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太忠岳(2016/05/26)

最後の水場は何処?


体調が優れない中、屋久島で最後に登る山が太忠岳だ。
ヤクスギランドを歩きながら体の様子を見て、大丈夫そうならそのまま太忠岳まで足を伸ばすつもりである。

レンタカーを借りてヤクスギランドへ。
ヤクスギランドまではバスも通っているが、太忠岳まで登るとなると帰りのバスに間に合わないことも考えられるので、レンタカーを借りるしか方法がないのだ。

ヤクスギランド朝は快晴だったのに、安房の町を出る頃には太忠岳の山頂は雲に隠れてしまっていた。
管理棟で協力金を支払って、ヤクスギランドの中へ。
受付のお兄さんの話では、太忠岳の登山口までは約1時間、そこから山頂までの往復で3時間くらいとの話し。
ガイドブックでのコースタイムは6時間20分。
予定より短時間で戻ってこれるのは、体調が優れないこともあり嬉しかった。

ヤクスギランドは前回も前々回も訪れていたので、千年杉やひげ長老と名前の付けられた屋久杉の前で写真を撮る程度で、ササッと通り過ぎる。
そのおかげで50分程度で登山口に到着。
身体は重たいけれど、そのまま太忠岳を目指す事にした。

屋久杉の森屋久杉ランドを離れて登山道に足を踏み入れると、風景がガラリと変わった。
林立する巨大な杉。
苔むした森。
観光ルートだけを歩いているだけでは目ににすることのできない、屋久島の本当の自然の姿。
屋久島の自然を味わうには、やっぱり山に登るのが一番である。

周りの木々や切り株、倒木が全て苔に覆われている。
感嘆の声を上げるしかない。

そんな時、足下に北海道でも見かけるフタリシズカが咲いているのを見つけて、何となくホッとした。


苔に覆われる森
全てが苔に覆われる

フタリシズカ「天文の森」と看板の出ている場所に休憩用のベンチがあったので、そこで休憩する。
体調不良のせいもあって、自分でもかなり疲れているのが分かる。
かみさんが心配してくれるが、疲れているだけで、昨日の夜から続いていた吐き気はおさまっていた。

ここが何で天文の森と呼ばれるのか、現地の看板には何も書かれていない。
後で調べてみると、天文年間に伐採された後に再生された森と言うことらしい。
そうだとしたら、この辺りの杉は樹齢500年程度になるのだろうか。
樹齢千年以上で無ければ屋久杉とは呼ばれないそうだが、それでも立派な杉の森である。


コケに覆われた森
苔の森の風景に圧倒される

最後の水場?ガイドブックの地図では登山口から最後の水場までのコースタイムは65分になっていた。
何処が最後の水場なのか良く分からないまま、それらしい場所までやって来た。
苔の風景の中を清冽な水が流れ落ち、ため息が出る程の美しい風景が広がる。

そこまでかかった時間は45分。
頑張って歩いた甲斐があって、かなり順調にきていた。
しかし、そこが本当に最後の水場なのかがちょっと怪しい。
その先に水場が現れないことを祈りながら、登り続ける。

しかし、道は更に険しさを増してきた。
疲労も激しい。
やっぱり体調不良の影響がありそうだ。
でも、ここまできて登頂を諦める気にはなれない。

急登に身体が悲鳴を上げるヤクスギランド入口から山頂までの標高差は500m。
龍神杉の時は標高差1000mを登ったことを思えば、ここは楽勝だと思っていた。
受付のお兄さんも階段が整備されていて歩きやすいと言っていたが、これは大嘘だった。
残り1キロ付近からの急登に身体が悲鳴を上げる。

辺りには霧がかかってきた。
太忠岳の山頂にはオベリスクのような巨大な天柱石が立っている。

前方に巨大な岩が見えてくる度に「あれが天柱石か!」と思うのだが、ことごとく外れる。
尾根のトラバースを繰り返すうちに、一体何処が山頂なのかと途方に暮れる。

急な斜面を這い上がる急なロープ場が現れたところで、ストックを使うのを諦め、そこに置いていくことにした。
道は今度は下り坂になる。
岩場を下っていくと、下から若い男女が登ってきた。
初めて人に会ってホッとしたと笑顔で話しかけられる。
二人とも地元の方で、女性は札幌から、男性は長野から屋久島に移住してきたとのこと。
屋久島で会う人は、そんな人ばかりである。

もう少しで山頂なので頑張ってくださいと励まされる。
下っているのに山頂とは、おかしな話しである。
急な岩場を降りていくと、その下はロックガーデンのような美しい場所だった。


ロックガーデンのような風景

ロックガーデンのようなところに降りてきた


天柱石目の前に岩に太いロープが垂れ下がっている。
その岩の上に目をやって、そこで初めて天柱石の姿に気が付いた。
ガスがかかってきて、その上部が霞んでしまう程、巨大な石である。。

天柱石の上までは登れないので、目の前のロープを頼りに登った場所が一応の山頂となる。
途中ですれ違った男女からも、その岩の上でお弁当を食べると最高ですよと言われていた。

まずは私が登っていく。
ロープを登りきった先に更に一段高くなった岩場がある。
その上は平になっていて、ちょうど良い休憩場所だ。

しかし、最後に1m以上の高さを上がらなければならない。
高い場所が苦手の私である。
そこを登るだけなら何とかなりそうだが、そこから降りる時のことを考えると足がすくんでしまう。

足下のスペースは僅かしか無く、その下は真っ直ぐに切れ落ちた崖なのである。
登るのは諦めて、スゴスゴとロープを伝って降りてきた。

かみさんも同じ場所まで登ったが、結局は諦めて降りてきた。
本当は登りたかったみたいだが、かみさんが登ると私も登らない訳にはいかなくなる。
「危ないから止めた方が良いよ!」と言って、半ば無理矢理に諦めさせたのだ。

上まで登ったところで、ガスがかかって展望も楽しめない。
ロックガーデンの中で昼食にする。
安房の町で登山弁当を買ってきていたが、私は疲れすぎていて食欲は全く無し。
かみさんが一人で全部食べてくれた。


ロックガーデンの中で昼食 天柱石
ロックガーデンのようだ 天柱石を見上げる

最後の水場?下山は楽だろうと思っていたが、登りと同じくらいにきつかった。
山頂から最後の水場までのコースタイムは50分。
しかし、その時間を過ぎても最後の水場はなかなか現れない。
結局1時間20分くらいかかって、ようやく最後の水場まで辿り着いた。
コースタイムが間違っているのか、最後の水場が本当はもっと違う場所のことを指しているのか、そのどちらかなのだろう。

いずれにせよ、その水場は本当に美しい場所である。
すぐ隣の杉の巨木は、看板は見かけなかったが、多分これがガイドブックの地図に載っていた釈迦杉なのだろう。
そこでしばらく身体を休める。


岩の間を降りてくる 疲れ切って大岩に寄りかかる私
岩の間を降りてくるかみさん 疲れ切って大岩に寄りかかる私

釈迦杉

これが多分釈迦杉


ヤクスギランドまで約2時間かけて戻って来た。
ここからヤクスギランドの入口まで戻るには、登ってきた時と同じコースを辿るのが最短ルートになるのだが、それでは面白くない。
身体は疲れ果てていたが、最後の気力を振り絞って遠回りのルートを歩くことにした。

岩の上でダウンした私そこから更に遠回りして、ヤクスギランドの中でも私の好きな場所であるつつじ河原に寄り道。
残念ながらサツキはまだ蕾のままだった。
河原の大岩の上に大の字になって寝転ぶ。
そのまま眠ってしまいたいくらいに気持ち良かった。

そうして午後4時半、ヤクスギランドの駐車場まで戻って来た。
濃い霧に包まれた駐車場には、もう数台の車しか停まっていない。
ここをスタートしてから6時間50分。
身体は疲れ切っていたけれど、これでもう屋久島でやり残したことは殆ど無くなったのである。


つつじ河原

岩に張り付くサツキが開花したらもっと美しいつつじ河原


ヤクスギランド入口9:40 - 太忠岳分岐10:30 - 最後の水場?11:15 - 12:45山頂13:05 - 太忠岳分岐15:05 - ヤクスギランド入口16:30



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