海の日の3連休は今年初の山キャンプへ出かけることにした。
上ホロカメットク山の避難小屋テン場に2泊して、富良野岳や十勝岳に足を延ばす。
しかし、ハイシーズンには避難小屋に泊まれないこともあるらしく、3連休ではテン場も同じような状況になるかも知れない。
そんな心配があったので、朝4時前に自宅を出発し、6時半頃には登山口である十勝岳温泉の駐車場に到着。
それでも、駐車場はほぼ満車で、かろうじて車を停めることができた。
駐車場の奥には雪も残っているので、駐車台数自体も少なくなっているのである。
その雪の融けかけた場所ギリギリに車を停めたのだけれど、参ったのは、そこら中に人間のウ○コが落ちていることだった。
多分、この付近が冬季登山者の用を足す場所として使われていたのだろう。
積雪期には何メートルもの雪が積もって、そこが駐車場の真上だとは気付いていないのかもしれないが、もう少し気を使ってほしいものである。
6時50分に登山口を出発。
気温は15度くらいだろうか。
しかし、ギラギラと輝く夏の太陽の陽射しに晒されながら歩いていると、直ぐに汗が吹き出てきて、途中で半袖シャツに着替える。
およそ35分程でヌッカクシ富良野川を渡る。
川の上流部には、1875年に爆裂噴火した安政火口の荒涼とした風景が広がる。
安政火口への分岐看板があったので、少し寄り道することにした。しかし、途中で登山道を見失い、引き返す。
後で知ったのだけれど、安政火口への登山道は落石のため2009年から閉鎖されていたらしい。
我が家が上ホロカメットク山に登るのは初めて。
と言うよりも、十勝岳連峰の山に、雪の無い時期に登るのは初めてである。
冬季に一度だけ三段山の山頂に立って、この安政火口を見下ろしたことがある。
そこから上ホロカメットク山へと続く急峻な雪の壁に、登山者が付けたと思われるトレースが有るのを見て驚いた。
その後、多分その時に見たのと同じ場所だと思うが、雪崩による死傷者も出ていて、上ホロカメットク山は私にとって恐ろしいイメージしかない山なのである。
安政火口との分岐から先の登山道は、傾斜も急になって岩を乗り越えながら登らなければならない。
一汗かいて尾根の上へと出てくると、眼下に凌雲閣の白い建物が、緑の樹海の中に浮かぶように見えていた。
尾根を回り込むと富良野岳と三峰山の姿が見えてくる。
明日はその上を縦走する予定の山々だ。
途中から雪渓の中の登りとなる。
軽アイゼンを必要とするほどの傾斜ではないけれど、時々足がズルッと滑って登りづらい。
雪渓の上を歩くのはとても涼しそうに思えるが、実際はそうでもない。
特に無風時などは、上からの陽射しに、雪面からの反射光も加わり、普通の登山道よりも暑く感じるくらいだ。
富良野岳と上ホロカメットク山への分岐までやってきた。
看板の示す方向の狭い雪渓に向かって進んでいくと、直ぐにその先は行き止まりとなり、その間違いをあざ笑うかのように人間のウ○コが転がっていた。
多分、それなりの切羽詰まった事情があったのだろうが、せめて携帯トイレくらいは利用してもらいたいものだ。
上ホロへは、ここまで登ってきた雪渓をそのまま真っ直ぐに進むのが正しいルートの様である。
雪渓上の足跡のほとんどが富良野岳方向へと向かう中で、よく見ると二人くらいの足跡が、そこから離れて雪渓の上に続いていたのだ。
そこからもう一つ雪渓を過ぎると、その先に木製の階段が現れた。
これが昭文社の山地図で300階段と表示されているものらしい。
なんまら北海道のアサ妻さんが、この階段の数を数えたとブログにアップしていたので、私も一段一段数えながら登ることにした。
数えている途中に下りの登山者とすれ違ったりすると、挨拶している間に幾つまで数えたか分からなくなってしまい、数もちょっとあやふやだが、私の数えた段数は734段。アサ妻さん説の711段と23段差だった。
まあ、その段数はともかくとして、それだけの階段が延々と続いているのである。
階段の付けられた登山道は、私はあまり好きではない。
階段には歩きやすい踏面と蹴上の関係があるが、登山道の階段はそれとは関係なく現場の傾斜に合わせて付けられることとなる。
この踏面と蹴上の関係を無視した様な階段、おまけに踏面の土が雨で流されていたりしたら、階段なんか無い方が良いと言いたくなる時がある。
それに比べると、ここの階段はまだ歩きやすい方だった。
ひたすら数を数えることに集中したこともあり、汗をたっぷりとかいただけで、それ程苦労することもなく階段を上りきることができた。
爆裂火口が眼下に広がる。
真正面の赤茶けた崖は、冬に何度か登ったことのある三段山の裏側にあたるはずだ。
私の知る三段山の面影はどこにもなく、とても同じ山とは思えない。
その向かい側の垂直に切り落ちた断崖が、上ホロカメットク山の山体である。
そんな火山の力の凄まじさを感じさせる風景の向うに、端正な姿の十勝岳山頂がのぞいている。
端正とは言っても、そこに植物の姿は無く、荒涼とした風景であることに変わりはない。
後ろを振り返れば、これとは対照的な緑に覆われた富良野岳や三峰山の姿があった。
両方の風景を楽しみながら爆裂火口の縁を登っていく。
その途中に美しい花畑が広がっていた。チングルマにエゾノツガザクラ、イワヒゲなどが岩の間を埋め尽くすように花を咲かせている。
次々と移り変わる風景を眺めていると、疲れも全く感じない。
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