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剣山(2024/05/30)

体力の衰えを痛感

去年、旧友との月例お食事会に新たに加わったメニューが温泉と登山。
去年は白雲山に登って「登山は年1回で良いかな」との結論となり、今年の登山は少しステップアップして地元清水町の剣山に登ることに。
私は11年前にかみさんと二人で登って以来、M君は二十歳の頃に職場の仲間と登ったことがあるとのこと。
T君にとっては初めて登る山であり、事前に色々と調べてきたみたいだ。

午前8時半に登山口集合で山頂でお昼を食べようとのT君の案だったけれど、「その時間じゃ山頂に早く着きすぎるから9時集合で良いんじゃない」との私の意見で9時集合に変更。
11年前は山頂まで2時間もかからずに登っていたので、その時の印象から私の中には剣山は初心者向けの山というイメージが出来上がっていたのである。

帰宅後に北海道夏山ガイドを改めて見てみると、剣山は中級者向けの山で、山頂までのコースタイムは3時間となっていた。
それを先に読んでいれば、集合時間は8時半のままで、この日の朝に10キロ走るような真似はしていなかったはずである。

剣山登山
剣山神社


剣山神社で安全祈願をしてから午前9時10分登山開始。
直ぐに急登が始まる。
何となく足が重たく感じるのは朝ランの影響なのだろうか。

急登が終わると尾根上に続くなだらかな道となって一息つけた。
T君が「このザワザワとした音は何なんだろう?」と言いはじめた。
最初は何のことを言っているのか分からなかったが、直ぐにそれがエゾハルゼミの鳴き声であることを理解する。
彼はセミは夏に鳴くものだと思っていたので、森の中に響いている音がセミの鳴き声だとは思いもよらなかったらしい。
私からすると、この季節にエゾハルゼミが鳴くのは常識の一つと思っていたので、T君のビックリしている様子がとても新鮮に感じた。

剣山登山
熊笹が繁茂する森の中


周辺の森は林床がクマザサに覆われている。
これがチシマザサならば登山道脇でタケノコが採れるのにと思って足元を見ながら歩いていると、小さくて目立たない花が沢山咲いているのに気が付いた。
Googleの画像検索で調べてみるとチゴユリらしい。
珍しい花ではないらしいが、見るのは初めてのような気がする。

チゴユリ
チゴユリ


エゾオオサクラソウの花も多い。
山野草の女王とも言われるシラネアオイが所々に咲いていたが、数の多いエゾオオサクラソウに完全に圧倒されていた。

エゾオオサクラソウ
エゾオオサクラソウ


黄色い花も目立っていたが、後で調べてみるとケエゾキスミレと言うらしい。
何処でも見かける花なので大して気にかけなかったけれど、この種類は日高山脈に広く分布しているようだ。
事前にそれを知っていれば、見方ももう少し変わっていたかもしれない。

ケエゾキスミレ
ケエゾキスミレ


再び登山道の傾斜がきつくなってきた。
登り始めてから1時間を過ぎていたので休むのに良い場所を探していたが、腰掛けるのに丁度良い岩が有ったので、そこで一休みする。

剣山登山
ようやく一休み



そこからは岩場が多くなって、道も険しさを増してきた。
何時の間にかササの姿も見えなくなる。
林床を覆っていたササが消えると、森が本来の美しさを取り戻したように感じる。

剣山登山
クマザサがなくなると森の風景が変わる


そんな森の中でピンクの花を咲かせているのはムラサキヤシオツツジだろう。
新緑に染まった森の中に彩りを添えるピンクの花は一際美しい。

ムラサキヤシオツツジ
ムラサキヤシオツツジ


白い花を咲かせる低木はオオカメノキだ。
そんな木々の花が疲れを癒してくれる。

オオカメノキ
オオカメノキとムラサキヤシオツツジ


急登を登り終えて一の森と呼ばれている場所に到着。
ここまでかかった時間はおよそ1時間半。
ほぼコースタイム通りである。

剣山登山
標高906mの小さなコブが一の森と呼ばれている


私とT君が一休みしている間に、M君がそこから続いている細い踏み分け道を下りていった。
その先に眺めの良い場所がありそうな感じだったけれど、山頂まで登れば同じ景色を見られると思って、そのまま見送る。
でも、一の森の看板の上に展望台と書かれた小さな矢印があるのに気が付き、戻ってきたM君と入れ替わりで私も行ってみることする。

剣山登山
この梯子を登ったところが展望台


暫く下っていくと岩の上に登る梯子が見えてきた。
短い梯子なので簡単に登れるだろうと思ったが、下が切れ落ちていて結構スリリングな梯子だった。
それを登った先の岩の上が展望台らしい。
多分、山頂から眺めるのと同じ場所が見えているのだと思うが、こちらの方が標高が低い分、風景が近くに見える感じだ。

剣山登山
展望台からの眺め



休憩を終えて再び登り始める。
ロープ場もあって、更に険しくなってくる。
T君の太股が悲鳴を上げ始めていた。
太股の筋肉が時々痙りそうになるらしい。

剣山登山
険しい上りが続く


それでも「最後の梯子を登る時は一休みさせてね」と言っていたので、まだ頑張れそうである。
しかし、そのうちに何度も立ち止まるようになり「このままじゃ下山でも時間がかかりそうだから、今日はこの辺で止めておく」と言い始めた。
本人の判断なのでしょうがない。

剣山登山
太ももが攣りそうで座り込んでしまったT君


時間はもう12時近くになっていた。
本当は山頂で昼食を食べる予定でいたけれど、もう少し登れば三の森なので、そこまで登って皆で昼食を食べることにする。

昼食を食べ終わって一休みしてもT君の太股は回復せず、私達が山頂アタックしている間にT君は一の森まで下山することになった。
そこから最後の梯子までも、まだ険しい登りが続いていた。
これはやっぱりT君が引き返したのは正解だったようだ。

途中で剣山山頂が間近に見える場所があった。
その空に向かって聳え立つ岩峰の頂上に登るのだと思うと、それだけで足が竦みそうになる。

剣山登山
山頂に刺さる剣まで見える


そして最後の梯子場までやって来た。
三箇所の梯子が連続する。
グラグラしていたり、傾いている梯子もあって、ヒヤヒヤしながらそこを登っていく。

剣山登山
最初の梯子
剣山登山
最後の梯子


そして、最後の梯子を登った先が剣山の山頂だった。
12時45分、剱山登頂である。

M君と交代で山頂に立つ写真を撮し合う。
11年前は剱が刺さった山頂には怖くて立てなかったけれど、今回はM君に促されてしょうがなく山頂まで登った。
でもやっぱり、そこで立ち上がることはできず、座ったままカメラに収まる。

剣山登山
本当ならここで立ち上がって写りたいところだけれど


M君は高いところは全然気にならないみたいで、山頂に立って両手まで広げているのには恐れ入った。
先に登っていたソロの男性が昼食を食べ終えて帰り際に、「ヤッホーと叫んで良いですか?」と聞いてきた。
わざわざ断るまでもないと思うけれど、突然ヤッホーと叫ばれたらこちらもビックリしていたかもしれない。

剣山登山
これが正しい写り方


彼の大きな声が山々に響き渡ったが、こだまとしては返ってこなかった。
「最近は山頂でヤッホーって叫ぶ人はあまりいないですよね」と男性。
確かに、私も山でヤッホーの声を聞いたのは初めてかもしれない。
楽しそうなので、今度は自分でも叫んでみようと思った。

剣山登山
ヤッホーと叫びたくなる風景


山頂からの風景をしばし楽しんでから、私達も下山開始。
梯子場は、登る時よりも下りる時の方が怖い気がする。
M君はそんなことも気にならないように、スイスイと梯子を下りてきた。

剣山登山
身軽に降りてくるM君


三の森まで戻って来て、M君がT君に電話をすると、既に二の森まで下りてきていて、一の森で待っているとのこと。
私達も直ぐにその後を追う。

その途中に私の身にちょっとした災いが降りかかった。
ロープ場で足を滑らせて転倒。
運悪く、少し出っ張っていた岩に背中をぶつけてしまう。
濡れて滑りやすくなった一枚岩で、おまけに斜めに傾いているので、登りの時もロープを掴んでいてもバランスを崩して転びそうになっていた。

剣山登山
ここを降りる時に転倒


もっと慎重に下りれば良かったと後悔したが、2年前に四国の石鎚山で滑落し肋骨を折った時の事を思い出す。
その時も、下山中はそれ程の痛みは無かったのに、夜から痛み始めて翌日に病院でレントゲンを撮って骨折が判明したのだ。
今回は結局、折れてはいなかったけれどヒビは入ったようで、暫くその痛さに苦しめられることとなった。

そうして一の森でT君と再会。
太股の方は何とか回復したようだ。
その後は2人で声を掛け合って慎重に下山したが、それでも何度も躓いたり滑ったりを繰り返し、一度は尻もちをついてしまった。
登りの時もT君のことを笑えないくらいに私も疲れていたし、下山でもこの有様。
自分の歳を改めて感じさせられる山行となってしまった。

午後3時20分に剣山神社まで戻って来た。
行動時間は6時間10分である。
剱山はやっぱり中級者向けの山だった。



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