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岩屋観音・小幌駅(2020/10/26)

にわか鉄ちゃんの山歩き

GoToトラベルを利用して洞爺湖温泉で一泊した後、向かうのは秘境駅ランキングで全国1位の室蘭本線小幌駅。
この小幌駅、人里離れた山の中にポツンとあるのだけれど、その気になれば歩いてでも行けるのである。

そこへ向かう途中、久しぶりに大岸シーサイドキャンプ場を見たくなって寄り道する。
もしかしたらまだオープンしているかもしれないと思っていたが、コロナの影響で今年はずーっと閉鎖されたままだったようだ。
今年はコロナのためにキャンプ場が大賑わいとなっているようだが、やる気のないキャンプ場はオープンしないままにシーズン終了を向かえたのである。
そこの美しい風景が何とも勿体なく思えてしまう。


この夏、誰も訪れることのなかっただろう大岸キャンプ場前の海岸


嘆かわしい状況だが、昨日はそのおかげで思わぬ拾い物をしたのである。
某キャンプ場の場内には栗の木があるのだけれど、今年は閉鎖されているのでそれを拾う人もいない。
様子を見に立ち寄った私達は、そこで大量の栗を拾い、美味しい栗ご飯を食べることができたのである。


既に誰かに拾われていたけれど、それでも大量の栗を拾えた


国道37号線の礼文トンネルを抜けた先に小さな駐車スペースがある。
ここの標高は178mで、小幌駅のある辺りの標高は50mなので、駅までは山道を下っていくことになる。
周辺には何の看板もなく、ここから小幌駅まで歩いていけることを知っている人は殆どいないだろう。
まあ、そんな秘境駅に興味のあるのは鉄ちゃんくらいで、正統派の鉄ちゃんなら、ちゃんとJRを利用して小幌駅に降り立つところだ。

ここから歩いて目指すのは、小幌海岸の岩屋観音である。
ただ、小幌駅は岩屋観音からの周回ルートの途中にあるので、ついでに立ち寄る人も多いのだ。


礼文トンネルの横から林道に入っていく


交通量が多く見通しの悪い道路を、車がいなくなったタイミングを狙って急いで渡る。
車の通行音がトンネルの中に反響し轟音となって聞こえてくるので、その場所を離れるとようやく心が落ち着く。

林道を少し歩くと「岩屋観音この先1.2km」と書かれた小さな木製の看板が立っていた。
そこから下の方へ下りていく細い道があった。
そこには看板も何も無かったけれど、多分小幌駅へ下りていく道になるのだろう。


この分岐を右に下りていくと小幌駅がある


看板に従って林道を歩いていく。
多少のアップダウンはあるものの、なかなか下り坂にはならない。
熊よけ鈴を忘れてきたので、時々大声を出したり、かみさんとの会話も意識して大きな声で話すようにする。
何せ、クマの気配の濃厚な土地なのである。


林道歩きが思いの外に長かった


1キロ以上歩いて、ようやく岩屋観音の看板が立つ分岐があった。
岩屋観音まで1.2キロは大嘘である。


岩屋観音へは右に下りていく


林道を離れて、小さな沢に沿った道をどんどん下っていく。
大きなうろが口を開けた巨木が途中で出迎えてくれた。


このウロの中に入れそうだ


感じの良い山道だけれど、私は膝を痛めて数日前に整形外科にかかったばかり。
薬を飲んで痛みは治まっているけれど、その痛みが再発しないように、ゆっくりと慎重に下っていく。

紅葉にはまだ少し早い感じだが、山道は沢山の落ち葉で埋まりかけていた。
ゴロゴロした浮き石も多く、落ち葉がもっと増えてきたらそんな石も見えなくなってしまい、ちょっと怖そうだ。


カツラの巨木


カツラの巨木、苔生した岩や倒木、岩の間をチョロチョロと流れ落ちる水。
足元は不安定だけれど、そんな風景に心を癒やされる。


チョロチョロと流れ落ちる沢水が良い感じだ


エノキタケらしきキノコも見つけたけれど、はっきりと分からないので写真で撮るだけにしておく。


エノキタケか?



小幌海岸
海岸が見えてきた


50分ちょっとで小さな入り江になった海岸まで下りてきた。
岩壁の下が洞窟になっていて、その入口に立つ風雪に磨かれた鳥居が良い感じである。

小幌海岸
岩壁の下に洞窟がある


その鳥居をくぐって洞窟の中に入る。
そこは思っていたよりも広く、奥には円空の彫った仏像が安置されている祠があり、周りには木彫りの仏像も並んでいる。
洞窟の中は、霊気を感じられるようなパワースポットで、苦労して歩いてくる価値のある場所である。

小幌海岸
洞窟内部から


小幌海岸
洞窟の中に並ぶ仏像


海岸から少し離れた場所に桟橋があった。
そこに船を着けたとしても、そこからどうやって渡ってくるのだろうと不思議に感じたが、干潮の時は桟橋まで歩けるようになるみたいだ。

小幌海岸
潮が引けば桟橋まで歩いていけるみたいだ


少し休んでから、念の為に用意していたサポーターを膝に付けて、小幌駅を目指すことにする。
沢の右側の斜面に道がついていた。
ジグザグに続くその道を登って一気に標高を上げる。

小幌海岸
小幌駅に向かって一気に登っていく


60mほど登った後は、山の斜面をトラバースするように道が続いている。
結局、標高100mまで上って、その後は小幌駅に向かって緩やかな下り坂とっていた。


海を眺めながら斜面をトラバース


およそ20分で秘境小幌駅に到着。
室蘭本線はこの小幌駅を挟んで長いトンネルになっていて、小幌駅のある僅か100mの区間だけ太陽の下に出てくるのである。
正に本物の秘境駅である。

小幌駅
小幌駅に到着



ここを特急列車が通過する時間までまだ間があったので、その前に駅から下に降りたところの文太郎浜まで行ってみることにした。
小幌駅まで列車でやって来た鉄ちゃんは、次の列車がやって来るまでの時間を利用して、この文太郎浜に行く人が多いようだ。
ここの駅に降り立ったとしても、周りは山だけなので、他にすることは何も無いのである。

文太郎浜
文太郎浜と岩屋観音の分岐


岩屋観音から歩いてきた道の途中に文太郎浜への分岐がある。
かなり険しい道を予想していたけれど、そんなに苦労することもなく5分ほどで海岸まで下りてきた。
両側に岩壁が迫るこじんまりとした玉石の海岸である。

文太郎浜
海岸まで出てくるとまるで別世界のように感じる


昔はこの海岸が海水浴場になっていたとのことである。
民宿もあって、文太郎浜の名前はそこのご主人に由来するらしい。
小幌駅も、そんな時代には結構賑わっていたのかもしれない。

文太郎浜
美しい文太郎浜


再び駅まで戻り、コンビニで買ってきたおにぎりを食べながら、特急がやてくるのを待つことにする。
小幌駅を列車が通過する正確な時間は分からないけれど、ここの前後の長万部駅と洞爺湖駅の時刻表を調べれば、大体の時間は見当がつくのだ。

小幌駅
雨を避ける箱の中にはノートや記念撮影用の切符が入っていた


おにぎりを食べ終わる頃、列車の接近を知らせるベルが鳴り始めた。
急に風が強くなってくる。
トンネルの中を走る列車により、トンネル内の空気が圧縮されて吹き出してきているのだろうか。

小幌駅
小幌駅を通過する特急北斗


そして列車通過を知らせるアナウンスが流れ、線路を渡る場所の遮断器が降りる。
カメラを構えて待ち構えていると、トンネルからもの凄い速さで列車が飛び出してきて、アッという間に100m先のトンネルへと吸い込まれていった。
日本一の秘境駅の前でスピードを落としてくれるかと期待していたが、そんなことは全く考慮せずに通り過ぎてしまったのである。

小幌駅
アッという間にトンネルに吸い込まれるように消えてしまった


何とか写真も写せたので、今度は美利加浜まで下りてみることにする。
その海岸にはフォトジェニックな立岩(オアラピヌイ)があるのだ。
文太郎浜や岩屋観音へと向かう道とは違う道が、駅の裏から続いている。

森を抜けると眼下にその立岩が見えてきた。
しかし、そこまで降りる道はかなりの急斜面である。

美利加浜の立岩(オアラピヌイ)
立岩を見下ろしながら崖を下りていく


途中まで下りたかみさんは「私は駄目」と言って引き返してしまった。
その崖のような急斜面には、鉄パイプの手すりや何本ものロープ、縄梯子まで取り付けられている。
掴まるロープも、どれを信用すれば良いのか迷うような状態である。
崩れやすい斜面なので、縄梯子は足場として使うようだ。

ロープ1本を頼りに上り下りすることになる。
普通の人にはここを下りるのはお勧めできない。

美利加浜の立岩(オアラピヌイ)
立岩が目の前に


駅から10分ちょっとで海岸まで下りてきた
ここも美しい海岸である。
立岩の先にずーっと続いているのが、本来の美利加浜と呼ばれる海岸なのだろう。

美利加浜
立岩の先に続く美利加浜


文太郎浜との間にも大きな岩があって、海岸伝いに文太郎浜と行き来するのは難しそうだ。
苦労して下りてきたのでもっとゆっくりとしたかったけれど、かみさんが上で待っているので、早々に海岸を後にした。

美利加浜
この岩の左側の斜面を下りてきた


一旦、駅に戻る。
後は車まで戻るだけだ。

小幌駅
小幌駅にお別れ


ホームの裏から、沢沿いに道が付いている。
岩屋観音へ降りる道の沢は水がチョロチョロと流れているだけだったが、こちらの沢は結構な水量がある。
登りながらこの沢を何度も渡るのだが、流れの中の足場となる岩が滑りそうだったりして、結構緊張させられる。


何度もこんな渡渉を繰り返しながら登っていく


最初に歩いた林道に合流する頃には、上空には雲が広がってきていた。
小幌駅を出てから約40分で車を停めてあった場所まで戻ってきた。
最初に歩き始めてからの時間は3時間20分。


道路からの風景、この下に小幌駅がある


下りから始まるちょっと変わった山歩きだったけれど、名所をぐるりと回ってちょっとした縦走気分も味わえた。
鉄ちゃんでなくても、なかなか楽しめるコースである。



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