小辺路縦走最後の朝を迎えた。
昨日の雨も上がり木々の間から木漏れ日も差し込む、気持ちの良い朝だ。
テントが少しでも早く乾くように、水滴や結露を拭き取る。

お世話になった観音様に挨拶をして、8時前に野営地を出発。
ここから果無峠を越え熊野本宮を目指す。

コースタイムは3時間40分、距離にして11キロ。
さすがに今日は余裕がありそうだ。

まずは果無峠に向かって標高差220ｍの登り。
小辺路縦走最後の登りと言っても良く、これまでの3日間に比べれば朝の散歩のようなものだ。
杉林の間を抜けていくと、展望の開けた場所に出てきた。
そこから見えている方角には、多分私達が昨日まで歩いてきた60キロ近い道程が続いているはずだが、土地勘もなく何処がどこだかさっぱり分からない。

果無峠の方は、期待したような展望は全く無く、ちょっとガッカリだった。
そこから八木尾まで標高差1000ｍの下りが延々と続く。
苦手な下りだけれど、それが最後だと思えば何とかなる。

疲れを癒してくれるのは古道沿いの観音様だけである。
観音堂のところに有ったのが二十番観音石仏で、そこから少しずつ数字が減っていく。

かみさんが11月生まれなので、十一番観音に丁寧に手を合わせていた。
9月生まれの私は九番観音を楽しみにしていたが、その観音様は他と比べて風化も進み、随分と可哀相な状態になっていた。

展望の開けた場所から、大きく蛇行する熊野川と本宮町が見えていた。
中辺路を歩いてきて伏拝王子から本宮が見えた時よりも感動が大きかった。
今回の小辺路では、歩いてきた距離と苦労は中辺路を歩いた時とは比べものにならないので、それだけ感動も大きいのである。

しかし、下れども下れどもその熊野川までたどり着かない。
ただ、初日の時のように、足が殆ど動かなくなるようなことは無かった。
4日目ともなると、下りにも少しは慣れてきたのかもしれない。

そして午前11時、八木尾に到着。
そこからは熊野川を見下ろしながら、交通量の多い国道を黙々と歩く。
さすがにここは、歩いていても全然楽しくない。

熊野川は広大な川原が広がり、その間を申し訳なさそうに水が流れている状態だ。
そこに流れ込む細い支流は、石の川原の中に吸い込まれ、本流に流れ込む前にその姿を消していた。
これも多分平成23年の大雨の爪痕なのだろう。

30分ほど国道を歩いて、道の駅「奥熊野古道ほんぐう」に到着。
歩いて道の駅に入るのも変な気分だった。
昼食はこの道の駅で買った弁当。
熊野古道らしくめはり寿司を食べてみた。

その先で少し急な坂を登り、三軒茶屋跡で中辺路に合流。
大きなザックを背負ってその坂を登ってくる私達を見て、中辺路を歩いていた外人のグループが拍手で迎えてくれた。
「拍手されるような場所じゃないんだけどな」と困惑しつつ、親指を立ててポーズをとる。

小辺路から中辺路に出るのは、田舎道から突然ハイウェイに出てきた気分である。
歩く人も多く、背負っている荷物もデイパック程度である。
比べものもなく整備された道をスタスタと歩いて行く。

ここから熊野本宮までは一度歩いた道で、感動も少ない。
「前の時は、修学旅行生が元気良く階段を登ってきたよね」などと昔を思い出しながら歩いていく。

そうして午後1時半、とうとう熊野本宮に到着した。
本宮への参拝は5日前に済ませていたけれど、改めて参拝。

一般的にはこの後、大斎原まで歩いて小辺路縦走が終わることになるが、それは中辺路の時に済ませているので、本宮大社に参拝した後は真っ直ぐに駐車場を目指す。
何せ5日間も停めっぱなしにしてあるので、車が無事かどうかの方が心配だったのである。

そうして我が家のエクストレイルまで戻ったところで、4泊5日、移動距離約65キロ、累積標高登り5870ｍ、下り6650ｍの小辺路縦走がめでたく終了となったのである。

小辺路縦走四日目のアルバム　

観音堂8:00 - 果無峠8:30 - 三十丁石9:35 - 八木尾11:05 - 11:30道の駅12:05 - 三軒茶屋跡12:35 - 熊野本宮大社13:30 - 我が家の車13:45　（縦走記録グラフ）　（全体縦走記録グラフ）