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シーソラプチ川

(ラフトスタート地点 〜 国体コース入り口)

 カヌークラブで経験も積んだので、そろそろクラブを離れての川下りにも挑戦したくなってきた。
 狙いは空知川の上流、シーソラプチ川である。空知川の落合付近でも十分に綺麗な清流であるが、シーソラプチを下った人の話では、もっともっと美しい流れであるという話だ。
 道外からシーソラプチ川を下りに来る人達がいたので、できれば一緒にと考えていたが、1日違いで予定が合わない。
 同じカヌークラブのSさんが、そのメンバーと一緒に下ることになったので、私はその翌日、Sさんに付き合ってもらってシーソラプチにチャレンジすることにした。

スタート地点 当日は秋を感じさせる澄んだ青空が広がり、絶好の川下り日和だ。
 Sさんの奥さんはちょっと風邪気味で、前日はSさん一人で下ったということだが、今日は体調も回復してタンデムの川下りである。
 気心の知れた仲なので楽しく下れそうだ。
 ただし、お互いにレスキューできるような腕前でもないので、全くの自己責任の川下りである。それでも、前日に同じコースを下った人が一緒というのはかなり心強い。
 キャンプ場を出発し、シーソラプチ川のスタート地点へ向かった。下る区間は、そこから空知川の国体コースの終わりまで、車の配置も終わっていよいよ川へカヌーを浮かべる。
 そこは広い瀞場になっていて、水も素晴らしく澄んでいる。やっぱり憧れのシーソラプチ川だけあるなーと嬉しくなってしまった。
 しかし、そこの直ぐ下流を見ると川幅は急に狭まり、岸にぶつかるような感じで流れもかなり速くなっている。
 せめてスタートして暫くはのんびりと下らせてもらいたいものだ。いきなりアドレナリンが体の中に放出されるのが感じられる。
 緊張した割りには、何事も無くそこを通りすぎることができた。
 そろそろ、この程度の流れには慣れてきても良さそうなものだが、どうしても直ぐに臆病風に吹かれて、悪いイメージばかりが頭の中に浮かんでくるのだ。

川の風景 直ぐにまた川幅は広がり、快適な流れが続く。
 水量はかなり少なめなので、隠れ岩に乗り上げないように常に注意を払っていなければならない。
 たまに嫌らしい岩がらみの瀬が現れるが、この程度ならばシーソラプチ川も可愛いものである。
 Sさんの「この先に一カ所だけ、正面に岩がある落ち込みがありますが、水量も少ないし別に沈しても何とも無いですよ」との言葉。
 ちょっと心配はあったが、Sさんの言葉を信じて、その後を確実にトレースしながら下っていく。
 次第に岩が目立ちはじめた。そのうちに、前方にかなりやばそうな場所が見えてきた。流れが岩と岩の間に吸い込まれ、その向こうで大きな白波が立っている。
 Sさん艇は、ためらいもせずにその岩の間に突っ込んでいった。
 ガツン、ゴツンという大きな音と共にSさん艇が左右に大きく振られ、後ろ向きになってその途中で止まってしまった。
 「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
 慌ててバックストロークでスピードを緩め、その先の様子を窺う。
 一度上陸しようかとも考えたが、Sさん艇が何とかそのまま下っていったので、続いて我が家も突っ込むことにする。
 落ち込みの手前まで来て、ようやくその場所の全容が明らかになった。
 岩の間を落ちた水はそのまま直ぐ正面の岩にぶつかり、左にねじれるように向きを変えてもう1段落ちている。落ちた先ではまたすぐに右に流れが変わっていて、Sさん艇はそこで後ろ向きになってしまったみたいだ。
 その落ち込みはカヌー1艇分の幅くらいしかなく、正面の岩までの間隔も短い。カヤックならば問題なさそうだが、長いカナディアンではかなり苦しそうだ。
 もう止まることはできない。それよりも、落ち込みの手前の水深が浅いのでそこに引っかかる方が心配だ。
 そこでカヌーの腹をこすって、横向きになって落ち込みにでも入ったら、とんでもないことになってしまう。
 ガツッと言う感触をカヌーの底に感じたが、何とか真っ直ぐな体勢のままで落ちることができた。
 「左!」
 直ぐにかみさんに声をかける。
 「右だ!」
 かみさんが逆サイドにパドルを入れる。その拍子にかみさんの体が大きく右に傾いたが、グイッと踏ん張る。
 左側の岩にカヌーがぶつかりそうになるが、何とかそれを避けて、「ハイ!左!」
 やっとの思いでそこを抜けて、Sさん夫婦が待つエディにカヌーを入れた。
 無事にそこを下れたのが信じられない。もしも下見をしていれば、ためらわずにポーテージしていただろう。
 「これで、この後はもう大丈夫だよね〜?」
 「もう少し行ったら、例の落ち込みが待ってますから」
 「ゲッ!、今の場所は何だったの!!」

 その後も小さな落ち込みが続き、岩に乗り上げる回数も増えてきた。
 そんな時はためらわずにカヌーから降り、一旦カヌーを岩から剥がして流れの中に戻し、エイヤッとカヌーに飛び込む。
 下手に、乗ったままで岩から外そうとすると、アリーのフレームがますます曲がってしまうのだ。
 面倒くさいけど、アリーでこんな川を下るためにはこれしかないという事が次第に解ってきた。
 そして、いよいよ例の落ち込みの場所が見えてきた。
 見るからに嫌らしそうな感じだ。
落ち込み どんな風になっているのか、川の上からは全くその様子が解らないが、相変わらずSさん艇は躊躇わずにそこへ進んで行った。
 落ち込みへ落ちたSさん艇の姿が見えなくなった。しばらくしてその先に姿が現れる。かなり落差のある落ち込みみたいだ。
 Sさんの無事な姿を見届けて、いよいよ次は我が家の番である。
 落ち込みに近づいて行っても、なかなかその下が見えてこない。「もしかして直に落ちてんじゃないの?」
 それに、落ち込みの手前がかなり浅くなっているのも気にかかる。
 少しでも深そうな場所を探してカヌーを進めたが、やっぱり底がつかえてしまった。水流に押されてそのままカヌーが横向きになってしまう。
 「ま、まず!」
 どうしようもない状態で、我が家のカヌーはそのままドスンと・・・、落ちた。
 「あれ?」
 一瞬何が起こったのか解らなかったが、ふと気が付くと、落ち込みの下の白波の中にアリーがプカリプカリと浮いていた。
 我にかえって「漕げ!漕げ!」とかみさんに声をかける。
 その先で待ち受ける大岩にぶつかることもなく、意外とすんなりとそこを抜けることに成功した。
 「今のは何だったの?」
 上陸してその場所を確認しに戻ったが、やっぱりそこは下見をしていたとしたら、あっさりとポーテージするような落ち込みだった。
 今回は水量が少なくて岩に引っかかってしまったが、水量が多かったらどうなるのか、ちょっと想像がつかないような場所である。

 美しい渓谷の風景しばらく下って後ろを振り返ると、美しい渓谷の姿にため息が出た。
 写真などでこんな風景の川を見ると、「ウッ、ウウ〜ッ、く、下りたい」なんて何時も思ってしまうのだが、実際に下ってみると回りの景色を眺める余裕なんて全くない。
 たまに休憩のために入ったエディで、澄んだ水の美しさに感動するくらいである。
 再び川幅も広がり、穏やかな流れになってきた。
 やがて見覚えのある場所が現れた。空知川国体コースの始まりである。
 最後に国体コースを下って今日の締めくくり、と思ったが、Sさんの奥さんの体力が限界みたいだ。病み上がりの体で無理をしたせいだろう。
 国体コースは何時でも下れるし、なんと言ってもシーソラプチ川を下りきった満足感だけで十分である。
 川下りはそこで切り上げることにした。
 Sさんが下流側に停めてある車を回収しに行っている間だ、空知川の清流に体を浮かべて火照った体と心をクールダウンさせる。
 最高に気持ちの良い、シーソラプチ川の川下りであった。

 帰り際に国体コースの三段の瀬を見てみたが、「何これ?、邪魔な岩もないし、まるで楽勝じゃ〜ん。」
 ついつい調子に乗ってそう感じてしまうくらい、シーソラプチ川を下りきった自信は大きかった。
 愛艇アリーの船底は、またまた無惨に潰れていたが、ある程度の場所でもアリーで下れる自信がついた気もする。
 そろそろ来年あたり、私が一番下りたかった鵡川のニニウ〜福山の間にチャレンジしてみようかな〜♪

(2004.8.11)


 
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