北海道キャンプ場見聞録
大原~貴船 (2020/11/17)
京都一周トレイル五日目
今日は大原まで時間がかかるので6時半過ぎには宿を出て、地下鉄、バスを乗り継ぎ、昨日のゴール地点となった戸寺のバス停に降り立った。
そうして午前7時45分、バスを降りて直ぐにトレイルを歩き始めた。
大原の里を朝日が照らし始める
朝早い大原の里は、まだ気温も低く手袋をしていない手が冷たくなってくる。
山に囲まれた大原の里に、遅い朝の光が射し込んでくる。
昨日私達が下りてきた山の後ろから朝日が登ってきた。
近くで飼われている鶏がコケコッコーと鳴き声を上げる。
朝日が昇ってきた
かみさんの大好きな大原だけれど、トレイルを歩いている途中に観光して回る余裕はない。
滞在中にもう一度大原まで来ることにして、今回は足早に大原の里を通り過ぎた。
途中で江文神社に立ち寄るつもりでいたけれど、うっかりしてその入口に気づかないまま小川を渡って江文峠への古道に入ってしまった。
後白河法皇が大原の寂光院に建礼門院を訪ねるためにこの道を歩いたと言われる由緒のある古道だけれど、現実は杉林の中の荒れた道で、そんな面影は全く感じられない。
杉林の中のトレイルに昔の面影はない
江文峠で一旦車道に出た後、再び山道に入り、暫くしてまた車道へと出る。
そこには、山間に開かれた静原の里が広がっていた。
こじんまりとした集落だ
途中から静原の集落の中を歩いていく。
蔵のある立派な家が多い。
水田は僅かしか無く、山間のこの様な集落でどうやって生計を立てているのか不思議である。
そんな事を考えながら歴史のある町並みを歩くのは、とても楽しい。
静原の街並み
京都府山岳連盟が作成した資料では、静原神社の大イチョウのことが書かれていて、それを見るのを楽しみにしていた。
真っ黄色に黄葉した大イチョウは、遠くからでも直ぐにそれと分かる。
それ程大きなイチョウではなかったけれど、いくつもの気根が下がっていて、なかなか立派な姿である。
静原神社の大イチョウ
鳥居をくぐった先のモミジも見事なほどに真っ赤に色付いていた。
本殿前の2本の大杉も立派だ。
巨木のある神社はそれだけでありがたく思えてしまう。
静原神社の大杉
静原の里に別れを告げ、鞍馬へと抜ける薬王坂を登る。
舗装された坂道は車で走るのも怖くなるくらいの急傾斜である。
ロッジ村の中の急坂を登る
林間に数軒のロッジが建っている。
以前はロッジ村だったのだろうが、現在は営業していない様子で、壊れかけたロッジも見られる。
そのロッジ村を過ぎると山道となる。
薬王坂に入ってから20分ほどで峠の頂上まで登ってきた。
峠の頂上まで後少し
そこから鞍馬に向かって急な山道を下っていく。
その途中、山の中で遊んでいる幼稚園児の姿に驚かされた。
それを見て鞍馬の集落までもう少しなのかと思ったが、集落まではそこからまだ暫く下ることになる。
さすがに牛若丸が修行していた鞍馬の地だけあって、この幼稚園児たちもこうして修行しているのだろうと感心させられる。
ミニ牛若丸達が修行していた
上空ではヘリコプターが飛び回っていた。
近くでヘリコプターを使った工事が行われているようだ。
午前9時、鞍馬へと下りてきた。
私は高校の修学旅行を含めて、今回が7回目の京都なので、大体の観光名所は回り尽くしていた。
その中で鞍馬と貴船にだけは訪れていなかったので、今回京都一周トレイルを歩く中でここに来るのを一番の楽しみにしていたのである。
鞍馬に下りてきたところにある地蔵寺のお地蔵さん
トレイルはここから鞍馬川に沿って二ノ瀬まで下っていくのだけれど、私は鞍馬寺から山を超えて貴船神社に向かい、そこから貴船川に沿って下ってくる予定である。
まずは鞍馬寺へと向かう。
鞍馬寺の本殿まではかなりの高低差があるので、途中までケーブルカーを利用する人が多いが、この日は風倒木搬出作業のためケーブルカーは運休になっていた。
ずーっと聞こえていたヘリコプターの音は、この風倒木の搬出を行っていたのである。
ここでも台風による倒木被害は甚大だったようだ。
鞍馬寺山門
仁王門を抜け最初に由岐神社に参拝。
その後、つづら折りの参道を登って本殿を目指す。
鞍馬、貴船は、紅葉の名所としても知られている。
ところが参道を登っていっても、なかなか美しい紅葉に出会えない。
今年は秋の気温が高かったので色付きも悪いのかなと思いながら本殿まで上ってくると、そこでようやく美しい紅葉風景を見ることができた。
鞍馬寺の紅葉
下から本殿までの高低差は約160m。
倒木撤去作業をしているヘリコプターが自分の目線の高さを飛んでいるくらいだ。
ケーブルカーが動いてないと、お年寄りが本殿まで上ってくるのは大変だろう。
倒木撤去作業のヘリコプターが目の前を飛んでいく
そこから奥の院を目指すには更に約90mを登らなければならない。
この奥の院への道は「木の根道」としてガイドブックに紹介されていたので、そこを歩くのも楽しみだった。
最高点まで登ってくると、木の根道の看板が立っていた。
その看板の方に行ってみると、ガイドブックに乗っている写真と同じ風景が広がっていた。
「えっ?ここって道じゃないよね?!」
鞍馬寺の木の根道は道ではなかった
結局、そこから先に写真を上回るような木の根道は現れなかった。
これまでに歩いてきた京都一周トレイルの方が本物の木の根道が沢山あったのである。
鞍馬寺で修行していた牛若丸が背比べをした石とか、その義経を祀った義経堂等を巡って、鞍馬寺奥の院の魔王殿までやってきた。
本殿からはかなり離れている奥の院だけれど、そこからは貴船神社の方が近いくらいだ。
遮那王尊として義経が祀られている義経堂
そこから急坂を一気に下って午前11時半前に貴船まで下りてきた。
観光客で結構な賑わいである。
まずは予め調べてあった蕎麦屋「でんべ」に入って腹ごしらえ。
貴船神社の鳥居前は大賑わい
本殿に参拝した後は貴船川の上流にある奥宮を目指す。
貴船川では、川の上に床を作ってそこで飲食する川床が人気である。
残念ながら川床は既に9月で終わっているが、一度は利用してみたいものである。
シーズン中はここに川床が設置されるのだろう
途中にある結社は縁結びの神様。
私達には全く関係なく、せいぜい未だに独身の息子が早く結婚してくれるようにお願いする程度だ。
しかし、一人で参拝している様な女性は真剣度が違う。
神前で長い間頭を下げ続けて女性の後ろで、私達は彼女が祈り終わるのをじっと待っているしかない。
樹齢千年の相生の杉や、杉と楓が和合した連理の杉などの見どころも多く、楽しく歩ける。
皆がカメラを向ける相生の杉
紅葉の方は期待していた程でもない。
既に葉を落としてしまった木も多く、川の中の散り紅葉のほうが美しいくらいだ。
奥宮に参拝した後は、今日のゴールであり明日のスタート地点にもなる二ノ瀬を目指して貴船川沿いを歩いていく。
そして、本来なら叡山電鉄の二ノ瀬駅から電車に乗って宿に戻るところだけれど、今年7月の大雨による土砂崩れにより市原~鞍馬間が通行止めになっているため、もう一駅先の市原まで歩かなければならない。
台風による倒木やら、大雨による土砂崩れなど、最近の気候変動による自然災害は京都にも大きな被害を与えているのである。
貴船神社奥宮への道
建物もなくなり、貴船川沿いの道をひたすら歩いていくと、「あれ?こんなところに!」と驚くくらいに小洒落た店がポツンと建っていた。
食事もできるみたいだけれど、目を引かれたのはスウィーツ系の看板。
疲れてくると甘いものを食べたくなるのだ。
渡りに船とばかりにその店に飛び込んだ。
私はぜんざい、かみさんはパフェを食べて元気回復。
再び元気に歩き始める。
スウィーツの看板に足を止める
貴船神社周辺よりも、この辺りの方が紅葉が綺麗である。
叡山電鉄の貴船口駅を過ぎた先に貴船神社の一の鳥居が建っている。
貴船神社からは2キロも離れた場所である。
何の事はない、ここの紅葉が一番綺麗だったのだ。
一番綺麗だった紅葉
叡山電鉄の二ノ瀬駅と市原駅の間には「もみじのトンネル」と呼ばれる区間がある。
それは列車の車窓からしか見られない場所。
道路を歩いていると、それらしい場所がチラリと見えた。
今回の京都の旅でこの「もみじのトンネル」を通れなかったことだけが心残りだった。
そうして午後2時過ぎに市原駅に到着し、今日のトレイル歩きは終了した。
行動時間6時間23分、歩いた距離は15.0キロ。
前半がトレイル歩き、後半が鞍馬・貴船観光となったが、静かなトレイル歩きから突然観光客の多い場所になってくると良い印象は受けない。
純粋に観光目的だけで鞍馬・貴船に来た方がもっと楽しめたかも知れない。