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ホロホロ山(2011/3/7)

白銀の世界


 大滝村の徳舜瞥岳には2度ほど登っているが、その2回ともトドマツが変身した真っ白な雪のモンスターの姿を楽しめた。
 今回登るのは、その直ぐ隣りに聳えるホロホロ山。初めて登る山だけれど、事前に仕入れた情報ではこちらもモンスターが楽しめるらしい。
 ところが、昨日一昨日と気温が高くなり、洞爺湖の湖畔では福寿草が花を咲かせているくらいだった。
大滝村工芸館駐車場 昨日から泊っていた北湯沢温泉の周辺も雪が少なく、楽しみにしているモンスターに逢えるかどうか、ちょっと心配な状況である。
 大滝村工芸館の駐車場に車を停めて、午前8時半に登り始める。
 昨日か一昨日のものらしいトレースがあったので助かった。
 登山ルート自体は尾根上の一本道なので迷う事は無いのだけれど、もしもそのトレースが無ければ、駐車場からまず何処へ向かえば良いのか迷っていたところである。
 カラマツ林を抜け、やや急な斜面を登ると、シラカバの幼木が密生する伐採跡地らしいところへ出てきた。
 そこからホロホロ山の山頂まで、なだらかな尾根がずーっと続いている。
 今日の天気予報は晴れ時々曇りで、日中は雲が広がってくるとのことで、ちょっと微妙な天気である。
伐採後を登る 今も青空は覗いているものの、これから向かう方向には雲が広がり、徳舜瞥岳の姿も下の方しか見えていない。
 雪質は思っていたほど悪くは無かった。
 3月に入って直ぐに札幌周辺では大雪が降ったけれど、この付近でもその時に10〜20センチは積もっていたようである。
 昨日一昨日と気温が高かったと言っても、せいぜい4度程度だったので、この積もったばかりの新雪を溶かす程ではなかったのかもしれない。
 伐採跡地の次はミズナラの林やトドマツの植林地と、林相が次々と変わっていく。
 標高650mから700mにかけての急な登りは、トドマツが密生し、おまけに倒木も多くてちょっと苦労させられた。
 登る時よりも、下山時に滑り降りる時の方が大変そうである。


疎林を登る 樹木の密生した急斜面
登るに従って林の様子が変化する 登りも下りもこの辺が一番の難所

白老三山が見えた そこを登りきったところで、左手に美しい山の姿が見えてきた。
 かみさんが「あれが白老岳の白老三山ね」と雪山ガイドから得たばかりらしい知識を披露するが、その三山の中のどれが白老岳なのかは全く分かっていないようだ。
 私は私で、遠くの方に険しい山容の山が見えているので、それもきっと白老三山の中の一つなのだろうと勝手に解釈していた。

 なだらかな尾根をしばらく歩いていくと、800m付近でまた急な斜面が現れる。
 こちらはまだ樹木も疎らなので、それ程苦労しないで登る事ができた。
 その先は尾根の幅がぐっと狭まり、白老岳の姿も更に美しく見えてくる。
 その反対側には、最初は雲に隠されていた徳舜瞥岳の尖った山頂が姿を現していた。
 上空の雲の流れは早く、時々その切れ間から陽が射してくる。
 そしてその雲も完全に無くなったと喜んでいたら、直ぐにまた次の雲が流れてきて青空を隠してしまい、天気が回復傾向なのか悪くなってきているのか見当が付かない。


勘違いした白老三山 徳舜瞥岳が見えた
私が勘違いした白老三山 反対側には徳舜瞥岳の山頂が

美しい山の風景
素晴らしい風景に見とれる(白い山が本当の白老三山)

細い尾根の上を歩く 何の実?
細い尾根の上を歩く 何の実だろう?

真っ白な風景に変わってきた 標高1000m辺りまで登ってくると、周りのトドマツがそれまでの黒々とした姿から一変して、真っ白な姿へと変わってきた。
 枝先まで凍りに覆われたその姿は、まるで純白の衣装に包まれた花嫁のように美しい。
 厳冬期のこの辺りのトドマツは、その形も分からないくらいに分厚い雪に包まれ、まさに雪のモンスターに変身していたはずである。
 それが全て、2月下旬の高温で崩れてしまい、3月に入ってからの寒気で再び氷の衣装をまとったのだろう。
 下界の春めいた様子からは、想像もしていなかった風景が目の前に広がっていた。
 雪の塊であるモンスターも良いけれど、こうしてトドマツの形そのままを残して真っ白になった姿も素晴らしい。
 こんな風景は太陽の光を受けると更に輝きを増し、そしてその背景に青空が広がれば更に美しさを増す。
 上空を見上げると、太陽を隠している雲がどんどんと流れて行き、その後ろから青空が迫ってくる。
 「来るぞ、来るぞ〜!」
 「来た〜〜!」
 目の前に広がった風景にただただ見惚れるしかなかった。


白い衣装をまとったトドマツ
白い衣装をまとったトドマツが青空に映える

美しさに見とれる
その美しさにただ見とれるだけ

 それまで順調に登ってきたペースが急に遅くなってきた。
 カメラを抱えてそこらをウロウロするので、さっぱり前に進まないのだ。
 そこで、太陽が雲に隠されている間に急いで登る事にしたが、再び太陽が姿を現すと、また歩みが遅くなる。
 更に高度が上がると、トドマツばかりでなくダケカンバの枝先一本一本までが凍りに覆われ、周りはまさに白銀の世界となる。


白銀の世界
憧れの白銀の世界だ

森林限界を超える そのダケカンバの背が次第に低くなり、標高1500m付近で森林限界を超えた。
 羊蹄山の姿が見えた。
 その手前のルスツスキー場が、まるで羊蹄山の下にひれ伏している様に小さく見える。
 後ろを振り返ると、ついさっきまで同じ目線の高さに見えていたはずの白老岳が、随分と低い位置に変わっていた。
 溶岩ドームが特徴的な樽前山の姿が目に入った。そして支笏湖の姿も。
 「ここから支笏湖が見えるんだ〜」と感激していたが、大滝村から美笛峠を越えれば直ぐ支笏湖なのだから、その姿が見えるのは当然である。
 山に登ると、下界にいる時の地理感覚が大きく崩れて驚かされることが多々あるのだ。
 視線をそのまま横に動かしていくと、険しい山肌の恵庭岳が見える。
 そこで初めて、私が白老三山の一つだと思い込んでいた山が、実は恵庭岳だった事を知ったのである。


羊蹄山が見える 支笏湖も見える
羊蹄山とルスツスキー場 支笏湖も見えていた

 雪面が硬くなってきたが、完全な氷にまではなっていないのでまだ登りやすい。
 時々ストックが、その硬い雪面を突き破る。
 その中はハイマツの茂みとなっていた。
 既にこの辺りでは、雪が融けてその下のハイマツが姿を現していたのかもしれない。
蔵王の樹氷みたいだ それが何時の吹雪によるものかは分からないが、表面が再び薄い雪に覆われて、それがそのまま凍ってしまったのだろう。
 スキーを付けているから良いけれど、もしもここをつぼ足で登るとしたら、落とし穴地獄の中を歩くようなものである。
 空は完全に雲に覆われてしまい、晴れてきそうな様子は全く無い。
 それでも見通しが利くのはありがたかった。
 広大な雪面は登るにしたがって幅が狭まり、最後は一点に集まっているので、迷う心配は無い。
 更に標高が上がると、ゴロンとした背の低い樹氷に周りを取り囲まれ、何だか蔵王の樹氷の風景を思い出す。
 その樹氷は、風上側がびっしりとエビのしっぽに覆われている。
 高山ではそれ程珍しくも無いのだろうが、私達は始めて目にするものだった。


山頂までもう少し エビのしっぽの発達した樹氷
樹氷原の中を登る エビのしっぽに覆われた樹氷

 先に登っていたかみさんが、その樹氷原を抜けた先で万歳をしていた。
 そこが頂上でない事は分かっていたが、一応は今回の目標としていた地点である。
 ホロホロ山の本当の山頂はそこから更に細い痩せ尾根を渡った先にあるのだ。
 でも、地形図を見ただけで、どんな場所なのかは大体想像が付くので、半ば登頂は諦めていた。
ホロホロ山山頂 そしてかみさんに続いて私も目標地点まで達したが、その先には想像通りの風景が広がっていた。
かみさんは完全に、そこから先に進む気は無さそうだ。
 私は試しに少し歩いてみたが、つぼ足ではハイマツの落とし穴にズボズボと埋ってしまうので大変である。
 アイゼンが必要となるような硬い雪面ではないので、頑張れば山頂まで登れそうだったが、雲も更に厚くなってきたのであっさりと登頂は諦めることにした。
 直ぐ隣りに見えている徳舜瞥岳の山頂も、過去2回登っているが何れも途中で引き返している。
 ピークを極める事にはあまり拘らない私達にとっては、その登る過程が楽しめれば満足なのである。

 大滝村工芸館からここまでの標高差は約830m。
 我が家がこれまでに登った冬山の中では札幌岳に次ぐ標高差だったが、随分と楽に登ってこられた気がする。
 ラッセルが無かったこともあるけれど、それ以上に、緩やかな傾斜が続いていた事の方が大きかった。
 距離が長くても、傾斜が緩い方が体力を消耗しなくて済むのである。
 その分、滑りを楽しめるようなところは殆ど無い。
 森林限界より上の広大なスロープ部分も、樹氷に吹きだまりにアイスバーンにと、障害物だらけでまともに滑ってはいられない。
 途中でダケカンバの枝にスキーを引っ掛けて転倒。ビンディングが上手く外れてくれたけれど、危ないところだった。
 その次は、滑っている最中にストックが薄い氷を突き破って雪面に突き刺さり、ストラップの止め具が抜けてくれたので良かったけれど、危うく手首や肩を痛めるところだった。
 樹林帯に入るとパウダースノーに変わるが、今度は木を避けるのに忙しくなる。
 常にスピードを制御していなければならないので、次第に太腿が痛くなってきた。
 それでも、一度も登り返すことなく滑り降りられるのは嬉しい。
 心配していた樹木の密生した急斜面も、何とかその間をすり抜けながら降りることができ、その後は駐車場まで一気に滑る。
 北湯沢温泉でお湯に浸かり、キノコ王国でキノコ汁を食べ、大滝村満喫スキーツアーは終了。
 最高の雪景色を楽しめた今回のホロホロ山。
 年に一度は出会いたい白銀の世界を満喫できたので、これで心置きなく春山シーズンに入る事ができそうだ。


駐車場 825m地点 1280m地点
1:35 1:45
下り 1:30
距離:6.6km 標高差:835m

ホロホロ山トラックデータ


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