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黄金山(2014/11/1)

山頂はパス


3連休の中で一日だけ天気が良さそうな土曜日、気軽に登れそうな山に行こうとのことで浜益の黄金山に登ることにした。
冬の黄金山山スキーで察来山に登った時など、山頂が鋭角に尖った特徴的な姿の山が遠くに見えて印象に残っていたが、それが黄金山である。
その姿から浜益マッターホルンとも呼ばれているらしい。

ところが浜益の市街地方向から黄金山を眺めると、山頂が真っ平らに見えるのである。
その姿から浜益富士とも呼ばれているみたいだ。
マッターホルンと富士山ではイメージが全然違うけれど、果たしてその実態はどうなのか。

天気は良いのだけれど、霞がかかって遠望が全くきかない。
これから登る黄金山の姿もぼんやりと霞んでいた。

林道を4キロほど走っていくと、登山口にはログ造りの立派な休憩所が建っていて、ちょっと驚いた。
駐車場にはで既に車が一台。
私たちが準備をしている最中にも、もう1台車が入ってきた。
マイナーな山のイメージを持っていたが、この辺りでは人気のある山なのだろう。


浜益側から見た黄金山 登山口の様子
黄金山が霞んで見えている 登山口の様子

枝越しに見える黄金山山頂登り始めて直ぐに小さな沢を2箇所渡る。
そしてしばらく、緩やかな登りが続く。
木々の枝越しに黄金山の山頂が見え隠れしている。
その山頂は、麓で見たのとは全く様子が違っていて、鋭角に尖っていた。

木々は既に葉を落とし、登山道は落ち葉に覆われている。
今の季節は気温も低いので、落ち葉の下の地面は濡れていることが多い。
私たちの前を登っている人が、そんな濡れた地面で足を滑らせた様な跡が所々に残っていた。
下山時には気を付けた方が良さそうだ。
何時降ったものなのか、日陰部分には所々に雪が残っている。

落ち葉の積もった登山道新道と旧道の分岐までやってきた。
登りは新道、下山は旧道を下りるつもりで、新道の方へと進む。
ここの分岐には水場もある。
細いパイプから水が流れ出ていたが、湧き水ではなく沢水を溜め桝で受け、そこからパイプを通して水を出しているようだ。

標高380m付近で、台地状の場所へと出てきた。
その辺りの登山道は全面雪に覆われていた。
樹木もまばらで、黄金山山頂が目の前に迫って見える。


真正面に聳える黄金山
真正面に黄金山が聳え立つ

笹に覆われた380m台地 雪の中のナナカマドの実
この付近、春にはタケノコ畑に変わりそうだ ナナカマドの実の赤さが雪の中で目立っている

急登が始まるここから先はいよいよ急な登りが始まりそうだ。
この台地を境に様子ががらりと変わる。
登山道の傾斜の他に植生も、それまでのシラカバやトドマツ主体の2次林からミズナラなどが主体の自然林へと変わってきた。
林床の植物も、台地から下ではチシマザサに覆われていたのが、ここから上はシダ類が目立つようになる。
登山道もごつごつとした岩場へと変わる。

その岩場を一気に上り尾根の上へと出てきた。
これまで北西の斜面を登ってきていたので、尾根の上に出てようやく太陽の日射しを浴びられる。

また、尾根の上に出れば傾斜も少し緩くなるだろうと期待していたが、緩くなるどころか傾斜は更にきつくなってくる。
周りには太くて立派な樹木も多いので、そんな風景が登りのきつさを忘れさせてくれる。


尾根上は立派な木が多い ますます急な登りになる
尾根の上には立派なミズナラが多い 登山道は更に急傾斜となってくる

3点支持で登る登山道沿いに張られたロープを頼りに登っていたが、途中からはロッククライミングのように3点支持で登らなければならなくなる。
横に目をやると、そこは切り立った崖になっていた。
私もかみさんも、高いところはあまり得意ではない。
こんな場所では足がすくんでしまうところだが、木が生えているのでまだ少し安心感があった。
バランスを崩しても木の枝につかまれば、転がり落ちることは無い。

途中で展望が開けて、増毛山地の南の山々が見渡せるようになる。
敷かし、更に濃さを増した霞のおかげで、山の姿はほとんど確認できなかった。

旧道との合流点を通り過ぎたところで、下りてきた登山者とすれ違う。
かなり年配の方だった。
「この先は更に急になりますよ」との言葉に怖気づいてしまう。


山頂が近付く 霞がかかって展望がきかない
山頂が近付いてきた 晴れているのに霞で遠望がきかない

最後の岩場遅れていた連れの男性が下りてくるのを待ってから、再び登り始める。
彼らはそのまま新道を下りていった。

崖の下に続いている旧道の様子を恐る恐る覗き込む。
崖の下をトラバースするように続いている旧道はには白く雪が積もり、手がかりとなるロープも張られていたなった。
それを見て、私たちも下山時は新道を往復することに決めたのである。

岩場をよじ登っていくと、その上に一際急な岩峰が現れた。
どうやらそれが黄金山の頂上らしい。

目の前の岩峰かみさんは、その岩峰を一目見ただけで「私は無理、今日はここで止める」と言い始めた。
何時もならば「もう少しだから頑張れ」と言うところだが、今日は素直にその言葉を受け入れるしかなかった。
かみさんがそう言うのも無理は無い。
私だって、できればここで止めたい気分だった。

しかし、さすがにここまで来てピークを踏まずに引き返す気にはなれない。
意を決して、最後の岩峰に取り付いた。
周りには木が生えていないので、一歩間違えればそのまま崖下に転落である。
太いロープが1本垂らされていたが、解れてボロボロのロープなので、それを頼りにする気にはなれなかった。
ここでも3点支持で岩場をよじ登り、ようやくピークに辿り着いた。
山頂標識らしきものが紐で縛り付けられた状態で転がっていたので拾い上げる。
しかし、そこに書いてあったのは千八百幾らかの数字だけ。
「これって、登ってくる途中に幾つもあった登山口からの距離標示?」

こちらが黄金山山頂だゆっくりと顔を上げると、自分の立っている岩峰の隣に、同じように尖ったピークが見えていた。
その頂上には標識らしきものが立っているのも見える。
どうやら、そこが黄金山の本当の山頂のようである。

そこに立つためには、ここから一旦下って、もう一度登り返さなければならない。
その道が、どんな風になっているのか、切り落ちた崖の先になるので様子が分からない。
しかし、そこまで近づく勇気も無かった。

私が立っている岩峰の上は四方が崖になっていて、私は登ってからずーっと四つん這いの姿勢のままなのである。
かみさんがカメラをこちらに向けていたので、恐る恐る立ち上がったが、直ぐにまたしゃがみこむ。

向こうの山頂に立てば新たな展望が開けると言うのならば、まだそこまで行く価値はある。
山頂からの展望しかし、見えるものは多分ここと同じ景色。
そもそも、この霞では、周りの景色などほとんど見えないのと同じである。
私の出した結論は「ここで十分」だった。

それで少し気が楽になって、改めて回りの風景を眺める余裕が出てきた。
南側の山々は霞んで見えないものの、増毛山地北側の浜益岳や群別岳は良く見えていた。
署寒別岳の姿はそれらの山に隠れて見えないが、端の方で南署寒別岳の山頂がかろうじて頭を出していた。

黄金山は標高739mの小さな山だけれど、独立峰として、また、この尖ったピークのおかげで眺めは素晴らしい山である。
かみさんはここまで天気が良くて空気の澄んだ時に、もう一度登ってみたいところだ。
そんな時ならば、もっと勇気を出して本当の山頂に立つことができそうな気がする。

かみさんの待っている場所まで下りてきて、ようやく安心することができた。
それでも、岩の上に座る時は、後ろに何かある場所でなければ何となく不安になってくるのだ。

黄金山は、マグマが冷え固まり、その後周囲のもろい部分が崩落して今の形になったらしい。
マグマが冷えて固まる時に規則性のある割れ目を生じるが、この山頂付近でも、まるで人工的に積み上げたような見事な柱状節理の断面が見られた。


前ピークに立つ 見事な節理
下から見れば何ともなく見えるけれど 人工的に積み上げられたような岩だ

下山開始一休みしてから下山開始。
下山時は、急斜面より中途半端な斜面の方に気を使う。
足元が濡れて滑りやすくなっているので、油断していると尻餅をついてしまうのだ。
特に今年は、山でも川でも、何度も痛い目に遭っているので余計に慎重になる。

標高380m付近の台地まで下りてきた時には、太ももの筋肉が痛くなってきていた。
ここから先は傾斜も緩くなるけれど、歩くスピードも早くなって気も緩んでくるので、尻餅を付く可能性はこちらの方が大きくなるのだ。


下山も大変
下りも大変だ

何とか下まで降りてきた最後まで気を抜くことなく、何とか無事に登山口まで下りてくることができた。
下山時には結構な数の登山者とすれ違ったが、駐車場にも車が沢山停まっていた。
シーズンオフでもこれなのだから、シーズン中はもっと沢山の登山者で賑わっているのだろう。

果たしてその人達は、黄金山の本当の山頂まで登っているのだろうか。
もしもその半数が登っていたとしたら、これはちょっと自分が情けなくなってしまう。
それが8割くらいだったとしたら、もう山登りは止めた方が良いかも知れない。

山頂では無理矢理自分を納得させていたけれど、やっぱり再チャレンジして本当の山頂に立たないことには、この負け犬気分を払拭することはできそうに無いのである。


沢で靴を洗う 登山口到着
沢で靴を洗う 登山口到着!


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