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タケノコ山(2016/3/5)

雨氷の風景


空知川雲一つ無い青空の下、朝6時過ぎに自宅を出て道央自動車道を北へと向かう。
岩見沢に近づくと、車の外気温計は見る見るうちにマイナス15度以下まで下がり、辺りは霧に包まれた。
木々は樹氷に覆われ真っ白な姿に変わり、幻想的な風景が広がる。

富良野までやってくると、空知川の川面から川霧が立ち上り、河畔林を真っ白に凍りつかせていた。
芦別岳の険しい姿が青空の下に浮かび上がる。

冬ならでは風景を眺めながらのドライブは楽しいが、路面がツルツルで思うようにスピードを出せない。
南富良野の道の駅での集合時間は午前9時。
余裕を持って到着できると思っていたが、現地に着いた時には既に参加メンバー全員が揃っていた。


霧の風景 芦別岳
高速道路から見る幻想的な霧の風景 冬の芦別岳の姿が好きだ

今回登る山は、南富良野のタケノコ山。
参加メンバーは、I山さんの他に、浦幌から駆けつけたI上さんと3週間近いタイ旅行から帰ってきたばかりのS藤さん。
タケノコ山は、滑るのには楽しい山だと話しには聞いていたが、実際に登るのは全員が初めてである。

登山口までやってくると、既に4台の車が停まっていた。
何時もより集合時間が遅かったのだけれど、やっぱり人気の山のようだ。

タケノコ山私達が準備をしていると、早くも男性が一人滑り降りてきた。
それも一度登り返して2本滑ったとのこと。
多分、暗いうちから登り始めたのだろう。
その男性の話しでは左の沢の方が雪が良いとのこと。

タケノコ山はそこから直ぐ近くに見えていて、山頂から続く2本のオープンバーンをはっきりと確認する事ができる。
非常に分かりやすい山である。
ただ、一度林の中に入ってしまうと、山頂近くに出るまでその姿は見ることができなくなるのだ。

しばらくの間、林道を歩いていく。
周りにはカラマツやトドマツの植林地が広がっている。
一度除雪されたような跡があるのは、今でも営林作業が行われているのだろう
やがて、その林道を離れて森の中へ分け入っていく。

森の中を登るトレースに従って、これといった目標物も無い森の中を緩やかに登っていく。
もしもそのトレースが無かったとしても、尾根状の地形にそって登っていくだけなので迷う事はないだろう。

植林されたようなつまらない森かと思っていたが、自然林風でなかなか良い森である。
35分ほどでようやくタケノコ山の麓まで達したようだ。
急に勾配がきつくなってくる。

地形図で見ても、等高線の間隔が狭く、それが山頂近くまでずーっと続いているのだ。
ジグをきりながらその急斜面を登っていく。
昨日の音江山に登った疲れが残っているのか、足が重たい。

急斜面を登るタイで3週間も温々と過ごしていたS藤さんも、久しぶりの山登りは堪えるようだ。
還暦組の二人が大きく遅れる中、かみさんが先頭でグイグイと皆を引っ張るように登っていた。
その後ろにピタリと付いているI山さんに、二人から少し遅れて汗を拭きながら登るI上さん。
何時もと全く同じパターンである。

それ程急なトレースでもないのに、少し凍っていているのか、板がスリップし始める。
疲れで足の踏ん張りも効かなくなり、キックターンの際に後ろに滑って転倒してしまった。

樹林帯を抜けて周りの風景が良く見えるようになってきた。
しかし、前を登るかみさんの姿は全然見えない。
「普通なら、ここらで一休みするよな〜」
かみさんを先に歩かせると、後ろを気にせずどんどん登っていってしまうのも、何時もと同じパターンである。


急斜面を登る
次第に辺りが開けてくる

疎林の尾根上を登るようやく、途中で待っている3人に追いついた。
「山頂近くになってから休憩しても遅すぎる」とかみさんに文句を言う。
するとI山さんから、「残念ながら山頂までは後200m」ありますと言われた。
地図を見ると、確かにこの先も尾根上の登りがずーっと続いていた。

「傾斜が緩くなるから、これまでよりも楽ですよ」
そう言われても、急斜面はジグを切りながら登っても、緩斜面では直登するので、実際に登る傾斜に変わりは無いのだ。

直ぐに前の3人から遅れ始めるが、眺めが良いので気持ち良く登ることができる。
山間に真っ白く広がる平らな部分は金山湖である。
金山湖の姿をこんな高い場所から見下ろすのは初めてなので、新鮮な風景である。
その先に見える芦別岳の姿は相変わらず格好良い。


タケノコ山の風景 タケノコ山を登る
尾根の上の風景 尾根に出ても登りはやっぱりきつい

上の方から、かみさんの喚声が聞こえてきた。
樹木の枝を覆っている氷が太陽の光に照らされて、キラキラと輝いているらしい。
そこまで登っていくと、周辺のダケカンバの枝が見事なまでの分厚い氷に覆われていた。
その氷と氷がぶつかり合うと、まるで風鈴のようにカランカランと良い音がする。

キラキラと輝く雨氷後で調べてみると、これは雨氷と呼ばれる現象らしい。
0℃以下の過冷却状態になった雨が、木の枝等に付着するのをきっかけに凍ったものを雨氷という。
冬山に登っていると時々見かける現象だが、これだけの太さで木の枝に付着している雨氷は初めて見た。
月曜日に札幌で雨が降っていた時に生じた雨氷なのかもしれない。

タケノコ山に登りましょうと言った時、その時の雨の影響で山頂付近がガリガリに凍っていないかと心配していた。
幸い、その後に新たな雪が結構積もってくれたおかげで、今日は快適に登れていた。
しかし、雪面をストックで強く突くと、ふわふわの雪の下にかなりの硬さの氷の層があるのが分かる。
もしもその上に雪が積もっていなかったとしたら、とてもじゃないがスキーを履いては山頂まで登れなかっただろう。

陽が射してくると木の枝に付いた雨氷が美しく輝くのだが、雲が広がってきていて、なかなかそんなシーンにお目にかかれない。
太陽待ちをしている間に前の3人がどんどんと登っていってしまうので、慌ててその後を追った。


雨氷 雨氷の風景
立派な雨氷だ 雨氷の風景の中を登る

輝く雨氷
シャンデリアの様に雨氷が輝く

雪庇の発達した尾根を登る雪庇の発達した尾根を越えると、その先にようやくタケノコ山の山頂が見えた。
登り始めてから2時間10分で、その山頂に到着。
少し雲が多いけれど360度の展望が開けていた。

この付近の山に登るのは初めてなので、周りに見えている山が何処の山なのかさっぱり分からない。
それでも、芦別岳と夕張岳の姿だけは見間違いようが無い。

直ぐ隣の社満射岳とは尾根で繋がっている。
そちらに向かってスキーのトレースが続いていた。
そもそも地形図には社満射岳の名前しか載っていなくて、そちらの方が標高も少しだけ高いので、ピークを目指す登山者は社満射岳の山頂に立たない事には気が済まないのだろう。
私達は勿論滑る事しか考えていないので、そちらまで行ってみようなんて言う人は誰もいなかった。


タケノコ山山頂
タケノコ山の山頂に立つ

タケノコ山への最後の登り 隣に見える社満射岳
タケノコ山山頂への最後の登り 隣に見える社満射岳

金山湖と芦別岳
途中で見えた金山湖と芦別岳のベストショット

登山口に車が沢山停まっているのを見た時には、斜面も相当荒らされているだろうと覚悟した。
しかし、山に入っている人数はそれ程多くはないみたいで、その一部は社満射岳まで足を延ばし、ボーダーグループのトラックが目に付く程度だ。

タケノコ山を滑る教えられた左側の沢を滑るつもりだが、傾斜が急なので先の様子が全然分からない。
とりあえずは目の前に広がっているノートラックの素敵な斜面を滑ることになった。
傾斜もそれ程急ではなく私の大好きな斜面だったので、「お先に〜」と言い残して真っ先に飛び出していく。

他のメンバーも続いて滑ってきたが、何故かI上さんが一番最後に降りてきた。
何時もは真っ先に飛び出すはずのI上さんなので、どうしたのだろうと思ったが、多分一番楽しめる場所を探して慎重になっているのだろう。

リフトに乗って何本も滑るゲレンデスキーとは違って、山スキーは1本勝負の世界である。
苦労して登っても、変なところを滑ってはそれだけで終わってしまう。

タケノコ山を滑るI上さん ましてI上さんは、浦幌に転勤になってからパウダーを滑る機会が殆んど無くなり、今シーズンもこれが2回目で、もしかしたら最後になるかもしれない山スキーなのである。
慎重になるのも無理は無い。

そこからまた少し滑り降りたところで、ようやく沢のオープン斜面の全貌が見渡せる場所に出てきた。
ノートラックの急斜面が沢の底まで延々と続いている。
「良い?行って良い?下まで一気に行っちゃうけど良い?」
何時ものI上さんに戻っていた。

雪煙を巻き上げながら、その姿は直ぐに豆粒のように小さくなってしまった。
写真撮影のために私がその次に滑り降りる。
I上さんが滑り降りた横には、ノートラックの斜面がまだ広々と残っていた。
転倒そこを大きく弧を描きながら滑り降りる自分の姿が頭の中に思い浮かぶ。
しかし、滑りはじめると思った以上に傾斜が急で、しかも雪が重たい。
「あらら」と焦った途端に、最初のターンで尻餅を付いてしまった。
ノートラックの美しい斜面の真ん中で、起き上がろうともがいている私。
1本勝負の世界でノックアウトされた気分だった。

カメラを構える私の横を、皆は気持ち良さそうに一気に滑り降りていく。
それでもまだオープンバーンの底には達してなくて、そこからもう一滑りできた。
振り返れば、私達5人が滑った跡で斜面は既にギタギタに荒れていた。
もしもこの後にここを滑る人がいるとすれば気の毒としか言いようが無い。


タケノコ山を滑る タケノコ山を滑る
かみさんも気持ち良さそうに滑る スプレーを巻き上げるI山さん

タケノコ山を滑る
私達が荒らした斜面

しかし、もう1本の斜面はまだ殆んど荒らされていない。
I上さんとI山さんの二人は、登り返す気満々の様子だ。
かみさんは、当然もう1本登るのだろうと思っていたとのこと。
私は、登る事になれば諦めるけど、できればもう勘弁して欲しいと思っていた。

タケノコ山を滑るそこへタイ帰りのS藤さんが、「いや〜、今日は疲れたからもう止めようぜ、もう一つの斜面は日当たりも良いし、登り返している間に雪はもっと悪くなるから」
I上さんが渋々と納得した時、私は心の中でS藤さんに拍手を送っていた。

そこからは林間に戻って、登ってきたルートに沿って滑り降りる。
最後の林道で少しだけ登り返しがあるものの、駐車場所まで一気に戻ってこられた。

明日からは再び気温が上がって雨の予報である。
3月になってもこれだけのパウダーを楽しめたのはラッキーだったのかもしれない。
来シーズンはもっと早い時間から登り始め、その時こそ2本滑ろうと約束してタケノコ山を後にしたのである。

GPSトラック



登り口9:15 − 11:25山頂11:50 - 登り口12:50 



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