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知床縦走(2016/08/03)

1日目(カムイワッカ湯の滝バス停〜第一火口キャンプ指定地)


朝の知床連山知床自然センターの駐車場に車を停め、8月1日から運行が始まったカムイワッカ湯の滝へのシャトルバスに乗り込む。
硫黄山登山口までは車やバイクで行くしかないが、我が家の様な単独縦走の場合は車の回収手段がないので、この様なバスを利用するしかないのである。

楽勝でバスに乗れるだろうと思っていたら、補助椅子も出してほぼ満員。
これに乗れなかったら、次のバスは20分後になってしまう。
一番早いバスでも、カムイワッカ湯の滝着は午前9時23分。
ただでさえ、山登りをするには遅すぎる時間なので、バス停には早めに並んだ方が良さそうだ。

湯の滝に着くと、そこのバス停に縦走装備の親子がいた。大学生くらいの娘さんと、そのお父さん(だと思う)である。
下山してきて、このバスで戻るのだろう。
2日前には知床半島付近で100ミリ近い大雨が降っていたので、登山道の様子を聞いてみる。
二人は1泊での縦走予定だったのが、その雨で停滞を余儀なくされ2泊して降りてきたとのこと。
一部で流されたところはあるものの問題はないとの答えだった。

雲に隠れる硫黄山2週間前に縦走した大雪山と比べると、こちらの方はかなり険しい道もあり難易度は高い。
計画を立てている時からずーっと不安だったのが、それを聞いて少しだけ安心できた。

湯の滝へ向かって歩き始めると、正面に見えている硫黄山は既に雲に隠れ始めていた。

湯の滝から先の林道は落石の恐れがあるために通行止めになっているが、道路特例使用承認申請書を提出すれば、登山者はその先の登山口まで行くことができる。
通行止めゲート前に二人の男性がいた。
年齢は多分、私よりも上だろう。
彼らは1泊で縦走するとのことである。
一緒に登る人がいると何となく心強い。

通行止めの林道事前に書いておいた申請書をそのままポストに投函して、私達が先に進んだ。
通行止めの林道なので、さぞ危険な場所なのだろうと思っていたが、立派に整備された林道で拍子抜けだった。

間もなく硫黄山の登山口に到着。
掲示板には過去のヒグマ目撃情報が沢山書かれていた。
知床縦走ではヒグマに遭遇する確率もかなり高い。
それなので、知床自然センターで3日分で3千円の料金を支払い、熊避けスプレーも借りておいた。

いきなり、容赦のない急登が始まる。
森の中で湿度も高く、汗が噴き出してくる。
登山中にこんなに汗をかくのは初めてかもしれない。
気温はそれ程高くはないので、まだ助かっていた。

一休みしていると、先程の男性二人に追い抜かれる。
結構な早さで登っていた。

森の中は見通しも悪く、熊避けの鈴だけでは心配なので、時々声を出しながら登っていく。


硫黄山登山口 見通しの悪い登山道
登山口の掲示板には熊目撃情報が沢山 熊に怯えながら森の中を登る

展望台付近突然、森を抜けて見晴らしの良い場所に出てきた。
展望台と呼ばれているところだ。
何とかコースタイムどおりで登れていた。

男性二人もそこで休憩していて、しばらく話しをする。
彼らは1泊縦走なので、私達より先のテン場まで行くつもりらしい。

そこへ、奥さんが3〜4ヶ月の赤ちゃんを抱っこした外人夫婦が登ってきた。
知床自然センターのバス停で並んでいる時も、私達の近くにいた夫婦である。
男性が大きなザックを背負っていたけれど、赤ちゃん連れなので湯の滝まで行くのだろうと思っていた。
それがここまで登ってきたものだから、本当に驚かされた。
彼らは、休みも取らずにそのまま登っていった。

私達は10分程休んで再び登り始める。
そこから先は見通しも良く、オホーツク海や、眼下にカムイワッカ川も見下ろせ、気持ち良く歩ける。

熊の糞 しかし、遮るものがないので、夏の陽射しが容赦なく照り付けてくる。
幸い、途中から雲が広がってきて、その陽射しを遮ってくれた。
それでも、相変わらず凄い汗の量である。

大きな岩の上に熊の糞が乗っかっていた。
その岩の上に立てば眺めも良く、ヒグマもそんな風景を楽しみながら用を足していたのかもしれない。

展望台から次のチェックポイントの新噴火口までのコースタイムは50分。
そこまでは休まずに一気に登ろうと思っていたが、先に登っていた男性二人が休んでいたのを見て、私達も堪らずに休んでしまう。
彼らは私達と入れ代わりに登り始めた。

かみさんの顔は、まるで風呂上がりのように真っ赤になっている。
余程暑さが応えているのだろう。


新噴火口付近
この辺りが新噴火口か?噴火口が有るわけではない

再び登り始める。
苦しくなって上を見上げると、外人夫婦の男性が大きく手を振ってくれていた。
立ち止まりそうだったのが、それに元気づけられて登り続ける。

ハイマツの中を登る外人夫婦ようやく彼らのところまで辿り着き、通じているかどうか分からないが、山頂まで登るのか?と聞いてみたら、どうやらそうらしい。
ビックリしながら先に進んだが、直ぐにまた追い抜かれた。
歩く速さが全く違うのだ。

先に行った男性二人を含めて、この先で彼らに追い付くことはなかったのである。

しばらくハイマツの藪の中を登り、途中から下って沢へと出てきた。
そこが沢出合。
水の流れていない涸れ沢である。

12時45分になっていたので、ここで長めの休憩をとった。
昼食用にクリームドーナツパンを持ってきていたが、これはちょっとくどすぎたかもしれない。
沢出合いで昼の休憩貴重な飲み水を無駄に消費してしまった。
既に750mlのボトルが空になり、予備の水を満たしていたのだ。
硫黄山までのルートには水場がないので、持っているだけで間に合わせなければならない。

涸れ沢だけれど、雪融け時や降雨後はかなりの水が流れるのだろう。
まるでナメ滝のような岩場が続いていた。
沢登りの気分で、その岩の上を登っていく。

上空には再び青空が広がっていた。
暑さは堪らないけど、楽しい沢登りで気持ちは良い。

しかしそれも、涸れ滝が現れるまでだった。
目の前の滝は直接登れそうにないが、何処かに巻き道があるはずだ。
右岸側に登れそうな場所を見つけて行ってみるが、途中で岩にしがみつきながら超えなければならないところが有って危なすぎる。
かみさんが左岸側にリボンの目印を見つけたので、そちらから登ったが、結構スリリングである。

ホッとしていたらもう一つ滝が現れ、こちらの方が険しそうだ。
一休みしてから、今度は右岸側の巻き道を登る。


涸れ沢を登る
涸れ沢の中を登っていく

涸れなめ滝 涸れ滝
涸れたなめ滝を登る 涸れ滝の上から振り返る

登山道の雰囲気が変わる沢は次第に形を変え、岩の中に火山礫も混じってくる。
足場が悪くなると登る負担も大きくなる。

ガスがかかって、見通しも悪くなってきた。
ザレ場の急登が体力を奪う。
この辺りではもう、硫黄山山頂まで登る気持ちは無くなっていた。

山頂への最後の登りは、岩をよじ登るような場所である。
それに、ガスに包まれた中で山頂に立っても意味は無いのだ。

やっとの思いで稜線まで出てきた。
山頂への分岐まではあと少しである。

硫黄山山頂のシルエットガスの中に太陽の姿が見えてきた。
間もなくして、硫黄山の山頂と思われる姿が、シルエットとして浮かび上がった。

山頂への分岐まで達する頃には、その姿もはっきりと見えていた。
もしかしたら、先に登っていた人達がそこにザックをデポして登頂しているかもしれないと思っていたが、そんなザックも人の姿も見えない。

既に私達には、山頂を目指す気は無くなっていたので、分岐は躊躇わずに通り過ぎる。

突然、周りに広がっていたガスが、嘘のように消え始めた。
それと同時に姿を現す荒々しい山の風景。
その先に見えているのは知床岬へと続く山々の連なりだろうか。


急に展望が広がった
急にガスが晴れて知床半島の先端部まで見えてきた

硫黄山山頂をトラバース 硫黄山山頂はパス
山頂の下をトラバース 硫黄山山頂を通り過ぎる

ここまで来たら、後は今日の野営予定地である第一火口まで下るだけ。
そう考えていたら、目の前の山をもう一度登り返さなければならないようだ。

一旦下ってから、およそ50mの登り返し。
おまけに登山道はブッシュの中で歩きづらく、先を登るかみさんがブツブツと文句を言っている。

ようやく眼下に今日の野営地が確認できた。
雪渓の横に2張りのテントも見えている。


第一火口テン場が見えてきた
ようやく第一火口キャンプ指定地が眼下に見えた

滑り落ちそうなザレ場の急斜面を降り、滑って転びそうにながら雪渓を下り、午後3時半、ようやく今日の野営地に到着。
そこにテントを張っていたのは、男性2人連れでも赤ちゃん連れ外人夫婦でもなく、羅臼岳から縦走してきた商業ツアーの人達だった。

第一火口キャンプ指定地私達はやっとの事でここまで辿り着いたと言うのに、 男性2人連れはともかく、外人夫婦までもがもっと先のテン場まで行ったらしいのには、本当に呆れるしかなかった。

早速テントを設営し、雪渓の水でビールを冷やす。
大雪山縦走の時の南沼キャンプ指定地も素晴らしいテン場だったけれど、ここのテン場もそれに勝るとも劣らない、素晴らしい場所だった。

雪渓の雪解け水が目の前をサラサラと流れ、テントの後ろにはチングルマの群落。
地面は火山礫で、少しゴツゴツしているけれど、そのまま座っても泥が付くことはない。
そして周りを取り囲む硫黄山の外輪山。
その背景の真っ青な空。
縦走だからこそ味わえる、最高の贅沢である。


第一火口キャンプ指定地
最高のロケーションのテン場だ

花に囲まれビールを飲む冷えたビールで乾杯。
渇いた喉にぐっと浸みてくる。

ツアーの一行は、ガイド3人に女性5名、男性1名のお客さん。
この女性陣がとても元気だった。
夕食後に、ガイドの一人が余興として指笛を披露し、拍手喝采を浴びる。

そのお礼にと、女性陣の一人が披露したのが、何と詩吟。
知床の大自然をバックに朗々と詩吟を披露した彼女はとても満足そうだったが、それに拍手をしていたガイドの人達は明らかに引いていたように見えたのは気のせいだろうか。

離れたところにあるフードロッカーに、ゴミや食べ物を入れて、7時過ぎにはテントの中に潜り込んだ。

知床縦走2、3日目

知床縦走1日目のアルバム 


バス停9:25 - 登山口9:45 - 10:05展望台10:25 - 11:00途中休憩11:10 - 新噴火口11:30 - 12:45沢出合い13:05 - 9:40硫黄山山頂分岐9:55 - 11:35宰一火口分岐11:40 - 12:25第一火口キャンプ指定地13:40  (縦走記録グラフ



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