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大雪山縦走(2016/07/23)

4日目(南沼キャンプ指定地〜トムラウシ温泉)


明け方のキャンプ場明け方の気温は3度まで下がり、さすがにモンベルの#5のシュラフでは寒かった。
寒くて寝ていられず、天気も良さそうなので3時には起き出して早朝の風景を撮影する。

暖かいものでも飲もうと思ってお湯を沸かしていると、かみさんが寒くて堪らないので山にでも登りましょうと言い始めた。
山頂から御来光に間に合うかどうかは微妙だったが、私も直ぐに賛成して大急ぎで準備をする。

猛スピードで登っていくと、山頂寸前で何とか美しい御来光を見ることができた。
下界は雲海に覆われ、十勝岳連峰がまるで島のように雲海の上に浮かんでいた。
そしてその上には丸い月の姿も。
そんな風景を楽しんでから山頂へと上がる。


トムラウシ山から見る朝日 雲海に浮かぶ十勝岳連峰
ギリギリで朝日を見られました 雲海に浮かぶ十勝岳連峰

そこでは男性が一人、朝の風景を撮影しているところだった。
その男性に教えられて、雲海の上に映っている影トムラウシの姿に気が付いた。
ほんのりと赤く染まった雲の中にトムラウシの影が映る。
素晴らしい風景だった。


影トムラウシ
影トムラウシが雲海の上に浮かんでいた

そこへ一人の女性が登ってきた。
昨日、忠別岳避難小屋から一緒に歩いてきた彼女だった。
彼女には最初から何となく親近感を覚えていたが、やっぱり考えていることは同じようだ。

月を背景に記念撮影彼女に「写真を撮って下さい」と言われ、カメラを構えると、影トムラウシを背景に岩の上にスクッと立ち上がったのには驚いてしまった。
その後から「私も撮りますよ」と言われたが、怖くてその岩の上に立つことができず、座ったままの情けない格好で撮されることとなった。

北側に広がる雲海はどんどんと湧き上がってきて、やがて山を越えて南側へと流れ落ち始める。
十勝岳連峰もその雲海に飲み込まれそうだ。

彼女はこれからその十勝岳連峰へと縦走していくようなので先に下山していった。
私達も次々と移り変わっていく風景をもっと眺めていたかったが、まだ朝飯も食べていないので後ろ髪を引かれながら下山することにした。



トムラウシ山頂からの朝の風景
旭岳や十勝岳も朝日に染まる

トムラウシ山頂からの朝の風景 トムラウシ山頂からの朝の風景
流れ落ちる雲海と影トムラウシ 美しい朝の一時だった

影トムラウシとブロッケン現象その途中、雲海に映っているトムラウシ山の影の周りが虹のように色付いているのに気が付いた。
これもブロッケン現象の一つなのだろうか。

遠くの方に見えていた、雲海を背景に立っている人のシルエットが無茶苦茶格好良かったので、私達もそこまで行ってみる。
十勝岳連峰の北側から湧き上がった雲海が、トムラウシ山との鞍部から南側へと流れ出る様子を間近に見られた。

テントへ戻って朝食を済ませ、急いで撤収を始める。
夜中にパラパラと降った雨と朝露でテントはびしょ濡れだったが、今日はもう下山するだけなのでそのままゴミ袋に突っ込んでザックに収める。

彼女は既に出発準備を整えていた。
かみさんがザックを背負うと、まるでザックが歩いているみたいだと人から笑われるけれど、彼女の背負っているザックは本当に重そうだった。
「何キロありますか?」と聞いてみると、「重さを量ると背負うのが嫌になりそうなので量らないことにしている」と笑いながら答えてくれた。


雲海を眺めるシルエット
絵になる光景だ

南沼キャンプ指定地
花に覆われた南沼キャンプ指定地

最後に、テントを張ってあった場所に頭を下げてから出発していった姿が格好良かったので、私達もこれから真似させてもらうことにする。
本州の方だというので、彼女とはもう会うことも無いだろうと思っていたら、2週間後に知床の山で奇跡の再会をすることとなるのである。

美しい風景に見入る7時過ぎにテン場を出発。
黒々とした岩、周りを取り囲む緑、その中で白やピンクの花を咲かせる高山植物、そして所々に残る白い雪渓。
それらが作り出す風景の美しさに息を呑む。

トムラウシの山頂には雲がかかり始めていた。
私達がそこから降りてくる途中に何人もの人とすれ違ったが、やっぱり早起きは三文の徳なのである。

登山道を下っていくと、その下には岩を縫うように小川が流れていた。
そして周りには先程の感動させられたばかりの風景が広がる。
何という美しい場所なのだろうと思っていたら、トムラウシ公園と書かれた看板が立っていた。
公園と呼ぶにはあまりにも美しすぎる。
もう少し良いネーミングを考えて欲しかった。


トムラウシ公園
トムラウシ公園、ここも美しい場所だ

トムラウシの山頂は雲に隠れてしまったその先の山はトラバースするのかと思っていたら、まともに登っていたのでガッカリした。
それでも後ろを振り向くと、美しいトムラウシ公園の姿を望めるので少しは許せる。
しかし、その向こうに見えるはずのトムラウシ山は、完全にガスの中に隠れてしまっていた。

山を越えると、その先にもまた山が見えていた。
でも、こちらの方はその山をトラバースするように登山道が続いているのが見えてホッとした。
今日はトムラウシ温泉を目指してひたすら下るだけだと考えていたので、登る気力は全くないのである。

そのまま下っていくと前トム平で大人数のパーティーが休憩していた。
今日は土曜日なのですれ違う登山者も多い。
そこで5分程休んだだけで、直ぐに出発。
巨大なすり鉢のような地形を、その底を目指して降りていく。


前トム平 すり鉢地形
トムラウシ山の姿が見えない前トム平 巨大すり鉢の底へと降りていく

コマドリ沢の雪渓途中からは細長い廊下のようなコマドリ沢の雪渓を下る。
2本のトレースが延びているのは、登山靴で滑り降りた跡である。
私もそこを滑ってみるが、バランスをとるのがなかなか難しい。
それでも、雪渓を歩いて降りているかみさんよりはずーっと早い。

途中ですれ違った方から、「トムラウシ山は見えていましたか?」と聞かれたので、「う〜ん、微妙です」と答えておいた。
多分今頃は完全に雲に隠れてしまっていそうだが、苦労して登っている人をガッカリさせたくないのだ。

途中で雪渓も消えて無くなり、コマドリ沢分岐からはカムイサンケナイ川に沿って降りていく。
そして間もなく、川から離れて尾根の上に出る標高差100mの急登が始まる。
覚悟はしていたが、ここまでずーっと下ってきてからの急な登りはやっぱりきつかった。

急な登り返し つづら折りの登山道を曲がる度に、「おーっ、ここでやっと終わりか」と何度口にしたことか。
その度に期待は裏切られ、登山道は180度向きを変えて更に登っていたのである。

その繰り返しもようやく終わり、緩やかな下りの尾根歩きとなる。
しかし、登山道の所々が泥沼のようになっていて歩きづらい。
しばらくまとまった雨は降っていないのにこの状態である。
雨が降った後はどんな状態になるのだろうと心配してしまう。

そんな時、下から登ってきた若い男女。
何処かで見た顔だと思ったら、以前にカヌークラブで筋肉君の愛称で呼ばれていたM君だった。
仕事が忙しくて今は退会していたけれど、「実は結婚しました」と言って隣の女性を紹介された。
こんなに可愛い嫁さんを家において一人でカヌーに出かける事はできず、もしかしたらこちらの方が退会の理由だったのかもしれない。
それにしても、山を縦走していると意外な人にバッタリと会うことが多い気がする。

晴れると陽射しが辛い途中から展望が開けてきた。
ニペソツ山などが眺められるのは良いけれど、青空が広がって容赦ない陽射しに晒されるのが辛かった。
できれば曇ったままでいて欲しかったところである。

短縮登山口の分岐までやって来た。
そこから短縮登山口までは15分で降りられるが、交通手段がないので私達はトムラウシ温泉まで降りなければならない。
下りのコースタイムは1時間20分だが、登りのコースタイムは2時間となっているので、絶対にコースタイムどおりには歩けそうにない。

足も限界に近づいてきていた。
道が下っていると、かみさんも追い付いてこれないくらいに早く歩けるのに、ひとたび登りになると足が全く動かなくなるのだ。
それも、急な登りではなく勾配が1%程度の登りでも足がパタリと止まってしまう。
最後の標高差30mくらいの登りは地獄だった。

登山口に到着そうして12時50分、登山口に降りてきた。
直ぐに温泉に入って4日分の汗を流し、それからビールを飲んで食事でもと考えていたが、レストランの営業が終わりそうだったので、先に食事をすることに。
できれば風呂上がりのビールを飲みたかったが、その前に飲むビールでも最高に美味しいことに変わりはない。

最初に大雪山縦走の計画を考えた時、下山してからは国民宿舎東大雪荘で1泊するつもりでいた。
しかし、よく調べてみると、新得駅行きのバスが16時15分にトムラウシ温泉から出て、それに乗れば札幌行きの特急電車にも間に合うのだ。
早めに下山できれば、温泉に入って一休みしてからでも十分にそのバスに乗れるのだ。

これからも色々なところに出かけなければならないし、何と言っても無職無収入の身である。
贅沢はできないので、温泉には泊まらずにそのまま札幌まで帰ることに決めたのである。

そうして温泉に入ってバスで新得駅へ。
トムラウシはあんなに良い天気だったのに、新得はどんよりとした曇り空。
十勝では一週間以上こんな天気が続いているみたいで、山の上から見た雲海はそのまま十勝平野を覆っていたようである。

新得駅前駅前のスーパーで弁当を買って、スーパーおおぞらの車内でそれを食べる。
札幌では何かの事故の影響で、20時15分到着の予定がかなり遅れた。
そこから先のダイヤもかなり乱れていたが、何とか自宅まで帰り着くことができた。

自宅を出発して、自宅へ帰ってくる。
それまで含めて、3泊4日で大雪山を縦走できるとは、新たな発見だった。
これならば、思い立ったら何時でも大雪を縦走できそうである。
ただしこれは、新得駅〜トムラウシ温泉間のバスが運行している夏の間だけの話しである。

屋久島縦走4日目のアルバム 


南沼キャンプ指定地7:10 - 8:30前トム平8:35 - コマドリ沢分岐9:15 - 急登終わり9:50 - 10:15カムイ天上11:00 - 温泉コース分岐11:35 - トムラウシ温泉登山口12:50  (縦走記録グラフ



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