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富良野岳ジャイアント尾根(2013/1/13)

これは修行か訓練か


カヌークラブ新年会の二日目は富良野岳のジャイアント尾根を滑ることに。
前夜には、かなりお酒も飲んでいたはずなのに、朝5時頃には皆起き出して、朝食のうどんをつくって、食べて、片付けて、スキーの装備に着替えて、荷物を車に積み込んで。
かみさんが「何で皆こんなに早く準備してるの?」って戸惑っていたが、冬山に登るのに早すぎて悪いことは何も無い。
結局まだ薄暗いうちに宿を出て、7時20分頃には全員が登る準備が整った。
薄暗いのは今朝の天気のせいもある。吹雪なのである。
ヌッカクシ富良野川を渡る我が家の基準で言えば、絶対に山に登るような天気ではない。
でも、真冬の十勝岳連峰でこの程度の天候にひるんでいては、登れるような日は限られてしまうのだろう。
お手軽山スキー派の我が家にとっては、今日は修行のような山登りになりそうだ。
でも、世の中月夜の晩ばかりとは限らない。もしもの時に具えて、こんな天候の中を登るのも良い経験である。

まずは砂防ダムの上流でヌッカクシ富良野川を渡らなければならない。
事前にネットで調べたところ、ここではスノーブリッジができないので、川の中をスキー靴で歩いて渡ることになっていた。
ところが今回は、一カ所は石の上に積もった雪の上を、もう一カ所は誰かが架けてくれたらしい細い木橋を渡り、靴を濡らさずに済んだのは幸いだった。
雪の中を出発それでもちょっとバランスを崩すと川の中にジャボンと落ちてしまいそうな、冷や汗ものの渡渉である。
でも、この感じならば、もっと大雪が降れば、ちゃんとしたスノーブリッジが出来るのかもしれない。

今日の参加者は昨日より一人増えて総勢11名。
川を渡ったところでスキーを履いて、そこからいよいよ森の中へと入っていく。
その取り付きの斜面に少しだけ急な場所があって、そこでN島さんが昨日に続いて悪戦苦闘。
樹木が混んでいるので横にかわすこともできず、そこを登るのにしばらく時間がかかっていた。

その直ぐ先でルート間違いをして10分程タイムロス。
7時20分に駐車場を出発して、まだ登り始めたばかりなのに既に時間は8時を過ぎていた。
森の中を歩くそれでも十分に余裕のある時間である。やっぱり、朝の素早い行動はこんな時に生きてくるのだ。

森の中に入ると風も遮られ、降り続ける雪もそれ程気にならなくなる。
ここからジャイアント尾根に向かうためにはベベルイ沢を渡らなければならない。

最初にルート間違いをしたのは、このベベルイ沢をもっと下流の方で渡ったことがある人がいて、そちらの方に向かったのが原因だった。
そちらの方がジャイアント尾根を長く滑れるらしいが、最後に登り返しが出てくる。
そのために、ベベルイ沢の上流部で沢を渡るのが一般的なルートとなっているようだ。

斜面をトラバース沢を渡るために、結構急な斜面をひたすらトラバースしながら高度を上げていく。
降りしきる雪のために周りの森は完全なモノトーンの世界となっている。
まるで墨絵の風景の中を歩いているようだ。

標高1100m付近でようやくベベルイ沢を渡ることができた。
そこからジャイアント尾根に取り付く登りで、N島さんがまた悪戦苦闘していた。

その先も急な登りが続き、先頭を歩くMオさんがジグザグにルートをとりながら登っていく。
ジグザグに登ると言うことは、途中、キックターンで登る方向を変えなければならない。
ベベルイ沢を渡る急斜面でのキックターン。これは慣れない人には結構辛い行為でもある。
私も山スキーを始めたばかりの頃は、このキックターンで何時も苦労していた。
自分が先頭でラッセルしている時は、自分でやり易い場所で向きを変えることができる。
ところが、人のトレースを頼りに登っていると急斜面の途中で否応なくキックターンをさせられることになるのだ。
後ろにずり落ちない様にストックで必死に体を支えながら方向転換をする。
その行為がボディーブローのようにN島さんの体力を奪っていた。


モノトーンの世界
墨絵のようなモノトーンの世界

そして時々、どうしても登れないようなところが出てくる。
一定の斜度で登っていても、樹木等があって部分的に少しだけ斜度がきつくなることがある。
そんなところで、苦もなくそこを登れる人と登れない人に分かれるのである。
急な登りが続くN島さんは、そんな場所が出てくる度に一人でもがき苦しむことになる。
横からサポートすることもできないので、一人で頑張ってもらうしかないのだ。

私は今こそ、苦労しながらも何とか登れるようになったけれど、以前は今のN島さんと同じような苦労を何度もしているので、その辛さが我が事のように理解できる。
とうとう斜面から転がり落ちてしまい、深雪の中で起き上がるために必死にもがいていた。

しばらく時間がかかりそうなので、皆は一旦ザックを降ろし、その中から暖かい飲み物を取り出して、冷えた体を中から暖める。
N島さんがようやく追いついてきたところで「じゃあそろそろ登りましょう!」
昨日と同じく、N島さんに安らぎの時間はない。

樹木が疎らになってくる次第に樹木が疎らになってくる。
樹木が少なくなるに従って風当たりが強くなり、それに伴って雪面のシュカブラ状に固くなってくる。
これ以上登っても景色は見えないし、滑りも楽しめない。
それでも登り続けなくてはならず、ここから先は完全な修行そのものである。

そんな時、まだ下の方にいたT津さんがストックをクロスさせて×の合図を送ってきた。
その意味は直ぐに理解できた。
N島さんの体力が限界に達したことは、聞かなくても明らかである。
むしろ、良くここまで登ってきたものだと感心してしまうくらいだ。

Mオさんは「この上が楽しい斜面なんだけど・・・」と残念そうにしているが、こちらは登らない理由ができたので、思わず万歳をしたくなった。
「しょうがないですね〜。じゃあここまでにしますか!」と言いながら、サッサとスキーを外してシールを剥がし始める。
標高はおよそ1380m付近だった。


黙々と登る ここでシールを剥がす
吹雪の中を黙々と登り続ける 今回はここで終了

豪快なO川さんの滑り下からは次々と大人数のパーティーが登ってきていた。
その人達はきっと「この上の楽しい斜面」を目指すのだろう。
こちらは楽しむことなど二の次で、まずは樹林帯の中まで慎重に滑り降りるだけである。

私達がボーゲンで下りてきた後を他のメンバーは気持ち良さそうに滑ってくる。
その中でも、シュカブラした雪面をバリバリと砕き飛ばしながら豪快なテレマークターンで滑り降りるO川さんの姿に圧倒される。

そうしてN島さん達と合流。
そこから下はフワフワの深雪なので、木々の間を抜けながらの滑降を楽しむことができる。

転倒を繰り返すN島さんしかし、ここから先もN島さんにはイバラの道が待っていた。
足の筋力は既に限界を通り過ぎていたようで、体を支えることもできず、少し滑っては転倒を繰り返す。
この深雪では起き上がるのも重労働である。
見るに見かねて、N島さんのザックの中身をMオさんのザックに詰め替えて、T津さんがマンツーマンでサポートしながら斜滑降キックターンで下りてくることにした。

風が遮られる場所まで下りてきたところで昼食にする。
降りしきる雪の中で、あっという間に体もザックも真っ白になってしまう。
それにしてもカヌークラブの新年会は何時もこんな天気である。
まあ、1月中旬の山の天気なので晴れる方が珍しく、この程度でめげていては冬の雪遊びはできないのだ。


雪の中で昼食中 食事を終えて滑降開始
昼食中も雪は降り続く 食事を終えて後は滑り降りるだけ

木々の間を滑るこんなに雪深い森の風景は他の場所では滅多に見られない。
悪天候時でも山に入るだけの価値は確実あるのである。

登ってくる時にトラバースしたルートは既に沢山の人が滑って、スキー場の林間コースの様になっていた。
ただし極端に幅の狭い林間コースである。スピードを押さえるのに逆に苦労してしまう。
足の力を失っている人にとってはここも難コースと言えるだろう。

そうして再びヌッカクシ富良野川を渡り、雪まみれになりながら皆無事に車まで戻ってくることができた。
体力が有り余って物足りない人、体力の全てを使い果たしてしまった人。
それぞれの模様が散りばめられた、楽しい新年会がこうして終わったのである。


雪深い森の中を滑る
森の中はフワフワのパウダースノー

モンスターのようなアカエゾマツ 最後にヌッカクシ富良野川を渡る
スノーモンスターに囲まれる 恐る恐るヌッカクシ富良野川を渡る

GPSトラック図

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