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札内川

(大川橋 〜 札内清流大橋)

 日高山脈を源とする札内川は、十勝の中では歴舟川と並んで清流の誉れが高い川である。
 川としての難易度もそれほど高くはないので、初めて川を下った頃から一度は挑戦したい川として候補に上がっていた場所でもある。
 なかなか下る機会に恵まれなかったが、昔のNIFTYのキャンプ関連フォーラムのメンバーが札内川を下るのでどうですかと誘われ、喜んで参加させてもらうことにした。
 他の参加メンバーは全員が札内川の上流にあるキャンプ場に泊まっていて、川下りスタート地点である大川橋への集合時間が11時となっていたので、我が家はそれに間に合うように朝7時に札幌を出発した。
 余裕を持って10時30分現地に到着したところ、全員既に装備を整え終わり臨戦態勢で我が家を迎えてくれた。こちらも大急ぎで着替えを済ませ、直ぐに車を下流の上陸地点に回す。
 ゴール地点は国道38号の札内橋上流、周辺は住宅地に囲まれほとんど町の中と言っても良いような環境である。広大な河川敷には公園も整備され地元の人達の憩いの場所ともなっている。
 こんな場所に24時間自由に車が乗り入れられるなんて、札幌に住んでいる人間にはちょっと信じられない状況だが、この辺はまだ地方都市の大らかさなのだろう。
大川橋スタート地点 大川橋まで戻りいよいよスタートである。
 参加艇はカナディアン4艇にOC-1が1艇、そしてなんとカナディアン4艇のうち我が家を含め3艇がアリーなのである。
 湖ではたまに見かけるが、川でアリーを見かけることは殆どない。それが一度に3艇も集まってしまうのだから驚きである。
 もっともこれには理由があって、他の2艇のアリーの持ち主はそれぞれキャンピングカーのオーナーであり、屋根に舟を積むことが出来ないので、カナディアンを買う場合はアリーしか選択肢が無いのである。
 いつものカヌークラブの例会では参加者のほとんどがカヤックであり、カナディアン、それもファルトのアリーでは完全な足手まとい状態で、皆に付いていくのが精一杯なのだ。
 それが今回はアリーだけで3艇もあり、心強いというか、のんびりとした川下りを楽しめそうである。
 スタート地点は結構流れも速く、エディも無いので、川に出たらそのまま心の準備を整える間もなく流されていくしかない。
 昔の自分だったら多分無茶苦茶に緊張していたはずで、まだ経験の少ない他のアリー2艇のことを考えるとちょっと可哀相な気がした。
 私と同じカヌークラブのSさんが乗るOC-1が先導し、我が家はしんがりでスタートした。

アリー1号   アリー2号   アリー3号


 春先の雪解け水による増水は治まってきてはいたものの、まだ若干水量も多めで水の透明度も期待したほどではない。
 夏になってもっと水が減れば、本来の美しい清流を楽しめそうだが、そうなると今度はカヌーの腹がつかえてポーテージすることも多くなりそうだ。
 下る分には今くらいの水量がちょうど良いのかもしれない。
 札内川は、川に向かって突き出すようなコンクリートの水制が所々に作られているので、ヒヤリとさせられる場所が何カ所かある。
 その内の一カ所は流木も絡んで、川を完全に塞いでいたのでポーテージするしかなかった。余裕を持って岸に上がれるのでそれほど危険はないが、初心者ならばベテランの人に先行してもらいながら下った方が良いだろう。
 もう少し水量が増えればこの水制も水面下に隠れてしまうだろうし札内川は水量によってガラリと表情を変えそうな川である。
 適当な場所で休憩をとることにした。
 今回の川下りでは久しぶりにフウマを連れてきていた。
 最近のクラブの例会で下るような川ではフウマを乗せるのは無理であり、たとえ穏やかな川でも、最近のフウマは直ぐにカヌーから飛び出そうとするので落ち着いて川を下ることができない。
 川下りの時は何時も留守番させていたのだけれど、札内川なら大丈夫だろうと久しぶりに連れてきてやったのである。
 岸にカヌーを寄せると待ってましたとばかりにカヌーから飛び出して、河原の上で臭いを嗅ぎ回っている。満足した頃に呼び寄せると大人しくカヌーに乗り込んできた。
 その後も岸に付ける度に、好きなように歩き回らせてやる。ようやく少しはカヌー犬らしくなってきたようだ。
 最後尾から付いていくと皆の後ろ姿の写真しか写せないので、途中から先頭に出て適当なエディに入って皆が下ってくるのを待ち受けるようにした。
 札内川はカヌーカメラマンの練習にもなる場所である。

周りは石の河原   ちょっとヒヤリ

 途中の河原で昼食タイムにする。
 下っている途中に周囲の河原一面に赤い花が咲いているのが見えた。何の花だろうと気になっていたが、上陸した付近の河原にもその赤い花が一面に咲いていた。
花に囲まれ昼食タイム 家に帰ってから図鑑で調べたら、ムシトリナデシコがその花の正式名称のようである。考えてみたら、我が家の庭にも雑草として生えていた花だ。
 庭では雑草扱いでも、こんな場所では原生花園の貴重な花の群落のように見えてしまうのが何とも面白い。
 休憩を終えて後半戦のスタート。
 ヒヤッとさせられる場所も殆どなくなり、のんびりとしたダウンリバーが続いた。 流れが速いので、何も漕がなくてもカヌーは快調に進んでいく。
 歴舟川と同じく札内川の河原は広い。その河原の中を、まるで好き勝手に本流が蛇行しながら流れている感じだ。
 次第に分流も多くなってきて、コースの選択が難しくなってくる。
 別に選択を間違えても、浅瀬の中をカヌーを引っ張って歩くことになるだけなのだが、正しいコースを選んだ他の舟が何の障害もなく下っていくのを横目で見ながら川の中を歩くのは、とても悔しいのである。
 Sさんは今回OC-1に乗っているが、Sさんの奥さんは川下りに一人で参加しているCさんがカナディアンを一人で漕ぐのは自信がないというので、そちらの舟のバウマンとして乗り込んでいた。
 そのSさんが分流の手前でコース選択に迷うと、後ろから奥さんが「一体どっちに行くのよー!」っと文句を付けていた。
 「ほらっ、やっぱり違ったでしょ!」
 別々の舟に乗っているのにこれだから、一緒の舟に乗るとどうなってしまうのかちょっと心配だ。
 札内川のように分流の多い川で夫婦でカナディアンに乗る時は、くれぐれも喧嘩にならないように注意した方が良いだろう。
のんびりダウンリバー 天気も良くて気温も高かったので、今回は上半身はドライスーツを脱いでTシャツだけで下った。最近はいつもドライスーツに身を固めての川下りが続いていたので、体で風を感じながらのこんな川下りがとても楽しく感じられる。
 次第に市街地に近づいてきて、河原でバーベキューを楽しむ家族連れや、土手の上に車を停めて洗車している人なんかもいたりする。札内川は地元の人にも親しまれている川なのだろう。
 ゴール手前で最後の休憩を取る。
 SさんがOC-1を貸してくれるというので、試しに乗せてもらった。急な流れの中でフェリーグライドにチャレンジしたが、流れに押されてカヌーが直ぐ向きを変えてしまう。
 対岸から戻ってくる時、バランスを崩して思いっきりカヌーが傾いた。「今日は誰も沈していないのに、まさかここで俺が最初の沈?」
 一瞬覚悟したけれど、何とか体勢を立て直すことができた。
 格好悪いところを見られたなーと他のメンバーの方にチラッと目をやると、そんな私にはまるで気にもかけずに、皆、別の方向を向いていた。
 「あっ、犬が泳いでる」対岸で遊んでいた子供達の声が聞こえた。
 皆が向いている方向を見てみると、そこからかなり下流の流れの速い場所でフウマが必死になって泳いでいた。
 「何やってるんだ、あの犬!」
 私が一人で川に出たのでそれを追いかけようとしたのか、対岸で子供達が何かを食べていたのでそれをもらいに行こうとしたのか、理由は分からないが、かなり流されながらも何とか岸まで戻れたみたいだ。
 エヘヘと照れくさそうな表情を浮かべながら皆のところまで戻ってくるフウマ。
 これで飼い主の方も沈していたら、良い笑いものになっているところだった。
 そこから間もなくで、ゴール地点に無事に到着。
 久々にのんびりとした川下りを楽しむことができて、フウマもそれなりに久しぶりの川下りを楽しんだ様子である。
 次第にフウマも老犬となっていくので、少しはカヌーの自信も付いたし、まだ元気な今のうちに長年の夢であった家族だけでの1泊ダウンリバーを企画しても良い頃かもしれない。


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