北海道キャンプ場見聞録 夏山歩きの部屋
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斜里岳(2012/10/8)

楽しい山登り


4泊5日の道東キャンプ旅行で一番の目的が斜里岳登山だった。
最初の予定では10月4日に札幌を出て5日に斜里岳に登る予定にしていた。
ところが5日の天気がパッとせず、斜里岳だけは天気の良い時に登りたかったので出発を一日遅らせ、その後の参加を予定していたイベントなどの関係で8日に登ることになる。
結局これが幸いして、5日間の中でこの日が一番良い天気となった。

前泊の屈斜路湖オートキャンプ場で濡れたままのテントを大急ぎで撤収し、斜里岳登山口へと車を走らせる。
上空には素晴らしい青空が広がっていたけれど、肝心の斜里岳だけが雲に覆われてしまっていた。
登頂する頃にはその雲が晴れてくれるのを望むだけである。
清岳荘到着した清岳荘前の駐車場には既に結構な台数の車が停まっていた。
急いで準備をして午前8時に登り始める。

清岳荘横の登山口から少しの区間だけ山の中を歩くと林道へと出てくる。
そしてその林道の途切れた先から、いよいよ一の沢沿いの登山道へと入っていく。
この後、何度も沢を渡渉することになる。
結構水量のある沢で、沢歩きの経験もほとんど無いものだから、最初は結構緊張してしまう。
カヌーの時はかなりの急流の中でも平気で歩いているのだが、ドライスーツにライフジャケット、ヘルメットの完全装備なので、転んで流されたとしても大して心配はない。
ところが、登山の時は沢の中で転ぶことなどは許されないし、足元は滑りやすい登山靴である。
一歩一歩慎重に、水の上に出ている石の上を渡っていく。

沢伝いに登っていく渡渉地点は限られているのだろうと思っていたが、ほとんど沢伝いに登っていく様な登山道なので、数えきれない程に何度も渡渉することになる。
途中で道を失ってしまいそうだが、渡渉地点には必ず対岸にも赤いリボンやペンキで書かれた目印があるので迷うことはない。
ただ、場所によっては、「どうやってここを渡ればいいの?」って考え込んでしまうようなところもある。

今は水が少ないから何とか渡れるけれど、もっと水が増えたらどうなるのだろうと心配してしまう。
するとかみさんが「ここの沢は雨が降っても、水はそんなに増えないそうよ」

沢水には鉄分が含まれているらしく、川底の石は赤く染まっている。
「赤い石は滑らないのよ」

私がストックを出そうとすると、「ここを登る時はストックは邪魔になるだけよ」
事前に随分と調べてきたようである。


沢の渡渉
数え切れないくらい渡渉を繰り返す

へつりもどき渡渉にも次第に慣れてきて、岩の上をポンポンと軽やかに伝っていく。水深の浅い場所なら、水中の石を足場にした方が楽に渡れることも分かってきた。
水際の岩壁にへばり付いて横に進むような、へつりを要するところもある。
これを沢登りと言うと笑われるかもしれないが、私にとって沢登りは憧れの世界なので、その世界にちょっとだけ足を踏み入れている様な気がして、とっても楽しい。

登山口から約50分で下二股までやってきた。
ここから登山道は新道と旧道に分かれる。
普通は沢沿いの旧道を登って、帰りは尾根沿いの新道を降りてくるらしいので、私達もそれに従う。
これから先はいくつもの滝が現れるとのことなので、ますます楽しくなってくる。

上空には相変わらず雲がかかっているけれど、その雲が流れていくと険しい岩峰が時々姿を現すようになってきた。
山頂を覆っていた雲も、良い具合に私達が登頂する頃には晴れてくれそうな感じである。

水蓮の滝最初に現れた小さな滝、「水蓮の滝」と書かれた看板が立っていた。
下二股から上二股まで八つの滝があるらしく、「水蓮の滝」の前には「白糸の滝」があるらしいが、気付かずに通り過ぎたらしい。
その先にもちょっとした滝が連続していたが、こちらは名前が無いようだ。
八つの滝というと聞こえが良いので、これらの滝はその八つの選から漏れてしまった、可哀相な滝なのかもしれない。

水蓮の滝の先に湧水の出ている水場がある。
岩の上に赤ペンキで「水」と書かれているが、色が薄れてきているので注意していなければ見過ごしてしまいそうだ。
チョロチョロとしか流れていなかったので、味見もしないで通り過ぎる。

羽衣の滝さらに上っていくとなめ滝状の大きな滝が姿を現した。
「羽衣の滝」の看板が出ている。
羽衣の滝を過ぎた先も、同じようななめ滝が続いている。これでは一々名前も付けていられないだろう。
その横の急な岩盤をロープを頼りに登っていく。

高度もどんどん上がって、振り返ると谷の向こうに下界の風景も見えるようになってくる。
途中の岩の表面に「見上げ石」と書かれていたので、そのまま上を見上げる。
あまりにも大きいので岩盤の様にも見えてしまうが、明らかにそれは一つの石であった。
確かに見上げ石である。

方丈の滝まで登ってくると、先行する男性二人の登山者が見えてきた。
更にその先に現れた滝の横の急な岩場をよじ登る。
「これが、滝を高巻くって言うやつだよな〜」と、気持ちは完全に沢登り気分になっているので、普段ならば足がすくんでしまうような急傾斜も大して気にならない。
そこを登っている途中に「見晴らしの滝」の看板があった。
岩場を登りきると、その名の通りの素晴らしい見晴らしである。


方丈の滝の横を登る 見晴らしの滝
方丈の滝の横を登る 見晴らしの滝を高巻く

完全な沢登り状態更にその先に続く「七重の滝」。
この辺りからは滝の中を歩く感じで、もう完全な沢登りである。
その滝の支流の様な感じで「竜神の滝」があった。
小さな滝なのに何でそんな立派な名前が付けられているのかと不思議だったが、後で知ったところではその上の竜神の池が水源となっている滝らしい。

最後に「霊華の滝」があるはずだが、看板には気が付かなかった。
もう、どこからどこまでが滝なのか区別も付かない。
8合目の看板を過ぎてしばらくすると、沢の水量も急に少なくなってきた。
そうして新道への分岐である上二股に到着。
既に標高1200m付近まで登ってきているのに全く疲れを感じない。
上空の雲は姿かたちも消えてなくなり、一点の曇りもない紺碧の空が広がっているだけだ。
こんなに楽しい山登りは初めての経験である。

馬の背までもう少し上二股から先は枯れ沢となり、樹木のトンネルの中を歩いていく。
次第に傾斜もきつくなり、ここでようやく疲れを感じ始めた。
同じ高度差を登るのならば、ただ歩いて登るよりも両手を使って岩をよじ登る方が楽なのかもしれない。
ここではたまらずにストックを使うことにした。
この辺りから下山してくる登山者とすれ違うようになる。
「頂上はもう少しですよ」との言葉に励まされ、黙々と登り続ける。
途中にあった「胸突き八丁」の看板は、まさしくその通りである。

そうしてようやく馬の背まで登ってきた。
馬の背の向こうには知床半島の山々が遠くまで続いている。斜里岳の山頂も間近に迫って見えていた。
しかし、山頂への道は見るからに険しそうである。おまけに手前に見えているピークを登った後、一旦下ってから更に急な崖を登る感じだ。
ストックは必要無さそうなので、再びザックに取り付ける。

不安定な急な岩場を登る先に馬の瀬で休んでいた男女も出発準備をしていたので、お互いに顔を見合わせ、私達が先に登ることにした。
いきなりのガレ場の急な登り。私の足元から小石が転がり落ち、下から登ってくる男女の方へと落ちていく。
「あっ、すいません」と声をかける。
ここではお互いの間隔を開けた方が良さそうだ。
更に傾斜は急になり両手を駆使しながら登っていく。
かみさんによると、ここでは手をかける岩にも注意した方が良いとのこと。
確かに浮いている岩が多く、自分でも注意が必要だが、そんな岩を下に転がしてしまったら一大事である。

馬の瀬から見た感じでは、そのピークを過ぎた後はまたかなり下るように見えていたが、実際は少し下るだけで済んだ。
下った先の鞍部には、スチール製の小さな社があったので、そこで軽く手を合わせる。
御賽銭を取り出すのが面倒なので、帰りにもう一度お参りすることにした。

頂上への最後の登りその先、少しの区間だけ、両側の切り落ちたナイフリッジの様な細い尾根を通って、山頂へ続く最後の急な岩場にとり付く。
何時もならば足のすくむ様な高度感のあるところだけれど、今日は何故か平気である。
こんな岩場を登るのに慣れてきたせいもあるのかもしれないが、それ以上に今日の素晴らしい天気で心が弾んでいることの方が影響が大きそうだ。

そうして、登り始めてからちょうど3時間で斜里岳山頂に到着。
駐車場に停まっていた車の台数と途中ですれ違った登山者の人数から、多分頂上は大賑わいだろうと予想していた。
ところが、頂上で休んでいた人は10名にも満たない人数で、「あの車に乗っていた人達はどこへ行ってしまったのだろう?」と狐に抓まれた感じである。

斜里岳山頂斜里岳は独立峰だけあって、頂上からは正に360度のパノラマが広がっていた。
緩やかにカーブを描くオホーツクの海岸線。そして、防風林によって規則正しく区切られた畑作地帯の風景。
緩やかな起伏を描く藻琴山から繋がるように屈斜路湖や摩周湖の姿が見える。
その向こうには雄阿寒岳の姿が。
更に南に目を転じていくと、標津岳や武佐岳の山塊の向うに根釧台地が広がる。
野付半島の姿も手に取るように見える。
残念ながら知床の山々だけは雲に隠れてしまっていた。

そんな展望を楽しんでいる時、太くて長い木の杖を1本持った、明らかに90歳は過ぎていそうな老人がその娘さんらしき女性と一緒に登ってきて、何気ないしぐさで山頂の標識にそっと手を触れた。
多分、登りに要した時間は私達も短いはずである。
ただ者ではない様子のご老人だった。

山頂のシマリスそのまま山頂で昼食にする。
太陽の陽射しはあっても、さすがに高度が高い分、気温も低くて、暖かいラーメンがとても美味しく感じる。
一匹のシマリスが姿を現した。
慌ててカメラを構えると、私のすぐ目の前までやってきて、何か頂戴といった仕草で立ち上がった。
あまりにも近すぎすものだから、ズーム側にしていたレンズを慌てて引っ込めているうちに、私の足の間を通り過ぎて行ってしまう。
隣のご夫婦のところでパンくずを貰ったりしていて、人間慣れしたシマリスの様である。

食事を終える頃には知床半島上空の雲も消えて、海別岳が姿を現していた。
ただ、一昨日に間近にその姿を眺めていた羅臼岳は、最後まで姿を見せてくれずに終わってしまった。


斜里岳山頂からの展望

摩周湖に屈斜路湖、その向こうには雄阿寒岳などの姿も


斜里岳山頂から眺める知床連山
山頂から知床方向を望む

社にお参り11時50分に下山開始。
再び立ち寄った社では、供えられたリンゴをシマリスが一生懸命食べているところだった。
「もうすぐ雪が降ってくる季節なのに、食べ物も集めずにそんなことしていて良いのか?」と言ってやりたくなる。

下山は上二股から新道の方を降りていく。
分岐から少し行った先で「竜神池」と書かれた標識があった。
そこまでどれくらいの距離があるのか分からないが、せっかくなので行ってみることにした。
ところが、その途中でかなり急な下り坂が現れ、そこをもう一度登り返すことを考えると気持ちが萎えてしまい、途中から引き返してきた。
その先でもう一か所「竜神池」への分岐があったので、同じ道を引き返さなくても、竜神池経由のルートがあるのかもしれない。

尾根の上に続く新道尾根の上に出てくると、その先に見えているピークの方に登っていくルートが見えていた。
「あんなところを登る登山コースもあるんだね」
「ここのルートとは、どこかで繋がっているのかな?」
それが、これから自分たちが歩かなければならない新道ルートだとは、この時はまだ全く知らずに、脳天気に話していたのである。

地図をよく見れば、新道ルートは尾根の上をもう一度登らなければならないことに直ぐに気が付くはずなのに、この辺が私の抜けているところなのだ。
下山時の登り返しは、精神的にも足にも辛いものである。


新道コースと斜里岳山頂 斜里平野を見下ろす
歩いてきた新道コースと斜里岳山頂が見える 新道コースの途中で斜里平野を眺める

少しだけの紅葉新道コースは暫く尾根上を歩いた後、下二股の分岐まで一気に250mを下ることになる。
膝に不安があると、この下りは本当にきつい。
横に張り出した木の枝などを手すり代わりに、膝に負担がかからないように慎重に降りていく。
皆が同じ場所を掴むものだから、そこだけ黒光りしている様な樹木もある。

沢を登ってくるときは足元ばかり見ているので頭上の木の枝に何度も頭をぶつけたけれど、今度は横から張り出した木の根に何度も脛などをぶつけてしまう。
途中で一生懸命膝にテーピングしてもらっている男性を追い越して、ようやく沢の底まで降りてきた。
「沢の底はもう、すぐそこだ〜」
と言った途端にズルッと足を滑らせて、尻もちをついてしまった。
つまらない親父ギャグは、滑りやすい登山道では口に出すものではない。

清岳荘まで下りてきたそうして14時45分に清岳荘まで戻ってきた。
登りはコースタイムよりも早く登れても、下りは常にコースタイムよりも遅くなるのが我が家の常である。
駐車場には相変わらず沢山の車が停まっていた。
清岳荘は既にシャッターが下りて閉鎖されたようなので、ここに停まっている車は何なのか、最後まで謎が解けなかった。
この後は、斜里岳を眺めながらビールを飲むために、暗くならないうちに斜里のキャンプ場に着けるよう、大急ぎで駐車場を後にした。

斜里岳登山のアルバム 



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