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幌向岳(2012/1/8)

突然の曇り空


 今シーズン最初の山スキー。
 天気予報では空知方面の天気が良さそうなので、ネットでその存在を知ったばかりの幌向岳に出かけることにする。
 この山は、いつも参考にしている「北海道雪山ガイド」には載っていない。ネットの情報によると、滑りは楽しめないけれど夕張岳や芦別岳の展望が素晴らしいらしい。

奔別立坑櫓 当日は雲一つない空が広がっていた。
 高速道路を三笠へ向けて走っていると、車の温度計の数値がどんどんと下がってきて、岩見沢付近ではとうとうマイナス20度を超えてしまう。
 そこから見える石狩平野の木々は樹氷に覆われ真っ白になっている。
 三笠で高速を降り桂沢湖へ向かう途中、幾春別の奔別立坑櫓に朝日が当たる様子がとても美しく、ちょっと寄り道してしまう。

 桂沢湖からは国道452号を夕張方向へ曲がる。
 幌向岳へは、この途中の沢見橋から林道に沿って登っていくことになる。
 国道452号に架かる橋にはそれぞれ良く目立つ標示が立てられているので、目指す沢見橋は直ぐに分かった。
沢見橋の近くに車を停める 駐車場所のことが心配だったけれど、橋の幅よりも道路の除雪幅の方が広いので、路肩の雪山ギリギリに車を寄せれば走行車線にはみ出さないで車を停めることができた。
 車を降りると強烈な寒さに身体が縮んでしまう。
 震えながら装備を整えて林道を歩き始める。全く期待はしていなかったが、雪面には他の人が歩いたトレースの影も形もない。
 それでも、膝まで沈むような深雪ではないので、ラッセルしながら歩くのも大して苦にはならなかった。
 幌向岳へはこちら側から東尾根を登るルートと、全く反対側の栗沢町万字付近から林道を登ってくるルートがあるらしい。
 東尾根ルートのコースタイムは3時間15分で、万字ルートの4時間よりは短くなっている。

深い谷を見下ろしながら林道上を歩いていく。
何故か地形図にはこの林道が載っていない。林道どころか、幌向岳の名前さえも地形図には無くて、836.3の標高が記されているだけである
ネットで「幌向岳」を検索しても、ヒットするのは山スキー関連のサイトだけ。登山者の間だけで通用する名前なのかもしれない。
林道はしばらくの間アップダウンを繰り返して、歩く距離の割には標高をかせげない。これでは下山時も、林道を一気に滑り降りると言うわけにはいかなさそうだ。


沢沿いの林道を登る 沢沿いの林道を登る
この程度のラッセルなら苦にならない 早く太陽の日射しを浴びたい

 途中で沢に架かる橋を渡るところで「あれ?川は渡らないはずなのに」と気になったけれど、「元々が地図に載ってない林道なんだから」と適当に考えてそのまま先へ進んだ。
 ところが、林道はそこから少し先で向きを変え、川から離れる方向に山を登っていたのである。ここでようやく、このまま林道を進むと違う場所に行ってしまいそうなことに気が付いた。
 インターネットの情報を元にしてGPSに大まかなルートを登録しておいたのだが、それによるとちょうどこの付近から、その林道とは反対方向に登っていくことになっていた。勿論、川は渡らずにである。
 「川を渡らずにそのまま真っ直ぐ進めば良かったのだろうか?」
 しかし、橋から先の川岸は急な崖になっていて、真っ直ぐ進むのは不可能である。
 「それならば、橋を渡ったこちら側の岸をもっと先まで歩き、適当なスノーブリッジを見つけてもう一度川を渡るのだろうか?」
 そう考えて、私一人で先まで行ってみたが、川を渡れそうな場所は見つからない。
 ここで完全に行き詰ってしまった。

  はっきりと言えるのは、この辺りから川を離れて尾根の上に出なければならないことである。
 でも、付近の山の斜面は急すぎてとても登れそうにない。
 しょうがなく、登れそうな場所まで林道を引き返すことにした。
 ここで無駄にした時間は約25分。本来ならば、川を渡るところで気が付かなければならないのに、そこで自分の都合の良いように考えてしまったのが反省点である。
 山での道迷いも、こんな考えがきっかけで起こるような気がする。

道を間違えたポイント 何とか傾斜の緩い斜面を見つけてそこを登っていくと、直ぐに林道らしきところにでてきた。
 どうやらその林道は、私たちが歩いてきた林道の途中から分岐しているものらしい。
 下山時にその分岐地点を確認したところ、先行者のトレースや赤テープなどの目印が無ければ、絶対に気が付かない様な分岐だった。
 その林道に沿って進んでいくと、林道はやがて大きくカーブして川から離れるようにして山の上へと続いていた。
 ここでようやく、GPSに登録しておいたルートの意味を理解する。

 その林道はカラマツ林の中を順調に高度を上げていく。
林道はカラマツ林の中に続く 日も当たるようになって、ようやく体が温まってきた。
 汗も流れてくるが、それでも上着を1枚脱ごうと言う気にはならない。
 まだ登る斜度もそれほどきつくは無いので、汗をかくよりも外気の冷たさの方が勝っているからだろう。
 所々、林道の位置が不明瞭になるが、登るルートは標高735mのピークまでほぼ真っ直ぐなので迷うことは無い。
 ただ、起伏があるので、無駄な登りをしないように、地形を見極める必要がある。
 後ろを振り返ると、カラマツ林の枝の合い間を通して美しい山の姿が見え隠れしていた。
 それが夕張岳なのだろうか。
 早く眺めの良い場所まで登ってその姿を眺めたく、足にも力が入る。


カラマツ林 カラマツ林の中を登る
美しいカラマツ林 カラマツ林の中を登り続ける

美しい風景の中を登る 次第に傾斜がきつくなってきた。
 大きなダケカンバやトドマツが目立ち始める。
 エゾリスがそのダケカンバの枝から枝へと飛び移り、最後にはエゾマツの青葉の中に姿を隠してしまった。

 前方にやや急な斜面が見えてくる。
 そこさえ登ってしまえば、後は山頂まで尾根上を緩やかに登っていくだけである。
 ネットの情報ではそこが唯一の難所とされていたけれど、大して苦労することもなく登っていけた。
 ところが、その最後で行き場を失ってしまった。
 斜面を削って造られた林道の上に雪庇が張り出してきているのだ。
 その雪庇がもっと大きくなれば、林道を埋めてしまうのだろうが、今はそれが中途半端な状態なのである。
行き場を失う 上からの雪庇と林道上の吹き溜まりが繋がっている所から登ろうとしたら、その繋がりはまだ完全ではなく、雪面を突き破って危うくその隙間にハマりそうになる。他に登れそうな場所がないか偵察していたかみさんも、成果無く戻ってきた。
 もっと遠回りをすれば登れる場所も見つかるのだろうけれど、それも面倒なので目の前の雪庇をスコップで崩してルートを切り開くことにした。

 ふと上空を見上げると、尾根の向こう側から雲が広がってきつつあった。
 後ろを振り向くと、そちら側にはまだ青空が広がっていた。
でも、そこに見えている山の中には山頂付近が雲に覆われているものもある。
その青空や山々が雲の中に消えてしまうのは、もう時間の問題だろう。
今見えている風景だけでもカメラに収めようとも考えたが、それよりもまず目の前の雪庇を突破して、尾根の上に出ることの方が先決だと思われた。
大急ぎでスコップを振り回し、ようやく雪庇の上に出ることができた。


背後には夕張山地の山並みが見える スコップでルートを切り開く
背後には夕張山地の山並みが スコップで登るルートを切り開く

ミズナラの巨木が出迎えてくれた その先の最後の急斜面を登るかみさんを横目に、私は木の枝の少ない場所を探し、目の前の山が夕張岳なのかどうかも分からずにカメラのシャッターを切る。
 これで何とか、ホームページに載せるための写真は撮れたので、かみさんの後を追ってゆっくりと尾根の上へと上がった。
 そこではミズナラの巨木が大きく枝を広げて私達を出迎えてくれた。
 それが、青空に枝を広げているのならば、さぞ素晴らしい風景だったのだろうが、背景が曇り空では感動も半減である。
 尾根の反対側には灰色の雲が広がり、私たちのいる場所も既に日は陰っていた。
 それでもまだ、私たちが登って来た方向には青空が残り、夕張岳から芦別岳への山の連なりが見事に広がっていた。
 でも、その中の夕張岳はどれだろう?
 夕張マッターホルン我が家が最近夕張岳の姿を見るのは、石勝樹海ロードを十勝方面に走っている時、福山から坂を上り最初のトンネルに入る手前辺りから、はるか彼方にその威容のある姿をチラッと眺めるだけである。
 はっきりとした姿を知らなくても、実物の山を見ればそれが夕張岳であることは直ぐに分かるはずだ。
 ところが、それらしい姿はどこにも見当たらない。
 多分、頂上付近が雲に隠されている山が夕張岳なのだろう。
 その反対側にも雲のかかっている山が見えるが、それが芦別岳だろうか。
 その他の山の中では、真正面に見える先の尖った山が印象的である。
 後で調べてみると、その山も地形図上には名前が無く、登山者の間では夕張マッターホルンと呼ばれているらしい。


最後の展望
ギリギリで楽しむことができた夕張山地の展望

巨木の下で 尾根の上は風当たりも強く、日が陰ってしまったので、寒さが再び身に染みてくる。
 これまでのラッセルで体力も結構消耗したようで、それがこの天気の急変により、余計に疲労が増してきたような気がする。
 もしもまだ青空が広がっていたら、疲労など感じもせずに元気良く歩いていたはずだ。
 尾根の上には所々に巨木があって私達を慰めてくれるが、空と同じで気持ちは全く晴れない。
 雪も舞い始めた。
 既に登り始めてから3時間10分が経過していた。
 ネットで調べたコースタイムならば、もうそろそろ登頂間近のはずだが、山頂まではまだ2キロ近くはありそうだ。
 途中で道に迷ってロスした時間が、今となっては痛かった。
 山頂に立ったとしても展望は全く期待できないし、それにとにかく寒い。
 735mのピークを過ぎた辺りで登頂断念を決定。前回の奥手稲山に続いて、またしても途中撤退となってしまった。


尾根の向こう側も曇り空 巨木発見
尾根に上がった向こう側も完全に曇り空 ここにも巨木発見

昼食 少し下って、風を避けられる場所で昼食にする。
 その時、犬を連れたご夫婦が登ってきた。
 こんなところで他の登山者に会うとは思ってもいなかったので、ビックリした。
 「夕張岳は見れましたか?」と聞かれ、かみさんが「はい、ギリギリで見れました」と答えている。
 どれが夕張岳か分かっていないくせに、大嘘つきである。
 そのご夫婦も735mのピークから引き返そうと言って登っていった。

 滑りを楽しめる場所は無いけれど、スノーシューで登った奥手稲山と比べれば下山は雲泥の違いである。
 しかし、沢沿いの林道まで下りてくると、ほとんどが歩きとなってしまう。
 そうして1時間10分で車まで戻ってきた。
 朝の天気が良すぎただけに、何とも残念な今回の幌向岳登山であった。



沢見橋 林道分岐 735ピーク
0:30 2:40(迷った時間含む
下り 1:10(昼食時間除く)
距離:4.6km 標高差:672m

地図(赤:登り、青:下り)

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