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銭函天狗山(2013/11/24)

新品の登山靴が


買ったばかりの登山靴今月初め、秀岳荘のバーゲンセールで縦走用登山靴を衝動買いしてしまった。
週末の天気が良さそうなので、せっかくだからその新しい登山靴を履いて何処かの山に登ろうと考えた。

しかし、我が家から見える手稲山をはじめとして、札幌近郊のほとんどの山は既に白く冠雪している。
その中で、標高537mの銭函天狗山だけはまだ雪化粧していない様子なので、目的地をそこに設定した。
確か去年の11月も、シーズンの山納めとして銭函天狗山に登ったはずである。
同じ時期の同じ山に登るのも芸がないが、他に選択肢が無いので、ここは妥協するしかない。

天気予報では朝から晴れているはずなのに、上空を覆っている雲はなかなか取れそうにない。
既に夏山シーズンも終わっているだろうと思っていたが、駐車場にはしっかりと先客の車が2台ほど停まっていた。
毎週のように山に登っている人達にとっては、シーズンオフなんて関係のない話しなのだろう。

ぐちょぐちょの登山道山の木々は既に葉を落として丸裸になっている。
かろうじてカラマツだけが、その枝上に黄色い葉を残している程度だ。
登山道は落ち葉で埋まり、それをカサカサと踏みつけながら登っていく。
そんなイメージを抱いていたのだが、現実は大違いだった。

月の中頃にまとまった雪が積もって、今はその雪も完全に融けてしまっていた。
その間にも結構な数の登山者がここを登っていたらしく、登山道を埋めていた落ち葉はその雪と登山者の踏み付けにより泥と混ざり合い、カサカサどころかグチョグチョと言う音が、登山靴の下から聞こえてくる有様だ。

最悪の登山道「お、おニューの靴が・・・」
今更後悔しても遅かった。
途中ですれ違った登山者は長靴を履いていて、その長靴も泥だらけになっていた。
分かっている人ならば、今時期の登山では迷わずに長靴を履くのだろう。
銭函天狗山は1時間ちょっとで登れるような山である。
そんなところに、縦走用の登山靴を履いてくること自体が、そもそも間違っていたようである。

何時ものペースで登っていくと泥がベチャベチャと跳ねそうなので、ゆっくりと一歩ずつ歩を進める。
銭天山荘から先、登山道は小さな沢沿いに続いている。
所々に酷くぬかるんだ場所があるけれど、この辺りの森の風景は美しい。
太い蔓の絡んだ樹木が多く、そんな蔓を見ると何時も、巨大リースを作りたくなってしまう。


銭天山荘 蔦の蔓延る森
森の中に忽然と現れる銭天山荘 立派な蔓が沢山

銭天のロープ場途中から尾根の上に出る急登となる。
そこを登りきると、尾根の反対側に広がるゴルフ場の景観が目に飛び込んできて、ちょっと興醒めである。

尾根の上を少し進むと再び急な登り坂となる。
足元は相変わらず滑りやすく、途中に張ってあったロープに大いに助けられた。
簡単に登れる山との印象を持っていたが、結構手強い山である。
去年初めて登った時もホームページに同じことを書いた気がするが、一年も経つとそんなことも忘れてしまっているのだ。

そこを登りきると次第に岩場が多くなってくる。
そして真白く雪を被った手稲山の姿が見えてきた。
あちらはもう、完全な冬山の様相である。
相変わらず空には雲が多いけれど、今日は気温も高く風も無風に近い。
そんな状況下で眺める手稲山の姿には何となく違和感を感じる。


岩場が出てくる 苔むした岩場
次第に岩場が現れてくる 苔むした岩場
冠雪した手稲山
遠くに見える手稲山は真っ白だ

銭函天狗山の岩壁切り立った岩壁が目の前に迫ってきた。
麓からも良く見える岩壁だが、登山道からはその一部しか見ることができない。
それでも、その景観はかなりの迫力で迫ってくる。

山頂までは岩壁の裏に回り込んで登っていく。
山頂の手前に絶景スポットがある。
垂直に切り立った岩壁の、正にその先端に立つことができるのである。
高所恐怖症の人は絶対にそこには立てないだろうが、無理してそこまで行かなくても景色は十分に楽しめる。


銭函天狗山登山道からの風景 銭函天狗山の岩壁
眺めが良くなってきた 岩壁はこの辺りからが一番良く見える

銭函天狗山からの景色緩やかにカーブを描く石狩湾の海岸線。
その向こうに見える白く冠雪した山は神居尻山やピンネシリの姿だろうか。
そのまま、海岸線のカーブに沿って目を転じていくと、更に真っ白な暑寒別岳などの姿も見える。
手稲山や春香山など、この付近の山に登ればどこからでも見える風景だが、この海岸線と山々の風景は何度見ても感動させられる。

そして1時間10分ほどで銭函天狗山の山頂に到着。
風も無く穏やかな天候なので、そこでお湯を沸かしてホットドリンクを飲み一休み。
標高の低い山なので、手稲山から奥手稲山、春香山へと続く山の稜線までしか見ることができない。
でも、山頂からの風景を妨げるものは何も無く、素晴らしいパノラマが広がる。
これからの山スキーシーズンではお世話になる山々に思いを馳せた。


銭函天狗山山頂
銭函天狗山山頂で一休み

銭函天狗山山頂 冠雪した手稲山
おっかなびっくりで岩の上に 銭函天狗山から見える手稲山の姿

銭函天狗山山頂からの風景
山頂からの眺めは良い


雲が晴れるのを待っていたが、晴れるどころか、逆に怪しげな雲が広がり始めていた。
若者グループが登ってきたので、場所を譲る様に私達は下山開始。
もう一度岩壁の先端に立ってみるが、かみさんに写してもらった写真では、先端まではまだかなり余裕がある様に見える。
でも、近づくのこれが限界だった。

下りる途中でも、何人もの登山者とすれ違う。
簡単に登れて、しかも手稲区に住んでいると常にその姿が見える銭函天狗山。
私が思っている以上に人気のある山なのだろう。

滑りやすい登山道に苦労しながら、登りとほぼ同じ時間をかけて登山口まで下りてきた。
車で自宅へ戻る途中、銭函天狗山を振り返ると、その背景には山頂では見られなかった青空が広がっていた。
晴れてくるのはちょっと遅すぎたけれど、まずまずの天気に恵まれ、泥を洗い落とすと登山靴は新品の輝きを取り戻し、まずまずの夏山納めとなったのである。


銭函天狗山の岩壁
銭函天狗山の岩壁の上に立つ



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