩と岩の切れ目が見えない。と言うか、岩なんか何処にも見えずに白波が逆巻いているだけだ。
 ドバッと波を浴びながらも無事にクリアすることができた。
 振り返ってみると、そこは前回とはまるで違った様相の落ち込みに変わっていた。岩がほとんど隠れてしまっているので、どこから落ちようとほとんど関係なかったみたいだ。
 後続メンバーも全く危なげなく次々と下り降りてきた。
 ミエさんから「アリーは大丈夫ですか?」と聞かれたが、隠れ岩に引っかかることに注意しながら下るよりもこれくらい水量が増えていた方が安心なのである。
 とは言いながらも、この先も続く難所のことを考えるとちょっと心配になってきた。

3週間前の落ち込み   今回の落ち込み
3週間前の様子、岩が見えている   今回は岩が見えない

 その後もハードな流れが続く。
 先ほどの落ち込みは、様子が解っていたので先頭で突っ込んだが、その後は先を行くおばPさんだけが頼りである。
 適確なルートを選択してくれるので、その後を付いて行くだけだ。
 時々カヌーの中で立ち上がって先の瀬の様子を窺う姿には驚かされた。私も見通しの悪い先の様子を見るために立ち上がることはあるが、あくまでも緩やかな流れの中での話しである。
 おばPさんの場合、かなりの流れの中で立ち上がるのである。しかも、立ったままパドリングまでしちゃったりする。まるでイカダ下りの船頭さんみたいだ。
 そんな格好でルートを探しながら、こちらが「あっ、危ない!」と思うギリギリのところまで行ってから、素早く座り込んで瀬の中に突入するのだ。
 その後を付いていくと言っても瀬の中に入ってしまえば後は自分の判断で対応しなければならない。
 2週間前に下ったばかりなのに、増水した様子はまるで違う川を下っているみたいだ。これまで難所だった落ち込みが増水して潰れてしまい、あっさりと通過できたかと思えば、何ともなかったような場所に大波が立っていて驚かされたりする。
 水量が増えてアリーの底を擦らずに下れると思って喜んでいたら、これまで水面に出ていた岩が全て水の中に隠れてしまっているものだから、コース取りを間違えると逆に底を擦ってしまう。
 前回は一度も無かったのに、今回は2度ほどガリッと言う嫌な感触をアリーの底に感じた。
 それでも何とか沈もしないで、シーソラプチ川最大の難所まで下ってきた。前回はここで痛恨の沈をして、両岸にびっしりとカヌーが並ぶ「沈の花道」の中を流されていったのである。
 その難所は、普段は通過できない右岸側に、増水したためにチキンルート風の流れができていた。でも、誰もそちら側を下ろうなんて思っていないみたいだ。
 こんな場所では止まらずに一気に行ってしまった方が、アドレナリンも寸前で一瞬溢れ出すだけですむが、こうして止まってしまうとジワリジワリとアドレナリンが体内に滲み出してくる感じで、精神衛生上とても良くない気がする。
 「よし、行くぞ!」
対照的な表情 覚悟を決めて漕ぎ始める。ポイントは一つ、波に負けないパワーでパドリングすることだけである。
 落ちた後、正面の岩から返し波が襲ってきたが、それに負けないようにひたすらに漕ぐ。右へ向きを変えると正面に岩、かみさんがバウラダーを入れる。岩がカヌーの真横に迫ってきて私がパドルを入れる隙間が無くなってしまったが、ここまで来たらクリアは確実。
 その時の瞬間をサダ吉さんが撮影してくれたが、必至にパドリングするかみさんの後ろでエヘラエヘラと笑っている私の様子がはっきりと写ってしまい、後にかみさんの顰蹙をかうことになった。
 最近の我が家が写っているカヌーの写真を見るとこんなパターンが多くて、おまけに沈の瞬間は私の方が先に水の中に落ちてしまっているのがはっきりと写っていたりして、オヤジの威厳がかなり危うくなっているのである。
 Kevipaさん・ミエさんとおばPさんは、本州にいる時は何時も一緒に川を下っている気心の知れた仲なので、次に下ってくるミエさんが沈してくれるのをとても楽しみにしているみたいだ。
 別に気心が知れて無くても他人の沈は楽しいものである。どうせKevipaさんの沈は見られないだろうから、ミエさん一人に期待をかける。
 こんな場所では流れよりも速く漕ぐのがセオリーだと思っていたら、ミエさんの場合とても優雅にのんびりとパドリングしている。
 「あれ〜、それじゃ危ないんじゃ・・・」
 と見ていても、スルッと降りてそのままスーイスーイと下ってくるのだ。
 おばPさんが「何時もあんな感じなんだよねー」と期待を裏切られた様子でぼやいていた。

去年の落ち込み   今年の落ち込み
去年の同じ場所   水上の岩を見れば水の量が良く解る

 本来ならこれでシーソラプチ川の難所は終わったはずなのに、その先もまだ気の抜けない流れが続いた。
 そんな場所の一つでサダ吉さん艇がバランスを崩して沈をするのが目に入った。ホイッスルを鳴らして前を行くおばPさんに知らせ、直ぐに近くのエディに入った。流れも緩くなっているのでレスキューするのに、それほど苦労はしない。
 続いてミエさん艇もそこで沈をしてしまった。
 岸に上がったまま「あらら〜」とその様子を見ていたが、そこでハッと気が付いた。これはもしかしたら、遂にレスキューされる側からレスキューする側になる絶好のチャンスかもしれない。
 慌ててカヌーからレスキューロープを取り出し、直ぐ目の前を流れていくミエさんの前にそのロープを投げ込んだ。
 果たして上手くいくだろうかと見ていると、そのロープにミエさんがしがみついてくれて、ロープを握る手にずしりとした重さが伝わってきた。
 「ワーイ、釣れた、釣れたぁ〜!」
 釣りで初めて魚を釣り上げた瞬間の子供の様な気分だった。
 ミエさんが無事に岸に上がった後、自分の投げたレスキューロープをたぐり寄せていて「アッ!」と思った。
 レスキューロープをカラビナでカヌーに取り付けていたのだが、慌てていたのでカラビナごとカヌーから外してしまい、その金属製のカラビナが付いた状態でミエさんに向かってロープを投げつけていたことに気が付いたのだ。
 もしもそれがミエさんの頭に直接当たってでもいたりしたら、大顰蹙をかうところだった。素知らぬ顔でロープをカヌーに戻して、再び川を下り始めた。

 そしてようやく国体コースのスタート地点までやってきた。
 信じられないことに、水量が増えて難易度の上がったシーソラプチ川をここまで沈しないで下って来れたのだ。後は三段の瀬と渡月橋下の落ち込みを残すだけである。
 カヌーの中に入っていた水を完全に抜いて、万全の状態で三段の瀬に向かった。
 ところがそこで思いがけない大波に翻弄された。カヌーが思いっきり傾き、ガンネルを越えて水がザザーっと流れ込んできた。
 慌てて体勢を立て直したが、危機一髪である。こんなところで沈をしたら良い笑いものになるところだった。
 三段の瀬の下はスラロームの練習をする人達で賑わっているようである。増水によって波のパワーは増しているだろうし、ここでは皆を楽しませる結果になってもしょうがないだろうと覚悟を決めた。
噴水の瀬クリア とりあえず勢いだけは失わないようにひたすら漕ぎまくろう。
 瀬の手前で力強くパドリングして、勢いを付けてその中に飛び込んだ。
 大きく左へカーブしながら2段ほど落ちて、そして最後の3段目、右岸から思いっきり大きな返し波が被さってきている。
 その波を見た瞬間、これはもうダメだなと観念したが、しゃにむにその波に向かってパドルを突き立てると、バランスを保ったままその波を突き抜けることができた。
 この瞬間もサダ吉さんがカメラに収めてくれたが、後でその写真を見たら良くこれで沈しなかったものだと自分でも感心してしまった。
 水中に没しているアリーも、思いっきりひしゃげているように見える。
 アリーのポテンシャルが高いのか、アリーの限界を超えている波なのか、とりあえずアリーは壊れずに済んだみたいだ。

 その後はトラウマとなっている渡月橋下の落ち込み。
 落ち込みにたどり着く前に一瞬バランスを崩しかけたが、落ち込み自体は特に問題もなく無事にクリアできた。ここの場合は、水量が増えた方が落差が少なくなって難易度も下がるみたいだ。
渡月橋落ち込みクリア 皆が無事にクリアしたところで、この後どうするか話し合ったが、皆十分に川下りを満喫したみたいなので予定どおりその先で上陸することにした。
 その間にも波の高くなる場所があるので、かみさんと「最後まで気を抜かないで行こう」と気持ちを合わせて最後の瀬に入った。
 最後なので豪快に行ってやろうと、波の頂点をつぶす気持ちでカヌーを進める。
 ところがその波を潰すどころか、その波に跳ね返されるようにカヌーはあっさりとひっくり返ってしまった。
 「何でこうなるのー」と川に向かって文句を言いながら、そのままゴール地点に流れ着いた。
 最高に気持ちの良かった川下りのゴールが、結局これである。
 終わりよければ・・・、じゃなくて終わりは悪かったけれど、本当に楽しい川下りだった。

 と、話しはここで終わるはずだったけれど、少し続きがある。
 上陸して装備を片付けようと思ったら、私のデジカメがないことに気がついた。最後に沈したときに流されてしまったみたいだ。
我が家の沈現場 私のカヌークラブでも、三つもデジカメを川に流してしまった人もいるくらいだし、まあこんなこともあるかなと諦めようと思っていたら、Kevipaさん達が「それでは勿体ない、防水ハウジングに入れているのなら何処かのエディに流れ着いているかもしれない」と、そこから下流を探してくれることになった。
 自分でそれ以上川を下る体力は残っていなかったので、申し訳なく思いながらもKevipaさん、おばPさんの最強タンデムに捜査をまかせることにしたが、正直言って見つかるとは思っていなかった。
 しかし1時間後、下流の上陸地点で待っていると、おばPさんが私のデジカメを首からぶら下げて戻ってきたのである。
 ただ、カメラは簡単に見つかったものの、その後が大変だったみたいだ。
 途中の噴水の瀬が増水で凄いことになっていてそこで沈、カメラを首から提げていたおばPさんは危うく首を絞められそうになり、Kevipaさんは岩に膝をぶつけて負傷、上陸したときもまだ血が流れているような有様だった。
 命がけでデジカメを回収してもらい本当に感謝感謝である。
 もっとも当の二人は、そんなところを下れたことがまんざらでもなさそうな様子だった。
 こうして楽しい川下りはようやく終わりを向かえた。カナディアンだけの川下りはとっても楽しかったのである。


一緒に下った皆さん
おばPさん   Kevipaさん
おばPさん   Kevipaさん
ミエさん   サダ吉さん
ミエさん   サダ吉さん

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