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徳舜瞥山(2012/2/14)

寸前で撤退


2月に入って、そろそろ本格的な山にも登りたくなってきた。我が家のレベルでの本格的な山とは「北海道雪山ガイド」で中級以上の評価となっている山のことである。

その中で真っ先に候補に挙がったのが徳舜瞥山、これまでに2度登って何れも山頂までは達することができなかった。
それで今回は、過去2回の上野ルートから変更して北西尾根(旧登山道)ルートを登ってみることにした。

まだ暗い朝の6時に家を出て8時には現地に到着。
雪山ガイドに載っている地図を見ながら除雪された道を入っていくと、酪農家の家先の様なところに出てきてしまった。
地図を見てもここで間違いは無さそうなので、そこの農家の方に車を停めて良いか聞いてみたところ「今日は除雪が入るので停めないでくれ」とのこと。

今回の駐車場所その話しぶりからすると、普段は停めさせてくれそうな感じだった。
しかし、どう見ても付近は私有地の様なので遠慮しておいた方が良さそうだ。

そこから少し離れた道路の交差点に広く除雪された場所があったので、そこに車を停めて歩くことにする。

ちょうどその交差点のところに「徳舜瞥山登山道入口」と書かれた小さな看板が立っていた。
そんな登山口の情報はどこでも見たことが無かったので、雪山ガイドの地図を頼りに先ほどの農家の庭先を通り抜けさせてもらうことにした。

牛の世話をしていたご主人に徳舜瞥山へ登るルートについて聞いたところ、丁寧に教えてくれる。親切なおじさんである。
畑の中を横断させてもらい教えられたとおりに歩いていくと、その先にだだっ広い雪原が広がっていた。
登り口の地図ご主人の説明の中に「飛行場」の言葉が出てきたけれど、これがその場所らしい。

ネットで検索すると大滝飛行場と言うものが実際にあるようだ。
昔、農林水産省の肝いりで各地に作られた農道空港の一種なのだろうか。

その飛行場らしき場所を横断したカラマツ林の入り口に、今度は「徳舜瞥山・ホロホロ山登山入口」と書かれた看板が立っていた。
サトシンの北海道の山スキー」さんのホームページからGPSトラックログをダウンロードし、私のハンディGPSに登録しておいたのだが、そのトラックはこの場所から始まっていた。
雪に埋もれているけれどここには道路が通っているようで、 私のGPSにも現在位置に道路らしき線が表示されている。
もしかしたら以前はこの道路が除雪されていて、ここから直接登り始めることができたのかもしれない。

カラマツ林の中の林道へパソコンから印刷して持ってきていた山旅倶楽部の旧版地図にはこの道路の記載が無く、先ほどの農家の横を通る登山道らしき点線が表示されているだけだった。
旧版地図に載っていないこの新しい道へは、農家の庭先を通らなくても入ってこられるので、これからはこちらを歩いた方が良さそうだ。

カラマツ林の中の林道らしきところを歩いていくと、その先で再び道路の様な場所へと出てきた。
こちらの道はGPSにも表示されず、そこに建てられている道路標識がまだ新しいところを見ると、最近作られたばかりの道なのかもしれない。

農家のご主人に徳舜瞥山には「太陽に向かって登って行けば良い」と教えられていたので、その道を横断して再び森の中へと入っていく。
結局はその先の森を抜けたところで再びこの道と合流するので、道なりに歩いても大して差は無い。


林の中を歩く 日が射してきた
林の中を太陽に向かって歩く 日が射してきた

足首程度のラッセル数日前には大滝付近でも結構な雪が降っていたので深いラッセルを覚悟していたが、幸いなことに足首程度までしか埋まらない。
森の木々を見るとその幹の片側だけに雪が白くこびり付いていて、風がかなり強かったことをうかがわせる。
多分、柔らかい雪の下は風に飛ばされた締り雪となっているのだろう。

歩き始めた時にはチラホラと舞っていた雪も止み、徐々に日も差してきた。
今日の天気予報は晴れ時々曇りになっていたので、このまま天気も回復してきそうだ。
真っ白な雪の上にはウサギやエゾリスらしき足跡が残され、周りの木々からは鳥のさえずりが聞こえてくる。
風もなく、真っ直ぐに続く林道上を快適に登っていく。
その林道は突然終点となり、そこから先はやや密度の濃いダケカンバの林の中へと入っていく。


青空が広がる 林道を歩く
青空が広がってきた 林道は真っ直ぐ進んだ先で行き止まり

団子のようなオブジェ斜めに傾いた木の幹に、まるで団子の様に雪の塊が積み重なった面白い光景に出合った。
どうやったらそんなふうに雪が積もるのだろうと考えながらその近くで小休止していると、突然ドサッと言う音と共に、私の直ぐ横に雪の塊が落ちてきた。
その塊の中には折れた枝も混ざっている。
そんな塊の直撃を受けたら首の骨が折れるかもしれない。

頭上を見上げると、そこらじゅうがそんな塊だらけである。
今日は久しぶりに日中の気温がプラスになるようなので、落雪も増えてきそうだ。

標高700m付近からやや急な斜面を登ると、急に樹木の密度が濃くなってきた。
樹木が密生する森シラカバなどに混ざってトドマツやエゾマツも増えてくる。
雪化粧したマツ類の姿は大好きなのだけれど、隣の樹木と枝が重なり合うくらいに密生しているので、行く手を阻まれてしまう。
おまけに時々、通り抜けた先で倒木が待ち構えていることもあり、慎重にルートを選ばなければ途中で引き返す羽目になる。
まるで迷路の中を歩いているようだ。

頭上では大量の雪を乗せた木の枝が幾重にも重なりあい、そこから何時雪の塊が落ちてきても不思議ではない状況である。
如何にも危なそうなところでは、上を見ながら足早に通り過ぎる。
急斜面でもない場所で、こんなに恐怖を感じたのは初めてだ。
頭上に木の枝のない場所に出てくるたびにホッと一息つくような有様である。

恐怖を感じながらも、雪が作り出した造形物を見つけると嬉しくなる。
樹木の上にできたちょうど良い雪の塊を見つけると、直ぐにストックで目を入れてしまう。


頭上の雪 雪にいたずら書き
頭の上から雪が落ちてきそう 雪にいたずら書き

標高900m付近から、細い尾根に上がるための急な登りとなる。
ここが一番の難所らしい。
その急な斜面をじっくりと眺め、樹木の間をジグザグに登るルートを見定めてから登り始める。
もう少しのところで行き場を失ってしまったが、最後はヒールを固定して横向きに斜面を登って、その難所を登りきることができた。

尾根の上に出たその細い尾根の上は西風がまともに吹き抜けるため、ルートを遮るような吹き溜まりがそこらじゅうにできていて、それを避けながら登らなければならない。
でも、風が強い分、周りの木々は枝先まで樹氷に覆われ、純白の雪景色が広がる。
モコモコの雪の鎧をまとっとマツ類のモンスターも迫力を増している。
雪の鎧には、まだ隙間があるけれど、今月下旬ころになればそれも雪に覆われ、完全な白いモンスターに変身していることだろう。

上空には青空が広がっているものの、山頂付近にかかっている雲はなかなか取れない。
晴れてくるかなと思っても、新たに流れてきた雲が直ぐにまたかかってくるのである。
ホロホロ山へ登る尾根の向こうに白老岳も見えているが、白く霞んでしまっている。
下界の風景も同じような感じだ。


モンスター

モンスターの間を抜ける


雲が多い 雪深い風景
雲がかかって遠くは見えない 雪深い中を歩く

登るにつれて更に周りの風景は、その白さを増してくる。
日が射している時は真っ白な風景に陰影が生じて、まだ木々の見分けがつくけれど、太陽が雲に隠れてしまうと完全に白一色の世界となり、まるでホワイトアウト状態である。
真っ白な世界雪が降っている訳でもないのにホワイトアウトになるなんて、とても不思議な感覚である。

細い尾根を過ぎたところで、そろそろラッセルの疲れも出てきたので、かみさんに先に歩いてもらうことにした。
そこからならば、上にさえ向かっていけば、どの様にルートをとろうとも、最終的には山頂へと行き着くはずある。

ところがそのルートがひどかった。
先のことを何も考えず目の前だけを見て登るものだから直ぐに障害物にぶつかっては何度も方向転換をするわ、私が苦労することなど気にもしないで低い枝の下を通り抜けるわで、無茶苦茶なトレースを残していくのである。
「なんだこれは!」と文句を言いながらも、ラッセル疲れで再び前に出るような気力もなく、その無茶苦茶なトレースの中を黙って歩くしかなかった。


美しい雪景色

こんな風景に逢いたくて徳舜瞥山へ登ってくるのだ


森林限界を越えると山頂が見えた標高1100m付近で森林限界を超える。
そこでようやくかみさんに追いついた。

一休みし、ウィダーインゼリーでエネルギーを補給すると再び体力が回復してくる。
登り始めてから既に4時間が経過していた。
登りで4時間を超えるのは我が家にとって初めての経験である。
しかし、山頂はもう目の前に見えているので、もう少し頑張れば3度目にして初めて山頂に立つことができるかもしれない。

雪山ガイドでのこのルートのコースタイムは4時間になっている。
今日はラッセルしながらの登りだったのと、登り始めた場所が雪山ガイドよりかなり下からだったので、ここまでの時間はこんなものだろう。
行けるところまでスキーを履いたまま登って、最後はツボ足で登ることにする。

山頂は目の前標高1150m付近でスキーを外す。
クラストした雪面が露出しているところは少なくシールも効くので、もっと上までスキーを履いたまま登れそうだが、滑り降りる時の苦労を考えればつぼ足の方が楽だと考えたのだ。

4本爪の軽アイゼンをスキー靴に取り付けてみたけれど、爪の先が靴の底から少し飛び出す程度だ。
斜面を登る時はつま先を固い雪面に蹴り込みながら登るので、軽アイゼンは何の役にも立たない。
雪の下にハイマツが隠れている所では、雪を突き破って足が埋まってしまう。

スキー板に取り付けるアイゼンもあるけれど、それで登ったとしても下りにまた苦労することになる。
こんな山に登る時はMSRのスノーシューを持ってきた方が良いのかもしれない。

つぼ足で登る既に山頂に立とうとの気持ちは失っていた。
「よしっ、あそこまで登って終わりにしよう」
と言いながらそこまで登り、再び山頂を見上げ「もう少し登ってみようか」

そんなことを繰り返しているうちに、何時の間にか山頂はもう目の前に迫っていた。
しかし、更に傾斜は急になる。

私もかみさんも、山登りが好きなくせして高いところは得意ではない。
NHKBSで放映している「世界の名峰グレートサミッツ」を二人でよく見ているが、切り立った岩の上を歩くシーンなどでは、思わず目をつぶってしまう。
この徳舜瞥山の山頂付近も結構な高度感がある。

登頂した気分で腕時計を見ると午後1時10分、登り始めてから4時間40分で大幅に予定を超過していた。
迷いながら一歩を踏み出した時、またズボッと足が埋まってしまった。
それがきっかけになり「ここで止めよう」と声を上げる。
そう言いながらも「ここまで来たのだからもう少し頑張りましょう」との返事が返ってくることを密かに期待していた。
ところがかみさんは、私がそう言った瞬間にくるりと向きを変えて、一目散に下り始めたのである。

こうして3回目のチャレンジでも徳舜瞥山山頂には立つことができずに終わってしまった。
その山頂の向こう側にはどんな風景が広がっていたのだろうか。 でも、今日の天気では全てが雲の中に隠れていたかもしれない。
次に山頂を目指す時は、本当に天気に恵まれた日にしよう。そしてその時はMSRのスノーシューをザックにくくり付けて登ることにしよう。
そう心に決めたのである。

滑り降りる下りの滑りは全く楽しめる場所が無かった。
それどころか、木を避けるのが大変で苦痛にさえ感じる。

徳舜瞥山に登るのならば、特別なこだわりが無ければ上野コースを選ぶのが一般的だと思う。
どちらにしても滑りは楽しめないが、この美しい雪景色を見られるのならば、そんなことは大して気にならない。

苦労してでもまた登りたくなる。
徳舜瞥山は我が家のお気に入りの山である。


樹木の間を滑る 途中で昼食
これくらいの林間ならばまだ滑れるが・・・ 途中で昼食にする


駐車場所 登山口 林道終点 1280m付近
0:20 1:00 3:20
下り 1:20
距離:6.2km 標高差:807m

地図

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