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音江山(2012/1/22)

雪崩で撤退


カヌークラブの新年会で、深川のまあぶオートキャンプ場のコテージに泊まり、日曜日には音江山に登る予定になっていた。

その前日の土曜日、我が家は近くのスキー場カムイスキーリンクスで遊ぶことにする。いや、遊びではなくスキーの練習である。2日前に登った手稲ネオパラで、下山する時に転びまくり、もう一度基本に戻って滑りの練習をしなければならないと痛感したのである。

深川の道の駅「ライスランドふかがわ」で、釜飯を食べてから、スキー場へ向かう。

カムイスキーリンクスの展望ローカルなスキー場をイメージしていたところ、広い駐車場には車がびっしりと駐車していて驚かされた。旭川近郊ではここが一番メジャーなスキー場らしい。

2500円の3時間券を購入して、ゴンドラで一気に山頂へ。そこから見下ろす深川盆地の絶景に感動する。富良野スキー場から見る富良野盆地の風景に何となく似ている気がした。

土曜日の天気は下り坂の予報になっていたが、上空には青空が広がり、真っ白な樹氷とのコントラストが美しい。深川盆地に飛び込むように、麓まで一気に滑り降りる。

広々としたコースは、変化もあってなかなか面白い。今シーズン初めてのゲレンデスキーも、直ぐに勘を取り戻せた。

深川盆地に向かって滑り降りる2日前に手稲ネオパラでヨレヨレになっていたのが嘘のようである。整地されたゲレンデを滑ると何となく自分が上手くなったような気がしてくる。

ところが、コース脇の不整地部分に入ると、直ぐに自分の未熟さを思い知らされるのである。

ゴンドラ3本とリフト3本を一気に滑った。これで、2000円の回数券を買うよりは沢山滑ったことになる。

「これでもう十分かな!」

まだ3時間券の元を取れていないけれど、最近はそこまでガツガツと滑る気にはならないのだ。最初にリフト券を買う時に「2時間券があればちょうど良いのに」と冗談を言っていたが、本当にまだ2時間も経っていなかった。


カムイスキーリンクスを滑る カムイスキーリンクスで
ここは不整地のコース 石狩川も見える

明日のために体力を温存したまま、スキー場を後にしてまあぶオートキャンプ場へと向かう。

コテージ内部今回はここの11人用のコテージを予約し、そこに9人で泊まる。
1棟19000円、これで近くの「あぐり工房まあぶ」の温泉(600円)に滞在中は何度でも入れるのだから、頭数で割ればとてもお得である。

IHクッキングヒーターに電子レンジ、炊飯器、コーヒーメーカー、食器類もすべて整っている。

普段はキャンプ場のコテージになど泊まる気にもならない我が家だけれど、こうしてグループで利用するにはなかなか良いものである。

鍋にお好み焼きに焼きそばにワインにビールに日本酒に、すっかり気持ち良くなって布団にもぐりこんだ。

日曜日は朝から雪が降っていた。数日前の天気予報では晴れマークも出ていて、天気が崩れるのは月曜日からのはずだったのに、それが大幅に早まってしまったようだ。朝のニュースを見ると登別では50センチの大雪になっているらしい。

雪の降る中を歩き始めるカヌークラブの新年会で山に登る時は、何時もこんな天気ばかりである。

コテージを出て、登山口へ移動。音江山を登ったことがあるのは私だけなので、必然的に私がリーダーとなって歩き始める。

今回の新年会の企画は私が考えたものだった。最近は何時もニセコ五色温泉に宿泊して付近の山を登るパターンが続いていたので、ちょっと趣向を変えてみたのである。

かみさんのシールの粘着力が落ちていて、途中で剥がれてしまった。応急処置としてスキーを束ねるバンドを一か所巻いたところ、その後は剥がれることもなく歩くことができた。

GPSトラック沖里河温泉鳩乃湯の廃墟跡を過ぎて、尾根へと上がる最初の急な斜面。去年はここを直登するトレースの中でスキーがスリップして苦労させられた。

今回も同じようなトレースが真っ直ぐに伸びていたが、去年の様に苦労することもなく尾根の上に出ることができた。後続メンバーがやや遅れて登ってくる。「早いですね〜」と言われて、今日は調子が良さそうだと調子に乗ってしまう。

そこからは等高線沿いに斜面をトラバースして、最後に沢を渡ることになる。最初はトレースを頼りに歩いていたが、途中でそれが雪に埋もれて分からなくなってしまった。

GPSトラック少し下の方にあるトレースはまだ見えていたが、この辺りではなるべく高い場所をトラバースした方が沢を渡るの時に楽になるはずである。そんなイメージがあったので、トレースが消えた後も少し登り気味に進んでいく。

GPSに登録しておいた去年登った時のトラックデータを見ると、それよりも少しだけ標高の高いところを歩いてるようだ。今にして思えば、この時点で、そのずれについてもう少し真剣に考えていれば良かったのである。

山に登るのだから、トラバースしながら標高を上げていけば後の登りが楽になる。そんな考えに囚われていた。

針葉樹が密に茂った場所が前方に現れたが、去年も確かそんな場所を通って、そこを抜ければ林道に出たはずである。でも、その前に沢を渡っていた気がする。

ここでも気が付くチャンスがあったのに、無視してそのまま強引に針葉樹の森の中に進んでいった。そうすると思っていた通りに林道に出てきた。このまま林道を少し歩き、その後は適当な場所から山頂へ続く尾根へと上がれば良いだけだ。

ところが、そのような場所がなかなか見つからない。それに、GPSを見ると去年のルートからますます大きく離れていた。

GPSトラックここでようやく間違ったルートを進んできたことに気が付く。そのうちに何処かで渡るだろうと考えていた沢は、今は深い谷となって目の前に落ち込んでいる。そしてその谷の向こうに目指すべき音江山らしき姿が見えていたのである。

ここまでの一番大きな失敗はGPSに表示される地図だけに頼り切っていたことだ。

地図を表示できるGPSに買い替えて、これでもう怖いもの無しだと思い込んでいた。ところが、その小さな液晶に表示される範囲は限られているのだ。勿論、縮尺はいくらでも切り替えられるのだが、それだけで自分の正確な位置を把握するのは難しい。

一度でも良いから紙の地図を出して、それと見比べていれば自分がどちらに向かって進んでいるのかは直ぐに分かっただろう。それを、地図を出すのが面倒でGPSだけに頼り切っていたので、道を間違えたことに気が付くのが遅れたのである。

現在歩いている林道は最終的には音江山山頂まで続いているけれど、深い谷をぐるりと回って、通常のルートとは反対側から山頂にたどり着くことになる。大きな遠回りになるけれど、ここまで来てしまえばそのまま進んだ方が良さそうだった。


GPSトラック
GPSトラックによる顛末

登り始めてから約2時間。去年は2時間20分ほどで山頂まで登っていたので、本来ならばあと少しで登頂できていたところである。素人がリーダーなんか務めるべきでないと、深く反省させられた。

尾根を登るそのまま進んで尾根に上がったところで先頭を交代する。自分のミスでルートを間違えた後ろめたさから、ここまで先頭でラッセルしてきたけれど、そろそろ限界である。

尾根の上の急な登り。先に進むメンバーのトレースが急すぎて、スリップしてしまう。これならば先頭でラッセルする方が私にとっては楽かもしれない。

尾根の上は風がまともに吹き付けて、猛吹雪状態である。登っていく先の尾根からは雪庇が張り出し、その向こう側は更なる暴風が吹き荒れているようだ。

登別に大雪を降らした低気圧が近づいてきているのかもしれない。この状況で他のメンバーは本気で山頂を目指すつもりなのだろうか。

1回目の雪崩先頭の方では、どこから雪庇を超えるか迷っているようだ。

その時である。誰かが「雪崩だ!」と声を上げた。

先頭メンバーがいたあたりの斜面が崩れて、私のいる方向に雪崩れてきた。

逃げることもできず、私の足を埋めていく雪崩を呆然として眺めていることしかできない。

幸いなことに小規模な雪崩だったので大事には至らなかったが、埋もれた足を引き抜くのには結構な力を必要とした。

雪崩の起きる瞬間を見たのは初めてで、もちろん雪崩に埋もれるのも、足首までだったけれど、初めての経験である。

斜滑降で滑るそこから尾根に上がるのは諦め、安全な場所まで滑り降りてから斜面をトラバースし、別のルートを探すことになる。

こんな状況なのに、シールをはがして滑り降りる段になると、皆の表情に急に笑みが浮かんでくる。

目の前には極上のパウダースノーが待っているのである。

とは言っても、斜度30度を超え、樹木も生えている急斜面をフォールラインに向かって滑る勇気は私には無く、我が家は皆の後から斜滑降気味に滑り降りた。

雪崩斜面を横切るそこからトラバースしながら歩いていくと、目の前に樹木の生えていない急斜面が現れた。完全な雪崩斜面である。おまけに、そこの上部には、既に雪崩の発生した後のような段差までできていた。

私は、これでもう撤退決定かなと思ったが、結局は一人ずつ間隔を空けてそこを抜けようとの話しになった。

最初の人間が無事に通り抜けたのを確認してから順番に進む。

渡り終えたところから、また、下に向かって滑るようなので、私たちは少しでも早く雪崩斜面を通り過ぎたくて、斜滑降で一気にそこを滑った。

2回目の雪崩そこから先は樹林帯の中をトラバースしようとのことになり、一人のメンバーが先に進んでいた時である。全く突然に、その前の斜面全体が音も立てずに雪崩落ちたのである。

この2度目の雪崩を目にして、ここで撤退することで皆の意見は直ぐにまとまった。大した衝撃も与えていない斜面が雪崩れるのだから、付近一帯の雪崩リスクはかなり高まっているのだろう。

登って来た時のルートへと戻る時にも、いつ雪崩が起きるか分からないので、樹木の生えてない斜面では間隔を空けてそこを横切る。

ようやく登りのルートへ合流し、後は出発地点まで戻るだけ。そう思っていたら、途中に良い斜面があったので、そこを滑ろうとの話しになる。苦労して登ってきて、最初の一度だけの滑りで終わってしまうのでは、誰も納得できないのである。

今度は、私もかみさんもフォールラインに向かって気持ちよく滑ることができた。昨日のカムイスキーリンクスでの特訓の成果が少しだけあったのかもしれない。

こうして、無事に音江山ツアーも終了。反省する私に「登頂した後、滑り降りる時に雪崩に合うより良かったかも」と慰めてもらったが、やっぱりへこんでしまう。せめてもう少し、地図を読める力を付ける必要がありそうだ。



登山口 鳩ノ湯跡 標高700m付近
0:40 1:50
下り 1:40(遊んだ時間など含む)
距離:4.0km 標高差:520m

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