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狩場山(2012/7/7)

ガスと追いかけっこ


狩場山登山口駐車場私のお気に入りの賀老高原キャンプ場。
今までは、狩場山はキャンプ場の風景の一つでしかなかった。
それが、山登りをするようになったからには、是非ともキャンプとセットで楽しみたいところである。
誰もいないキャンプ場にテントを張ってから、車で登山口まで移動する。
駐車場には既に4台ほどの車が停まっていた。

千走川の直ぐ隣に登山口がある。
そこから先の林道は通行止めになっていた。
その林道をもっと奥まで入っていくと、賀老高原のブナ林を一望できるビューポイントがあるのに、残念である。

登山口からしばらくは、見通しの利かない森の中の急な登りが続く。
つばの広い帽子を被っているかみさんは、上の方がよく見えないらしく、登山道に張り出したダケカンバの枝に何度も頭をぶつけている。
ダケカンバのジャングルここのダケカンバは雪の重みで地を這うように育っているので、あちらこちらで障害物となっているのだ。
上を乗り越えるか、下をくぐるかで、迷ってしまうようなものもある。

マイヅルソウ、カラマツソウ、フギレオオバキスミレ、エゾイチゲ。
地味な花が多い中で、シラネアオイが一カ所だけ群落を作って咲いている場所があった。
山野草の女王とも言われるだけあって、その存在感は圧倒的である。

その対極にあって、全く存在感の無い花もあった。
「これって花?」
「葉はユキザサに似てるけど、こんな花だったっけ?」
図鑑で調べるとエゾノヨツバムグラという名前らしい。


シラネアオイ エゾノヨツバムグラ
存在感たっぷりのシラネアオイ 存在感の薄いエゾノヨツバムグラ

次第に雲が広がる次第に背の高い木が減ってきて、回りの見晴らしも良くなってくる。
ところが、登り始めた頃よりもかなり雲が多くなってきているのが気になる。
雲の高さも次第に低くなり、狩場山の山頂は既に雲に包まれていそうだ。。

途中で単独行の男性二人とすれ違う。
そのうちの一人は遠くからでも分かるくらいに「はひふへほ〜っ!」とか、声を出しながら下りてきた。
熊の生息密度の高い山なので、単独登山ならばそれくらい声を出していなければ怖くてしょうがないだろう。

かみさんの大好きなハイオトギリが咲いていた。
フギレオオバキスミレも群落を作っている。
下の方では殆ど花が終わっていたサンカヨウも、この付近ではまだ花が残っていた。


狩場山に咲く花々
沢山の種類の花を見かけた

雪渓を登るそうして、最初の雪渓が現れた。
去年、大雪で初めて歩いた雪渓よりも、ここの雪渓の方が固く締まっているので、気をつけないと足を滑らせて滑落しそうだ。
そこは、少し歩くだけで横断できたので良かったが、次に現れた雪渓はそう簡単にはいかなかった。
斜度もきつく、歩く距離も長い。
途中で諦めて、軽アイゼンを装着する。アイゼン無しでここを横断するのはかなり厳しいだろう。

困ったのは、ルートが分からないことだ。
何の目印も無く、足跡も殆どついてない。
途中ですれ違った2名以外にここを登っている人はいないのかもしれない。
GPSの地図を頼りに雪渓を横断して、何とか元の登山道に戻ることができた。
この辺りがお花畑になっているらしいが、その姿は確認できず。まだ、雪渓の下に埋もれているのかもしれない。

意地悪岩ようやく尾根の上へと出てきた。
でも、この辺りでは再び樹木に囲まれて見通しはあまり利かない。
ツマトリソウ、シナノキンバイ、ベニバナイチゴなどの花が新たに見られるようになってきた。
太った人は絶対に通り抜けられないような岩の間をすり抜けると、1464mの南狩場に到着。
回りの見通しは全く利かない場所だけれど、僅かな踏み分け道を辿ると深い沢を見下ろすビューポイントに出てくる。
残念ながら、沢の底は見えても周りの山は霧に包まれて何も見えない。

その霧の中を歩いていくと平らな地形の場所に出てくる。
親沼の標識が立てられた小さな沼があった。
親沼があれば、子沼もあるはず。
その子沼は頂上近くにあったが、水溜まりのような本当に小さな沼だった。
カエルやサンショウウオの卵が沢山産み付けられているが、そのまま干上がってしまわないのか心配になってしまう。


親沼 子沼
親沼の方はまだ沼らしいけれど 子沼にはサンショウウオやカエルの卵が沢山あった

狩場山山頂笹に覆われて足下の見えない登山道を、足を取られかけながら登っていくと、小さな鳥居が見えてきた。
そこが狩場山の山頂である。
登り始めてからちょうど2時間半。
途中までの登山道はきつかったけれど、最後の山頂へは拍子抜けするくらいにあっさりと着いてしまった。

霧に包まれ何も見えない山頂でおにぎりを食べながら休んでいると、次第に回りの霧が晴れてきた。
「見下ろしの沼」と書かれた看板があったので、茂津多コースの方へ少し下ってみる。
すると眼下の山中にポツンと沼が見えていた。
多分それが「見下ろしの沼」なのだろうが、安易なネーミングであるとの印象は免れない。

ポツンと突き出た岩が有ったのでその上に登ってみる。
ちょっと怖いけれど、狩場越の沢の深い渓谷が目の前に広がり素晴らしい眺めである。
その眺めも、再び流れてきた霧に直ぐに隠されてしまう。
次第に天気が回復してくるのかと思ったが、そうでもないらしい。


岩の上からの眺め

狩場越の沢が刻んだ山の風景、手前の岩がちょうど良い展望台になる


見下ろしの沼 山の風景
上から見下ろす見下ろしの沼 この尾根の上に茂津多コースが続く

雲が多いけれどそれ以上青空が広がることはなさそうなので、諦めて下山することにした。
それでも、登ってくる時よりは、かなり天気は良くなっていた。
キャンプ場付近も見えている。
カメラのズームレンズを思いっきり延ばすと、我が家のテントも確認できた。

回りの山々は見えているけれど、遠くの方の風景は完全に雲の中である。
雪渓の中に島のように頭を出した岩の上でポーズをとる。
登ってくる時も同じような写真を撮ったけれど、背景は全然違っていた


雪渓の上でポーズ 雪渓の上でポーズ
登る時はガスに包まれていたけれど 下山時はまずまずの展望

斜面を埋めるイワイチョウ途中の斜面にはイワイチョウの大群落が広がっていた。
花はまだ蕾で、後一週間も経てば一面のお花畑に変わるのだろう。

ここの登山道はどうも歩きづらい。
頭上に張り出した枝に頭をぶつける、地面を這う枝につまずく、中途半端に切断した枝が横から伸び出ていてそれに引っかかる。
イラッとさせられることが多い。
「いてっ」「この野郎っ」
その度に大きな声を上げるのは、本当は熊が怖いからなのである。
笹藪の中からガサガサと音が聞こえてくるのは、自分がぶつかった枝が笹を揺らしているせいなのだろうが、あまり良い気持ちはしないのだ。

南狩場近くのビューポイントからは、今度は素晴らしい眺めを楽しむことができた。


南狩場ピークと狩場山山頂
右が南狩場ピーク、奥に見えるのが狩場山の山頂だ

この雪渓で滑落下りの雪渓は、登山靴のかかとを雪面に食い込ませながら歩けるので、軽アイゼンは付けずに下りる。
それが油断だった。
バランスを崩してアッと思った時は、既に滑落していた。
既に下まで降りてきていたので、滑落した距離は僅かだったけれど、転んだ拍子に肘を擦り剥いてしまった。

その後も、斜面をトラバースするところで足を踏み外して転落しかけたり、足を滑らせて尻もちをついたりと災難続き。
頭の中は下山後の温泉とビールのことで一杯で、先を急ぎすぎていたのが原因なのである。

そしてその千走川温泉で汗を流してキャンプ場へ戻ってきた時、山は麓までガスに包まれてしまっていた。
今回はちょっと天気に恵まれなかったけれど、頂上であれだけの風景を見られたのはラッキーだったのかもしれない。
次は紅葉の季節に登ってみたいものである。


狩場山の花々
この他にも、まだ蕾のままの花も多かった


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